ここからは新章になります!
upheaval
あの南アメリカでの敗戦から、世界は一変した
陥落したウォール・オブ・ジェリコ。
アメリカ方面軍の壊滅。
侵食された南アメリカ大陸。
なにより、初めて世間に映像として周知されたアポストルとエヴァの戦い。
南アメリカでは避難する市民を護るために、市街地での戦闘になった。
そのため、一部逃げ遅れていた市民がSNSにアップしたり、ジャーナリストの撮った映像が世界を駆け巡った。
巨大生命体と巨大ロボットの戦い。
それらに映るのは、市街地に侵入したアポストルを瞬時に倒し、襲来してくる敵を次から次へと倒していくエヴァンゲリオンの姿。
映像によっては映る機体が違うが、そのどれもが敵を圧倒していた。
そんな圧倒的に強いエヴァンゲリオンの姿に熱狂する世間だが、同時にそれは、それらのエヴァがありながらも敗北したUNやヴィレへの批判に繋がった。
南アメリカの半分を失い、戦力の壊滅したアメリカ方面。
複合要塞の一次防衛線を失ったアフリカ方面。
それらの国に再燃した反ヴィレの機運。
しかし、今度は市民の後押しまであった。
そこで彼らが出した案が、ナンバーズの接収案。
戦地であるアメリカ大陸、アフリカ大陸の代表国がナンバーズを接収するという事だ。
それに反発するのはユーロ、中国、ロシア、日本とそれらの周辺諸国であった。
国連ではそれらの対立が激しくなり、議論が紛糾する。
幸か不幸か、大規模な戦力を消費したアポストルは長いインターバルを挟んでいた。
しかし、次の襲撃がいつかなんて人類側には解らない。追い込まれている国に焦りがあったのは誰でも解っていた。しかし、高を括っていたのだ
こんな時勢に人間同士で争う事なんてしないだろうと…
最初に暴発したのはアメリカ合衆国だった。
国としてのプライドが許さなかったのか、いや、なんだかんだ市民もアメリカが無くなることを許さなかったのか…
対アポストルの戦力が壊滅したといっても、人間と戦う分の戦力は有り余っていた。
ヴィレ本部への侵攻作戦。
ヴィレ本部が独占するナンバーズとその専用機であるエヴァンゲリオンの接収を目的とした戦争。
アメリカの電撃戦により血に染まる本部施設、思い出すのは旧劇場版。
しかし、ヴィレが本格的な軍事組織だった事で、対人戦力がネルフの頃よりも大きく強化されていた事と、対人戦闘のプロ集団である戦略自衛隊の援軍が早く駆けつけてきた事。
さらにロシアが誇る特殊部隊スペツナズやイギリスのMI6やSAS等がいつの間にか本部内に展開していた事や、いくつかの所属不明部隊がヴィレの味方として参戦していた事が分かれ目だったのだろう。
双方血で血を洗う戦いの末の勝利だが、そこに歓声は無かった…
こんな時に、人間同士で殺し合いをしたことは、全ての関係者にとって悪夢みたいな事だったから。
救援のUN軍や中国軍にも、被害が出ていた。
アフリカや一部アジアの国からの攻撃を受けた為だ。
まさか、アジアからも離叛する国が出ていたのは驚いてしまった。
もはや賽は振られた。
しかし、出目が最悪なのは分かりきったことなのに…
世界へ広がる戦火。
それを一時沈めたのは皮肉にも人類の敵だった。
アポストルには人類の都合など知ったことではないのだから。
アポストル、人間同士の戦いと、被害を受けていたヴィレは初動が遅れてしまった。
それに敵の目標はアフリカ大陸。
もはやヴィレにとっては敵となっているアフリカでの戦いは、足並みなど揃うはずもなく甚大な被害を出してしまった。
勝利する事が出来たのは、アポストル側も本腰を入れた侵攻ではなかったからだ。
世界が感情に支配されていく。
理性で考えれば、争いを収める事が当然であるのに、それを行うことができなかった。
既に出てしまっていた犠牲というものが、手を引くという行動を抑えてしまっていた。
これ以上現状のまま、アポストルの侵攻を抑えていける余力は無かった。
下される決断は、防衛戦略Cの17。
本部及び、周辺諸国とロシア、中国近辺での防衛を選択。
ユーロ含め、その他の国は国民総避難となった。
離叛した国々に関しては、アフリカやアメリカは国民の自主性に任せるとの事。
アジアの離反した国に関しては立地の都合上、ロシア・中国軍が大規模な軍で制圧。
それが上層部の決定だった。
過去に思いを馳せていたが、ふとエントリープラグ内の時計を見ると、今日が以前マリの決めた新生日だと気付く。
そういえば、4年前のこの日だったな…
初めてアポストルが襲来したのは。
空に浮かぶ私の眼下に広がるのは、赤の広場。
ここは多くの避難民を受け入れ拡張されたロシア連邦の首都ニュー・モスコー。
共産主義は変わらぬも、執政するのはマギセカンド。
機械により管理された国。
代表の人間は居るも、大まかな指針を決めるだけ。
議会は形骸化しており、ただ市民の意見をマギセカンドへ伝えるだけの存在となっている。
現在、赤の広場近くのクレムリン宮殿にて現国連の会議が行われている。
私はその護衛としてエヴァMark7で空に浮いている。
護衛とはいうが、誰かを護れなんて命令はされていない。
これはただの政治的パフォーマンスに過ぎない。
私のMark7の周りには、同じく白に統一されたウルトビーズが幾重にも傾がった円を描くように陣形を組んでいる。
市民はそれを見上げ、写真を撮ったり、見物したりしている。
いまや露見してしまったナンバーズや、そのエヴァは、もはやアイドル的な存在になってしまっている。
特にナンバーズそれぞれにファンがついたりと、以前とは全く違っている。
それもこれもネット上に私達パイロットの情報をブチ上げた某国のせいだ。
そして上の人間は、それを逆手にとって偶像を仕立て上げたという訳…。
私のエヴァMark7に求められているのは、神聖さや神々しさといったもの
白く、女性の様なスマートさがある機体。
腰部に設置された大きな翼部ユニットにより、見た目は神話に登場する天使の様なエヴァである事から、総合的な人気が高いとの事だ。
そして、そのMark7と似た見た目のウルトビーズを指揮することにより、天使の軍団の完成となる。
わざわざこの為に白くなってしまったウルトビーズを見つめる。
これ槍を持ってなければ、端から見て私の事判らないよね?
…ウルトビーズに槍持たせてバックレようかな?
ニュー・モスコーにそびえ立つ2つの巨大な建造物。
人類補完委員会が建設した大きな軌道エレベーター。
衛星軌道まで伸びるそれらを眺めながら、委員会の行動に考えを巡らせる。
従来の人類補完計画はリリスを完全に失った今、遂行できるのかは未知数だ。
代替案があるのか、もしくは補完計画を諦めたのか…
悲願たる人類補完計画を諦めるとは到底思えないのだが。
今、委員会が強く推し進めているのがレガリア細胞を使ったIFS(イメージフィードバックシステム)の普及だ。
IFSを取り込むには検査が必要で、ある程度の金額がかかるのだが、それを委員会が負担し、検査に合格したら無償でIFSを組み込めるようになっている。
このIFSとMプラン、F計画。そして人類補完計画。
これらは繋がっているのかな?
それとも、私の考えすぎなのか…
既に余裕すら滲ませる委員会には、どこか不気味さを感じざるを得ない。
本部へ帰還する頃には、太陽が沈み闇が世界を覆っていた。
ケージから出て本部の展望エリアで、人工芝の上で横になり天井を見上げる。
そこには星空と輝く月が映る。
この天井は雲を除いた現在の空が映される仕組みになっている。
創られたそよ風を身体に受け、破れた聖書を取り出し眺める。
過去、南アメリカ撤退戦の際に助けた女の子から貰った御守り。
たまにこうやって、自分が戦う理由を再確認している。
ふと感じる人の気配
「ななちゃん…今宵も月が綺麗ですにゃ。」
破れた聖書から目線を外し、声の方に顔を傾ける。
そこに立っているのは本を持ったマリの姿。
シンプルなスキッパーシャツとスカートを着用している。
「マリちゃん、本読みに来たの?」
「連れないね…本持ってこなければ良かったかな?」
そう笑いながら、私の横に腰掛ける。
「ななちゃんは、何時も見世物になるとここに来てるからね。」
「そうかもね。嫌いなんだ。知らない人に注目されるのは…」
「そんなシャイな所も粋なものだにゃ。」
「マリちゃんは、上手く隠れてるよね?
どうやってるの?」
「ななちゃんが無防備過ぎると思うにゃ。
他人の気配や視線に鈍感なのは、あまり良くないよ。」
私の方を向き、横になりながら頬杖をつくマリの顔が映る。
「今の御時世、他人に敏感になるには、もう少しATフィールドを薄くしないと駄目かもね。
まあでも、ななちゃんはそのままで良いよ〜。」
チェシャ猫のように笑うマリ。
なんだ?良からぬ事を考えてるな…
ムッとした私に気付いたのか、満面の笑みを浮かべる彼女だが、僅かにIFSを動かしているのを感じる。
電子空間をトレースする私の脳裏に映るデフォルメされたマリは、何かに厳重なロックを掛けている。
私の視線に気づいた電子空間のマリ、同時に現実空間のマリは笑みが引きつる。
「…テヘペロ。見逃してお代官様〜!」
可愛いけど許さん!
電子空間で追いかけっこしながら、現実ではお互いに月を見上げる。
………。
日を跨ぎ、午前のシフト。
現在は2号機ケージで2号機レガリア改の調整をしている。
四肢と左側の眼球をレガリア製に換装してある為に、その調整をアスカと行っている最中だ。
『どう?アスカ?』
私の質問に少し考え、アスカが答える。
『…良さそうね。感覚のズレを感じないわ。』
通信越しに映るその顔は左眼以外は差異がない。
4年前のあの撤退戦において、左の視神経が焼き切れてしまったアスカは、左眼にレガリア細胞を移植し、身体にIFSを組み込んだ。
その弊害か、左眼の色が金色に変わっている。
エントリープラグから出てくるアスカ。
「調整お疲れ様!」
「アンタもおつかれ。少し早いけどご飯でも行く?」
「そうしようか。」
時計を見ると、昼前だ。
周りの職員にも休憩を告げる。
喜びの声を上げる職員達の声を聞きながら、脳裏でデータを纏めていく。
白衣を翻し、ケージの外に出る。
そこには、既にシャワーを浴び終わったアスカが既に待っていた。
赤いジャケットとスカートを着たアスカの姿は、何処かミサトさんを思い出す。
食堂へ向かって歩いていく途中、後から駆けてくる足音が…
「ユウカ、アスカ!二人ともご飯?一緒に行こ!」
少し寝癖のついた茶色の髪の毛。
「呆れた、もしかしてアンタ、今まで寝てたの?」
溜め息をつき、マナへ近づくアスカ。
そのまま、寝癖を手櫛で撫で付ける。
「あれ?残ってた?」
照れ笑いを浮かべるマナ。
スプレーでもかけてきていたのか、直っていく寝癖。
紺色のシンプルなシャツとスカート、シンプル襟元から覗くネックレスが煌めいている。
そのネックレスは写真が入るタイプで、中には14歳の彼女とシンジ君が芦ノ湖で撮った写真が入っている。
こんな写真有ったんだと驚いた覚えがある。
「それにしても、何か3人でつるむの久々って感じだよね?」
マナがアスカの隣で歩きながらつぶやく。
「最近は誰かしら任務が入ってたからね。」
「ほんと見世物じゃないっちゅーの。私達は。」
アスカが吐き捨てるように言う。鬱憤が溜まっているみたいだ。
アポストルへの対処は戦力を集中させている為、私達抜きでも現状は何とかなっている。
それにインターバルが少し長くなっているため、私達の仕事にパフォーマンスに分類された物が少し増えてきている。
人類の生存可能領域を削っての遅滞戦闘は功を制しているが、これはただの時間稼ぎに過ぎない。
海岸線を守る要塞群と、陸続きのルートを守る巨大な塹壕。
一部海域はアンチLシステムにより青い海へと姿が変わっている。
この青い海にはアポストルが近づいてこれない。
アポストルは封印柱にも近づきたがらない為、大規模な侵攻ルート以外では、封印柱近辺も安全地帯となっていた。
ヴィレを擁する国々は連合して、もはや国という境はあまり無いが、反ヴィレの国々はほぼ残っていなく、封印柱の周りに集落が点在しているだけとなってしまっている。
その多数の集落を助ける為に、連合国内にクレーディトと呼ばれる組織が出来たのには運命というものを感じる。
色々と喋りながら食堂まで歩き、食券機でご飯を注文する。
各々注文したご飯を持ち、空いていた四人席へ座る私達。
アスカはミートボールパスタ。
マナはガパオライスプレート。
私はカツ丼大盛りに稲庭うどんのセット。
綾波さんは、野菜丼セット。
……
ん?
「エ、エコヒイキ!声くらい掛けなさいよ!
びっくりするじゃない!」
「こんにちは。」
うん、こんにちは。じゃなくてっ!
「綾波さんいつから?」
マナも気づいていなかったようだ。
「今よ。」
しれっと答える綾波さん。
サマーセーターにロングスカート。そして長い髪を1つにまとめている。
それ、前に私と決めたコーディネートだ。
「綾波さん、似合ってるね。」
私の言葉に微笑みを浮かべている。
それにしても、段々と神経が図太くなっていく綾波さん。
外では全く表情を変えない為、容姿と相まって、その神秘性からアヤナミストと呼ばれるファンがいるとか。
弁当を受け取って、照れている学校制服の綾波さんの写真が高値で取引されているのを見たときが有る。
食事も終わり、午後のシフトの為に戦艦ドックへと歩いている最中、サクラとトウジさんを見つけた。
白衣を着たトウジさんは、現在医療班で勤務している。凄いよね医者になったんだ。
「あ、ユウカ。おつかれ〜。」
サクラの胸元には医療の参考書。
目元には少し隈が出来ている。
「サクラ、お疲れ様。
頑張るのも程々にね。」
「そんなこと言って、差し入れに眠気覚ましの栄養ドリンク持ってきたのユウカやんか?」
「試験前には寝るんだよ?」
そんな私の言葉にサムズアップするサクラ。
「妹が世話なっとります。」
と挨拶するトウジさん。
「あ、この度は結婚おめでとうございます。」
トウジさんへお辞儀する私。愛でたく、洞木ヒカリさんと結婚したことを祝う。
私の周りにはハッピーウエディングの電子アイコンが浮かぶ。
同時にギフトブックを送信する。ご祝儀だ。
「これは、いやーすんませんな。お返し後で贈りますんで。」
と頭に手を当てお辞儀するトウジさん。
それでは、と先を急ぐ私。
ヤバい、少し遅刻かも…
午後からはシャマシュの新武装、シリウスロアの調整と試射がある。
このシリウスロアは、簡易複製した自壊性アルベスの槍を撃ち出すレールガンだ。
「これを使う日が、来て欲しいのか、来ないで欲しいのか。迷っちゃうね。」
そのレールガンを見ながらマユミちゃんが呟く。
「私としては、しっかり機能してくれるかが心配です。どちらにせよ使う日が来るのは確定事項ですから…まあマユミちゃんの言いたい事もわかるけど、私は、その使う日が待ち遠しいかもしれません。」
「そうだね…。出来れば私達のタイミングで使いたいね。」
マユミちゃんの何処か決意した表情を眺める。
強さを手に入れた彼女は、どこか芯のある雰囲気を持っている。
シンジ君、今のマユミちゃんを見て、ひと目で解らないんじゃないかな?
新兵器の調整と試射も終わり、一段落。
廊下を歩いている時、急に目の前が真っ暗になる。目を覆われる感触。
「だーれだ。」
…?
え?
んん?
誰?
……?
まさか…
「えっと、カヲル君?」
「正解だよ、長門さん。」
マジでカヲル君だったよ…
え?なんで?
「え、えっと、どうしたの?カヲル君。」
「いや、すまないね。シンジ君とさらに仲良くなる為の練習を、ね。」
ええ…誰に教わったのそれ。
「うん、いいんだけどね。」
「結構上手くいったと思ったけど、どうだい?」
「足音しなかったからビックリしたよ。
きっとシンジ君とも、更に仲良くなれるよ?
それにしても、誰に教えてもらったの?」
「?この前長門さんが言っていたじゃないか。
サプライズと言うやつだよ。」
…。うん。私か…。
いや、私なのか?
ごめんね、シンジ君。
駅のホームで、後ろにカヲル君が立っていても許してね。
あ、大丈夫だよ。
私のチョーカーは外さなくていいからね。
短めですみません!
作者は民主主義、共産主義共に一長一短があると思っています。
大事なことなので2度目言います。
アメリカ嫌いではないですよ?
そして共産主義が好きな訳ではないです!
題名を日本語にすると激動になります。