「全員、とは言えないがお前達だけでも無事でいてくれて何よりだ。」
ドラゴンボールを集めて西の都にあるカプセルコーポレーションに帰ってきたブルマやライ達一行は十六号に迎えられた。彼は七年前十七号や十八号によって起動され、ゲロを守るために首だけになったところをブリーフ博士やブルマに肉体を作り直されていたのだ。最もその戦闘力はゲロ製のものと比べればはるかに劣る。それでも一般の武闘家にはとても及ばない境地ではあるが。
「十六号、ライを寝室まで案内してくれないかしら。トランクスと悟天君を寝室に運ぶのも手伝ってあげて。今はゆっくり休ませてあげたいの。私は客間にみんなを案内するわ。」
「…承知した。」
十六号がトランクスを、ライが悟天を抱えて奥へと進む。その最中十六号が口を開いた。
「事情を、聞いてもいいか。」
寡黙な彼が自ら口を開くのは珍しい。最も気のレーダを搭載している彼が今の状況を聞かないでいられるわけもないだろうけれど。
「私もその全容を知ってるわけじゃないんですけど、まあ知ってる範囲でよければ。」
*
寝室を後にして、みんなのところに戻る前に別の客間を使って事情を説明した。
「俺も行けばよかっただろうか。」
全てを話した後十六号がボソッとこぼす。それに対してライはどうだろうかと考える。彼ならベジータたちが現れた時どうしただろう。きっと自分が破壊されるのも厭わずに止めに入っていたんだろう。犠牲は間違いなく減っていた。
「そう、かもしれませんね。」
でもその問いはどう答えても正解にならない気がする。どんなに死んでいてもドラゴンボールで生き返らせるし。ベジータが無実の人を一人でも殺した時点でトランクスには消えない傷が刻まれただろうし。
「でももう過ぎたことです。死んでしまった人はドラゴンボールで生き返りますから。」
生き返らせるなら殺してもいいのか、その答えは否だ。死ぬ直前の恐怖、そして痛み、それを味合わせるのがどんなに残酷なことか。ライは身をもって知っている。ため息を一つ立ち上がろうとして、扉の隙間からブルマが見えた。
「話してくれてありがとう、俺はブリーフ博士たちのところに戻る。今はお前の仲間たちと一緒にいるだろうから。」
十六号もブルマの存在に気づいたのだろう。ライに先んじて立ち上がって部屋を出た。入れ替わるようにブルマが入ってくる。
「ねえ…」
*
「気を失っていたみたいだけどトランクスたちは大丈夫なのかい?」
ドクターブリーフ夫妻の元に行くとすぐにそう聞かれた。彼等一家は世間からずれていることもあるのだが、孫のことになればどこにでもいる祖父母に早変わりする。俺も兵士にならずにさっさと結婚して孫を見せていれば全く違う結果になっていたのだろうか。
「大丈夫です。武道大会に出ていたので怪我はありますがどれも重度ではないですし、数時間もすれば目を覚ますでしょう。」
考えても無駄なことだと意識を切り替える。魔人ブウが復活してしまって、今や地球だけでなく宇宙規模での危機が迫っている。俺には何ができるだろうか。
「心配しすぎることはないだろう。悟空や悟飯がいるんだ。そうそうやばいことにはならないだろうさ。」
思案していると十八号がやってきた。彼女の夫のクリリンから悟空の凄さは耳にタコができるほど聞いているんだろう。ちょっとだけうんざりしたような声音でそう言ってくる。
「久しぶりだな。十八号」
「本当にな。もう五年近く会ってないんじゃないかい?」
「正確には三年と百六十五日だ。まだ四年もたってない。」
「そうだったね、よくもまあ日付まで覚えているもんだ。」
俺は人造人間だからな、と語り視線を下げる。
「お前の娘の生まれた時だったからな、マーロンも元気そうで何よりだ。」
そう言って足にしがみついているマーロンの頭をなでた。
「こんな時に聞くことではないかもしれないが、今幸せか?」
十八号とクリリンが結婚することになった背景には十六号も少なからず関わっている。意識してそうなったわけではないが、この夫妻にとって十六号は仲人のようなそんな立場だ。
「おかげさまで退屈してないさ。…いや、すごく充実してるよ。ありがとな。」
十八号の心に最も近いところにいるクリリンでさえも、いやだからこそ彼でさえも見たことのない種類の素直な態度。十八号と十六号の間にしかありえない関係性。
「なら、いい。」
安心したように十六号はつぶやいた。
ピシュン!
ライとブルマが戻ってきたのと悟空が瞬間移動でやってきたのは同時。悟空が神殿の方が安全だろうと迎えに来たのだ。ライから悟空は死んだと聞かされていたし、レーダーの反応にもなかったから十六号も戸惑ったが、他の者たちは悟空の言われるがままに悟空に触れて移動する準備をし始め、それを確認して十六号もトランクスと悟天を連れてくる。
「ちょっとちょっと、パパやママはついてこないの?」
ブルマたちが悟空と輪を作る中ブリーフ夫妻はここに残ると宣言していた。それを見て十六号もトランクスと悟天をブルマとライに抱きかかえさせる。
「ドクターたちが残るなら俺も残る。お前やドクターがいなければ俺は生きていなかったんだから命の恩人を置いてはいけない。」
そう言ってブルマや十八号達を神殿に向かわせた。
*
バババババババ!ドッゴーーーーン!!!!
彼女等を神殿に向かわせて半日経った頃、西の都が爆撃され始める。バビディらがやってきたのだ。
「覚悟していたことではあるが来てしまったか。」
「大丈夫よ。ブルマちゃんたちが生き返らせてくれるわ。」
死を受け入れている二人に対して十六号は抗うべく動き出す。
「地下シェルターに動物たちを連れて逃げてください。俺が時間を稼ぎます。」
「ちょっと、まちたまえ、十六号。お前の脳の機構はまだ私もブルマも解明できてない。お前が壊されたら復活できないんだ。ドラゴンボールでも戻せるか分からないだろう?お前はほどの実力があればこの爆撃の中生き残れる。ここまで一緒にいてくれたのは心強かったがここまでだ。もう逃げてくれ。」
「違います。俺はあなたに命をもらって、生き返らせてもらった。もう十分なんです。あなた達が生き返れるとしても俺にとっては見殺しにしていい理由にはならない。」
「十六号…」
「これまでありがとうございました。」
最後に死地に飛び出そうとして、そして。
「十六号ちゃん、きっとまた会いましょうね~」
その底抜けに明るい言葉に死地を破壊された。
「ええ、また。」
そんな気がした。
*
「お前もあの馬鹿三人の仲間か。あいつらのような馬鹿がまだいるなんて驚きだよ。」
「あの三人の侮辱は許さない。」
バビディとブウの前に立ちはっきりと言い放つ。
「それぞれが覚悟を持った素晴らしい人物たちだ。俺とは違ってな。」
「俺とは違う…?お前はなんだ、人間ではないとでも言いたいのか?」
「ああ、俺は一から機械で作られた人造人間、命令を遂行するだけの駒。そこの魔人ブウのように。」
「ブウ~~~!俺は駒じゃない。俺は最強の魔人!」
「まあ、お前がなんであろうと俺にはどうでもいい。さあ、始めよう」
その戦いの結末は語るまでもないことで、バビディが見せしめにしようとすら思えないほど一瞬のことだった。
十六号ってシリアスになる呪いでもかかってるんじゃないですか…?