ワームですが、なにか?   作:マリモ二等兵

1 / 4
 
 
 


血縁喰ライ

 腹が減っては戦ができぬ。

 腹が減っては頭は動かず。

 腹が減っては勉強できず。

 故に、私が勉強できないのは我が食欲のせいである。

 

 そう思いながら、岡ちゃん先生の授業内容を一語一句逃さず記憶のノートから消す。

 いや、そもそも書いてすらいない。

 我が脳内に、一片の知識無し。

 食欲くんが新人の知識くんに拳を叩き込む。

 これぞ我が逃走経路だ。

 そう言い知識くんが吹っ飛んでいく。

 私のせいじゃない。

 故に、テストがこの世の終わり一歩手前なのは我が食欲のせいである。

 証明完了。

 今日も、私が勉強できない理由を正当化出来た。

 これで今日も、澄んだ心で購買でメロンパンが買える。

 

 ふっと鼻から息を出す。

 それと同時に、目を閉じる。

 なんかニヤついてきた。

 理由は思いつかない。

 自分でも何をやってるのか分からない時、不思議と笑ってしまう。

 周りからみたら完全に変人だ。

 このままでは変人に見られそうなので目を開く。

 

 凸凹した壁だ。

 色的に土だろうか。

 小石がそれなりにバラ撒かれた道路を、車がゆっくりとカーブしたような音が聞こえる。

 

 あたっ!

 上から何か降ってきた?

 というかここはどこ?

 さっきまでいた教室は?

 

 辺りを見回す。

 土、石、ヤツメウナギのような口、ドーナツを積み重ねて繋げたような肌色の何か。

 私の後ろには円を描くように牙の生えた小さな口、肌色の芋虫をぐいーと伸ばしたような体をしたモノが蠢いている。

 それが六匹。

 その姿は何故かイソギンチャクを彷彿とさせた。

 

 気持ち悪っ!!

 え?なにこれ?

 何あいつ?

 美味しそう……。

 じゃなくて!

 なんでこんなのが目の前に居るの!?

 ヤダヤダヤダ!!

 

 私は顔を退ける。

 それと同時に、体からグリュっと音が鳴る。

 ちょっと口からヨダレが垂れる。

 後頭部に冷たいものを感じる。

 ヒンヤリしたこの感触、土だ。

 ちょぴり湿ってる。

 

 カァッ

 

 口から漏れる、人外の声。

 頭に嫌な予想が流れる。

 ドキドキと心臓が鳴る。

 その心臓の音も、今までとは違って聞こえる。

 主に、場所が。

 私は体を確認するために腕を出す。

 ……出せない。

 そもそも、腕がない。

 ならばと足を出す。

 これも同じ、そもそも無かった。

 いや、それらしいものはある。

 肌色の芋虫を伸ばしたかのような身体がある。

 

 私は、気がついたらワームになっていた。

 

 いやいやいやいや!!

 認めたくない!!

 絶対に認めたくない!!

 なんで私はワームに!?

 まてまてまてー可笑しいぞー?思い出せ私ー?

 私の名前は飯田麻衣。

 毎日3食、間食5食のちょっと食いしん坊な女子高生。

 腹の虫はおさまることを知らず、常に食事を心待ちにしている。

 さっきまでは岡ちゃん先生の古文の授業。

 いつものように右から左へ流し、次のテストも駄目だこりゃと思っていた。

 なんとなく目をつむって、変人扱いを避けるために目を開けたらワームになっていた。 

 

 ……わけがわからない!!

 なにこれ!?

 夢!?

 目をつむった瞬間寝ちゃった!?

 にしては色々リアルというかなんというかー…。

 うわあぁグニュグニュしてて気持ち悪!!

 なにこれなにこれー!?

 しかも何か食べてるし!

 グチャグチャいってるー!?

 キモイキモイ!

 あれ?なんか咀嚼音が聞こえる……。

 なに食べてるのー……えーっと兄弟?くーん?

 

 兄弟くんが食べてるのは……兄弟か!

 おう…兄弟くん、血縁喰らいは犯罪ですよー?

 あれ?

 なんか私この光景を見てお腹減ってない?

 え?私ゲテモノ好きだっけ?

 いや待て、おかしい。

 何がおかしい?

 全ておかしい。

 何だこれは……。

 なんか…兄弟も兄弟食ってる兄弟も、みんな美味しそうに見えるんだけど。

 肉がプリッとしてて生きてるから新鮮で、とにかく美味しそうに見える……。

 これは…あれ、あれだよ。

 身体が兄弟くんの肉を求めてる!

 さっきからヨダレが止まらないし、腹の虫が大声で喚いてる!

 これはもう…!食うしか、無い!

 

 《スキル「食いしん坊」の効果が発動しました。「食いしん坊」の効果により、一時的にステータスが上昇しました》

 

 その謎の声と共に、全身に力がみなぎってきた。

 今ならコンクリートの壁を壊せそうな気がする。

 そんな万能感のようなものを感じながら、兄弟くんに近づく。

 ゆっくりと、ズリズリ音がなってるけどゆっくりと。

 口からヨダレが溢れてくる。

 ヨダレで濡れた口で、私は背後から兄弟くんに噛みつく。

 兄弟くんの肉は裂け、血は私の視界を埋めた。

 かすれたような、それでいてよく通る声で兄弟くんは叫ぶ。

 兄弟くんの味が、私の脳を駆け巡る。

 もっとだ。

 もっと食べたい。

 千切って、飲み込んで、噛んで、噛んで、周りが血で染まるまで、溢れた血も吸い取って。

 

 気がついたら私以外に生物は居なかった。

 とても美味しかった。

 肉はもちろん、血も、牙と、内臓も。

 どれもこれも良かった。

 それぞれに独特の味があって、単調な味なんて口が裂けても言えないね。

 ……やっちゃった。

 兄弟くん、美味しかったよ。

 じゃない、これってさ、結構やばいことしたよね。

 絶対した。

 ヤバイヤバイ。

 

 《条件を満たしました。称号「血縁喰ライ」を獲得しました》

 《称号「血縁喰ライ」の効果により、スキル「禁忌LV1」「外道魔法LV1」を獲得しました》

 《経験値が一定に達しました。個体、ワーストワームがLV1からLV2になりました》                      

 《経験値が一定に達しました。個体、ワーストワームがLV2からLV3になりました》

 

 血縁喰ライ……すいませんでした!!

 禁忌とか外道魔法とか訳分からんけどヤバそうなの手に入れちゃったし、本当に申し訳ない!

 食欲に、勝てなかったんです……。

 そういえばさっきから頭に響くこの声はなんやい?

 どなたかいらっしゃいますの?

 ………返事がない、ただの幻聴のようだ。

 いや、ワームになってるんだしなんかあれかな、世界の声!みたいな奴かな。

 う〜む。

 ん?ステイステイ。

 ワームになる、天の声?が聞こえる、スキルや称号の存在。

 ここから導き出される答えは!

 

 異世界転生

 

 これか!

 これかな?

 これなんだ!

 きっとそうだ、そうに違いない。

 ほほう?やっと働いてくれたか我がブレインよ。

 これほど天才的な発想が出来るとは、なんでもっと早く動かなかったの?

 あと私はいつ死んだの?

 …まぁいいや。

 ふふっ、異世界転生だと気づいた私はやる事が出来た。

 

 …鑑定!!

 

 《現在所持スキルポイントは40030です。スキルポイント500を使用して、スキル「鑑定」を取得しますか?》

 

 え、あ、まだ持ってないのね。

 い、いや別に知ってたよ!?

 ただね?天の声さんの出番を無くすのはちょっと可哀想だなーって思ったからやったんだよ!?

 ……誰に言い訳してるの?私。

 とりあえず、取得しまーす。

 

 《スキル「鑑定LV1」を取得しました。残りスキルポイントは39530です》

 

 ウェーイ!

 これで私は勝ちました。

 さっそく鑑定!

 

 『土』

 

 ワッタッファック!?

 い、いやいやいや!

 こんなこと有り得ないあっていいはずがない!

 落ち着け私!ステイステーイ……。

 Be cool…私は、クールになった。

 ……私に鑑定!!

 

 『ワーム』

 

 ワームだったわ。

 あー…………………あー!!

 チキショウ!

 なんで!?私が何をしたっていうのさ!?

 なんの罰!?

 教えてよ!

 あー!あー!うー!おー!

 はぁ………落ち込むなぁ……。

 高望みし過ぎたのかな?

 実際は色々詳しく知れるけど、欲深い人ほど効果が薄かったりする?

 ……そんなわけないかー。

 でも鑑定さえあれば何でも知れるとは思ってたし、高望みしてたのは間違いないねー。

 仕方ないじゃん、私は欲望に忠実に、強欲に生きるって決めてるんだから!

 スキルに強欲があったら私はもう持ってるくらいにはね!

 

 《現在所持スキルポイント39530です。スキルポイント100を使用してスキル「強欲」を取得しますか?》

 

 お、え?お、おう。

 強欲ってスキル、あるのね。

 これは……私のためにあるのでは?

 流石にそれは言い過ぎかもしれないけど、天の声さんが言うのなら取っちゃおう。

 強欲、七大罪の中の1つだね。

 厨二病発病してた時にニヤニヤしながら調べてたから覚えてる。

 ……思いだしたら恥ずかしくなってきた。

 やっぱ取るのやめようかな?

 いや取ろう。

 スキルポイントはたったの100。

 鑑定の5分の1だ。

 もしダメダメなダメスキルでも消費は少ない。

 取りまーす!

 

 《スキル「強欲」を取得しました。残りスキルポイントは39430です。》

 《条件を満たしました。称号「強欲の支配者」を獲得しました》

 《「強欲の支配者」の効果により、スキル「鑑定LV10」「征服」を獲得しました》

 《スキル「鑑定LV1」が「鑑定LV10」に統合されました》

 《熟練度が一定に達しました。スキル「禁忌LV1」が「禁忌LV3」になりました》

 

 お、おう。

 なんかすごい手に入った。

 さっき取った鑑定が一気にLV10になっちまったよ。

 これ、鑑定取ったの損じゃない?

 い、いや鑑定はスキルがスキルポイントで取れるということを教えてくれた!

 だから、無意味じゃなかった…はず…。

 

 さて、LV10になった鑑定の力、見せてください!

 

 『ワーストワーム(飯田麻衣) LV3

  ステータス

 HP:108/108(緑)+10(詳細)

 MP:24/24(青)+20(詳細)

 SP:108/108(黄)+30(詳細)

   :108/108(赤)+30(詳細)

 平均攻撃能力:254(詳細)

 平均防御能力:24(詳細)

 平均魔法能力:124(詳細)

 平均抵抗能力:24(詳細)

 平均速度能力:124(詳細)

 スキル

 「酸攻撃LV1」「飽食LV1」

 「酸耐性LV1」

 「食いしん坊LV1」

 「鑑定LV10」

 「強欲」「征服」「禁忌LV3」

 「外道魔法」

 「n%I=W」

 スキルポイント:39430

 称号

 「食いしん坊」「血縁喰ライ」「強欲の支配者」』

 

 おー!これぞ私の求めていたもの!

 素晴らしい!

 どれから見よっかなー?

 うーんと。

 食いしん坊!コレにしよう!

 

 『食いしん坊:スキルレベル×100分基礎攻撃能力にプラス補正がかかる。また、レベルアップ時にスキルレベル×10分の成長補正がかかる。さらに、食べ物に直面した時スキルレベル×50%分全ステータスが上昇する』

 

 ほほう?

 食べ物に直面した時、スキルレベル×50%分全ステータスが上昇…とな?

 だから兄弟くんを食べようとした時力がみなぎったのか!

 そういえばあの時その事をアナウンスされてたようなされてないような……。

 えーっと?今はLV1だからー?

 半分ぐらい上がるのね?

 そうなのね?

 

 次に強欲!

 

 『強欲:神へと至らんとするn%の力。殺害した相手のステータスやスキル、スキルポイントを一部取得する。また、Wのシステムを凌駕し、MA領域への干渉権を得る』

 

 お、おお!

 すごい!…かも!

 いや凄い!

 要はこれ、倒したら相手の力を奪うってことだよね?

 力を奪う能力って言ったら最強格のイメージがあるよ?

 ふふっ私は今!究極のパワーを手に入れたのだー!!

 はっはっはー!

 お?

 それ以外のスキルも中々良いスキルばっかじゃん!

 よくわからないスキルもあったけど!

 これなら誰が来ようとも負けるはずがない!!

 

 ふぅ…さて、次は称号かな?

 

 『食いしん坊:取得スキル「食いしん坊LV1」「飽食LV1」:取得条件:無限の食欲を持つ:効果:あらゆるものが食欲の対象になる:説明:無限の食欲を持つ者に送られる称号』

 

 無限の食欲とは失礼な!

 確かに記憶にある限りだとお腹いっぱいになったこと無いけどさー!?

 それでも無限の食欲って!

 もうちょいソフトな言い方無かったの!?

 例えば底なし胃袋とかさ!

 

 『強欲の支配者:取得スキル「鑑定LV10」「征服」:取得条件:「強欲」の取得:効果:攻撃、魔法、速度の各能力上昇。強化系スキルに+補正。支配者階級特権を獲得:説明:強欲を支配せしものに送られる称号』

 

 おー!太っ腹な称号!

 色々上がってなんか特権獲得してる!

 いやー!強欲とって良かった!

 

 ふふ、これは中々良いスタートを切ったんじゃなーい?

 ワームに転生したのはアレだけど、それ以外はバッチリ!

 前世にはちょっと未練があるけど、今戻っても駆除されるだけだし異世界ライフを楽しもう!

 あ、でもドラゴンとか出てこないでくださいお願いします。

 

 

 

 




 
 次は余裕があったら。
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。