「ミライ、やっぱり見つけられなかったんですね。」
「ドクターゲロにも人間レベルの気はあるはずだ。それをたどれば、と思ったんだがな。」
ミライは未来世界で人造人間十七号と十八号の力の人間としてのわずかな気を感知し、逃げ続けていた。しかし、ゲロは完全な機械タイプだった。ゲロの残滓は脳だけだ。人間の気よりもはるかに小さい気でミライでも追いきれない。さらに言えば、ドクターゲロには気を探知するレーダーがある。気を一般人レベルに抑えての移動は制限が多すぎた。
「では、ピッコロと合流して人造人間に備えましょう。」
「ピッコロじゃなくて孫悟空のところに合流してくれないか。」
「「ッッッ!!」」
急に割って入ってきた声に二人は戦慄する。特にミライの驚きはライの比ではなかった。
「馬鹿な、この距離になるまで気づけないわけがない!」
未来世界においてライは十七号と十八号のわずかな気を感知し逃亡しながら修業をしていた。それがこうも接近されるまで気づかない、この二人の気が未来の二人とは性質が異なっていることを意味する。
「仕方ないです、こいつらには気がほとんどないんですから感知するのは至難の業です。しかし…」
飛びのいて構えをとるライ達に対して十七号は余裕ぶって構えすら取らない。
「孫悟空の居場所を教えてくれればとりあえずはお前たちに手出しはしないぞ?」
「そんなこと言うわけないでしょう。」
毅然と言い放つ。
「では、力ずくでも聞き出してやろう。死ぬ前にその強情な口を割るんだぞ?お前たちの仲間と戦った時のような手加減はしない。」
「冗談、返り討ちにしてやる…!」
そうライが一歩前に出てそう宣言した直後、轟音が響き渡る。ミライが不意を突いて十六号を襲ったからだ。
ドガアアン!
「無駄なことはやめろ。」
しかし、それは不意打ちの体を為していたのだろうか、ライの気功波は簡単に防がれる。
「古いタイプだからと侮ったつもりはなかったんですけど、これはどうやら想像以上みたいですね。」
冷汗が流れる。
「おいおい、そんなに早まるなよ。お前らごとき俺一人で充分なんだ、二人に手出しはさせないから少しは俺を楽しませてくれ。」
そういって二対一を許容する十七号をしかし、十八号が静止する。
「ちょっと待ってよ十七号、自分ばっかり楽しんじゃってさ。わざわざ無駄なことして孫悟空を探したんだ、少しくらいわたしにも鬱憤晴らしをさせてよ。」
「む?それを言われると弱いな。なら二対二といくか。十六号はどうする?お前が行くなら俺は見物するが。」
「俺は孫悟空を殺すために作られた。そいつらはどうでもいい。」
「そうか、じゃあこいつらは俺達がもらっていいな。」
残酷なまでに無邪気な笑顔で十七号はミライを見た。
「さっきライが言っただろう。返り討ちにしてやる、とな。」
そう言ってミライはパワーボールを作った。
*
「ライ達は無事だと良いんだけどな。」
「ミライの気は高まっていないから戦闘はしていない。それにライは悟空が復活したからこっちに戻ってくるはずだ。心配してないでさっさと休め、お前等地球人はやわだからな。」
時間は少し遡り、悟空が目を覚まして天界に瞬間移動してすぐの頃のこと。その発言が翻るのはわずか数分後だ。
「気を開放しろっ!」
そう叫んで自分は気を亀ハウスの一階部分にシールドを張るように展開する。一階にいるクリリンとヤムチャは庇いきれたが上にいるはずの武天老師とチチと天津飯は守り切れない。
ドゴオオン!
数瞬後に亀ハウスの二階部分が大破する。
「何が起こったんだ!?」
せき込みながらチチと亀仙人を抱えた天津飯がエネルギー波を放たれた方を見て言葉を失った。全員生きていることにピッコロは心の中で胸をなでおろした。
「初撃にしては随分手心を加えてくれたようだな。」
すぐに逃げろとクリリン達に言ってゲロにそう声をかける。
「足手まといがいた方がわしに有利だろう?」
「ふん、このピッコロ大魔王様にとってはあいつらが死のうが生きようがどうでもいいんだ。」
虚勢を張り強気に言い放つピッコロにゲロは意地の悪い笑みを浮かべる。
「半端者が強がるな。」
「何だと?」
「大魔王になり切れず、神の看板すらも下ろして、そうまでしても仲間を守り切れるほどの力を得られない雑魚を半端者と呼ばなければ何と呼ぶ?」
「貴様どこまで…!」
天界での出来事などゲロにバレるとも思えない。自分の知らないところで見られている可能性に思い至る。それは即ち、どこに隠れても見つかるということ。ここでの自分の敗北は仲間の死とイコールだ。
「貴様が最高戦力だ、おまえがやられたらあいつらからエネルギーをいただきに行く。」
(あいつらを生かしたのは俺から確実にエネルギーを奪うためか。)
内心で舌を巻く。トランクスが気を抑えて吸収を阻止したように自分も吸収され掛かったら気を抑えればゲロの強化は止められる。しかしそれは助けが見込めない状況では自分の敗北を意味する。悟空達の修業が終わるのはまだ先だ。吸収され掛かったら意地でも気を開放し、相手を引きはがさなければならない。
(ライ、ミライ、早く来い…!)
「援護を期待しても無駄だぞ。最も、それを狙ったわけではないがな。」
「何?」
ドクターゲロの言葉を合図にライとミライの気が解放される。しかし相手となる敵の気は感じ取れない。
「まさかっ…!」
「十七号と十八号もたまには役に立つ。さあエネルギーをいただくぞ。」
*
「はじけて、混ざれ!」
サイヤ人の中でも選ばれたエリートしか作ることができないとされる人工の月、長年の修業と研究の果てにミライは独学で人工月を作れるようになった。
人造人間を倒し、自分の大切なものを守るために。
「…」
十六号の瞳が光る。レーダーを使って二人の戦闘力を測り始める。その上昇に合わせるように二人の姿が人のそれから狼のそれに変わる。
「さあ、精神と時の部屋での修業の成果を見せる時だぞライ。」
「ええ。この姿を使いこなせるようになったのは、一年間の修業の大きな成果です。この姿は、」
「「最も力を引き出せる姿」」
二人のライの声が重なり、興味深そうに十七号が話しかける。
「へえ、お前達も変身できたのか、もっとも孫悟空やベジータの変身と比べると大したことのないようだが。」
「十七号いつまで話してるんだ、早くやろうよ。」
変身した姿を見ても全く動揺しない二人の人造人間に対してミライは界王拳を発動させた。
「気をつけろ!ゲロのデータによれば、その姿は…」
十六号の警告は間に合わない。ミライの拳が十七号の拳に刺さる。
「通常時の三倍のパワーだ!!」
遅れて十六号の警告が響き渡った。
「十七号!」
やられた十七号の方を向いた十八号にライが死角を縫って攻撃にはいる。
「後ろだ!」
殴られて態勢を崩しながらも十八号に対して十七号が指示を出す。辛うじて攻撃を受け止める。
「こいつ…!」
舌打ちを一つ、受け止めた手を掴み、十七号と戦っている場所に向かって投げ飛ばす。十八号がライを投げ飛ばした場面を見ていないにもかかわらず、しゃがんでライを避ける。
「おっと。」
ライを受け止め距離を取る。
「(血縁だけあって連携が取れてるな、バラすぞ。)」
テレパシーがライの脳内に響く。軽くうなずき、それを合図にライは界王拳の倍率を二十倍まで引き上げた。
「赤いオーラ、金色だったり赤だったり、お前たちは派手なのが好きだな。」
十七号は先の攻撃を食らっていながら余裕の態度を崩さない。
「悪いけど、サシでやらせてもらいます。」
「!」
気合砲を十八号に向けて打ち込む。両腕を交差させてダメージを抑えるが、衝撃は抑えられず別の島に吹っ飛ぶ。小鳥と戯れていた十六号が少し視線をライに向けた。
「どうやらお前たちは俺の思った以上にいい遊び相手になるらしい。」
*
「容赦はしません。すぐに壊して差し上げますからね。」
吹き飛ばされた無人島にてライと十八号が向き合う。
「全くいちいちうるさいやつだね、さっさとかかってきな。どちらが上かはっきりさせてやるからさ!」
心底ウザそうに視線を少し下にむけて吐き捨てるように言った。その一瞬にも満たない視線がそれた瞬間動き出す。
「隙だらけだ。」
後ろに回り込み後頭部を殴りこむ。前にのけぞったところに蹴りを突っ込む。
「こいつっ!」
空中で態勢を立て直してエネルギー波で応戦する。それをライも気功波で応戦した。エネルギーどうしの衝突で土煙が舞う。
「貴方はパワースピードともに凄いですけどそれだけだ。」
土煙が晴れた後、十八号に向かって煽るように言い放つ。
「スタミナ切れもない。調子に乗るんじゃないよ、その程度なら先に音を上げるのはそっちだ!」
「試してみれば分かります。ベジータとは違う。あなたに対して何の遠慮もせず、すぐ壊す。」
*
「連携を嫌ったか、まあどうでもいいけどな。俺達最強の人造人間が負けるわけがない。」
そう話している最中にもミライにラッシュは続く。
「お前は無駄な口上が多すぎるな。」
「余裕だからな。」
「じゃあその余裕を奪ってやる。」
ミライのオーラも赤く染まる。素早さとパワーが跳ね上がる。
ガスッ!
「なんだとっ!」
人造人間には急激なパワーアップによる不意打ちが効かない。しかしそれは十七号自身の力を上回らない範囲でだ。十七号に匹敵するパワーとスピードを持った一撃は十七号の顔を驚愕に染めるのに十分だ。
「はっ!」ビュゥン!
気合砲で吹き飛ばし、追撃を仕掛けようとする。
「まだまだ行くぞっ!」
吹き飛ばした十七号は十六号に止められる。十六号の視線に射竦められ動きが止まる。
(こいつは、強い。下手したらピッコロと三人がかりでも…。)
「十七号、そいつのパワーはお前に匹敵する。俺も手を貸そう。」
あくまでも手助け程度にといったふうに話をする。
「意外だな、孫悟空の抹殺以外興味がないんじゃなかったのか?」
「いたずらに人を殺したり、自然を壊したりしないお前達は一緒に旅をしてきた仲間だ。仲間を助けるのは当然のことだろう。」
十七号の目が見開かれた。
「…そうか。でもそれなら十八号の方に行ってくれ。この最強の人造人間である俺に迫る戦士はもう二度と現れないかもしれないからな。この戦いをやつを殺す瞬間まで楽しみたいんだ。」
負けることは微塵も考えていないことが分かる。その発言はあるいは不安を助長するものだ。
「分かった。」
それでも十六号はその発言を受け入れた。
「待てっ!」
ライの方が危ないとそう自分に言い聞かせ十六号に立ち向かう。
「待つのはお前だ。俺に集中しろ。向こうを気にする余裕なんてお前にはないんだぞ。」
飛び立つ十六号の間に入られればミライは十七号を倒さなければライの援護に行くことはできない。
「邪魔だっ!」
猛然と十七号に襲い掛かる。それを十七号は受け止めカウンターを仕掛ける。
ドンッ!!
「くっ」
ゴンッ!!
「チッ」
バギッ!!
「くそっ」
ドガッ!!
「殴り合いが好きならいくらでも相手してやるぞ。」
ミライの一撃を受けながらそう言ってのける。ミライのパワーが落ちていた。
ガンッ!!
「うぐっ」
吹き飛ばされる。常時二十倍界王拳を維持するには相当なパワーを消費する。長引けば不利になるのはミライのほうだ。それ以上に、ライの方が危険だと彼女の気の乱れから感じる。もう後何分も持たないはずだ。
「はは」
乾いた笑いが漏れた。状況は絶望的だ。
「降参か?」
まさか、と言ってふらふらと立ち上がる。
「この時代はまだ、平和にできる可能性が残されているんだ。生き地獄な俺の時代とは違う。」
自分が強ければこんな時にさらなる強さを引き出せた。悟空のようになれたならこんな程度の戦いなんて覚醒せずとも勝てた。自分にはそんな器じゃないし、あつらえ向きの覚醒なんてない。持っていた手札を切っていくことしかできはしない。
「どういうことだ、お前は未来から来たとでも?」
「そんなのはどうでもいいことだろう。」
目が座っていた。両手の人差し指と中指を額に持っていく。
「時間がないんだ。速攻で終わらせる。」
自分の父親が偉大であったことを、この技を身に着けようとしたときから痛感し続けてきた。現にいまだに不完全だ。
ー----
「アクマイト光線を教えてくれ?」
「ええ、自分の素の実力はもう伸びしろはほとんどないでしょう。人工の月は作れるようになりました。次はこの技です。父さんがものにできたんですから私にできない通りはない。」
人狼化し悟飯と共に人造人間たちに挑んだが返り討ちにあった。しかし手ごたえはあった。占い婆の館に赴き、アックマンにアクマイト光線の教えを乞う。界王拳と人狼化、そしてアクマイト光線を三重にすればあいつらに届きうるという手ごたえが。
「悪いが俺には教えられない。」
断られるなどつゆほども思っていなかっただけに思考が止まる。
「今地球がどういう状況か、分かってるんですか!?人造人間が現れて久しい、人類は五万を切ろうかというくらいに追い込まれているっ!それなのに、どうして協力してくれないんだ!」
激高して詰めよるライにアックマンは落ち着けとなだめる。
「スウが使うアクマイト光線は俺の使うものとは似て非なるものだ。たしかにアクマイト光線のように渦巻くし、ピンクのオーラをまとうがな。効果時間や操縦性がまるで違う。」
教える気がないと言葉と態度で示すアックマンにライは食い下がる。
「改良前の技で構いません。それさえ教えてくれればたとえ何年かかろうとも私も父さんと同じアクマイト光線を完成させます。」
「無理だ、あいつがアクマイト光線を改良させられたのはあいつが現世で無念の魂としてさまよった経験があるからだ。アクマイト光線は地獄の苦しみを味わい続けた者が初めて自分の技として昇華できる。それに改良前のアクマイト光線は…」
スウはピッコロ大魔王の配下の魔族に殺されている。しかし、ライにはそんな経験はない。
「アックマン、教えてやるのだ。」
アックマンの言葉を遮り、言葉を失っているライに占い婆が割って入る。
「占い婆様、いやしかし…」
「無意味ではないとわしの占いで出た。必ずその技はライの役に立つ。」
その言葉を聞いたライの顔に希望の色がともる。
「分かりました、婆様が言うのであれば。」
ー----
「アクマイト光線!」
悪の気と善の気が溶けあい体の内側から悪の気が膨れていく。操縦性なんてない。渦巻きながら前に進んでいくだけだ。父さんみたいに自在に技を打てるわけではない。額に両手を合わせてポーズを取らないといけない。そして何より、この技は
「すぐに終わらせる。」
二人の決着は一瞬で着く。
ミライ12億
変身と界王拳20倍でこの値になります。さて、ミライは未来世界で何年も修業してますがその割に全然戦闘力伸びてないやんと思う方いると思いますが、人工月を作る修業、アクマイト光線の修業、常に最高のパフォーマンスで戦う修業と、戦闘力に出ない技能をこれ以外にも多数取得してます。
さてこの話でパワーボールを使うときにベジータと違って両手で作る描写があったのですが、これはこの花火パワーボールから着想を得ています。二つの性質を片手で再現するのではなく片手に一つの性質ずつ作って合わせるというやり方に気づいたわけですね。