最近、私はある事に気づいた。
それは私は無機物も食べられるということだ。
土とか石とか。
そういえば穴を掘る時も土を食べて掘り進めてたからもっと早く気がつくべきだったかも。
で、無機物も食べられると知ってそれが何になると言うんだ!って最初は思ったけど案外使える…というか必須レベル。
なぜかって?
無機物を食べてもSPが回復するんだよ。
食べてるって判定なんだろうね。
そして私には飽食がある。
この意味が分かるな?
HP、MP、SPともにめちゃくちゃストック出来る!
まだ最大までストック出来てないけど順調に増えていってる。
ちなみに現在、私は森に向かっている。
地面を食べながらね。
おかげでめっちゃ通った感じの跡が残ってる。
傍から見たらとんでもない光景だろうけど、傍から見ようとする生物はここには居ないので何も問題はない。
レベルが上がらないしやっぱり問題はありありだ。
土じゃなくて肉を食べたいし。
ズルズル…
口の中にヌルい土がぞこぞこと入ってくる。
口の中で土同時がぶつかり合って、喉に絡みついてくる。
気道に入ってもおかしくない。
今の所そういうのは起きてないけど。
土の中に混ざった小石が私の内側を打ち付ける。
むせそう。
ズルズル…
ストックストック!
どんどん貯まるぜ!
でも美味しくない。
今まで不味いものを美味しく感じてきた私でも、こればっかりは美味しく感じない。
不味い。
でも周りに生き物はいないし…自然保護は大切だね。
空が赤に染まってきた頃
私は遂に森に到達した。
食べながらだったせいで予想以上に時間がかかった。
じゃあ食べるなって?
ストックしておきたかったんだ。
SPも大事だけどやっぱり一番大切なのはHPですよ。
それを現在の最大までストックしたってわけです。
HPはいくらあっても困らないからね。
防御力を突破されてもHPがあれば大丈夫!
そう思いながら木をかじる私。
土と違ってまぁまぁ美味い。
水分が含まれてて、メキって感じの食感が良い。
偶に虫が入ってるのがある。
それは当たりだね。
現在20本目。
なんというかスナック菓子を食べてる気分になる。
サクッじゃなくてメキッだけど。
「キキキキ……」
私が木を堪能していると上から声が聞こえた。
期待を持ちながら声の正体を探る。
そこにはネズミの顔にフクロウの体をした生物がいた。
鑑定!
ステータス…ヨシ!
スキル…ヨシ!
勝てるね!
いただきます!
ごちそうさまでした!
今回は丸呑み。
少しお腹の中で暴れられたけどすぐにそれはなくなった。
私の消化が早いのか、この生き物の諦めが早いのか。
どちらにせよ丸呑みは失敗だった。
なぜなら全く味がわからなかったから!
私が動物を好むのは味がいいから!
その味を感じないのは駄目だよダメダメダメ!
こんなのじゃ動物を食べてる意味がない!
吐き出してもう一度食べようか考えたけど消化は終わってた。
はや。
次の日
メキメキ!バキバキ!
森に木の折れる音が鳴り響く。
一体誰が……。
もちろん私だ。
もう何本食べたのか覚えてない。
木に経験値がないのか、あるけど微量なのか知らないけどレベルアップはしていない。
あ、でも飽食はレベルアップした。
また最大値が増えたよ。
木を食べまくっているからか動物は一切見ていない。
最後に食べたのはあのネズミフクロウで、それ以来木しか食べてない。
いや、土も食べたかな。
どちらにせよ動物を食べてない。
木は木で美味しいけど、やっぱり動物。
早く欲しい。
肉が恋しい。
プリーズプリーズ!
私に肉を恵んで!
まだまだ木があるけど、このままじゃ森がなくなっちゃう!
あと数週間もあれば。
そんな私の思いが届いたのか分からないけどある生物が私の前に現れた。
それ二本の足で立ち二本の腕で道具を扱い、言語を使う生物。
人間だ。
5人くらいの。
この世界に転生して、初めての人達。
私が人だったらここから物語が始まって色々ありそうだけど、私はワームだ。
そしてこの人達は私に武器を向けてる。
冒険者っぽい。
私と友好的な関係を築きに来た…わけではないよね。
どう見ても私を討伐にきた冒険者一行。
うげ、異世界の人ってものすごく強いイメージがあるんだけど。
鑑定。
…平均ステータスは300くらい?
スキルの量は普通の魔物よりは多いかな。
ふむ。
勝てる。
…なんで私は勝てるかどうかなんて考えてるの?
この姿じゃ人と和解なんて出来っこない。
だからこの人達から逃げるべきなんだ。
逃げる?
なんで?
食べたくないからだ
そう思いながらもステータスは上昇してる。
つまり私はこの人達を食料として見てるわけだ。
これは食いしん坊の称号の効果でもあるし、ワームとしての本能でもある。
食えって。
貪れって。
口の中にはプールが出来そうなほどよだれが出てるし、ポタポタと溢れてる。
腹の虫は鳴り響いてるしなんだか牙が疼く。
人としての理性とワームとしての本能がせめぎ合ってる。
食べたくないのに食べたい。
食べたいのに食べたくない。
そんな矛盾した思いが殴り合ってる。
私が葛藤してる間に冒険者達は私に攻撃を仕掛ける。
閉じることのない口に矢が入り込むが、痛みを感じない。
ステータスが上昇した私の防御力は約4200。
刺さるわけがない。
火の魔法を放ってくる。
熱いじゃなくて温かい。
「***********!!」
1人の冒険者が何かを叫ぶ。
それと同時に冒険者達が逃げていく。
…逃がすか!
いや、違う。
逃がさないと。
なんで?
なんでだっけ。
そうだ、人を食べちゃいけないんだ。
あれ?なんで食べちゃいけないんだっけ?
元人としてありえないことだから。
でも今はワームだし人じゃない。
一人くらい食べても良いでしょ。
いや駄目だ!
ダメダメダメ!
「***…!」
私の目の前で1人の男が腰をぬかしている。
その周りにはさっきの冒険者達が。
あれ、この人は誰だ?
私移動してたっけ?
いつのまに?
近くに馬車があるし、御者かな。
荷物は沢山の食材と生き物の死体だ。
そうだ、この溢れそうな食欲をこの食材で満たそう。
私は体を折り曲げ荷物を貪っていく。
冒険者達が騒いでるけど無視だ無視。
横から剣で刺されるけど私の皮膚を貫くことはなかった。
魔法を当てられるけどどれも効果はない。
慌てる冒険者達を置いて私は荷物を全て平らげた。
…駄目だ、全然おさまらない。
私はこの食欲を紛らわすために馬車を食う。
木が食べられたのなら木でできた馬車ぐらい食べられるだろう。
そんな私の予想通り、消化ができ飽食のストックが増した。
足りない。
次は土を食う。
駄目だ、すぐそこに美味しいものがいるのにこんなの食べてられない。
口から唾液が溢れてくる。
私の目には近くにいる腰が抜けてる御者しか映ってない。
冒険者達は私にビビっているのか近づいてこない。
御者に口を近づける。
溢れた唾液が御者にかかる。
本当に美味しそうだ。
匂いで分かる。
口を開ける。
ちょ、ちょっとだけなら良いよね。
ほんのちょっとだけ。
御者の頭を口で覆う。
牙は立ててない。
だから傷一つないはずだ。
御者が口に触れるたびに美味しさが広がる。
今まで食べたどの生物よりも美味しい。
表面でこれだ。
もし噛むとどんな味が広がるんだろう。
きっと美味しいに違いない。
噛みたい。
咀嚼したい。
味わいたい。
駄目……?
もう食べて良いような気がしてきた。
良いよね。
この人も酸素不足なのか抵抗しなくなってるし。
今離せば生きれるだろうけど、美味しくて離したくない。
なんとなく人の味を覚えた動物を処分する理由が分かった気がする。
こんな美味しいもの、ずっと食べていたくなるよね。
グシャ!
《経験値が一定に達しました。個体、デスワームがLV1からLV2になりました》
《経験値が一定に達しました。個体、デスワームがLV2からLV3になりました》
《経験値が一定に達しました。個体、デスワームがLV3からLV4になりました》
《経験値が一定に達しました。個体、デスワームがLV4からLV5になりました》
嗚呼…美味しい。
旨味が口の中だけでなく脳にまで響き渡ってくる。
予想以上の美味しいだ。
上がなくなった御者を口に運ぶ。
グロいゲームとかでよく聞く音が口の中で鳴り響く。
それと同時に美味しさが広がり、その美味しさをさらに感じるために噛む。
また音がなる。
噛む。
何度も噛む。
そして飲み込む。
私は呆然としている冒険者達に這い寄る。
口を近づけると状況が整理できたのか私から離れようとするけど、遅い。
その人の足に噛みつきそのまま持ち上げる。
私はそのまま空を向いてその人が太陽と重なった瞬間に口を大きく開ける。
すっぽりといった感じで入り込む。
噛む。
飲み込む。
「****!!!」
残りの冒険者達が逃げていく。
今度は逃さない。
逃がす気はない。
口から酸性液を射出して背を向けて走る冒険者にかける。
冒険者は音を立てて溶け出し、動けなくなったところを口に入れる。
噛む。
飲み込む。
今回は柔らかく噛む回数は少なめだった。
次の冒険者に近寄る。
必死に私から逃げてるけど私のほうが速い。
私は近づきながら毒液を射出、頭から被らせた。
悲鳴が上がる。
口に入れる。
噛む。
飲み込む。
残りの冒険者2人に酸性液をかける。
動けなくなったところを食べる。
贅沢に2人同時だ。
美味しさ2倍にはならなかった。
でも食べたって感じがする。
食欲は…あまり満たされてない。
まだまだ食べられる。
…今更になって人を食べたことに驚く。
でも心に罪悪感はない。
食べちゃったなーぐらいの気持ちだ。
私はどうしちゃったんだろう?
前世の私ならいくら美味しいとはいえ人を食べるなんてしなかった。
体だけでなく心までワームになっちゃったの?
否定はできない。
今だって赤い土を食べてる。
そしてそれを美味しいと感じてる。
腹は全く満たされない。
もっと食べたい。
気がつけば赤く染まった土は食べきってる。
もう私は人じゃない。
今はワームなんだ。
人だった記憶があるだけのただのワーム。
はぁ……。
あー。
なんか自分がなんなのか分からなくなってきた。
ワームであることは分かってるんだけど、元人としての意識がそれをあれこれ理由をつけて否定してる。
ワームは自分がなんなのか考えたりしないだとか、悩むのは人の証拠だとか。
あー…。
……とりあえず進化しよう。
悩むのはその後で。
《進化先の候補が複数あります。次の中からお選びください。
オルゴイコルコイ
デッドリーワーム》
ふーむ?
オルゴイコルコイって聞いたことがあるぞ?
たしかUMAじゃなかった?
つまりUMAになれるってこと?
とりあえず進化先を鑑定っと。
『オルゴイコルコイ:進化条件:一定以上のステータスを持つワーム型の魔物:説明:発見数が少ないワーム型の魔物。非常に強力な毒と酸を持つ』
『デッドリーワーム:進化条件:デスワームLV20:説明:デスワームの進化種。非常に高い戦闘能力を持つ』
どっちも魅力的だ。
でもまぁ、オルゴイコルコイかな。
前世で知ったものなら触れただけで即死するレベルの毒を持ってるみたいだし。
異世界補正でもっと強力になってるのかも?
まぁそういうのが無くてもオルゴイコルコイの方が進化条件が変わってるし強いでしょ。
一定以上のっていうのがポイントだ。
デスワームに進化する前に攻撃能力が5000超えてた私が進化出来なかった。
つまり、非常に高いステータスを持っていなければ進化出来ない種族だと思われる。
これは期待が膨らむ。
《個体デスワームがオルゴイコルコイに進化します》
はいよ。
そしておやすみ!
おはようございます。
お?
視線がまた高くなってる!
高さ、いや太さは2〜3mはあるかな?
となると長さはどれくらいだろ。
仰け反らせて見れるかな?
お、見えた見えた。
うわー…。
長い。
50mはありそう。
予想以上だ。
そして体が真っ赤。
ところどころ黒い斑点があるけど、赤い。
UMAだねぇ…。
ステータスは?
『オルゴイコルコイ(飯田麻衣) LV1
ステータス
HP:1341/1341(緑)+761(詳細)+755
MP:936/936(青)+875(詳細) +734
SP:1331/1331(黄)+953(詳細)+748
:965/1129(赤)+0(詳細) +743
平均攻撃能力:10809(詳細) +4943
平均防御能力:2332(詳細) +1583
平均魔法能力:1199(詳細) +823
平均抵抗能力:1113(詳細) +824
平均速度能力:2558(詳細) +1646
スキル
「酸大攻撃LV2」「毒大攻撃LV2」「酸大強化LV1」「猛毒強化LV1」「破壊強化LV5」「斬撃強化LV4」「貫通強化LV1」「視覚強化LV6」「聴覚強化LV3」「嗅覚強化LV2」「触覚強化LV5」
「跳躍LV3」「射出LV8」「命中LV5」「回避LV4」「強酸性液LV1」「猛毒液LV1」「連携LV4」「剣の才能LV1」
「苦痛耐性LV8」「酸大耐性LV2」「猛毒耐性LV1」「打撃大耐性LV3」「破壊大耐性LV3」
「食いしん坊LV10」「剛毅LV10」「城塞LV3」「韋駄天LV3」「生命LV7」「瞬身LV4」「持久LV1」「魔量LV1」
「鑑定LV10」「敵感知LV5」「魔力感知LV1」
「気力付与LV1」「魔力付与LV1」「気闘法LV1」
「HP自動回復LV1」「SP消費緩和LV1」「SP回復速度LV1」「MP消費緩和LV1」「MP回復速度LV1」「魔力操作LV1」
「飽食LV4」「矜持Lv2」「強欲」「征服」「禁忌LV4」
「外道魔法LV1」「火魔法LV1」「風魔法LV1」「回復魔法LV1」
「n%I=W」
スキルポイント:13557
称号
「食いしん坊」「血縁喰ライ」「魔物殺し」「魔物の殺戮者」「人族殺し」「強欲の支配者」』
え?つっよ!
攻撃能力なんて素で10000じゃん!
勝ったな、風呂入ってくる。
……今の私だと風呂を食べちゃいそう。
そんなことより、これはもう負けないんじゃない?
素でこんだけ硬いんだし、もしもの為のスキルポイントはもう取っておかなくてもいい気がしてきた。
よし、決まった。
スキルポイントで有用そうなスキルをじゃんじゃん取って、さらなるパワーアップをしよう!
それじゃ、鑑定でどんなスキルがあるか探す…前に寝よう。
もうすぐ暗くなるし。
色々疲れたし。
進化で寝たのにまた寝るのかって思うけど、寝たい気分だし仕方ない。
枕なんてないから寝転がって目を閉じる。
そういえばワームに目なんてあるの?
まぁいいか。
おやすみ。
ワームが土やら食べれるのはエルロー蛙くんがそこらの石を食べてるとのことなので。