ドラゴンボールZ・オルタナティブ~世界線c~   作:三軒過歩

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駆け足のつもりが全力疾走してます。でもそれくらいがちょうどよかったんだろうなって今にして思ったり…


(第六十九話)隔絶たる差

「場外!十八号選手の勝利ですっ!」

 

十八号とビーデルの戦いは瞬殺されるはずだが、意外にも十八号はビーデルに善戦させていた。それでも準決勝第一試合とは程遠いが、観客たちにも動きが分かる戦いは盛り上がりには事欠かなかった。五位を決定するために一回戦敗退者の四人でバトルロイヤルをしてから決勝戦が行われる。

 

「それでは決勝戦、なんと女性武道家同士の戦いですっ!しかし実力に関しては二人とも疑いようがないでしょう!それではライ選手、十八号選手、ご入場ください!」

 

武舞台に立ち、相対する。

 

「あのチビ共と戦って消耗しているだろうが、賞金のためだ、遠慮はしないよ。」

 

「ええ、構いませんよ、もちろん。」

 

その一戦は一撃で決着がつく。ライは満足してしまっていたから。ライの拳を受け止めた十八号には伝わる。ライが本気でないことが。勝ちに来ていないことが。だから。

 

ドン!ドドン!

 

「波ァ!」

 

「タァー!」

 

気功波同士がぶつかり合う。

 

「す、すげえ!あの二人めちゃくちゃ強いぞ!」

 

「すげえ勝負だ!こんなの見たことねえ!」

 

それでも見るものが見れば分かる。それはただの演舞だ。決勝だからと二人とも少し派手にぶつかってその後はライが場外に飛ばされて終わる、出来レース。

 

「インフィニッティバレット!」

 

連続で放たれる気弾の弾幕、それを全て躱す、躱せるように打たれている。それに合わせて接近する。カウンターを食らえば決着だ。

 

「そらっ!」

 

「うわっ!」

 

ドン!

 

「場外!十八号選手の勝利です!よって優勝は、十八号選手~!」

 

場外の歓声が響く。見た目だけなら準決勝よりも派手にした。会場の興奮は最高峰だ。

 

 

「おまえどうして本気じゃなかったんだ?武闘家じゃない私には本気を出せないとか?」

 

ジュエール、サタンを含めた上位五名が武舞台で表彰を受ける。係員が優勝賞品を用意するまでの控室で待機しているうちに十八号が聞いてきた。

 

「満足してしまったんですよ。」

 

観客席に目線を向ける。チチさんとブルマさんに怒られてこぶができている二人が目に入った。

 

「あの二人が超サイヤ人になった時思ったんです。ここで終わっておくべきだって。この先何かあっても私はもう力になれないから。だから…」

 

一度言葉を区切る。そして宣言する。

 

「引退します。」

 

「お前…」

 

「心がぽっきり折れちゃいました。」

 

そう言ってほほ笑んだが十八号は神妙な面持ちで言った。

 

「私はお前のこと他の奴等よりは知らないけど、ここにお前が見栄を張りたいやつがいないことは分かる。無理しなくていいんだぞ?」

 

心が折れたなんて冗談で言ったつもりだったのに、その言葉は的を射ていたみたいだ。悔しいんだろうか。涙が後から後からこぼれて止まらない。

 

「あれ…えと、そんなつもり、は…」

 

天津飯さんのように、未来の自分のように、自分の強さに向き合えた武闘家を、尊敬する。私には出来なかったことだから。何のために武道家になったのか、原点を振り返る。ああそっか、この涙は彼等への羨望と、己への失望だったんだ。

 

「すいません、少しだけ胸貸してください。」

 

すぐには涙をひっこめられなかったけれど、もう武闘家としての人生に決別するべきだ。

 

 

「それでは優勝者及び入賞者の皆さん、武舞台に入場してくださーい!」

 

気遣ってくれたわけじゃないだろうけど、涙を何とか引っ込めたタイミングでアナウンスが掛かった。

 

「優勝おめでとうございます!素晴らしい強さでした。今大会で前々回のような素晴らしい試合を見せていただき、私としても嬉しい限りです。優勝のご感想を…」

 

マイクを向けようとしたとき四人が急に現れる。

 

「悟空、それにみんな、どうしてここに?」

 

唖然としている中、いち早く反応できたのはアナウンサーだ。

 

「遅かったじゃないですか、孫さん達、もう大会終わっちゃいましたよ。どこに行ってらしたんです?」

 

悟空によって行く。ベジータの脇を通りかかる。

 

「あぶねえっ!」

 

「う、うう…があ!」ビュィィン!

 

界王神の前に悟空が立ち衝撃波を防ぐ。吹き飛ばされるアナウンサーを悟飯が、ジュエールをライが、ビーデルを十八号が受け止める。

 

「うわああああ!」

 

そしてサタンは吹き飛ばされた。

 

「ベジータ、お前何考えてるんだい!」

 

「うるさい、俺の目的はカカロットだけだ。他の奴らなどどうでもいい。」

 

十八号の言葉は届いていないのだろう。十八号以外の誰かと会話しているようなそんな言葉を放つ。

 

「悟飯、詳しくは聞きません。今私達がしなければならないことは何か分かりますか。」

 

「それは…」

 

あまりのことにうまく頭が回ってないのだろう。二の句が継げない。

 

「とりあえず、ベジータを止めましょう。様子がおかしい。悟空と悟飯なら出来ます。」

 

こういう時、私達ならと言えないのが歯がゆい。

 

「俺とカカロットの戦いの邪魔はさせない…」キーン!

 

そう言って悟空に向かって手を伸ばす。そこからは一瞬だ。いや、多少の時間はあったのだろうが誰も動けない。

 

「お、おい!バカヤロー!!」

 

咄嗟に防御態勢をとるが悟空は超サイヤ人になっていない。そんな状態でベジータの気功波など防げようもない。防ぎきれずに後ろに受け流してしまう。

 

「ベジータさん、なんてことを!!」

 

加減はしてただろう。本気で放ってれば超サイヤ人になっていない悟空はただでは済まない。だからこそ分かってしまう。こいつは悟空を焚きつけるために受け切れない程度の威力で気功波を放ったのだと。だから悠長にはしていられない。悟空が戦いを決意するまで犠牲者は増え続ける。

 

「この馬鹿野郎がー!!」

 

人工月を作っておいてよかった。すぐにでも全力を出せる。なによりこれ以上父親が人を殺すのをトランクスには見せられない。もう手遅れだとしても。

 

「ゔゔゔゔ、が、あ、あ、あ…!」

 

人の姿だったライから鋭い爪が生え、体毛が全身を覆う。耳の位置が変わり、獰猛な牙が生える。

 

「これ以上そんなざまを見せるなッ!!」

 

ガッ!

 

二十倍界王拳で爪をつかった引き裂くような攻撃、それがベジータに届くはずもない。当然だ。彼と私には隔絶たる差があるのだから。

 

「どけぇっ!」

 

気による衝撃波。それで吹き飛ばされる。

 

「うわあー--っ!」

 

「雑魚は引っ込んでろ!!これは俺とカカロット戦いだ!」

 

そうだ。彼にとって私はまさしく雑魚だ、それでも。

 

「だったら観客を巻き込むなよっ!」キーン!

 

それでも、自分に誂え向きの覚醒がなくても、今はベジータを止めなければならない。

 

ピシュン!

 

ビシュゥン!

 

打ち込んだ気功波をベジータの気功波で受け止められ撃ち合いになる。

 

「く、くっそおおぅ…」

 

今撃ち合いに負ければやられるのは私だけではない。余波で観客がまたたくさん死んでしまう。

 

「うわぁああああああ!」

 

想いの力が強さになるなら…いや、それでも勝てないだろう。自分はもう武闘家として失格の烙印を自ら押したのだから。

 

ドッッゴォォォン!

 

吹き飛ばされ、直撃を悟空に助けられる。それでも観客は大勢死んだ。

 

「ライ、お前はもう引いてろ。ベジータとはおらが戦う。」

 

鋭い目つき、ライを放し、超サイヤ人になる。

 

「いけません、それはバビディの思うつぼ!エネルギーを吸収され、確実に魔人ブウが復活してしまうのですよ!」

 

悟空が先ほどから戦いたがらなかった原因が明かされる。でももうどうにもならないところまで来ている。界王神の説得はベジータの逆鱗に触れる。それでも界王神は戦いを止めようと二人の間に入る。

 

「どうしても戦うというのなら、この私を倒してからになさい!」

 

しかしベジータの様子を見て悟空も覚悟を決めたようだ。戦いの邪魔をする者を殺す覚悟を。気功波をため始める。その様子を見て界王神もあきらめたようだ。お好きになさいとうなだれると再び四人が消えた。

 

「また、消えた?…いやそんなことどうでもいい!トランクス君は!?」

 

気を頼りにトランクスたちを探せばすぐに見つかった。ブルマに抱きしめられている。

 

「十八号さん、とりあえずはブルマさん達に合流しましょう。」

 

ふと十八号を振り返ると既にマーロンちゃんを抱えている。動きの速いことだ。確かにあの場では彼女の手の届く範囲が一番安全と言えば安全なのだろうが。

 

 

「そんな嘘だッ!パパが人殺しなんて、するわけないっ!!何かの間違いだあ!」

 

ブルマさん達に合流すると泣きわめくトランクスとそれをなんとかなだめようとしているブルマさん以外はみんな唖然としていた。

 

「ライさん、ベジータはどうしちゃったんだべか!?」

 

「すいません、私には何が起こったのか、でも彼は何かに操られているような、そんな感じでした。」

 

こうでもしないと戦わんだろうという言葉からもベジータは擁護できようもないが、少なくともこれは許される嘘だ。今は彼のメンタルケアが最優先されるべきだろうから。

 

「ホントなの!?」

 

「ええ、頭に変なマークがついてましたし。誰かと会話するようなそんな様子もありました。大丈夫、君の父さんは操られていただけだよ。」

 

そういってトランクス君の頭をなでる。大丈夫だと繰り返す。

 

「とりあえずドラゴンボールを集めておかないか?ことが済んだ後に死んでしまった人たちを生き返らせれるようにさ。俺飛行機を出せそうな場所探してくるから。」

 

ヤムチャがそう言って動き始めた。

 

 

「「「「「!」」」」」

 

飛行機にのってドラゴンボール探しを始めてすぐ、気の感知能力がある亀仙人、ヤムチャ、悟天にトランクス、そしてライが一斉に体を震わせる。

 

「おいおい、なんだよこの気は。一体何が起こってるんだ!?」

 

「今感じられる気だって実力のほんの一部でしょう。悟空達でも勝てるかどうかの…界王神様が止めようとしていたのは多分こいつの復活だったんだ。」

 

「だからと言って、わしたちにできることなどないじゃろう。わしたちは悟空達がうまくやってくれることを信じてドラゴンボールを集めるんじゃ。」

 

「そうだよ!兄ちゃんたちがうまくやってくれるさ!」

 

「ちょっとちょっと、あんたたちだけで分かってないで私達にも教えなさいよ。」

 

たまらずブルマが聞いてくるが、五人にも分かることは大差ない。

 

「悟空達でも勝てないかもしれない敵が現れたんですよ。きっと、界王神様が止めようとしていたのがなにか、ようやく分かりました。」

 

「そう言えばライ、さっきからちょくちょく出てくる界王神ってのは何者なんだ?」

 

「そうですね、知ってることは皆さんとそう大差ないですけど、知ってることをすべてお話しします。」

 

ドラゴンボール探しは順調だが、ライには嫌の予感がぬぐえないでいた。

 

 

「…というわけです。きっとこの気は界王神がちょこっと言ってた魔人ブウのことでしょうね。」

 

「なるほど、そう言うことか。魔人ブウを倒すために界王神様って言う人が動いている…と。」

 

「ええそうです。それで操られたベジータが悟空と戦っているのでしょうね。」

 

そこまで話したところで激化していた二人の戦闘が一瞬止まる。きっと戦っていた二人も気づいたのだろう。

 

「パパたちの戦いが止まった?」

 

「どうなってるんだろ?気だけじゃ分からないよ!」

 

気を探って戦いを把握しようとしている二人の後ろに回る。

 

「悟天君、トランクス君、ちょっとごめんね。」ドンッ!

 

「へ?」

 

「うっ…」

 

二人を手刀で気絶させた。どんなふうに決着がつくにしても悟天君やトランクス君にとってろくな結果にならないだろうから。今はこの子たちに暴走されては困る。

 

「さて、私達の力ではどうにもならないことは今は置いておきましょう。早くドラゴンボールを集めるべきです。」

 

気を探りたくなる気持ちを抑える。今は目の前のことに集中するべきだ。

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