ドラゴンボールZ・オルタナティブ~世界線c~   作:三軒過歩

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(第四十五話)託される者

「ん、んん…」

 

「よかった、目が覚めたのね。」

 

悟飯が意識を取り戻す。

 

「ここは?」

 

「ここは、オレンジシティ。人造人間はいなくなったのよ。」

 

「そうか…ごめんね、守り切れなくて。」

 

悟飯が気を探り、サタンが死んだことを悟る。

 

「貴方のおかげで私は助かったわ。謝ることなんてないの。助けてくれてありがとう。」

 

ライの前で泣きわめき、もう心の整理は出来ていた。言いよどむことなく言葉を出す。その甲斐あってか、悟飯は少し救われたような顔をした。

 

「それじゃあ、俺はもう行くよ。まだまだ修業を続けてあいつらに勝てるようにね。」

 

「ちょっと待って!」

 

悟飯がすぐに飛び立とうとするのをビーデルが引き留める。

 

「ライさんからこれを渡してほしいって預かってるの。」

 

「これは、仙豆か。」

 

袋の中身が十粒あるのを確認する。

 

「餞別って言ってたわ。一粒は借りにしておくとも。」

 

「分かった、確かに聞いた。君ももう逃げ遅れることのないようにね。」

 

今度こそ悟飯は飛び去る。一人修業を続けるために。

 

「世の中にはこんな人がいたのね。それにしてもライさんはどうして私のことを知ってたのかしら。」

 

その疑問に答えるものは誰もいない

 

 

「悟飯は何度も死線をくぐってるみたいですけど、私はあれから一度しか人造人間と戦ってはいません。やっぱり自分は悪人ではないだけなんでしょうね。」

 

寂しそうにそう言ってライは合わせていた手を解く。

 

「また来ます。」

 

 

「悟飯さんはどうしてライさんと一緒に修業しないんですか。」

 

トランクスが悟飯の弟子になって数ヶ月。トランクスは気を感じ取れるようになってからずっと疑問に思っていたことを聞いた。ライの気は決して悟飯に劣っておらず、一緒に修業すれば人造人間に勝てる日も近くなるという確信があった。

 

「それは…そのうち話すよ。あの人もトランクスの言う通り強い。俺に何かあったら俺の代わりに修業をつけてもらいなさい。」

 

しかしトランクスに対してその理由を話してくれることはなかった。この話を振った時、悟飯は(ベジータ)の話をするときのように少し困った顔をしていた。それを見たトランクスはこの話を二度と振ることはなかった。

 

それから一年の月日が流れる。

 

 

 

「君はここに残るんだ、いいな!」

 

「いやだ!俺も悟飯さんと戦う。もう十分強くなったはずだ!」

 

この一年で腕は欠損し、その状態でも戦えるように体を慣らすために修業を費やし、悟飯は一年前からほとんど強くなっていない。

 

「だめだ!君は最後の…」

 

そこまで言いかけたところで悟飯は言いよどむ。かつてその言葉をかけてくれた師匠を自分は裏切った。今の自分にトランクスを止める資格なんてない。それでも。

 

「分かった。行くか。トランクス。」

 

その言葉を聞いて油断したトランクスの首筋を手刀で打つ。

 

「あの人のいうことを聞かなかったくせに、弟子(トランクス)には自分の言葉を強要する、か。師匠、最後まで面倒かけてごめんなさい。後のこと頼みます。」

 

自分にライを師匠と呼ぶことが許されないとそう思っていた。師と呼びたくないとすら思っていた。自分が師匠になるまでは。今なら、ライの正しさを理解できる。本当に大恩ある、尊敬する人だと、自信を持って言える。

 

 

「あの馬鹿。」

 

それから数十分後、地球の最果てともいえる場所で、ライの瞳から一滴の涙が頬を伝った。

 

 

「一年振りですね、カリン様。」

 

何か弱音を吐きたいとき、どうしようもない悲しいことがあった時、ライはこの場所に訪れる。

 

「悟飯は死にました。つい先日のことです。仙豆を使いきって、それでもまだ挑んで、それで死んでしまった。」

 

話ながらカリン様ならもう知っているかと思う。悟飯もあの世に行っているのだから。

 

不肖の(正しい)弟子でした。私が師として未熟だったばっかりに。私があなたのような師匠だったら、良かったのに。悟飯を死なせずに済んだのに。」

 

それは懺悔だ。自分が一度守ると決めた人を見捨てたことに対する。

 

「次来るときは必ず人造人間を破壊したと報告します。」

 

それは宣言。もう取りこぼさない。その決意。

 

 

カリンを去ろうとしたときライは気を感じる。その気の持ち主が言葉を投げかけてくるのを黙って待った。

 

「ライさん、ですよね。初めまして。」

 

「久しぶり、が正しいよ。最も最後に会ったのは君が三歳にも満たないころだったから覚えてないのも無理ないけどね。」

 

悟飯と別れて七年間、悟飯と会ったのは一度きり、トランクスには会ってすらいない。

 

「悟飯さんから少しですけどお話は伺っています。」

 

「自分の保身を一番に考える人って、かな?」

 

「ちが…」

 

トランクスは動揺して口をつぐむ。本題に早く入ろうと口を開きなおした。

 

「俺に修業をつけてください。おれの二人目の師匠になって欲しいんです。」

 

「断る。私には誰かの師になる資格なんてなかったんだ。もう、誰かにものを教えたりはしない。」

 

即答した。自分は師たる資格がないとライは思っていたから。しかし、トランクスはその答えを予想していたように次の言葉を告ぐ。

 

「仙豆一粒の貸しを返してもらいに来ました。」

 

「!…その言葉を、どうして。」

 

「自分にもしものことがあったら修業をつけてもらえと、悟飯さんから言われています。その時にこういえば断らないとも。」

 

天を仰ぐ。

 

ああ、本当に、悟飯は自分には勿体ない弟子だ。こんなに優しい子を自分は守ってあげられなかったのかと胸が締め付けられる。師匠と見られなくとも、何か悟飯とつながりを持っていたいという、見苦しい未練を見抜かれていたかのように、悟飯はあれから一度も自分を頼ってきてはくれなかった。腕を失った時でさえも。でもそれはこの時のためにとっておいたのだろう。自分よりも次代に希望を託す、悟飯は師匠(ライ)の思想を師匠(ライ)よりも高潔に体現していた。

 

「分かった。今日から私…いや、今日から俺が君の師匠だ。」

 

口調を変える。今までの自分を捨て去って、こんどこそ弟子を導いていけるように、守ってあげられるように。

 

 

「じゃあ、まずは君の実力を見よう。全力でかかってこい。」

 

そう言ってライは構えをとる。トランクスも構えをとりこちらに向かって飛び込んできた。

 

「やああああ!」

 

「ふむ。」

 

素早い連撃を軽々と躱し、一撃を打ち込む。ダメージよりも衝撃に重きを置いた一撃にトランクスが後ずさる。

 

「うわっ…まだまだ!」

 

「トランクス、俺は本気でかかって来いといったんだけど?」

 

再び突っ込もうとしてくるトランクスを制してそう言った。

 

「俺は全力です!」

 

むっとしたようにいうトランクスに対してライは怒気を孕んだ声で言う。

 

「悟飯が死んでからひと月、君がその間俺の元に来なかったのは、自由に超化できるようにしてきたからだろう。力の半分どころか十分の一も出さずに全力って、俺を舐めてるのか。」

 

「っ!でも超サイヤ人になったら…!」

 

「お前如きが超サイヤ人になったところで何ら支障はない。いいからさっさと本気でこい。」

 

挑発的に言うライにトランクスは苛立ちも手伝って超化する。髪は金髪に染まり、サイヤ人の強さを余すことなく引き出す。

 

「後悔しないでくださいね!」

 

先ほどとは比べ物にならない速度で踏み込む。しかしライはその動きに対応して見せた。超サイヤ人になった自分の攻撃が通用しないことにトランクスは動揺する。

 

「力に引っ張られてるぞ!動きから繊細さが消えた!」

 

「な、負けるかああ!」

 

拳の連撃だけでなく蹴りも混ぜ、四肢をフルに活用するが、それをライは地に足つけたままで防ぎきる。

 

「そこ!」

 

「ぐっ!」

 

意識の死角を突くような攻撃を食らい、少しづつ消耗していく。

 

「遅い!」

 

結局いいようにさばかれ、ライに押さえつけられ地に伏せる。そのままの状態でトランクスに話かける。

 

「トランクスは悟飯からどんな修業を受けてきたんだ?」

 

「武道の基本とっ、超サイヤ人になる特訓です!」

 

「それだけ?」

 

「戦術についても一通りっ!」

 

「気のコントロール技術は教わらなかったのか?」

 

「気功波は…打てます!」

 

そう言って掌に気弾を表出させて無理やりライに向かって放つ。それを避けるのにできた隙にねじ込むように無理やり脱出した。

 

「そうじゃない。お前は超サイヤ人になって得られた圧倒的なパワーをまるで使いこなしていない。だから人狼化すらしてない俺にいいようにやられるんだ。」

 

軽く手で服に着いた汚れを払いながらそう言い放つライには隙だらけに見えて、全く隙が無かった。やがて構えを解く。

 

「単純な力だけで言えばトランクスの方が強い。だからこれからは気のコントロール技術について学んでもらう。」

 

「はい…。」

 

 

地味な修行である。それが有用だと分からせるために自分との実力差を見せつけた。それもトランクスが超サイヤ人になれていればこそだ。

 

「そこ!歪んでるぞ!」

 

そう言ってトランクスの脇腹に触れる。それだけで攻勢に転じていたバランスは崩れ去る。派手に転ぶ。

 

「わっ!」

 

「今日はここまで。体を冷やさないようにね。」

 

そう言って修業を終える。トランクスはカプセルコーポレーションに戻る。

 

「ライさん、今日は一緒に夕飯でもどうですか。お母さんがたまにはライさんも顔を出してほしいって言ってましたよ。」

 

悟飯と修業していた時はほとんど一緒に行動していたが、トランクスには帰る場所がある。悟飯にもあれば、もう少し心に余裕をもてていたのだろうかと考えたりする。

「…今日は、すまないが、遠慮させてくれ。ちょうど今夜は満月なんだ。狼の姿でやりたいことがある。」

 

ライは悟飯と別れてからの七年間でパワーボールを作れるようになった。自由に人狼化はできるようになっているが、流石に人工の月は目立ちすぎるためにほとんど作ったりはしない。

 

「そう言えば、ライさんは狼人なんでしたね。」

 

「自分では人狼のつもりだ。一応、ジルフ村、人狼族の村の出だからね。」

 

「人狼?狼人ではないんですか。」

 

「満月の日に狼化するのは狼人で、俺もその体質だけど、俺は人狼の父と地球人のハーフだから。」

 

「なるほど?」

 

よくわかっていなそうな声音。まあ仕方ないのかなと思う。これは自分のプライドとか、そういう類のものでしかない。

 

「せっかくなんで見てもいいですか?俺、まだライさんが狼の姿になったところ見たことないですし、全力のライさんがどれくらい強いのかも気になります。」

 

「じゃあ、今日の夜、八時にここに来い。俺も少し休むし、トランクスもブルマさんのとこに行って夕飯と風呂を済ませてこい。」

 

そう言って一時この場は解散となった。




ライ600万
悟飯625万
トランクス250万
悟飯は超化で3億以上、怒りによる倍化で6億を超えるとこまでは行きます。一対一なら確実に人造人間に勝てていたでしょう。腕の欠損なしで修業していれば二対一でも勝てたかもしれません。
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