ドラゴンボールZ・オルタナティブ~世界線c~   作:三軒過歩

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四十四.五話の続きとして読むと分かりやすいと思います。時系列的には四十五話の後でいいと思ってるんですけど。


(第四十五.五話)ライと悟飯

「あはっ、できた、できたぞ!完璧な人工の月だ!」

 

爛々と輝く人工の月の下で狼姿の男が嬉しそうに笑う。

 

「サタンさんのおかげだ。このお礼は人造人間を破壊することで返してやろう!」

 

サタンの妻のために花火のような気弾を撃ちあげた時に気づいたのだ。片手に二つの性質の気を同時に作るのではなく、片手ずつに性質を分けて作成すればいいと。ベジータが作る人工月に先入観を持っていたライにとって両手で作るという発想をくれたサタン一家には感謝してもしきれない。

 

ドシュン!

 

「ハハハハハ!待ってろよ人造人間!」

 

ライは二人の人造人間の微弱な気をたどっていった。

 

 

「波アッ!」

 

気合砲で岩を粉々に砕く。この地球上で自分の力に耐えうる物質なんて存在するのだろうか。少なくとも人類にはそんな物質を見つけることも作り出すこともできていない。それでもブルマさんならできるかもしれないが、ライと仲たがいしたことを打ち明けるのも気まずく、なかなかブルマさんのところに頼りに行けなかった。

 

「あの人のとこで修業した時よりも明らかに伸びが悪いなあ。」

 

ぽしょりと弱音がこぼれ出る。首を振り頬を叩く。ライは弱音を吐いたりはしなかった。人造人間から逃げ続けてほとんど自分の命だけを大切にしているような人だったけれどそれでも見習うべきところはある。…学びきれていないこともたくさんあった。

 

「!ライさんが凄い速度で移動している。人造人間から逃げてるのか…?」

 

大きな気が動いているのを感じ取った悟飯が不思議そうにそうこぼす。しかしその疑問に答えてくれる者はいない。

 

ドシュン!

 

悟飯もライと合流しようと飛び始めた。

 

 

「!」

 

人造人間のところに一直線で飛んでいたライは悟飯が合流しようと近づいていることを感じ取る。

 

「全くよくできた弟子だよ。」

 

自分と大切な人を守るために修業させて、そして今は人造人間の脅威から全人類を守るために修業している。奴らに勝てる力が付くまでと自分に言い聞かせて逃げ回っている師匠への当てつけのように、彼は何度も人造人間と戦っている。

 

「大丈夫。今日で全て終わらせるから。だから…」

 

教えたいことが山ほどある。弟子として悟飯を育て初めて気づいた。彼は自分が嫉妬するのもおこがましいほどに才能にあふれている。大きすぎる力故にその力はほとんどが眠ったままだ。だから究極の戦士の誕生に一役買えるなら武の道を歩むものとしてこの上ない喜びだ。彼とまた一緒に修業したい。

 

でもそれよりなにより。

 

「生きたいように生きてくれ!」

 

まだ学者を目指せるうちに、自分の夢を追い求めて欲しい。もうあいつらに囚われて生きてほしくない。

 

 

「おや?あそこにいるのは孫悟飯じゃないか。あんな速度で飛ぶなんてなにがあるんだろうか。」

 

「さてね。私達以外に地球人を殺そうとするような奴が現れたんじゃないかい。」

 

「それは面白そうだ。見に行ってみよう。」

 

「全く仕方ないねえ。」

 

いつもなら止めるはずの十八号も言葉では呆れたように言いながら乗り気な表情で飛び立った。

 

 

「ライさん、何があったんですか!」

 

悟飯が飛んでいると視界にライが映る。全力で移動しているから何事かと思ったが、どうやら人造人間に追われていたわけではないらしい。密林の上空、人が誰もいないであろう場所で悟飯はライに詰め寄った。

 

「悟飯、構えて。」

 

「え?」

 

動揺も一瞬、ライが両の掌に気弾を表出させる。

 

「今日であいつらを殺すんだよ。大丈夫二人ならできるから。」

 

そう言ってライは二つのパワーボールを混ぜ合わせ空中に放った。

 

「面白い冗談だね。この私達を殺すとはさ。」

 

「この最強の人造人間を殺すなんて無理に決まっているのにな。」

 

「人造人間!」

 

二人を見た悟飯が怒りを露わに超化する。

 

「今にみせてあげるよ。…はじけて、混ざれっ!」

 

ライのはなった人工の月が爛々と空で輝きを放つ。

 

「やっとだ、やっと貴様等を殺すときがやってきたんだっ!」

 

その声音は本当に心の底から喜んでいるように聞こえた。それほどまでに自信があることに悟飯は驚愕する。

 

「ふん、すぐにでもその自信をへし折ってやる…ぞっ。」

 

ガン!

 

十七号の拳をライはいともたやすく受け止める。

 

「言っただろ。貴様等を殺すって。」

 

二十倍界王拳を使ったライは力任せに十七号を地上に投げ飛ばした。

 

「まだまだ行くぞッ!」

 

「チッ!」

 

急降下の勢いを乗せた攻撃が辛うじて転がってよけた十七号のわきの地面を抉る。

 

「お前っ!そんな力があったとはな!」

 

先ほどまであった油断はない。全力で十七号は目の前の敵と戦う。

 

「まだまだいくぞ!」

 

連続のラッシュで追い込んでいく。

 

ドドドドドドドドド!

 

「そぉらっ!」

 

ドーーン!

 

 

「十七号!」

 

「邪魔はさせないぞ!」

 

援護に向かおうとする十八号を超サイヤ人化した悟飯が止める。

 

「ッ!うっとおしいんだよ雑魚の癖に!」

 

二人が組み合う。単純なパワーではまだ十八号の方が上だ。しかしそれは、悟飯たちが敵わないということを意味しない。

 

グッ

 

力を急に抜き巴投げの形で十八号の下に滑り込む。そんなことをした理由は一つだけ。下で十七号を吹っ飛ばしたライが飛び上がっていたからだ。

 

「こ、こいつっ!」

 

どしゃっ!

 

「魔閃光!」

 

鈍い音とともに蹴り飛ばした十八号に追撃する形で悟飯が気功波を放つ。しかし十八号はすぐに態勢を立て直し回避した。

 

「すいません、一瞬遅れました。」

 

「いや、相手の復帰が早かっただけだ。悟飯の落ち度じゃない。」

 

そう言って十八号に向き直った二人の死角を突いて、十七号の声が響く。

 

「そうそう、爪が甘いんだよ、お前は。」

 

「ッ!?」

 

後ろを見れば既に振りかぶっている十七号。素早く界王拳を二十倍に引き上げ直そうと、オーラを紅く染めて攻撃を受けるが間に合わない。悟飯は吹き飛ばされライも攻撃を受ける。

 

「うぐっ!なめるなぁ!」

 

反撃を仕掛けようとする攻撃を十八号の気功波が防ぐ。

 

「ぐはっ!」

 

シュドドドドドド!

 

二人のエネルギー波が連続で襲い掛かる。

 

「波アッ!」

 

気合砲で気弾を全て弾き飛ばす。

 

「おお怖い。お前はいっつも頭に血がのぼって」

 

「ライさん!」

 

地上に落とされた悟飯がライを助けようと飛び上がってきた。それを十八号が返り討ちにして再び叩き落す。

 

「だから俺に勝てない。」

 

「うがっ!」

 

ヒュゥン!ボウッ!

 

殴り飛ばされるが界王拳を全開にしてすぐに反撃をする。

 

「なめるなよ、人造人間がっ!」

 

ドン!ドドン!バシッ!

 

十七号は先ほどまでと違い防御に徹していた。左腕の殴打を両手で受け止められる。ダメージがないわけではないはずだ。実際に彼の顔は歪んでいる。

 

キーン!バー-ン!

 

それならばと右手に気功波を溜めて放つ。左手を掴んでいた手は離されて十七号は吹き飛んだ。

 

 

十七号をライが攻め立てているその時、地上に叩き落された悟飯と十八号の戦いは十八号優位で進んでいる。

 

「うらららららら!」

 

ババババババ!

 

攻撃を数発もらい、これ以上の追撃は避けなければとけん制にしては過剰すぎる力を使って十八号と距離を取る。しかしそうでもしなければ距離を取ることもままならない。

 

「はあっ、はあっ…」

 

息を切らし、動悸が収まらない。いつもはもう少し対等に戦えていたはずなのに。どうして、今日に限って、あの人が戦ってくれているときに限って僕はこんなにも押されているんだろう。

 

「不思議そうな顔だねえ。いつもなら二人相手に時間稼ぎができたのに、どうして今回に限って私相手にすら時間稼ぎができないのか。」

 

「んなっ!」

 

ヒュゥン!ドォォン!

 

図星を突かれて動揺のままに気功波を放つ。すぐ後ろには十八号がいた。

 

「随分楽しかったよ。自分は地球人を守れているとそう考えているお前を見るのは滑稽だった。なぜお前の存在が地球人にとって噂程度にしかなっていないか、考えたことはないかい?」

 

「ッ!」

 

飛び上がる。地上には既に十八号はいない。心臓が締め付けられるような、先ほどとは全く違う理由で動悸が収まらない。

 

「私たちが殺して回っていたからさ。お前に助けられた人間たちはあの世でお前を恨んでるんじゃないかい、中途半端に希望を見せたことを。」

 

「そ、そんな、嘘だッ!すべて無駄だったなんてそんなこと、あるはずがない!!」

 

絶叫が響く。痛感する。自分がずっと手加減されていたということ。遊ばれていただけだということを。

 

「うがっ!」

 

地面に突き落とされ土煙が舞う。

 

「遊び相手が減ってしまうけど、これからはライをおもちゃにすればいい。」

 

「悟飯ッ!」

 

十七号と戦っていたライが悟飯の気が大きく乱れたことを感知してすっ飛ばしてくる。全力の蹴りを肘で受け止めた。

 

「お前のパワーアップは一時的なものだろう?」

 

「!」

 

自分でも気づいていなかった。その弱点を十七号に、十八号に暴かれる。界王拳と人狼化のダブルパワーアップに浮かれていて冷静になれていなかった。今も二十倍のままに蹴り飛ばそうとしたのにそれを維持できなかった。だからこそ受け止められている。

 

ドン!ドン!

 

「ハア、ハア…悟飯無事か!?」

 

余裕そうに講釈を垂れる十八号を二度の蹴りで吹き飛ばし悟飯の方を向く。一目見て打ちひしがれていることが伝わる。

 

「…はいっ!」

 

しかし声をかけられただけで冷静さを多少なりとも持ち直した。

 

「さっきよりも全開でいられる時間が短くなってるんじゃないか?」

 

気功波で吹き飛ばしたはずの十七号がもう接近してきている。

 

「こいつっ!」

 

ドン、ドン、ドンドンドン!

 

高速移動をしてぶつかり合う。悟飯に視線を一瞬向けるが悟飯は十八号を食い止めているようだった。

 

「さっきと状況が変わってしまったなあ!」

 

ドン!ドン!ドンドンドン!

 

ライはここまでの戦いで二十倍界王拳を一瞬引き上げるだけで限界になるような状態だ。二十倍まで引き上げられなければ逆に圧倒されてしまう。

 

「さっさとくたばれよ!」

 

一瞬のパワーアップ、その針の意図を通すような攻撃を決めて、十七号が吹っ飛ぶ。しかし彼の表情にある余裕は全く崩れない。

 

「お前如きがこの最強の人造人間に勝つなんて無理に決まっているだろう。」

 

服に着いた汚れを払ってライに冷たく言い放つ。

 

ドガン!

 

「ゴハッ!」

 

「そうそう、お前達は身の程をわきまえないからよくない。」

 

そう言う言葉に呼応するように悟飯が十八号にやられて倒れる。血を吐いた。意識も朦朧としている。

 

「さてと、孫悟飯の代わりもできたし、しばらく生かしてやる。」

 

「なんだと…?」

 

「お前は孫悟飯よりもずっといい遊び相手になってくれそうだからな。」

 

何を言っているか理解する。同時に、孫悟飯が今まで死なないでいた理由も。悟飯は引き際を見極められる賢い子だと思っていたがそんなことはなかったらしい。その無謀さを、その強さを、危うく思うと同時に嬉しくも思ってしまう。

 

ボゴッ!

 

決意を固める。そしてその決意を声に出す。もう悟飯には届かないとしても。

 

「この子は殺させない。必ず守る。たとえこの身が朽ち果てようとも。」

 

普通の子供のように生きて欲しかった。それをさせられないのは私達大人が不甲斐ないせいだ。だからせめて悟飯を守るのは私の義務だ。

 

「界王拳、二十倍!」

 

再び界王拳を二十倍まで引き上げる。

 

「満身創痍でその技を使ったところでどうにもならないと思うけどなあ。」

 

「なめるなよ、人造人間どもが!」

 

シュゥゥン!

 

身体をまとうオーラが赤く染まる。悟飯が倒れてしまった今、二人を相手にしなければならない。二十倍界王拳を使っても二人相手には五分だ。

 

「はあぁっ!」

 

ドンッ!

 

二十倍界王拳の拳を十八号が両腕で受け止める。その隙に十七号が繰り出す拳を左手で受け止める。両腕がふさがったのを皮切りに、二人の人造人間が連続で攻撃を入れる。引き気味にそれらすべてを捌く。

 

シュッ!ガッ!

 

「なにッ!?」

 

十七号の腕をつかみできるだけ遠くへと投げ飛ばす。

 

「十七号!」

 

「隙だらけだぞクズ!」

 

ライの一撃が鳩尾めがけて突き出される。

 

パシッ!

 

「知ってるんだよ。覚悟を決めたり窮地に追い込まれた人間ってのは普段は到底出せないような力を引き出せる。…今のお前みたいに。」

 

渾身の右拳を両手を使って防いでいる。余裕で受け止めたわけではないはずだ、腕が震えている。されど彼女はライの一撃を受けて残忍な笑みを浮かべている。

 

「二人相手によく諸刃の技を使い潰せたねえ。相当体に負担がかかっているんだろう?」

 

図星だ。もう二十倍界王拳を維持していられない。ライからオーラが消える。十八号が勝利を確信した顔になった。

 

「チェックメイトだな。」

 

遠くに投げ飛ばしたはずなのに、十七号が気づけば背後に立っていた。ボロボロの状態で使った二十倍界王拳はきちんと効果を発揮してはくれなかったか、あるいは元の力がもう大してなかっただけか。隠し玉をこの二人にあてても状況は好転しないだろう。

 

「お前だけなら悟飯を囮に逃げれたかもしれないのに、下手に意地を張ったおかげで残念だったなあ。」

 

「そんなことをするくらいなら死んだ方がましだ。」

 

「ふむ、それならお前だけ見逃してやることにしてみるか。」

 

「ッッ!?」

 

動揺などしている暇はないと一瞬のうちに自分を叱咤する。そこからの行動は早かった。地中に潜ませていた繰気弾を悟飯のめがけて進ませる。

 

「心臓を踏みつぶして止めとしようか!」

 

十七号の脚が悟飯の胸を貫こうとするとき地中から出てきた繰気弾が()()を上空に吹き飛ばす。

 

ボゴッ!

 

「波アッ!!」

 

空中に飛び上がった悟飯に向かって気合砲を放つ。方角はカプセルコーポレーション。生きてさえいればどうにかなるだろう。

 

「フン!」

 

ドンッ!

 

「オゴッ!」

 

その隙を突かれないはずもなく、十八号からの攻撃をもろに食らう。意識を失った。

 

「逃がしてしまったか。おい、十八号!そんなボロボロのやつくらい抑えて置けよ。」

 

「すまないねえ。ここまで往生際が悪いとは思わなかったんだ。」

 

「まあ確かに防ぐほうが難しいか。これからは遊び相手が二人になるんだ。そう悪いことでもない。」

 

「殺しといたほうがいいんじゃないかい?孫悟飯があいつ程度に強くなったら面倒だ。」

 

さあ行こうと空中に飛び上がった十七号に十八号が言うがその言葉を聞いた十七号は首を振る。

 

「やつを殺したらそれこそやつの本懐を遂げたことになるだろ?それは癪じゃないか。次殺すのは孫悟飯だ。面白そうじゃないか、孫悟飯が死んだことをしったライの顔を見るのがさ。」

 

「あはっ、そいつは傑作だ!」

 

二人の悪魔の声が響き渡る。




四十六話が大きな転換点となる要素を含んでるのでここにきて投稿を躊躇してしまっています。最遅でも今月中に更新するのでもう少しだけ待ってください。
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