ドラゴンボールZ・オルタナティブ~世界線c~   作:三軒過歩

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(第五十六話)必ず殺す技

「赤の次はピンクか。まあどうあろうとおれには…」

 

勝てないと続けようとした。しかしそれは許されない。

 

ドン!!

 

「うぐぅあ、あがあああ!!」

 

腹に強力な一撃を食らった十七号は腹を抱えて座り込む。

 

「このやろっ」

 

何とかかすむ目を開きミライの居場所を探そうとするが見つからない。

 

ガッ!

 

「うあっ」

 

後頭部に強い衝撃を受けて十七号は気を失った。

 

 

凄まじい衝撃波が何度も起こる。島の木々は爆ぜ、地面はえぐられる。島の形は変形しつつある。

 

「動きが鈍くなってきたんじゃないかい」

 

戦闘はライ有利に進んでいたが界王拳を二十倍にして戦い続ける負担は相当重い。攻守は完全に入れ替わっていた。気功波とエネルギー波がぶつかって煙幕ができる。

 

「舐めるな!」

 

煙の中に飛び込みながら、徐々に下がっていく倍率を再び二十倍まで引き上げる。意識をし続けなければ二十倍は維持できない。自分が最も力を引き出せる形態の修業を怠っていたことを痛感する。十八号の蹴りを同じく蹴りで受け止める。

 

(こんなの慣れるなんて数年じゃ無理でしょうけど…!)

 

体の内側からきしむような音が聞こえてくる気がする。界王拳を使った時に発生する独特な音はこれをごまかすためかもしれないと益体のないことが浮かんでは消えていく。十八号の拳を紙一重ではじく。

 

「波っ!」

 

「チッ」

 

衝撃波で煙幕が晴れる。少し距離が取れた。

 

「威勢がいいのは最初だけかい。やっぱり人間は私達とは違う。戦えば戦うほどに動きは鈍く、力は弱くなるんだから。」

 

煽られて失われていた冷静さが戻った十八号相手に勝ち目はなかった。

 

「人間の中にもその制約に相反する者がいるようだぞ。」

 

勝気なセリフに水を差したのはミライではない。十七号に言われて加勢しに来た十六号だ。

 

「十六号!」

 

「十七号とあの戦士は互角だったがこっちはお前が優勢か、十八号。」

 

「当然さ。この私がこの程度の人間にやられたりはしない。加勢はいらないよ。」

 

「それでも加勢するつもりだったんだが、どうやらそうはいかないようだ。そいつの相手はできるだけ早く済ませてくれ。」

 

そう言う十六号の視線は十八号達に向いてはいない。

 

「え?」

 

「油断しすぎだっ!」バシッ!

 

ライが両手を組んでハンマーのようにぶつけ叩き落とす。

 

「うわっ!」

 

追撃を仕掛けようと落下していく十八号に気功波を放つ。土煙が舞う。

 

「二人がかりだろうと、私は…!」

 

息も絶え絶えに十六号に視線を向ける。二十倍界王拳は切れている。十六号の視線の先にはミライがいた。

 

「よかった、十七号に勝てたんで…」

 

しかしその言葉は途中で途切れる。ただならぬ姿のミライに言葉を失った。界王拳なら深紅のオーラでおおわれているはずなのに、彼をまとうオーラは毒々しいピンク色だ。

 

「あんたも油断しすぎじゃないかい?」

 

「しまっ」

 

さっきの意趣返しだと言わんばかりに音もなく接近してきた十八号に今度はライが墜とされる。

 

「さっきのお返しだよ!」

 

島にたたきつけれるまでのわずかな間に無数のエネルギー波が追い打ちとして迫る。疲労を知らない人造人間から繰り出されるエネルギー波は先ほどライが追い打ちに使ったそれとは数も威力も段違いだ。

 

(これは、防げない…)

 

これを食らったらどうなるんだろうか、無茶をしすぎたことが動かない体から伝わってくる。だというのに思考は加速する。今のボロボロの自分がこれだけの攻撃を食らえばただでは済まない。何とか両腕を交差させて急所を守れば、そうすれば両腕は欠損するだろうが生き残れるかもしれない。仙豆は後何粒あるんだろう。

 

(私が生きているのは運が良かっただけだったんだ。)

 

死と隣り合わせの人生だと認識して(分かって)いるつもりだったのに理解して(分かって)いなかった。自分はどうしてこんな戦闘ばかりの世界に身を投じ続けていたんだろうか。腕は全く動かない。

 

(こんなになってしまったのが誰のせいかなんて、分かり切ってる。)

 

死を覚悟したその時最後に思うのは癖の強い黒髪の武闘家だ。こんなふうにして是非責任を取って欲しい。目から涙があふれてくる。こんな数瞬にも涙が出せるんだなと益体のないことを思いながら意識を手放した。

 

ピシュン!シュン!ドガガガガガバーン!

 

「鬱陶しいのがようやく一人。でもこれでお相子だ。そうだろう?」

 

凄まじい爆風も意に課さず十八号はいう。その声には怒気が孕まれている。

 

「ここに来たってことは十七号を殺してきたってことだ。お前も殺してやるよ。」

 

ミライは答えない。ただ圧倒的な威圧感をもって十六号と十八号の前に立っているだけだ。

 

 

「この気は!」

 

ピッコロの指示通りに逃げたヤムチャ達はライとミライが戦っていることを感じ取る。

 

「まさか、ライ達は十七号や十八号と戦ってるって言うのか!?」

 

いくら何でも無謀すぎるといいかけたが、ライとミライの気が膨れ上がったことでその言葉を飲み込んだ。

 

「あれは、ベジータが使っていた人工の月?」

 

クリリンが空で爛々と輝きだしたエネルギーボールを見てそう言った。

 

「じゃあ、ミライも人狼族ってことか。これなら…!」

 

十七号達に勝てるかもしれないと表情に希望がともる。しかしそれはピッコロが期待していたであろう二人の援護が来なくなったことを意味するのだ。

 

「俺、ピッコロの援護に行ってくる。」

 

「だめじゃ!」

 

天津飯がそう言って飛び立つ前に鋭い静止の声が入る。その声は亀仙人のものだ。

 

「お前達程度が助けに言ったところでどうにもならん。犬死する気か!」

 

一緒に飛び出そうとしていたクリリンやヤムチャに対して伝わるように言い放った。

 

「駄目で元々、それでも前向きでいたいんです。それが、」

 

「武闘家としての誇りです。」

 

その言葉をヤムチャが引き継ぐ。

 

「クリリン、武天老師様たちを頼む。」

 

「ッ!」

 

クリリンが唖然とする。二人は飛び出した。

 

「今のわしにはどうすることもできんのか、世界一の武天老師と言われたのも時代が懐かしいわい。」

 

動けないことを恥じる必要はないとミライさんから言われた。でもそれは彼が銀河パトロール隊員だからだ、武闘家でないからだ。今動かなくてもそれを責める者はだれ一人としていないだろうけど。

 

「俺も行きます。」

 

俺は武闘家だ。

 

 

「そらっ!」

 

ビシッィ!

 

ゲロから放たれるエネルギー波を避ける。かすったために頬が切れる。接近して組み合う。

 

「この私に勝つなら力が互角では話にならんぞ?」

 

気を吸収されていることに気づいたピッコロが目から光線を放ちけん制する。

 

「その攻撃は面倒だな。吸収もしにくい。」

 

「へっ、貴様にやるエネルギーなんて一ミリたりともないんでな。」

 

「それにしてはもうずいぶんエネルギーを吸われている気がするが?」

 

形勢は明確にゲロ優位だった。それでも何とかくらい付けているのは神の経験に基づいた戦略がうまくはまっているからだ。消耗を抑え時間稼ぎにのみ徹した。先ほどゲロが言ったセリフは強がりでも何でもない事実なのだ。単独ではピッコロはゲロに勝てない。

 

「味方の援護も望めない状況、貴様に待っているのは死だけだ。」

 

「ほざけっ!」

 

ゲロに向かって行く。狙いは左脚。腕を破壊できればこちらに有利に傾くが、隙はほとんどない。蹴りを打ち込む。防がれる。左手で裂くように首を狙う。避けられる。

 

バッ

 

気合砲を食らう。距離を取る。

 

「衝撃波であろうともエネルギーには変わらん。お前はじわじわと負けて…ん?」

 

ゲロが目元を抑えて明後日の方向を向く。それにつられてピッコロも感知するミライの気が膨れ上がっていることに。

 

(この気はミライか?これほどの力を引き出せるなら人造人間など簡単に、いやしかし…)

 

戦いの最中、思考が戦闘以外のことに割かれるのは隙になる。普段のピッコロなら絶対にそんな隙は晒さない。それでも思考がそれたのはその気があまりに禍々しいものだったからだ。しかしその隙は相手に付け込まれることはない。自分以上に無防備に、邪気ある笑みでゲロはその方向を見ていた。

 

「あれは、そうか使()()()()。フハハ、今行くぞミライ!」

 

ドシュン!

 

ゲロが飛び立つ。自分の存在など意識していないかのように。

 

「あのやろう…!」

 

ドシュン!

 

体力はじわじわと削られてはいたが、まだ動ける。すぐにゲロを追い始めた。

 

 

「さっきからだんまりを決め込んじゃって、うざいんだよ!」

 

「待て十八号、迂闊に突っ込むな!」

 

グシャッ!

 

「あが、ぐぅっ…」

 

ゴンッ!

 

向かってきた十八号はミライによって一撃入れられた後叩き落される。水柱が上がる。

 

「十八号!」

 

「次。」

 

ガギッ

 

「くっ、押し負け…」

 

拳を受け止めようとした十六号を強引に殴りつける。島に吹っ飛ばされる。

 

「早く片付けないとまずそうだ。」

 

島に下りてきたミライ相手に十六号は構えをとった。

 

 

時は数日前に遡る。セルが細胞を採取するために使っていたスパイロボは地下施設にあったセルの完成を諦めて自身の修復に使った時のゲロによって映像がリアルタイムで伝わるように設定されなおされていた。

 

「まさかこんな形でスパイロボが機能するとは思わなんだ。」

 

自分の作ったスパイロボだが想像をはるかに超える情報を自分にもたらした。

 

「全て筒抜けだぞ、孫悟空達よ。それに…」

 

スパイロボは全部で八機ある。それぞれ悟空、ベジータ、ピッコロ、天津飯、ライ、ヤムチャ、クリリン、悟飯の戦闘力が最も高い上位八名にマンマークで情報を集めていた。そして、今ここに情報を送っているスパイロボは()()

 

「未来の情報を得られるとは思わなかった。」

 

未来世界でトランクスと未来のライに張り付いていたスパイロボはタイムマシンで時空を超え、ここに情報を送ってくる。

 

 

ドン!ゴン!バン!

 

ミライのラッシュに十六号は徐々押され始めてきた。アクマイト光線の悪の気は膨れ上がるもの。どんどんパワーもスピードも増す。

 

「ぐっ、うぅ…」

 

守りを重視した立ち回りでひたすら防御に徹する。しかしそれでも削られ続けていた。

 

ドン!

 

「ぐぉおお!」

 

岩壁にぶつかる。

 

ダダダダダダダダ!

 

壁にぶつけられ連撃を打ちづづけられる。

 

「う、うらあぁぁぁ!」

 

連撃を食らったボロボロの身体でつかみかかった。

 

「貴様のその膨れ上がる力は危険すぎる!この俺の使ってはならない最後の力で!」

 

「あがっ!?」

 

十六号の力が今までの比でないくらい膨れ上がった。引きはがせない。

 

「俺と一緒に死んでもらうぞ!」

 

「う、がああああああ!」

 

雄々しい雄たけび一閃、体が膨れ上がる。悪の気が増えて爆発する兆候が如実に表れた。そしてそれは自爆モードの十六号も同じだ。

 

「うおおおおおおおお!」

 

「十六号、止まれ!」

 

「っ!」

 

しゃがれた声が響く。起爆寸前の自爆装置の作動が止まり、膨れたからだがしぼんでいく。それにつられて自爆モードだからこそ引き出せていたパワーが収まっていく。

 

「くくっ!何もかもだ、私の思う通りに何もかもが進んでいく!」

 

そのパワーダウンがミライの力を上回る前にミライの身体にゲロの吸収装置が触れられる。

 

「永遠に気が噴き出していくエネルギータンク。最高じゃあないか。」

 

ゲロの力が無尽蔵に上がっていく。

 

「それ以上好きにはさせんぞ!」

 

シュォン!バババババババ!

 

追ってきたピッコロをエネルギー波でけん制した。

 

「こいつはアクマイト光線で悪の気がどんどん膨れ上がる。わしが吸収をやめればこいつは爆発して死ぬ。」

 

爆炎が晴れ、ピッコロに言い放つ。再び攻撃しようとしていたピッコロの手が止まる。しかしこのまま動かなければ無尽蔵にゲロが強化されてしまう。ピッコロの判断は早い。

 

「だとしても、お前を止める!」

 

ピッコロがゲロに向かって行く。凄まじい速度で殴り掛かる。

 

パシッ!

 

「本当に半端だな。ピッコロ。」

 

「ぐっ!」

 

神の知識があればこそ、ピッコロはミライを切り捨てる。しかし既にミライから大量に気を吸収しているゲロは既に片手間でピッコロをあしらえた。

 

「はあっ!」ブンッ!

 

蹴りを簡単に防がれる。

 

「だが、半端なりに目障りではある。」

 

「ぐわあっ!」

 

エネルギー波による気合砲でピッコロを吹き飛ばした。

 

「ぐっ、ぐぅぅ、このままお前を好きにはさせん、そのために、俺は神と同化した!」

 

気をためながら起き上がる。

 

「はあああああ!」

 

「愚かだなピッコロ、このわしに気功波は通用しないというのに。」

 

「魔貫光殺砲!」

 

必ず殺す技、だから必殺技と呼ばれる。吸収装置にやられないからこそ、ピッコロはまだ必殺技としてこの技を使う。

 

バッ!

 

片手を魔貫光殺砲に向けて、吸収装置を使う。気功波は曲がる。

 

「何?」

 

しかし、魔貫光殺砲は曲がらない。貫通力に優れたこの術はそう簡単には曲げられない。

 

グサッ!

 

吸収装置の吸収機構をものともせず、魔貫光殺砲はミライの心臓を貫いた。




自爆モードはポケモンで言うリフストやオバヒってイメージです。多分そのうち意味に気づくかと思います。
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