「生きて…る?」
「ああ、生きてるぞ。ここはあの世じゃねえ。」
死を悟った、死んだと思ったのに、助けられた。喜ぶべきことなのにまだ理解が追い付いていない。
「な、んで?」
「おめえは危なっかしいんだ。無理だって分かってもそれを何とかしようとするし、その果てに簡単に命を投げ出すしさ。心配したぞ。」
真剣な顔で言う悟空をみて泣きそうになる。生き残れたことの実感が追い付く。そして、自分が何もできずにやられた不甲斐なさもこみ上げる。
「うう、うあああ…」
涙がこぼれ出る。悟空が見ているというのに悟飯もいるというのに、止めることができない。
「無理すんなって言っただろ?」
悟空が困った顔で優しく頭をなでた。
*
「んなっ!貴様ライを…!」
心臓を貫かれ悪の気の膨張が止まる。
「う、うがが…」
ミライの動きを止め続けていた十六号が倒れこむ。自爆モードを強制的に停止させられ、下がりゆく力でそれでもミライを留め続けた。負荷の許容範囲を超えている。
「きっさまあ!」
物凄い怒気を向けられたピッコロは既に逃げる気すら起きていなかった。
「好きにするんだな。もう俺にどうにかなる次元じゃない。」
「「違うっ!」」
「む?」
立ち上がり魔貫光殺砲を打った状態から腕をだらりと落とした状態でそう言ったピッコロに二人の声が重なる。
「今更貴様らが来たところでどうしようもないだろ。なぜ来た。」
「俺達が稼ぐ数秒で、悟空が駆けつけてくれるかもしれないだろ。」
「俺にも時間稼ぎくらいできるぞ。」
ヤムチャと天津飯がそれぞれ構えた状態で言った。
「気円斬!」
「見えているぞクリリン。」
真後ろから気配を消した不意打ちをゲロが吸収する。
「ピッコロの言うとおりだ。今更貴様等如きじゃ何もでがっ!」
操気弾がゲロを襲う。
「時間稼ぎには俺達一家言持ってるんだ。」
ヤムチャが虚勢を張りながら不敵に言った。
「まあ良い。少しくらいは相手してやろう。最高のエネルギータンクを潰されて気分が良くないんだ。雑魚をいたぶるのも悪くなかろう。」
「ピッコロ、お前はもう一度天界に行って修業してこい。隙は俺が作ってやる。見逃すなよ。」
天津飯がピッコロにそう言葉を残して、クリリンとヤムチャに続いた。
「気功砲!」ピシュン!
ドゴォォォォン!
爆音が響く。
「気功砲、範囲が広すぎて吸収しきれんか。まあ今更この程度吸収する必要もない。」
「「「残像拳!」」」
三人が残像を大量に発現させる。
「下らんな。残像にはエネルギーがないのだから。」ド、ガ、バッ!
「うっ」
「ぐっ」
「ぐわっ」
「本体を見つけることなど造作もない。」
天津飯とクリリンの鳩尾に一撃入れ、ヤムチャを気合砲ではじく。天津飯とクリリンが腹を抑えて座り込む。それぞれ一撃入れれば、残像の数が減り始める。
「はいッ!」ボゴッ!
「同じ手を食うか!」
吹き飛ばされながらもヤムチャが地中から繰気弾を出す。一つ目は吸収する。
「はいッ!はあ!そりゃあ!」
一つ目が吸収されたのを皮切りに二つ三つ四つと一斉に気弾が地中からでてきた。
「うっとおしいやつめが!」
空中に飛んで距離を取り、一気にヤムチャの繰気弾を吸収しにかかる。しかしそのゲロに上空から気弾の雨が襲い掛かる。
バババババババ!
「何?」
ピシュン
全身を囲うようにバリアを張った。
ガガガガガガガガガガ!
「ちくしょうっ!」
拡散エネルギー波を撃ったクリリンが悔しさに顔を歪める。
(なぜだ、あいつはうずくまっていたはずだ。)
地上を見る。未だクリリンと天津飯はうずくまったままだ。しかしクリリンの姿が少しずつ薄くなり消えて行った。
(四身の拳か!天津飯が使ってた技をクリリンが使ってくるとは。)
「攻撃を集中させるぞっ!」
ドドドドドドドドド!
バリアに向かって一つ消えてしまい二人となったクリリンとヤムチャが気弾を連続でぶつけ続ける。バリアにはひびすら入らない。
「雑魚の相手もつまらん、そろそろ殺してしまおうか!」
上空で気を打ち続けるクリリンとヤムチャに集中しているゲロは気づかない。うずくまった天津飯の姿もまた四身の拳の内の一体であることに。
「真・気功砲!」ピシュン!
ドゴォォォォン!
「「「はあぁ!はあぁ!はあぁ!」」」
バリアにはひびすら入らない。しかしその衝撃はバリア越しにゲロに届く。ゲロが島にたたきつけられ、さらに地面は陥没していく。威力は三分の一、しかし密度は三倍だ。間髪入れずに気功砲が叩き込められていく。
「威力はほぼないというに…!」
球状に張ったバリアもろとも地上にたたきつけられる。バリアを解除する暇はない。解除すれば地上ににたたきつけられダメージまで食らう。
「ピッコロ!今ださっさと行けッ!」
ヤムチャがそう叫び、ピッコロは動き出す。
「天津飯、俺たちの気も使ってくれ、少しでも長くあいつらを留めおくんだ。」
クリリンとヤムチャが気を天津飯に渡していく。気功砲の砲撃は続く。
*
「恥ずかしいところをお見せしました。」
「気にすんな。おらのために戦ってくれてたんだろ?」
人造人間の目的は孫悟空の抹殺が第一目標である。悟空のうぬぼれでもなんでもなく、そういう側面はある。
「…あなたのためじゃなくて地球のためです。」
人の姿に戻るころには何とか涙を引っ込めてライは悟空に言った。
「もう大丈夫みたいだな。それじゃあ悟飯のこと少し見ててくれ。」
それもそうかと頷く悟空は気を探り、クリリン達が戦っていることを悟る。天津飯が命を削る大技を連発しきったことも。
ピシュン!
「あ、ちょっと!」
*
「「「はあぁ!はあぁ!はあぁ!」」」
気功砲を乱発する天津飯はもちろんのこと、分身体でありながら気を分け続けるクリリンも負担は大きい。
「も、もうだめ、だ…」
クリリンの分身体がそう言い残し消え、天津飯の分身もそれに応じるかのように消えた。
「「はあぁ!はあぁ!はあぁ!」」
「天津飯、すまん…!」
クリリンの本体も気を分け与えすぎた反動で舞空術すら保てずに島に落ちていく。天津飯三人目の分身体も消えた。
「はあぁ!はあぁ!はあぁ!」
「もう、限界だ…!」
「はあぁ!」
ヤムチャも限界を迎え落下し、一発分遅れて天津飯も落ちた。
「ようやく終わったか」
バリアを解除し、落下した三人を確認する。
「ピッコロは…チッ、スパイロボの限界高度を超えているようだな。」
ピッコロに張り付かせたロボの位置を調べようとしたがそれは既に破壊されていた。
「まあ良い。十七号達の破壊も一応確認しておけば後は孫悟空だけだ。こいつらを殺せば向こうからやってくるだろう。」
「そうはさせねえ。」
「む?」
瞬間移動で天津飯とヤムチャのところに移動した悟空はゲロを睨みつける。
「孫悟空、まさかもう来てくれるとはな。」
「おめえの目的はおらだろ、これ以上おらの仲間を傷つけるんじゃねえ。」
「お前や十七号達以外は興味はなかったんだが、わしに牙を向けるなら話は別だ。きっちり殺す。」
シュォン!
そう言うとゲロが悟空から最も離れた位置に倒れているクリリンに向かってエネルギー波を放つ。
「クッ!おめえっ!!」ピシュン!
瞬間移動でクリリンを助け、その後天津飯のところに瞬間移動しなおす。
「瞬間移動、厄介な能力だな。貴様の仲間を一人は始末しておきたかったのだが。そうすれば敵討ちに来るだろう?」
「…一日だ。」
「一日?」
「一日だけ待ってろ。おめえをぶっ壊してやる。」
悟空は宣言する。今のままでは勝てないけれど、必ずお前を超えて破壊してやると。
「はっ、何を言い出すかと思えば、たった一日でだと?吸収装置もない貴様には無理な話だ。まあたとえ一年あっても無理だがな。今の私はライからエネルギーを奪いつくした。」
クリリン達がうめき声をあげる。すぐに仙豆を食べさせないと死んでしまってもおかしくない。
「おめえを超える。必ずだ。」
そう言って悟空はその場を去った。
「自分から来てくれるなら一日くらいは待ってやるか、今はそれよりも十七号達だ。」
*
「ゲロは既にとんでもない強さになってしまった。もう誰にも勝てない、俺はそう思う。」
神殿に帰った悟空とほぼ同タイミングでピッコロも神殿に着いた。
「俺たちが命かけて守ったって言うのにひっでえなあ。」
仙豆を食べて復活したヤムチャがそう言った。しかしピッコロの顔は優れない。
「それより、やつがやけに俺達の事情に詳しい理由が分かった。」
そう言って破壊された昆虫型のロボットを出す。
「スパイロボってやつだろう。これで俺たちの情報を得ていたんだろうぜ。」
「だったらそれ、ブルマさんに調べてもらおう。どの程度まで詳しい情報を送ってたのか、詳しいことが分かるかもしれない。」
クリリンがそう言ってスパイロボをピッコロから受け取る。
「スパイロボが一機であるはずはないが、天界には来れないようだ。下界に下りたら注意しておけ。」
ピッコロの警告を受けて、クリリンが西の都に向かった。
*
「いない、やつはライに殺されたんではないのか?」
ミライに付けていたスパイロボから送られてきた映像によれば十七号と十八号は倒されたはずだ。しかし、死体となったはずの二人はいない。
「…十六号、貴様。」
後ろに付き従ってくる十六号の姿をよく見てみれば、機械でできたからだは濡れている。
「逃がしたな?」
「俺に下された命令は孫悟空の抹殺だけだ。」
失敗作が、とこぼし十七号達を探し始めた。十六号はまだついてくる。失敗作だが、孫悟空の抹殺という命令に限れば忠実だ。孫悟空を殺すことを阻止しようとする雑魚掃除には役に立つだろう。こいつのパワー数値は十七号をも凌駕する。私を除けばこいつは間違いなく最高戦力だ。手助けが必要ないレベルにはライから力を吸収したが。
*
「ライ、ちょっといいか。」
クリリンが下界に下りていくのを見送った後、ピッコロが声をかける。あまり他の仲間の前ではしにくい話なんだろう。想像はつく。
「どんな状態だったのかおおよそ読めてます。別に恨んでなんていませんよ?」
「いや、しかし…」
「そもそも私は十八号を止められずに悟空に助けられてますし責めることなんてできません。むしろ感謝しなければいけないとまで思いますが…」
流石にそこまで割り切れません、と続けた。ミライは強い。彼の戦闘力だけで言えばとびぬけてこそいなかったが、彼の継戦能力はとびぬけていた。どんなに戦っても疲れない人造人間とため張れるくらいに。
「私はミライが勝って援護に来てくれるまで粘らなければいけなかったのに、それができずに彼を焦らせてしまった。責められるべきは役割を果たせなかった私です。」
二十倍界王拳を乱発し、気は相当乱れていた。自分が十七号との決着をつけるまでに持たないと、ミライは思っていたはずだ。
「辛い役目を押し付けてしまってすいませんでした。」
「いや、お前は…お前も、最善を尽くした結果だ。謝ることはない。」
未来の自分が殺されたというのに、涙はもう流しきったのだろう。割り切れきれずとも吹っ切った、そんな表情だった。
「おーい、トランクスとベジータ、精神と時の部屋から出てきたぞ!」
遠くでミスターポポがそう呼んでいるのが聞こえる。ライとピッコロは二人の元に行った。
どこかで悟空にちゃんと振られるライを書きたい。