「今日の実験はここまでにするわね。ありがとライ。」
十年後、ライはカプセルコーポレーションで働いていた。人の限界を超越した彼等の力の秘密を探る研究の協力をするために。実験体というと聞こえは悪いが、待遇は良い。
「あんた私と四つしか変わらないってのに、全然老けないわねえ。」
ちょうどこの日は実験と研究が一段落ついたタイミングだった。お茶でもと紅茶を飲んでいるとブルマがそう切り出す。
「気をある程度以上扱えるようになると老化が大幅に遅れるのよね。羨ましいわあ。流石に寿命が延びてるわけじゃないみたいなんだけど気功アンチエイジングとか、地球人がもうちょっと強い種族なら絶対流行ってたわね。」
「でもそれも気を日常的に扱わないとですから流行るのは難しいんじゃないですかね。ともかく武闘家やっててよかったと思えることの一つです。たまに体を動かすくらいですけど、ブルマさんより若々しいですもん。」
そう言うとブルマにコラと小突かれる。これでも歳のわりに若いとよく言われるのだと。実際にそうだと思う。ベジータさんが死んでしまってから積極的に見た目に気を遣っているわけではないのだろうに年齢を考えれば驚異的な若々しさだ。
「それだと年齢詐欺もし放題でしょ?二十代でも通用するじゃない。」
「はは、流石にそれは罪悪感が咎めますよ。」
そう言ってタハハと笑う。そう言うところが幼く見えるのだと、ブルマはため息をついた。
*
「こんにちは、ライさん久しぶり!」
「悟天久しぶりです、大きくなりましたね。」
魔人ブウの騒動から十年後、ライは数年振りにあった悟天に顔を綻ばせて言う。
「そう言うライさんは全然変わりませんね。」
「ふふ、ありがと悟天。ブルマさんの研究で最近分かったことなんですけど、ある程度以上の実力を持った地球人は老化が鈍くなるらしいですよ。寿命は変わらないみたいですけど。ところでお兄さんはどうですか元気してます?」
父さんのことを聞かないあたり、なんとなく想像できるのだろう。実際に修業に明け暮れているからおそらく想像通りであろうが。
「ええ、最近は論文も認められ始めたみたいで、その分野ではちょっとした有名人らしいです。詳しいことはよくわかんないんですけど。」
「そっかそっか平和になった世で夢がかなえられたみたいで何よりです。悟天は何かやりたい事でも見つけました?」
彼等が武闘家としてその道を極めていくさまはもう見れない。平和な世の中でひたすら武を極めたりはしなかった。彼等混血サイヤ人は周囲の影響もあるのだろうが穏やかに育った。
「うーん、今はまだよくわかんないです。トランクス君はもうカプセルコーポレーションを継ぐって決めてるらしいですけど、僕はまだ。」
兄とは対称的に自由にのびのびと育てられて、選択肢が多すぎて自分の将来像があまりはっきりとしないみたいだ。
「少なくとも悟天なら将来に困ることなんてありえません。やりたいことが見つからないからって焦らなくていいんです。まだまだ人生は長いんですからゆっくり探せばいい。」
甘いんだろうなとは思う。でも仕方ないじゃないか。こんな風に誰もが抱くような悩みに頭を抱えているいるさまが見れることがただただ嬉しいのだから。
「そう言ってもらえるとちょっと安心します。」
「私でよければいつでも悩みを吐き出しに来てくれていいんですからね。」
「はい、ありがとうございます!」
ニカッと笑う姿を見ると髪型を変えているとはいえ悟空によく似ている。思わずこちらも顔が綻んだ。
「ところで何か用があったから来たんじゃないの?」
「ああそうでした!ライさん、一月後に天下一武道会が開かれるんです。父さんが最近体がなまってるだろうから出ろって言われちゃって。せっかくの機会だからみんなで集まれたらなって。」
あれから十年、武闘家をやめたライに参加を誘われることはない。それでもこんな風に声をかけてくれるのは素直に嬉しかった。
「なるほど、それで…それなら応援しに行こうかな。パンちゃんがどれくらい大きくなったのかも気になるし。」
「ええ、是非来てくださいね。僕も頑張ります!」
*
そして天下一武道会の当日になる。
「あら、ピッコロも出場しないんですか?」
悟空達より一足早く会場に入ったライがピッコロやクリリン達と合流する。
「今更俺が出たところで仕方ないだろう。今日は悟空たちがどの程度強くなったか見させてもらうことにするさ。」
「確かにどれくらい強くなってるか楽しみです。それに…」
会場にいる気を探ればある戦士によく似た性質の気が一つ。
「ああ、今大会で一番注目すべき戦士だろうな。」
「ふふ。そうですね。地球人に生まれ変わらしてくれた閻魔様には感謝しないと。」
ライとピッコロがそう言って笑った。
*
「お前達がやった決勝ってもう十年前だよな。どんだけ派手にやったんだよ。」
クリリンがあきれたように十八号とライに向かって言う。いい席が見つからず、どうしようかと悩んでいたところそんな様子を見かけた彼女らのファンだという観客が道を開けてくれたのだ。
「あの時は実力の半分も出しちゃいなかったよ。」
「それでも観客が満足する戦いを演じるのには十分すぎるくらいでしたからねえ。」
あの頃を思えばトランクスや悟天やトランクスが武の道に進んでくれなかったことを少し惜しく思う。平和な証拠ではあるけど。
「まあそのおかげでこうして最前列で試合が見れるんですからいいじゃないですか。」
ライがそう言うとちょうどトーナメントの抽選会が始まった。予選を突破した十六名による抽選会は粛々と進み、一回戦の組み分けが決定する。
「それでは抽選の結果を発表しまーす!第一試合、パン選手対猛血虎選手、第二試合、孫悟天選手対トランクス選手…」
アナウンサーの紹介を聞きながらライ達が組み合わせについて話す。
「小さかった二人も今や立派な青年ですからね。」
「実力伯仲の二人だ。見ごたえはあるだろうぜ。勝敗が分からないって意味では一番楽しみな試合じゃないか。決勝戦の勝敗なんて悟空達の誰かが勝つに決まってるからなあ。」
「はは、確かにそういう意味ではそうですね。」
第四試合までの左側のブロックに悟天にトランクス、悟空やパンと集まってしまった。悟空が勝ち上がるにしても、悟天達のだれかが勝ち上がるにしても、相手は一般の武闘家だ。普通ならつまらない勝負になるだろう。でも。
「一番驚く試合にもきっとなりますよ?」
そう言って含み笑いを残す。
*
悟天とトランクスの試合は辛くも悟天が勝利するも、全力を尽くした悟天はパンに敗北する。そのパンを悟空が倒して、決勝に進出した。
「いよいよ決勝戦です!決勝に勝ち上がった選手は最年少ながら圧倒的な実力を前に快進撃を続けてきたパン選手をそれ以上にすさまじい実力で打ち破った孫悟空選手と、これまた相手選手を一撃で倒し続けてきたトミー選手ですっ!」
「よろしくな。おめえと
「なんだ、おっさん。俺はお前に会ったこともないぞ。」
尊大で不遜な態度を露わに構えをとる。その構えがかつての悟空のライバルを彷彿とさせた。
「まあ、戦いの超天才児であるこの俺に遊んでもらえることを光栄に思うんだな!見せてやろう、その才能の差をな!」
「ははっやっぱり間違いねえや!おらの予感は間違ってなかった!」
悟空も構えをとる。その構えは二十年前の天下分け目の戦いに合わせていた。
「じゃあ必死で努力すればその才能の差をも超えれるって見せちゃおうかな!」
二人が激突する。
*
「地球を舐めるなよって貴方がベジータ達に言った言葉でしたね。ピッコロ。」
限りなく強くなっていくサイヤ人たちに自分は追い付けないと思っていた。自分が地球人だから。でも彼を見ると思うのだ。生まれ変わりとはいえ純粋の地球人でありながらあの戦士はきっと強くなる。それも悟空に迫るくらいに。地球は地球人によって守られる時代はもうすぐそこにあるんだと、実感した。ベジータの生まれ変わりをみてそんな風に思うのは皮肉だけれど。
「あーあ、私がもうちょっと前向きだったらあんな風になれてたかもしれないのに、惜しいことしたなあ。」
「へっ!そんな満足げな面でなにいってやがるんだか。未練があるならやり直すことだってできるだろう。」
ドラゴンボールを使えば若返ることが可能で、そうすればまた一から修業しなおせる。今の強さをもったままやり直すことだって叶う。
「あはっ。いやあ激動の時代を生き抜いてもうそんな風には思えませんってば。後はゆっくり余生を過ごすんです。」
「だろうな。お前もこんな強い奴等がどうなっていくか、わくわくするだろう。」
「ええ。武闘家やめてもう燃え尽きた気でいましたけど、やっぱり私も武闘家だったみたいですから。今後が楽しみです。」
地球はこれから危機に見舞われることもあるかもしれない。でもそれでも大丈夫だ。今は悟空がいる、悟空以外にも強力な戦士がいる。そして次代は育ってきてる。きっと地球はこれからも彼等に守られ続けると確信して
ライは笑った。
これにて完結!よくもまあこんなに長々と書いたものだと自賛したくなります。内容はともかくとして完結までこぎ着けて安心しました。魔人ブウ・未来編で書いた伏線をほっといてますがまあエタるよりはずっといいはず。さて、せっかくですから裏話書きます。当初の予定ではブウ編前の七年間のうちにヤムチャとライを結婚させる気でいました。そのための伏線というかまあ匂わせもしてきたつもりです。子供がいればこの十年後の話も少し面白くなるだろうしなあみたいなことも思ってましたし。でもブウ編を書いているときになんか二人をくっつける必要性を感じなくなって物語が間延びするだけだって思うようになりました。だからライは少なくともブウ撃破時点では独身です。その後十年のうちに誰かと結婚してる可能性はありますがそれはご想像にお任せしますね。それではこれまでお付き合いいただきありがとうございました。