ずっと身に着けることができなかった、否、身に着けるのを止められていた能力がある。私の主たる界王神様も魔人ブウの脅威が明らかになってから身に着けた能力。神たる素養のある芯人は付き人や界王神となることによって得られる能力のほかに長年の修業によって得る能力がある。それが…
「ソラヨッ!」
振り下ろされた爪は傷の痛みで思うように動けないキビトにとっては不可避の一撃、仮に傷が全くない状態であったとしても躱すのは難しい、そんな速度で振り下ろされた一撃。
サッ
その一撃を避ける。
スッ、ピション!
懐に潜り込んだキビトは左手でヤコンの腹に触れると気合砲で吹き飛ばした。
ガシャン!ドン!
岩山が崩れ、岩壁にぶつかるが大きなダメージを負った様子のないヤコンが意外そうな顔をして起き上がって言った。
「その足でよく避けたな。」
足の神経は切れていないようだが、深く膝に傷が入っている。何やら念力のようなもので無理やりつなげているらしいが、痛みがなくなるわけではないはずだ。動きを全く鈍らせず避け、あまつさえ反撃してきたキビトにある種感心していた。しかしなればこそ、先ほどよりも早い速度で切り刻みに接近する。
サッ、スッ、ピシュン!
「ウグッ!」
それに対してキビトは先ほどと同じように攻撃をかわして見せ、先ほどと同じように反撃をした。
「これならお主を倒せそうだ。」
本来ヤコンの身体は強靭な皮膚によって守られている。外側から攻撃を受けたところで同程度の実力からの攻撃ならほとんど意味もない。しかし芯人の戦い方は気功波で体内にダメージを与える技だ。芯人の戦い方は魔獣に対して防御の面では不利だが、攻撃の面では有利だった。そして今、キビトはダメージを無視して行動できている。
…それが痛覚遮断。感覚を麻痺させ、閉じる能力。
*
「待っていたよ、界王神」
「お前の計画はなんとしてでも阻止する!」
バビディの宇宙船に着くと、何やら空間が歪むように景色が変化した後、バビディが現れ、続いてダーブラが現れる。
「魔獣ヤコンをあんな形で切ってくるからには大物が控えているとは思っていましたが、まさか暗黒魔界の王までも配下にしているとは…!」
「ふふふ、万が一にもお前に勝ち目は残さないさ。お前を倒し、
父親の復讐に囚われた息子、父親が倒されて、界王神に憎しみを抱いて生きてきたバビディにとって、界王神のやることなすことすべてが気に入らないのだろう。こいつが界王神を殺せば、また宇宙を破壊して回るはずだ。
「お前は恵まれているな。」
バビディの野望を聞いて、今まで黙っていたトランクスが口を開いた。
「復讐する相手がいる。頑張れば努力は報われる。取り返しがつかなくても、無念を晴らすことは出来る。」
今にして思えば、
ボゥッ!!
トランクスの全身からが金色のオーラが噴き出す。ダーブラがバビディを庇うように前に出た。
「憎いくらいにまぶしくて、羨ましい。」
だからこれは
*
痛覚がない生き物についてどう思うだろうか。痛みを感じない人間種はメタルマンを始めとして数種族いるがその種族は桁外れに強靭な肉体を持っていたり、未来を予知する能力を持っていたりとそれぞれ痛覚の代替機能を持ち合わせている。芯人は他の多数の種族と同じくしっかりと痛覚がある種族だ。その感覚を閉じる。痛みがないだけで、皮膚は容易く裂け血が足りなくなれば死ぬ。界王神様はこの力を使うときは自分の前にしろと言い含められていた。
「「ゴハッ!」」
キビトの拳がヤコンに触れるのとヤコンの爪がキビトの脇腹を貫くのは同時。お互いの身体がお互いの血でぬれる。
「波ッ!」
「ウグゥッ!」
爪が体に食い込んだままだというのに、全く意に課さずに気合砲でふっとばした。
「ア、アリエナイ。ソノ傷デ、ソンナ体デ、ドウシテ動ケル!」
ヤコンも相当なダメージを負っているが、それ以上にキビトは致命傷となるはずの傷を何発も受けている。右腕を動かせなくなるほどの肩の傷、右脇腹に空いた穴、ちぎれかかっている脚、そのどれもが一つだけで動けなくなるほどの傷だというのにそれほど傷を持ったまま、否、増やすことも厭わずに自分に攻撃を仕掛けている。
「来ルンジャナイ!」
ここに至っても間違いなく優勢なのはヤコンだというのに、ヤコンは恐怖に支配されつつあった。攻撃にキレがなくなり、近づいてきたキビトに振るった攻撃は頬をかすめる程度に留まる。
「ヒッ!」
だらしなく空いた口に左手をかざす。強靭な外皮を持つものはえてして
ピシューーン!ドーーン!
体内は脆い。体内で爆発のような音が響き、魔獣は四散した。
(界王神様…すぐに助けに行きますから。)
この体でも痛覚を閉じたままなら十分に動ける。最悪でも界王神様を守る肉壁くらいにはなれるはずだと歩みを進めようとするが、ヤコンを倒したことで集中の糸が切れたのか意識に靄が掛かったように重い。
フラッ
「あがっ!」
ダメージは大きく一瞬意識が飛ぶが、それと同時に閉じていた痛覚が開かれて痛みにより意識が戻る。再び痛覚を閉じてもまた意識が半端に飛ぶだけだろうと痛む体を引きずって界王神たちの方へ向かい始めた。
*
「バビディ様、ここは危険です。こいつら二人は私が相手しますのでどうぞ下がっていてください。」
オーラを噴き出し臨戦態勢をとるトランクスを前にして、ダーブラの余裕は崩れない。
「界王神を目の前にして隠れて居ろだなんて冗談じゃないよ。奴を倒すのは僕さ。界王神の相手は僕がするから、あのトランクスとかいうやつの攻撃が万が一にも僕に来ることがないようにね。」
「承知しました。」
傍若無人な振る舞い。それが最善ではないとダーブラは理解していても、彼は主の要望を完璧に果たそうとする。
「トランクスとか言ったな。バビディ様の宿願のため、ここで死んでもらうぞ。」
「(トランクスさん、私はバビディを相手します。バビディを倒しても洗脳が解けるか分かりませんが、洗脳が解ければダーブラとは戦う必要はありませんし、解けなくても二対一の方が優位に運べます。出来るだけ早く始末するので少しでも時間を稼いでください。くれぐれもやつの唾には触れないでください。石にされてしまいますので。)」
テレパシーが脳内に響きそれに分かりましたと答える。
「ようやくつかんだ平和を、お前等に奪わせはしない。」
キーン!ピシュゥン!
「その程度の気弾など、この私には通用しない。」キン!
バーン!
どこからか出してきた剣で気弾を真っ二つに割り、後ろで爆発音が
ピッ!
「バビディ様!」
口角が上がっていることに二つに割った一つがまだ爆発していないことに気づき後ろを向くと、半球になった気弾がバビディにすっ飛んでいた。気づくのが遅く守りに行けない。断腸の思いで叫ぶ。
「ッッ!?バリアー!」
鋭い爆発音が響き、煙が晴れる。そこには五体満足でバリアを張ることに成功した魔導士が一人。
「チッ」
「こらダーブラ!そいつの攻撃が来ないようにって言っただろ!無理を通せよ!お前は僕の家来なんだからさ!」
「…失礼しました。」
苦虫を噛み潰す顔を体現してなんとか返し、トランクスに向き直った。
「さっきのような不意打ちは二度と効かんぞ。」
「ではお前を殺してからバビディを殺す。」バッ!
ババババババ!
強気なセリフとは裏腹に、距離を取った気弾攻撃で時間を稼ぐ。
「強気なセリフは虚勢かな、トランクス。」グッ!
気弾の嵐を抜けたダーブラの首に向かって手を伸ばす。それを右手で防ぐと手首を捻られた。
「あ、がっ!」
「(そのまま留めて!)」
界王神からの念話を聞き、爆発波で脱出しようとしたが痛みをこらえる。数瞬としないうちにダーブラの背後に無数の槍が出現した。その切っ先は全てダーブラに向かっている。
何もない空間から物質を顕現させる
シュバババババババ!
「ぬぅ!?」
(こいつ、この私を盾にする気で!)
トランクスが身をダーブラに覆い被されるようにずらしたことで気づいたのだろうがもう回避は間に合わない。
「波アッ!」
すぐさま体力を使う代わりに予備動作を捨てた爆撃で無理やりダーブラが爆発波で弾く。トランクスもこの隙に距離を取った。
「(トランクスさん、これを。)」
距離をとるとちょうど界王神と背中合わせになった。界王神からの念話が脳内に響く。
「(この宇宙で最硬の鉱石で作ったものです。あなたなら使いこなせます。)」
手渡されたのは黒い槍。神が生み出しその武器はこの世界に存在するどんな業物をも上回る。
「槍を持ったくらいで対等になるとでも思うのか?」
「近接武器は一通りの心得がある。」
剣を構えたダーブラに槍を構えて相対する。
「はあっ!」
「うおらっ!」
キィィン!
剣と槍が交錯して轟音が響く。
「驚いたな。まさかここまで槍を使いこなせるとは思わなかった。」
「フン。」
数合の打ち合いの後のダーブラの賛辞にぶっきらぼうに返し、ダーブラにはじかれた無数の槍に気を通す。ダーブラに相当の余裕があることは今の立ち合いだけでも十分に分かった。次は手数だ。
ピッ!シュバババババババ!
槍を両手持ちから片手持ちに持ち変える。空いた左手を少し動かすだけで無数の槍がダーブラを襲う。自身も突撃し飽和攻撃を仕掛けてようとする。
「その程度どうということもない」
ドォォン!
「ぐっ!」
爆発波で槍を弾き飛ばし、そのままトランクスにもダメージを与える。ならばとタイミングをずらして槍を矢継ぎ早に突きさしていく。それをみてダーブラは動き回りながら躱していきトランクスに切り込む。
キィン!
鍔迫り合いになったことで身動きが取れないことをいいことに、槍の連撃を浴びせていく。
ドォォン!
先ほどより威力は弱い衝撃波だが、操作していた槍は弾かれてしまう。気を薄く通しただけの槍ではダーブラの衝撃波を突破することはできない。
「遠隔攻撃なぞ俺には効かないぞ。」
「それなら近距離で特大の一撃を与えるまでだ。」
キーーーン!ピシュン!
「んなっ!」
槍を投げ捨て、両手を合わせる。近距離専用の気功波術であり、肉弾戦において攻撃を捌く動きが予備動作になる、トランクス唯一のオリジナル技。
「バーニングアタック!」
すさまじい光があたりを包み、後ろに飛びのくダーブラに迫る。
「エビルインパルス!」
飛びのいたおかげでわずかにできた時間で光弾を発射してバーニングアタックと打ち合う。
「うぐぐぐ…」
きっちり準備して打ったトランクスのバーニングアタックでも即席で撃ったエビルインパルスに押されだす。気合砲で押し返そうとするも押し返しきれず逆に押され返す。それほどまでに戦力差は大きかった。
「(援護する!押し返せ!)」
トランクスが押し負けて吹き飛ばされようかというタイミングでキビトの声が脳内に響く。
「うがああああああ!」
その言葉を信じて気合砲を再び強く打ち出し押し返す。
「な、体が、思うように…くそっ!」ピン!
エビルインパルスに気弾を重ねて放ち爆発させる。
「(助かりました、キビトさ…)」
トランクスの後ろに来たキビトに振り返りお礼を言おうと振り返るがそのあまりの姿に絶句してしまう。
「(私のことなど今はどうでもいい。界王神様がバビディを倒すまで体力を少しでも温存するのだ。)」
そう言うと界王神が先ほど作り、トランクスが気を通していた無数の槍が浮き始める。
「(槍を使った遠距離攻撃で支援する。ある程度距離を置いて引き気味に戦え。大丈夫、我々なら出来る。)」
念話は思考の共有。トランクスがイメージした戦い方を最大限発揮できるようにキビトが立ち回り、完璧な援護を実現する。その力は圧倒的戦力差にも通用しうるかもしれないとトランクスは槍を構えた。
トランクスが槍を操ってるのはガッシュに出てくるレイラの技、ミベルナ・マ・ミグロンのコネクト、ハーベストができないものと考えてくれれば大体イメージに合ってます。
さて、バーニングアタックを初めて見た時、かっけえの後にあの手の動き何?ってなりまして、それに理由付けをしようとした結果がこれです。