夢を見ている。
…私ではない、何者かになった夢だ。
凄く断片的で、支離滅裂
ただ何かを求め、焦がれる感情。それだけがはっきりとしている。
その求めていた何かを手に入れて、ただ一つのオモイを遂げようとしたとき、細長い物体を手にした、輝くヒト型に邪魔をされる。
新しく成れる自分を留めておく何か
夢の中では、そのヒト型に狂おしいほどの憎悪を感じるのだが、目が醒めてしまえば、その気持ちが一転する。
どうしても、その白いヒト型に想いを馳せてしまう。
ただ、悲しくなるのだ。
どうしても…
起動実験より早くも一週間が過ぎようとしている。
模擬体を通してのエヴァMark7とのシンクロテストは、起動実験の時よりも、うまく繋がれていない、そんな感じがする。
模擬体を通しているからか、それとも別の要因があるからなのか…
この日のシンクロテスト後に赤木さんより、私に通達があった。
「長門さん。3日後の1400より、エヴァMark7の実機動作テストを行います。」
実機での動作テスト?
エヴァって動かすだけでもお金がかかると聞いたけど。
そんな疑問は置いておいて、ひとまずは頷いておく。
「そのため明日は休日として、明後日に最終的な調整を行います。
まあ、ここに来てから機体の調整や検査なんかで休みを取れなかったのは悪かったわ。故に明日はゆっくりと休んでちょうだい。」
と赤木さんが微笑む。
笑った赤木さんってかわいい、とちょっと見惚れる私であった。
シンクロテストが1800に終わったため、チルドレン全員で食堂へ移動する。
午後の遅い時間にシンクロテストがあった日は、こうやって皆で一緒に食事を摂る事が出来るが、それ以外だと皆が集まることはあまり無い。
その1番大きな理由は私がまだ小さい為だ。
それ故に、体力訓練なんかは年齢を考慮してか軽めに調整されているし、戦闘訓練に至っては、見学や型の反復等のみで皆より早く終るため、時間が合わない。
今日の私の晩ご飯はカツ丼とコーヒーゼリー。
マリはローストビーフ定食、アスカはハンバーグ定食、カヲル君は鰻重、綾波さんは焼肉定食焼肉抜き。
…ん?焼肉定食焼肉抜き?
皆が集まった際、主に喋っているのはマリとアスカの二人だ。
そこにたまに私が加わる。
「…明日の休みどうしようかな。」
急に休みとなった為、どうしたら良いのか解らない。
ついつい悩みが口に出てしまった。
そんな呟く私に反応したのはアスカ
「なによ?そんなの好きに過ごせばいいじゃない?
アンタ、趣味とか無いわけ?」
と呆れたような表情を浮かべる。
「確かにななちゃんは、空いている時間は私の本を読むくらいしかしてないね。さあ気になるあの娘のご趣味はな〜に。」
とおちゃらけながら、手にマイクを持つように、私へ向ける様なポーズを取るマリ
「いや〜、今の所、特に何もないかな…。」
やりたい事といっても、特に思いつかない。
アニメやゲームといった分野に関しては、セカンドインパクトの影響なのか、あまり無いのが現状だ。最近になって少し増えてきているみたいだけども。
「はぁ…。あんた、ほんとに7歳?大人っぽいってより、枯れてんじゃない?」
趣味くらい持ちなさいよとアスカは私の頭を乱暴に撫でる。
そんな私を微笑みながら見ていたカヲル君が唐突に口を開いた。
「それじゃあどうかな?長門さん。
明日は僕と一緒に過ごさないかい?僕も非番なんだ。」
…正直驚いた。
カヲル君が私を誘ってくれるなんて。
他人にあまり興味が無いのかと思える人がそんな事を言うなんて思ってなかったから。
焦った私は間髪いれずに答えていた。
「え!あっ、それじゃお願いしまふ!」
う、噛んだ…。
翌日、朝ごはんを皆で食べていたが、私服なのは私とカヲル君。
私服と言ってもカヲル君は何故か学校の制服姿。
この後からカヲル君の予定に付き合う事になっている。
私の朝ごはんはカツサンドとサラダとコーンポタージュ。
マリがローストビーフサンドと紅茶、アスカはパンケーキセット、カヲル君はおにぎり定食2号機バージョン、綾波さんは焼肉定食焼肉抜き。
…おにぎり定食2号機バージョン!?
デフォルメされた2号機の顔を模したおにぎり。
なんでそんな物が?
ていうか、なんで2号機をチョイスしたの?カヲル君。
原作で使っていたからかな?
あれ?アスカ、目を抑えてどうしたの?
何だ、埃が入ったのか…
そうだ、目薬使う?
朝ごはんを食べ終わり、カヲル君に案内されたのが地上施設の中庭。その広い中庭の一角には、畑が作られており、スイカが植えられていた。
スイカ畑…。
もしかして加持さんのかな?
「済まないね、付き合ってもらって。
ここは加持司令補佐が作っているスイカ畑なんだ。
どうやら最近の彼は忙しいらしくて、お世話を頼まれたんだよ。
趣味が無いというのは勿体ないと思ってね。
どうだい?試しに一緒にやってみないかい?」
そんなカヲル君の提案に、シンジ君と加持さんの原作でのやり取りを思い出しながら頷いた。
照りつける陽射し。じわじわと滲む汗。
暑さに耐えながら進めていた作業も、今は小休止。
カヲル君から、色々とスイカの世話の事を教えて貰った。
前世を含め作物を作ることなんてした事も無かったし。
大変ではあったけど、これはこれでなかなか楽しい。
…なんか下の姉弟の世話をしていた事を思い出してきた。
近くの自動販売機で買ったスポーツ飲料を飲み、ベンチで休憩する私は、以前からカヲル君に聞きたかった事を聞いてみた。
「渚君は、どうしてエヴァに乗っているんですか?」
不思議でならなかった。彼が今もエヴァに乗っていることが…
この世界では、すでにシンジ君が居ないと聞いているからだ。
それともこのカヲル君はループをしていないのかな?
そんな私の質問にカヲル君は遠くを見つめ答えてくれた。
「約束だからね。大切な人との。」
「大切な人?もしかして、碇シンジさんですか?」
「…君は聡いね。式波さんではないけど、本当に7歳なのかと思ってしまうよ。
そう、碇シンジ君。彼と約束したんだ。
精一杯生きて、そして皆を守ってほしいってね。」
「君はどうなんだい?…何故エヴァに乗ってるんだい?」
そのカヲル君の質問に、私は言葉が詰まる。
理由はいくつもあるはず。
家族の為、この世界が好きだから、私の為。
でも本当にそうなのかな?どれも嘘という訳ではないが、しっくりと来る理由ではない。
そんな事を考えている内に、何気なく言葉が出てきた。
「希望、なんだと思います。細かな理由は色々とあるけれど、エヴァに乗れば希望が生まれるから。」
「希望、リリンの生きる糧。…確かにそうだね。希望があるからこそ生きていける。」
「ええ、そうですね。この希望は碇さんが繋いでくれたんですね。」
そんな私の言葉にカヲル君は微笑んだ。
「あの、碇さんって、どうなってしまったんでしょうか?」
ふと疑問に思ったことを聞いてしまった。
大切な人の事だ。軽々しく聞くものでは無いはずなのに、つい口に出てしまった。
「シンジ君は、新生する第13使徒を封印するために初号機と共に強大なATフィールドを展開しているんだ。時間すらも遮断するという形でね。」
そんな事が可能なのかと驚く私にカヲル君が言葉を続ける。
「シン化したエヴァはまさにリリンの言う神に等しい存在なんだ。あらゆる法則を越え、願いを叶える存在。
エヴァ初号機がシンジ君の願いを叶えているんだ。
にわかには信じられないことだろうけども、それが現実なのさ。」
「そうなんですね…。
あれ?でも時間を遮断しているってことは、時が止まっているってことじゃないんですか?
な、なら碇さんは生きているのかもしれない!」
シンジ君に会えるかもしれない。
そう思い目を輝かせる私だが、対象的にカヲル君の表情は冴えない。
「そうだね。…でも助けられないんだ。
僕には、そこまでの力が無いからね。」
カヲル君を見つめる私の瞳に映るのは、悲しみの表情。
そして諦めの表情。
そっか…。だから約束の為に乗ってるんだ。
そんな彼の表情を見て、私は思った。
シンジ君の為に生きる彼に、少しでも希望を持って欲しいと。
だから私は、自分に呪いをかける
「そっか。なら仕方ないですね。…うん。」
「でしたら、私が碇さんを助けます。」
とびっきりの笑顔を浮かべて。
果たせるかもわからない、根拠なんて物も無い、ただの口約束。
私はきっとこの約束に縛られるのだと確信しながらも、後悔だけはしないと誓う。
だってシンジ君に会いたいのは私の願いでもあるのだから。
あの約束の後、カヲル君は
「渚でなくカヲルと呼んで欲しい」と言ってくれた。
渚くんって、なんか言いづらかったから私としても大助かり。
その日の晩は少し遅めの夕食。
皆の訓練が終わってから一緒に食べた。
その日、カヲル君が選んだご飯は、私と同じでカツ丼だった。
突然カヲル君呼びに変わった私にマリが、
「ななちゃんが寝取られたにゃ!」
と叫ぶわけで、そんなマリに
あんたバカー!
とアスカが顔にアイアンクローを繰り出すのだった。
…少し過激過ぎませんか、アスカさん?
ちなみに何故か、今日はマリと一緒の布団に寝ることになりました。
実機動作テスト前日、今日は皆よりも長くシンクロテストを行う。明日へ向けたデータ収集や調整の為なのだろう。
そして午後からは、エヴァMark7の機能説明がある。
そう、私はまだエヴァMark7がどういう機体なのかを聞いていなかった。
チルドレン登録の際に赤木さんが言っていたが、エヴァMark7は現行のエヴァを大きく超えた性能を有しているらしい。
それに疑問に思う部分が有る。
起動実験の際は仮設本部より離れた場所で行い、2機のエヴァを待機させることまでしていた。
説明を聞いたら、もしかしたら、その謎が少しでも解るかもしれない。
シンクロテストが少し長引いた。
少しと言っても赤木さんの少しだ…。
私は1時間を少しとは言わない。
ただでさえ、いつもより長いシンクロテスト。
それが“少し”伸びたせいか、物凄くお腹が空きました。
だがスケジュールは変わらないため、私の今日のお昼ご飯は無しである。
あぁ、私のカツ丼が…
そしてやってきたエヴァMark7の機能説明。
赤木さんのオフィスにて行うことになっている。
初めて入る個人のオフィス。
そういえばミサトさんのオフィスも入ったときないや。
因みに加持さんにはオフィスが無いとのことだ。
司令補佐って何をやってるんだろうか。
扉をくぐり、部屋に入る私を1番に出迎えたのはバターの匂い。
ああ、空きっ腹にくる。
それにしても、なんでバターの匂いが?
部屋を間違えたのかな?
戸惑い、立ち止まる私。
そんな私に声を掛けてくれたのが技術部の伊吹マヤさん。
「ユウカちゃん。いらっしゃい!先輩は少し遅れるんだって。」
「ううっ、そうなんですか…」
忙しい赤木さんを恨むのは筋違いだが、お腹が空いた。
お腹が空いたのだ!
そんな私の事情を知っていたかのように、伊吹さんがデスクの上にある物を置いた。
こ、これは!
「ア、アップルパイ!!」
「作ってみたの。ユウカちゃんが、お昼ご飯を食べれないと思ってね。」
アップルパイをこんな短時間でどうやって作ったの?
この匂いを嗅ぐに、焼きたてだと思うのだが。
…まあ良いか。
頂きます!とアップルパイにかぶりつく。
美味しい!
アップルパイにかぶりついていると、赤木さんが部屋へと入ってくる。
かぶりつくように食べている私の顔を見て、クスッと笑う赤木さん。
そのままコーヒーを入れてくれた。ミルクと砂糖たっぷりだ。
赤木さんと伊吹さんも加え、3人でアップルパイとコーヒーでブレイクタイムと行きたいところだったが、早々に本題であるエヴァMark7の機能説明に入る。
現行のエヴァンゲリオンとは違う部分を説明する赤木さん。
まず第一にエヴァMark7という機体はスーパーソレノイド機関、通称S2機関と呼ばれている動力源を搭載していること。
それにより、アンビリカルケーブルと呼ばれる電源コードを接続しなくても、制限時間なく稼働可能となっている。
第二にフィールド偏向制御装置を搭載していること。
それによりATフィールドを利用して機動力を強化することが出来るようになるため、従来のエヴァよりも高い機動力を有している。
さらに搭載されている飛行ユニットとの併用により空戦対応が可能となる。
第三に物質の生成能力と侵食能力。
瞬時の再生とはいかないまでも、切断されたエヴァの四肢を装甲を含めて再生させることが出来るはず、と言うのだ。
そして何より、物質の生成能力により、武装を自身で作ることが出来るようになるはず、とのことだ。
第四にインパクトボルトと呼ばれる、機体に内蔵された新兵器。
強力なATフィールドによって生成された、逆位相空間によるエネルギーチャンバーを形成して、この中に高圧電流を放流、エネルギーチャンバーの中で電子を圧縮加速し、そして指向性を持たせて敵に対し発射するという一種の荷電粒子砲とのこと。
最後に、素体そのものが他のエヴァよりも強力だと説明された。それにしても、なんでこんなにも強力なエヴァが出来上がったのか。
…いや。3番目に説明された能力が無ければ、いわゆるF型装備のエヴァなのだが、生成と侵食能力というのはどういうことなのだろうか。
確か新劇場版で見たアダムスの器と呼ばれていたエヴァが、似たような事をしていたと思うが、武器まで作成したり出来るものなのかな?
…いや、何か違う気がする。
S2機関という要因だけでも、起動に慎重にならざるを得ないため、遠く離れた仮設ケージでの起動実験は理解出来る。
しかし、待機していた2機のエヴァ。その理由はなんだったのだろうか。
機能説明が終わり、夕食を食べて、あとは寝るだけとなった。
明日のテストの事を考えると少し緊張してしまう。
S2機関の稼働について、大丈夫なのかな?
実際、起動実験で稼働していたのを確認しているとのことだが、稼働率が上がった場合どうなるのかは、まだ未知数はずだ。
歯を磨きながら部屋を見渡す。
この時間なら何時も居る筈のマリがいない。
どこに行ったんだろうか。先程、お風呂に入った時は、いなかったけど…
まあ良いか。明日は早いからもう寝よう。
欠伸を噛み締め、子供ボディ特有の眠気に耐えながらそう考え、私の布団をめくる。
「お!?ななちゃんじゃん。どうしたの?
もしかして、そんなに私と寝たいのかにゃ〜?
いいよ、おいでおいで。」
……ここ、私の布団だよね?
ついに訪れた稼働テストの時間。
エヴァから見る、外の景色は、全てが小さく見えて新鮮さが有る。
運動テストを一通り終えており、次はATフィールドの展開実験。
通常のATフィールドは問題なく展開出来ているようだ。
応用とか出来るかな?
テスト内容に無いことだが、無性に試したくなってきた。
イメージするのは最強の拒絶タイプ!
なんてね。
…本当に出来てしまいました。
多重展開のATフィールド。
それを押し出すように広げたり、上から叩きつけるようにしたりと操作していく。
私がイメージした通りに形を変えるATフィールド。
息をするように簡単に出来てしまう。
ん?マリ、何?
先週観たスターウォーズのライトセーバー?
うん、多分出来るかな。
え!?円状のフィールドを高速回転させて投げる?
それも、多分出来るよ。
今はやらないからね。
…やらないよ。
飛行実験に関しては、もうアスカとミサトさんの前ではやりません。爆笑するなんて酷いよ。
実機稼働テストが終了しても、まだアスカは笑っている。
「ふっ、くっ!本当おもしろっ、駄目よ!アスカ。
笑ってはっ、ぷっ!」
こんな笑うアスカは初めて見た。
ツボに入っているのか、私の顔を見るたびに吹き出している。
ねぇ、私、どんな飛び方してたの?
ビデオとか取ってないよね。
マリはマリで、昔のコメディ番組のテーマソングを口ずさんでいる。
この世界では今どきの子供が知らないであろう、セカンドインパクト前の有名番組。
ミサトさんはそんなマリに、
「なんであんた、そんな昔の番組のテーマソング知ってるのよ。」
と不思議そうにしている。
カヲル君は苦笑いを浮かべ。
綾波さんは…視線を背けている。
やだな、もう。恥ずかしい。
使徒の来ない日々を送るチルドレン達の日常は、あまり原作では描かれていなかったが、私がその生活を送れるとは思っていなかった。
来たる使徒との戦いには、まだ時間的余裕があるようで、およそ5年後との計算結果が出ているようだ。
多少は前後するため準備期間は4年くらいだろうか。
南極。
セカンドインパクトの発生地にして、唯一浄化された赤き大地のある大陸。
その地は、原罪無き浄化された世界。
人の踏み入ることの出来ない世界。
それを人はL結界と呼んでいる。
広大な南極大陸エリアそのものが、もはやL結界だということになる。
ニアサードインパクト後、そのL結界の境界内部より、ある波長が検出されたという。
それは第13の使徒によく似た波長であり、パターン青に酷似した波長であった。
使徒新生
古き理を捨て、新たな理を持つ生命体の誕生。
本来なら使徒由来のサードインパクトにより地球全体が浄化され人類が滅び、その浄化された地球に新たな生命が誕生するというプロセスを経ていく。
だがシンジ君のおかげでサードインパクトは中途半端に終わり、人類の滅びは無くなった。
しかし新生は避けられなかったということなのだろう。
浄化された世界である南極より、新たな生命が生まれることにより始まる生存競争。
それが今後起こる使徒との戦い。
その戦いに向けて、今日も訓練。
ミサトさん曰く、私のエヴァMark7に求められているのは空戦能力。それ故に飛行訓練は休日以外毎日行っている。
実機稼働テストの飛行実験にて取れたデータを使い新たなシミュレーターを作成し、それを使用しての訓練。
航空戦力としてのエヴァはMark7以外存在しないため、私一人の訓練だと思っていたが、綾波さんも飛行訓練に参加している。
その理由は、零号機が既に消滅しており、最近になって開発されたエヴァMark9に搭乗が決定したからとのことだ。
どうやら、そのエヴァMark9も空戦能力を有して開発されているらしく、さらに特殊な装備を有していると話を聞いた。
将来的には綾波さんとバディを組むことになる可能性が高いとミサトさんが喋っていた。
そんな綾波さんとの訓練だが、
沈黙が痛い。
話題を見つけようと頭を回転させるも、なかなか思いつかない。
シンジ君って凄く頑張ってたんだね。
心が折れそうだよ。
私自身コミュニケーション能力が高い方ではないから、会話が苦手な部類なのが致命的だ。
でも、このままではいけないのは解っている。
ミサトさんにも
「レイをよろしくね~ん。」
と軽く言われた。
…私と綾波さんの年齢を考慮すると、普通は逆ではないか?
訓練自体は、なかなか順調だ。
もうお空は怖くないぞ!
実際の空ではないが、航空力学やATフィールドによる作用を完璧に組み込まれた赤木博士印のシミュレーター様様です。
訓練の休憩中、二人で並んで軽食を摘んでいる。
勇気を出して話しかけよう。
そう、シンジ君のように。
逃げちゃ駄目だ…
「綾波さんは、ご飯の好き嫌いってありますか?」
うわ〜。
私のコミュ力頑張ってよ。
「肉、嫌いなもの。好きなもの…味噌汁。」
「味噌汁ですか?味噌汁のどんな所が好きなんですか?」
「暖かいから、ポカポカして美味しい。それに絆だから。」
「絆?」
「ええ、碇くんとの。」
ああ、そうか。そうだった。
シンジ君の味噌汁。
なんで忘れてたんだろう。
「碇さんと、会ってみたいです。綾波さんにとって碇さんってどんな人なんですか?」
「初めて頬を打ってしまった人、初めて約束をした人、笑顔を教えてくれた人、ご飯の美味しさを教えてくれた人、ありがとうを最初に伝えた人、一緒にいるとポカポカする人、守りたい人、寂しいという気持ちを教えてくれた人。」
泣きたいのか、笑いたいのかわからないような表情をした綾波さん。
「そっか。綾波さんって、碇さんの事が好きなんですね。」
何故か嬉しくなり、何気なく放った言葉。
そんな私の言葉に目を見開き、私を見つめる綾波さん。
だが直ぐに正面を向く。
「好き。…わからない。これが好きという気持ちなの?」
顔を赤らめている綾波さんは正直かわいいと思う。
「その人を想い、何かをしたくなる。
守りたいという気持ち。
そういうのが好きという気持ち、愛情なんだと私は思います。」
そう言う私の方を向く綾波さん。
そして、微笑みを向けて言葉を紡ぐ
「ありがとう。」