「驚いたぜ。ミライ。三年前にトランクスはお前のことを死んだと伝えていたが、まさか生きていたとはな。」
ミライを見据えたままそう話す。
「何言ってんだよ。俺は銀河パトロールの…」
ミライが否定しようとする言葉に重ねてピッコロが付け加える。
「精神と時の部屋には使用制限があるって言ったな。その二つ目がこの空間には二人以上の人間は入れないってことだ。二人以上いると本来ならあの扉は閉まらない。」
扉に視線を向けてそう言う。間違いなく扉は閉まっていた。
「この部屋の改良がされていたとか、他に原因があるんじゃないか。」
なおも食い下がるミライに畳みかける。
「この人数制限には例外があってな。同一人物なら何人でも入ることができるんだよ。」
先代の神からこの場所の存在を聞いたとき、興味本位で扉を閉めたまま人数制限を超えたらどうなるのか、他にもいろんな実験を試みたのだ。ナメック星人特有の分身能力だが、そんなことをやっていたからこそ、自分が二人になってしまったのかもしれないと今更思う。
「この部屋には俺とライ、そしてミライしかいない。であればお前の正体はおのずと出てくるという物だ。お前は、ミライは…」
ライだったんだな、と続けようとするピッコロをライが止める。
「ピッコロ、それ以上はいけません。貴方は何も気づいてない。そう言うことにしておかなければミライとトランクスがこの時代に居れる時間が無くなってしまうんです。」
ミライの本当の正体に気づく者が増えれば増えるほど、ミライとトランクスがこの世界に入れる時間は短くなる。人造人間の問題が解決するまでこの時代に入れるとは限らなくなってくる。
「ライ、無駄だ。もうピッコロは気づいてしまっている。…良く気づいたな。俺がライだってことに。」
「ッ!」
ライを押しとどめ、ミライは正体を明かす。
「ふん、お前等地球人は性別なんてものにこだわってるからな。その偏見が無ければ見抜くのはたやすい。」
「これは盲点だった。ナメック星人らしい視点だ。」
「そうするとミライの正体に気づいたのはこれで二人、いえ、神様とポポさんも気づいているでしょうからこれで四人ですか。」
この部屋に向かうライ達を見送ったということは人数制限に引っかからないと知っていたからに他ならない。
「そうなるとそろそろまずいな。これ以上バレればこの時代に居れる時間が極端に短くなる。」
「心配するな。俺が神のやろうと同化すれば三人に減る。」
そう話しながらピッコロは分身した。
「まあ、お前が正体を隠す理由も時間制限があるなら仕方ない。何かあったら正体をごまかす協力はしてやる。さあ、憂さ晴らしを始めるぞ。」
*
「てりゃりゃりゃ!たあー-!」
亀ハウスの上空で悟飯の連撃がヤムチャを襲う。それを界王拳を使って戦闘力の底上げをした状態で捌ききる。
「悟空やピッコロはもっと鋭いぞ!」
そう言い放って悟飯の肩口に一撃を食らわせようとするがクリリンの気功波によってそれを防がれる。彼もまた界王拳を使っている。
「流石だな悟飯。今の攻撃を避けるとは。」
ヤムチャはともかく悟飯にまでよけられて感心したように言う。
「一対二の戦い方はお父さんとピッコロさんにたくさん鍛えてもらいましたから!」
二人組の人造人間に万一単独で遭遇してしまった時のために仕込まれている。
「じゃあこういうのはどうだ?」
そう言うとクリリンの身体が分身して三人になる。
「天津飯の技だ、残念ながら完全に再現は出来ないんだけどな。」
「久しぶりに見たぜ。いうなれば三身の拳ってところか。」
技の弱点を知っているヤムチャが目線で合図を送る。弱点を補うようにヤムチャが立ち回ることを察する。
「三人に分身ってそんなあ。」
「クリリンにばっかり気を取られていいのかな!」
「うわっ!」
そう言いながら攻撃を仕掛ける。驚きの声をあげながらも動きは良い。矢継ぎ早にせめてクリリンの気の低下を気づかせない。
「「「かめはめ、波ー!」」」
三重に攻めてくるかめはめ波も何とか避けきる。これは敢えてだ。そうすることによって威力の低下に気づかせないために。
「隙ができたぞっ!」ドンッ!
「おわっ!」どぼぉぉん!
海中に落とされ水しぶきが舞う。
「流石に初見では対応できないか。」
「ヤムチャさんの戦い方がうますぎますよ。」
「あれじゃあ気づけないのも無理ないです。」
ヤムチャとクリリンの分身が話していると水中から三人のクリリンとヤムチャに向かって気功波が放たれる。
「おっと危ない、危な…」
「そこだあ!」ガン!
「へぶっ!」
「おぶっ!」
気功波の陽動にまんまと引っ掛かり、もろに食らった分身の一人はもう一人の分身に向かって蹴り飛ばされている。分身が一人減った。
「動きが悪くなってます!それが弱点なんでしょう!?」
「よく見抜いたな。正解だ。」
三身の拳を解き一人に戻ったところで再び三すくみの状態が出来上がった。三人の修業はまだまだ続く。
*
「やはり十九号の吸収装置は生きておる。それにここに残ったエネルギーさえあれば…!感謝するぞベジータ。貴様が十九号の腕を切り離していたことをな!」
誰もいない荒野でゲロが一人そう話す。この場は悟空と十九号が戦った場所だ。
「研究所を破壊してくれたあの青二才も結果からみればよかった。ベジータと一緒に礼はたっぷりとしてやる…!」
不敵に笑いゲロは再び研究所に戻る。
*
「ベジータさん、俺に修業をつけてください!」
ベジータに追いついたトランクスはそう頼み込むがベジータは崖上で腕を組んだまま目障りだ失せろの一点張りだ。しかも何をするでもない。
(ライさんが修業をつけてもらえと言ったんだ、きっとベジータさんの気が変わるのを待つ意味があるはず…!)
そうこうしているうちに時間は過ぎゆく。
*
「むう、やはり地下にある器具だけでは限界があるな。十九号の左腕が取ったベジータのエネルギーをこちらに移すためにはやはりこいつは諦めるしかないな。」
地下の隠してあった研究所に戻ったゲロはそう言いながらスーパーコンピューターにさせていた研究、セルを見てそう判断する。
「まあもう良いことか。この左腕をわしに付け直し、ベジータ達からエネルギーを奪えれば奴らを超えることなど造作もない。」
不敵に笑う。彼の企みに気づく者は今だ現れない。
*
「そらそらどうした!十年以上も修業していたわりには大したことないなあ!」
二人に分身したピッコロはミライとライ一人ずつに分身をあてがい、一対一を二つ作って戦っていた。分裂して戦闘力が二分されているのに互角の戦いを展開される。
「何年も修業したからこそ出せる戦術が通用しないのは自信を無くすな!」
そう叫びつつ攻撃を足で受け止める。
「当然だろう。俺には父であり俺自身である大魔王の記憶があるんだからな。」
「厚みが違うって話か。」
「そう言うことだ!」
強烈な足蹴にミライは吹っ飛ばされる。すぐさま追撃を仕掛けてくる。
「でもまっすぐだ。」
ピッコロが追い付くまでのわずかな間、ミライは気功波を両手で二つ放つ。一つは目の前のピッコロに、もう一つは少し離れたところでライと戦っているピッコロに。
「ぐわっ!」
予想外の攻撃にライと戦っていたピッコロに隙ができる。
「!」
驚きも一瞬、すぐさまライは行動に移す。
「波っ!」
「調子に乗るなよ!」
何とか態勢を立て直したピッコロがライの攻撃を受け止める。
「何か反則みたいな勝ち方ですけど、まあ経験の差ってことですかね。」
拳を受け止めたピッコロに対してライの足から気功波が放たれた。
「ぐ…」
ライともう一人のピッコロ相手に横やりを入れたミライはそこでできた隙を的確に突かれ防戦一方だった。
「まさか横やりを入れる余裕があったとはな。何のための修業だ。おかげで向こうのピッコロはやられてしまった。」
「面白いこと言うな。憂さ晴らしって言ってただろ?」
「チッ!」
ピッコロが舌打ちをした後気弾がピッコロに向かって迫ってくる。しかしそれは予期していたか。ピッコロがその気弾を弾く。
「一対一の戦いに水を差すなよ。ライ。」
「いや、憂さ晴らしなら私が加勢してもいいんじゃないですか?」
戦闘力を半減した体で二対一では流石に勝てず、決着までそう時間はかからなかった。
*
「四身の拳、いえ、この場合は二身の拳ですかね。この技の弱点は力が分けられるのはもちろんのこと、分身同士が接しないと戻れないって言う弱点もあります。」
「自分が使えるわけでもないのによく知ってるな。」
「クリリンとも一緒に修業しましたから。」
痛感する。この二人のライは言っているんだ。力で劣っていても、自分たちもあなたに修業をつけられるのだ、と。
「お前は俺達や天津飯達よりも一段上の、悟空やベジータに迫る実力を持っている。それに神様と同化すれば間違いなく悟空達よりも強くなるだろう。プレッシャーがあるのも理解できるし、かつて大魔王として世界を恐怖に陥れた記憶と今の自分で葛藤するのも分かるが、お前はピッコロ大魔王じゃなくてピッコロなんだよ。そんなに気負うこともない。」
「大人びてますけど、あなたはまだ地球人基準だと少年ですから。もっと私達を頼ってください。」
ピッコロはまだ十三歳悟飯と三つしか変わらないのだ。そう言ってライ達がピッコロに片手ずつ手を差し伸べる。
「けっ!さんざん俺に頼っておきながら、今更ガキ扱いするんじゃねえよ。」
言葉は不機嫌だが声音は好意的に、ピッコロは二人の手を取った。
「じゃあ、今度は修業を始めるか。」
*
「また来やがったのか。いつ来ても無駄だ。失せろ。」
「そう言うわけには行きません。このまま何もしないでいていいわけがない。悟空さんが完治するまで毎日来ますよ。」
そう言うトランクスは一日一時間のわずかな仮眠時間を除いて常にベジータの後ろでベジータが応えてくれるのを待っている。
「チッ!」
ベジータは盛大に舌打ちを打ちつつ、組んでいた腕を解き、気弾を後ろに放つ。
「うわっ!」
急に撃ってきた気功波をトランクスがぎりぎり避けるとその気弾が爆発する音がしない。代わりに声が聞こえてきた。
「ほう、このモードの時のわしには気がないはずなのだが、良く気づいたな。」
「ふん!確かにお前には気がないが、もともと俺は気などという物を使って敵を感知していないかったんだ。わずかに漏れる足音、風の吹き方、そういうので気づけるんだよ。」
「人造人間!お前、生きていたのか。」
ゲロの存在に気が付いたトランクスが後ろに飛びのく。
「貴様ごときの気功波でこのわしがやられるはずなかろう。なあ、トランクス。」
「どうして俺の名前を!?」
ゲロがトランクスの名を知る機会はなかった。その問いにゲロは指先をトランクスの後ろを指して答える。
「超小型のスパイロボ。貴様等のことはずっと前から監視していた。」
自身もそのスパイロボの映像を見たのは地下の研究所で腕を直したつい先日ながら、既にあらかたの情報は知り得た。
「だから知っているんだ。名乗られたことが無くても。」
ドン!
黙って聞いていたベジータが超サイヤ人化する。
「では、これから俺に破壊されることも知っているんだろうな。」
「もちろん、お前たちがこのわしのエネルギーになることを知っている。」
二人が構えをとる。トランクスも超サイヤ人化し構えをとろうとするとベジータから鋭い声がかかる。
「一対一の戦いに手を出すんじゃないぞ、
名前を知られたことで未来の息子であることがバレた。そのことへの動揺も手伝って、ベジータの言葉に従い、構えを解いて一歩下がってしまう。
「さあ、始めようか。ガラクタ人形。」
「そのガラクタと舐め腐った相手に貴様は負けるんだ。」
そう言い放った瞬間、ゲロから、気がないはずの人造人間から、ベジータの気があふれ出す。金色のオーラをまとう。
「んなっ!この気は、父さんの!?」
トランクスが驚きに顔を染めるがベジータは不機嫌そうに吐き捨てる。
「貴様、その手はあの時の人造人間の物だな。なるほどな、そう言うことか。貴様は吸い取ったやつの気を自分のものにできる。」
その言葉を聞いたトランクスが再び超サイヤ人化しベジータに並び立つ。
「ベジータさん、俺も一緒に戦います!ベジータさんの力がゲロの元の力に加えられていても俺達二人で戦えば勝てます!」
「失せろ!お前なんかお呼びじゃねえんだよ。俺の気が取られてるっていっても全てじゃねえ。こいつを壊すくらい俺一人で充分だ!」
「なっなにを…くだらないプライドを持ってやられたら元も子もないでしょう!今は戦力を減らすわけには行かないんだ!」
「黙れ!」
凄まじい剣幕に圧倒される。
「俺はな、地球人が殺されようが、地球がどうなろうが、関係ないんだよ。俺は、俺よりも強いというやつに分からせてやるだけだ。
「か、関係ないって…?」
拳を強く握る。悟飯さんもライさんもみんなが平和に暮らせるように二十年以上も足掻いていた。もちろんトランクスも、物心がついたころから修業に明け暮れて、そんな二人を間近で見てきている。それがよりによって自分の父から、関係ないと言われる。
「敵を前にして随分と余裕だな。」
ただ黙って二人の言い合いを見ていたわけではない。隙を伺っていた。実際にゲロはこの上なく的確にトランクスを急襲する。
「しまっ…!」
左手で首筋を掴まれたトランクスが何とか手を放そうともがくが力が吸われていく上に最大パワーで負けているトランクスにはどうにもできない。ベジータは距離を取るだけで助けようともしなかった。
「…気を抑えたか。」
数瞬後にはトランクスの超化は解けさらに数秒後にトランクスは気を失った。振りほどけないことを確信したトランクスは少しでも取られる気を減らそうとすぐに気を抑えて相手のパワーアップを最小限にした。
「邪魔者は消えた。さあ、今度こそ貴様をスクラップにしてやるぜ。」
「その自信が、自分を追い詰めているとも知らずにな。感謝するぞベジータ。貴様のおかげで私はさらなる強さを手に入れられるのだからな。」
二人の戦いが始まる。
気を取られている間に気を抑えるのは回復手段がない状態では敗北を意味します。掴まれてベジータの助力がないことに気づいてベジータの負担にならないようにするトランクスは聖人か何かですね。
さて、吸われる量が少ないといっても全体の20%くらいはとられます。サイヤ人組は超化を解除するだけで全力の2%になるので取られた気は20%×2%=40%!嘘です。0.4%。ベジータとゲロの戦いでは誤差です。