ドラゴンボールZ・オルタナティブ~世界線c~   作:三軒過歩

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(第四十六話)新しい過去

「来たね。トランクス。」

 

トランクスを見るとライは満月を瞳に映す。ライの姿が人のそれから狼のそれに変わる。

 

「これがライさんの全力…」

 

「せっかくだから少しだけ手合わせしてみるか?」

 

「是非、お願いします。」

 

トランクスも超サイヤ人に変身して構える。

 

「行きます!」ドン!

 

トランクスが繰り出す拳をライは真っ向から受ける。

 

「なっ!」

 

驚きも一瞬、すぐに連続で攻撃を出していく。

 

「うんうん。超サイヤ人になってもうまく力をコントロールできるようになってきたな。」

 

それをすべて捌きながら余裕にそう言う。

 

「まだまだあ!」

 

さらに速度を上げた連撃も簡単に防ぎきる。

 

「焦ると動きが悪くなるぞ。」

 

速度を上げた結果動きが単調になる。気づけばいつかのように組み伏せられていた。

 

「やっぱり修業の成果が出てるな。これなら狼化しなければ負けるかもしれない。」

 

「俺はまだ、いつかと全く変わってません。」

 

数ヶ月前と全く同じように組み伏せられるのは相当なことだ。相手をそうできるように誘導しないといけない。実力差がかなり無ければできないことだ。だからこそ、トランクスが後ろ向きなことを言う。

 

「ああ、全く同じように組み伏せた。()()()()()()()、だ。」

 

「!」ピシュン!ボンッ!

 

その言葉に気づいたようにトランクスは手から気弾を放つ。気功波と違い、起爆する。

 

「やっぱり修業の成果が出てる。」

 

顔を煤で黒くしながら笑顔でそう言い放った。

 

そうして日々は過ぎて行った。

 

 

 

「今日の修業はここまでにしよう。」

 

「はい。ありがとうございました!」

 

三年間でトランクスの体は少年のそれから青年のそれに変わった。徒手空拳で戦うやりかただけでなく、ブルマがタイムマシンを作る傍ら開発した業物の剣を手に入れたために剣術も身に着け始めていた。

 

「本当にその剣は固いよな。俺と戦って折れないんだから。」

 

「母さん曰く、人類の英知の結晶、らしいですからね。」

 

剣の手入れをしながらトランクスが応える。

 

「人類の英知というより、ブルマの英知だろ。」

 

「ははは、そうかもしれませんね。」

 

この二人の戦いでも折れない剣はトランクスの技量もあるのかもしれないが、相当な硬度がないとできないことだ。

 

「そう言えばタイムマシンはまだできないのか。」

 

「ええ。機構自体はかなり前からできているらしいんですが、それを過去に飛ばしうる燃料にすごく時間が掛かるそうです。でもめどは立ってるみたいですよ。」

 

タイムマシンの作成はベジータが死んだその日から取り掛かり始めた。燃料が課題だったらしく、皮肉なことに悟飯が死んで数日後に燃料を作る画期的な方法を見つけれたらしい。トランクスは努めて明るく言う。

 

「それだとあと何年くらいかかりそうなんだ?」

 

「試行錯誤してたみたいですけど、最近ようやく燃料の生成に成功した見たいで…」

 

そこで少し言いよどむ。

 

「あと、一年らしいです。」

 

それを聞いたライは少し目を見開くもすぐに笑った。

 

「やつらが現れてからもう十五年は経った。今更あと一年くらいなんだって言うんだ。」

 

「っ!そうですよね!それにこの分なら俺達が人造人間を倒せるようになってるかもしれませし!」

 

「そうだな。そうだと…いいな。」

 

 

 

「久しぶりねライ。悟飯君もそうだったけれど、ライも来いと言えばちゃんと来てくれるからこっちも準備のし甲斐があるわ。」

 

「それは良かった。こっちも美味しい夕飯がごちそうになれてありがたい限りだよ。」

 

ブルマは月に一度くらいのペースでライを夕飯に呼んでいる。

 

「もう食材の流通は落ちるとこまで落ちちゃったからね、でもその分、技術で何とかしているつもりよ。」

 

三人で食卓を囲む。いつもより少しだけ豪華で賑やかな時間。

 

「そう言えば母さん、タイムマシンが完成して過去を変えたら、この世界はどうなるんですか?」

 

タイムマシンが完成するめどが立ち、疑問に思っていたことを聞く。

 

「この時代は特に何も変わらないわよ。どんなに過去を改変しても世界が二つに分岐するだけで、この世界に影響はないわ。」

 

「じゃあどうしてタイムマシンを作ろうとしてるんだ?」

 

「過去に戻って人造人間の弱点を知ることができればこっちでも人造人間を倒せるじゃない。それにどうなってもこんな時代はもう繰り返したくないでしょ。」

 

「それはまあ、確かに。でも、過去に戻って何するんだ。ベジータやピッコロたちに戦いに行くなと言ってもあいつら絶対聞かないぞ。…多分俺も。」

 

自分だけなら、戦いに行かないだろうが、もしピッコロ達が戦いに行くとなれば必ずついて行くだろう。

 

「だから、タイムマシンで行くのは人造人間が現れる三年前、孫君が帰ってきたタイミングにするのよ。そして人造人間の出現を伝えて…」

 

そう言ってブルマはカプセルを取り出す。

 

「孫君を襲った病魔を払う特効薬を渡すの。」

 

「ああ、なるほど」

 

納得した表情のライとは対照的にトランクスの顔には疑問が残っている。

 

「でもたった三年じゃ、あいつらには勝てないんじゃないかな。その、孫さんが生きていたって多分結果は変わらないと思うし。もちろん薬を渡すことには賛成なんだけど。」

 

「トランクスは悟空に会ったことないからな。でも、会えば分かるさ。悟空がいれば何とかしてくれる、何とかなるってな。」

 

「そうよ。不思議な力を持った人なのよ、孫君は。」

 

「そう…ですか。」

 

釈然としないながらもトランクスは頷いた。

 

 

 

あれから一年の月日が流れた。ライもトランクスも人造人間とは戦わず、隠れて修業を重ねていた。

 

「これでようやく完成ね。長かったし、燃料に時間が掛かりすぎるからぶっつけ本番だけど、理論上は完璧だから大丈夫なはずよ。」

 

「これで過去に飛べるんですね。誰が行くんですか?」

 

トランクスがブルマに問うと、ブルマはあきれた顔で言う。

 

「何言ってんのよ。貴方が行くに決まってるでしょ。」

 

「まあ、トランクスが行くのが妥当だろうな。」

 

ライもさも当然のように言う。

 

「え、なんでですか、僕が行くより、母さんやライさんの方が良いんじゃないですか、説明もスムーズになるでしょうし、懐かしい…」

 

そこまで言って言いよどむ、昔の仲間に会いに行かせることが残酷なことであるかもしれないと考え至った。それを気に病まないように努めて明るく言う。

 

「三年後には俺もついて行く。戦力が少しでも多いほうがいいからな。でも今回はお前だけ言ってこい。」

 

同じ時代に同じ人間が存在すると、世界が思わぬ方向に歪みやすい。同じ人間に自我があればその危険性はさらに高い。トランクスが生まれた時期はその意味ではベストタイミングだったと言える。

 

「分かりました。渡さなければいけないのはこの特効薬、伝えるべきことは三年後の五月十二日南の都南西九キロ地点で人造人間が襲来、でしたね。」

 

「そうそう、孫君以外に会わないように注意するのよ。説明がもっと面倒になるんだから。」

 

「もちろんです。」

 

そう言ってトランクスがタイムマシンに乗り込んだ。ブルマによる使い方の説明を受けていく。

 

「じゃあ、このメモリで調節すればいいんですね。何時に飛べばいいんですか?」

 

「その機械も完璧じゃなくて、少なくとも数時間、下手したら十時間単位で狙った過去からずれる可能性があるから日付を設定したら時間は正午に設定しておけばいいわ。」

 

「まあ、早く着きすぎたら何もしないで待ってればいいだけだし、遅く着いても悟空が心臓病に侵されるまでには余裕もあるから大丈夫だろ。」

 

「分かりました。では、行ってきます。」

 

「ちょっと待て、トランクス。まあ、気をまわしすぎると思うが、一応な…」

 

トランクスを呼び止め、ライが何事かを伝えた後に今度こそトランクスがタイムマシンに乗る。二人に見送られ、トランクスは過去に向かった。

 

 

 

「少し早く着きすぎちゃったみたいだな。」

 

タイムマシンの計器を眺めながらトランクスはため息をこぼす。

 

「さて、早く孫さんに会いに行きたいんだけど…」

 

そう言いながらトランクスは気を探っていく。

 

(この気は…フリーザ達一味か、ちょうど地球に着いたらしいけど、変だな、悟空さんの宇宙船がつくのはあと三時間後のはずだ。まさか、俺がこの時代に来た、その事実だけで過去は変わってしまったのか!?)

 

トランクスに焦りが生まれる。フリーザ達など今のトランクスの敵ではないが、この時代だと悟空以外には倒せない強敵であるとも聞いている。この状況に陥ったトランクスの判断は早い。そして場面は戻る。

 

 

 

「それじゃあ僕はそろそろ戻ります。母さんにちゃんと渡せたことを伝えてあげたいし。」

 

未来のことを伝え、特効薬を渡したトランクスは元居た時代に戻ろうとしていた。

 

「そうだ、聞きそびれていたことがあったんですが、いいですか。」

 

「おう、どうしたんだ。」

 

「あの、ライさん、あそこにいるライさんは、女性、ですか?」

 

「?声聞けば分かるだろ。あいつは女だぞ。会った頃はどっちか分かりにくい見た目だったけど、大人になっても女は声が変わらないみたいだからな。」

 

「そ、そうですか。そうですよね。失礼しました。それでは今度こそ戻ります。」

 

「おう、ブルマにもよろしく言っといてくれ。変わるといいな。未来。」

 

「はい。悟空さんの強さを知って、少し希望が持てました。」

 

「また会えるんか。」

 

「もう一度往復分のエネルギーがたまって、その時まで生きていたら必ず応援に行きます。」

 

「生きろよ、こっちもそのつもりで三年間、たっぷりと修業するさ。」

 

それを聞いてトランクスは飛び立った。




ライが男性なのか女性なのか。それを今までずっとぼかしてきたつもりです。この設定を思いついたときにこれをみんなに共有したいと思ったのがこの作品が生まれたきっかけです。また一から読み始めたくなったりしませんか?そう思ってくれればうれしいです。先を越されたという発言の意味のとらえ方が変わってくるでしょう?
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