はじめまして、私のエヴァンゲリオン   作:siriusゆう

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Force of Will

精査していたデータを保存し、長時間椅子に座り続けた為に、固まってしまった身体を伸ばす。

周りには、天井を見上げたり、デスクに突っ伏したりする技術部の職員が目に入る。

 

近くのデスクを視界の隅で覗く。

 

リツコ先生は、IFSでデータ入力を続けている。

マヤさんは、大きなアクビを手で隠した後にコーヒーを飲もうとマグカップに手を伸ばす。

マリはアイマスクを着け、椅子に座りながら仮眠している。

 

窓の外に視線を向けると、既に日が昇って居るようで、ジオフロントの天井から光が射し込んで来ている。

 

 

Mark7と8号機の修理や、オップフォータイプのデータ整理等があり、最近は物凄く忙しいのだが、何よりもMark11の件がこの状態を引き起こしている。

 

 

光速を超えたエヴァMark11。

エヴァのログを覗くと、一時的に疑似シン化覚醒を果たしていたらしい。

 

まさか、サクラが一番に果たすだなんてね…

だが、本人には自覚が無かったらしく再現は出来なかった。

 

さらに光速を超えた事により、新たな発見が有ったのだ。

それは、既に理論としてのみ存在していたタキオン粒子だ。

 

それらのデータを精査していて、夜が明けてしまった。

こればかりは科学者の性なのだろうか。

仕事でもないというのにね…

もちろん、今日が非番な訳では無いため、ここに居る全員は寝ないで業務へと移ることになる。

 

 

「ユウカ、もう終わったのかしら?」

いつの間にか背後に立っていたリツコ先生。

私の肩越しから窓の外を覗いている。

 

「はい、一応は。」

 

「そう、やっぱり凄まじいIFS処理能力だわ。

一度でも良いから、貴女の見る世界を見てみたいわね。

…もし貴女と一つになれれば、見えるのかしら?」

え?

「リツコ先生、今なんて?」

 

「いえ、なんでもないわ。

…何でも無いの。」

 

窓からジオフロントの景色を見つめるリツコ先生の表情は、どこか遠くを見るような表情をしていた。

 

 

 

 

全損したエヴァMark7と、下半身を失った8号機の修復がやっと終わった。

気分転換にジオフロント内を散歩していた私は、今ベンチに座りながら、近くの売店で購入したカップのアイスココアを飲んでいる。

 

 

公園のようになっているこのエリア。

周りには非番の職員が、私と同じように散歩したり、ジョギングしたりする姿が見られる。

 

ジオフロント内のルート分岐となっている道を眺めながら、そういえば左の道を進んだ事が無いと思い至る。

3本の分岐のうち、真ん中は湖へ通じており、右はMプランの実験場がある。

 

その左の道から見知った二人が歩いてくる。

加持さんとカヲル君だ…

二人共、農作業着でスイカを持ってきている。

 

…もしかして、ここでもスイカ畑を作ってるのかな?

収穫したのであろうスイカを台車に入れてある。

 

マジマジと見ていた私に気づいたのか、二人が近づいて来た。

「やあ、ユウカちゃん。休憩かい?」

 

「はい。やっとエヴァの修復も終わりましたし、今日は午後からのシフトをリツコ先生が変更して、皆を休ませましたから。」

 

「リッちゃんがか?やっぱ変わったな…

昔なら半日くらい、鞭打ってでも仕事させてたのに。

子供の面倒を見ると変わるものだな。」

 

…ん?

「え!?子供!?」

驚く私に、苦笑いの加持さん。

 

「君のことだよ、ユウカちゃん。」

キョトンとする私に言葉を続ける。

「博士号を取る為にリッちゃんが勉強を教えてただろ?それに何だかんだ、リッちゃんにとって君は、一緒にいる時間が誰よりも多い。

凄く君を気にかけているよ。」

 

「そう、だったんですね。あまり考えたことが無かったです。」

 

「そうだろうな。それは君にとってリッちゃんが近い存在だからだな。

それだけ、二人の間に絆があるって事さ。

外から見なければ分からないものもある。だからこそ人生は面白いんだよ。」

 

「そうですね…。私もそう思います。

そういえば、スイカ美味しそうですね?」

丸々と大きなスイカに目を奪われる。

 

「自信作だよ。長門さんも食べるかい?」

スイカの話題に返したのはカヲル君。

 

「もしかして、カヲル君が畑を作ってるの?」

 

「物造り。本当に興味深いね。

音楽とはまた違った良さがある。

業が深くは有るけれども、生命の巡り合いには感じるモノがあるよ。」

微笑みながら言葉を紡ぐ。

 

「僕らは本来、物を食べる必要性がないから、食べるという行為に生命を無駄にしてしまっている感じが否めない。

でも、君には食べて欲しいんだ。

使徒であり、ヒトでもある君は、生命を糧にヒトとして生きているのだから。」

 

そう言って、一際大きなスイカを私の膝の上に乗せる。

驚く私に笑うカヲル君。

 

「ああ、大丈夫だよ。リョウちゃんは僕の事も知っているからね。」

そんなカヲル君の言葉を聞き、苦笑いをする加持さん。

 

「まあ、そうなんだが…いくら近くに人が居ないからって、こんな所で喋られると困る内容だぞ?」

肩をすぼめるカヲル君。

二人の関係性は親しいのだと感じるやり取りだ。

 

それじゃあ、と台車を押して行こうとする二人だが、直ぐに立ち止まり、加持さんが振り返り、私に真剣な表情で言葉を口に出す。

 

「ユウカちゃん…。今や人類の未来は君の選択次第だ。今はまだなんの事かは分からないだろうが、この言葉を忘れないでくれ。」

 

遠ざかって行く二人の背中を見つめながら、困惑する私。

さっきの言葉はどういう事なのだろうか…

 

膝の上に乗せた大きなスイカの重さが増したように感じた。

 

 

 

 

スイカを皆で食べた翌日。

警報と共に慌ただしくなる本部内。

アフリカ大陸方面と、南アメリカ大陸方面からの大規模侵攻。

 

この短いスパンでの大規模な襲撃は初めての経験だ。

しかし今回は、本部の戦力を一部のみ援軍に送るだけだ。

 

「どう考えても、囮よねこれは。」

ミサトさんが腕を組んで、情報が映し出された大型ディスプレイを見ながら言葉に出す。

 

「当たり前でしょう。敵の意図が見え見えじゃない!全く、次は私がブチのめすわよ。」

同じく腕を組むアスカが答える。

 

特異個体の反応がない大規模侵攻など、囮であるのは明白であった。

それがブラフである可能性も捨てきれないが、本部強襲が有効であるのは、前回である程度証明されてしまった。

 

「何時ものパターンなら、前回は威力偵察を兼ねていたはず。ならば恐らくは今回が本命ね。」

真剣な表情のミサトさん。

 

「特別宣言D-17を発令。全人類へ警告。

委員会にも連絡してA計画を進めさせて。」

 

「いつになく弱気じゃない?どうしたというのかしら?」

そんなリツコ先生の言葉を背中で受け、ミサトさんが答える。

「…嫌な予感がするわ。」

 

 

 

 

ゲヘートとエルブズュンデとヴーセ、そしてナンバーズ以外の本部戦力は既にロシア・中国の戦線へと赴いた。

 

私達はエヴァを起動させ、即応待機。

本部の機能は全てヴンダーとエアレーズングに移行させてある。

 

無人になった本部施設。

今、日本にはこの場にいる人以外誰も居ない。

 

 

ロシア・中国戦線での激戦の報告を聞きながら、アポストルの襲撃に備える。

 

既に開戦から1時間が経過している。

ブラフだったのかという考えが脳裏をよぎるが、焦る心を落ち着かせる。

 

 

『これは、成層圏にエネルギー反応を検知。パターン確認!間違いない!

アポストル・オップファータイプだ!』

青葉さんの報告が通信を駆ける。

 

『ん?強大なATフィールドを確認。

高エネルギー反応!やっば!

ながちーのダイブ直前と同じパターンじゃん!』

 

『耐ショック防御!アブソーバーを最大に!

各機ATフィールド全開!』

ミドリの報告を聞き、すぐさまミサトさんが命令を下す。

 

次の瞬間、鳴り響く轟音。揺れ動く大地。

全体に細かく罅が入る、ジオフロントの天井部を見上げる。

 

『ヴンダーATフィールドを全開!艦を倒立!主機全力運転!ゴーヘッド!』

ミサトさんの指示に即座に答える高雄さんと長良ちゃん。

『両舷一杯!』

『ゴーヘッド!ヨーソロー!』

 

崩れゆく天井部を突き進んでいくヴンダーと、その後ろに続くエアレーズングとナンバーズ。

 

突き抜けた先には一面の空。

眼下には、再びの崩壊を迎えた第3新東京市。

 

瓦礫の上で立ち、こちらを見上げるヒト型のアポストル。

頭部は4方向にそれぞれ顔があり、大きな両翼と3対の腕を持っている。

その体躯はエヴァよりも3割程大きく、装甲のような甲殻を纏っている。

推定エネルギー総量は、もはや計り知れない。

少なくとも前回を大きく上回っていることは確かだ…

 

そんなエネルギー量を内包してもなお崩壊しないなんて、まるで使徒ではないか。

 

 

そのオップファータイプの周りを囲むように2号機と5号機アイギス、Mark6とMark12がシャマシュより飛び降り、地上に着地して包囲する。

 

上空には私とMark11が、遠方から標準を合わせるのは8号機とMark9、Mark10シャマシュ。

 

 

 

 

場を支配する緊張感。

微動だにしない双方の口火を切ったのは、オップファータイプ。

 

私の前方に位置していたMark11が吹き飛ぶ。

想像を遥かに超えた速さに虚をつかれてしまった。

 

組み付かれたMark11は抵抗しようとするも、敵により右脚を引きちぎられてしまう。

噴出するエヴァの血液。サクラの絶叫が聞こえる中、私は敵に向けてアルベスの槍を突きだす。

 

敵の速さに対処するため、自身の演算機能と動体視力を強化していく。

 

Mark11を掴みながら私に対処しようとするも、同時に飛んできた、重粒子弾と情報宮装備弾を回避しようと敵がバランスを乱す。

 

その僅かな隙を付き、サクラがプログレッシブナイフを持ち、流れる様に自らを掴む腕を狙う。

それを回避しようと、敵がMark11を掴む腕を大きく動かすが、サクラの狙いはその先だった。

そのままナイフを離し、勢いで飛来する先は敵の脚。

敵の機動力を割くのは定石。

 

しかし、敵に直撃する瞬間、検知した高エネルギー反応と明滅する甲殻。

 

弾かれるナイフを見送りながら、私は杭のように圧縮したATフィールドを、Mark11を掴む腕に向かって打ち込む。

敵は身体を横にそらし回避しようとするが、私は圧縮状態からATフィールドを開放し、位相空間をぶつけ腕へとダメージを与える。

 

衝撃により緩む力。

渾身の力で敵の手を開き、拘束から抜け出すMark11。

しかし、最大の武器である速度を出すために必要な特装義足を失ってしまっている。

 

一番にサクラを狙うなんて、前回の敗因を知っているのか?

 

 

 

墜落したオップファータイプに襲いかかる4機のエヴァだが、蹴り飛ばされる5号機。

 

距離の離れたこの位置から見ても、閃光が走ったかのような速さを持っている。

 

5号機を蹴り飛ばした流れで、隣にいた2号機へと掴みかかる。

既にコード999を発動していた2号機は反応し、装備していたビゼンオサフネで首を狙う。

しかし、それよりも早い動きで屈み攻撃を回避する敵。

屈んだ状態から再度掴みかかろうとするのを、今度はMark6が槍を突き出し阻害する。

 

Mark12が4本の腕で、それぞれに持ったブレードで踊りかかるも、横へ大きく跳ぶ事により回避するオップファータイプ。

Mark12が小回りが効かないのを知ってる動きだ。

やはりコイツ頭が良い。

 

 

急に帯電したオップファータイプは、次の瞬間には地上にいるエヴァ全機に殴打を当てていた。

さらに速くなった!?

 

観測するタキオン粒子。

一時的に光速に達しているなんて!

 

ヤバい。

速い、硬い、力強いなんて…

なんの冗談よ。

 

 

だが解せないのは、硬い筈なのに攻撃を回避している点と、速く動いている時はそのパワーを発揮できていない事だ。

速さによる打撃力は驚異だが、エヴァを引きちぎるパワーに比べると劣る。

 

もしかして、どれか一つしか引き出せないのか?

通信越しに各々の表情を見ると、恐らく察しているのはアスカとマリとカヲル君。

 

『能力が少なくても3つ。一度に引き出せるのは1つってところ?』

私の推察に答えるのはアスカ。

 

『そうね。ちっ!速くなるのだけでも厄介過ぎる。こっちが能力に気づく前にサクラを潰されたのが痛いわね!洒落臭い…。』

 

『ほんま、すいません。』

未だに後を引く痛みに、顔をしかめるサクラ。

 

『サクラン、ドンマイ!いや〜、それにしてもあの硬さは何なんだろうね?

プログレッシブナイフがかすり傷一つ付けられないなんて、冗談キツイにゃ。』

眼鏡を中指で上げながら、前のめりで敵へ注目しているマリ。

 

『ミドリから送られてきたデータでは、あの明滅の瞬間、一瞬だけど相転移反応が出てたみたい。考えられるのは、フェーズシフト防御?』

私の言葉を聞き、沈黙する一同。

 

『ええ!ちょっとそんなの無敵じゃん!?』

マナが驚愕をあらわにする。

 

『だとしたら、何らかの制限がありますね。

皆さんの攻撃を避けてますから。』

マユミちゃんの指摘は正しい。

インターバルか?回数制限か?

 

『恐らくでは有るけど、全ての能力も、同様に無制限に使える訳では無いのだろうね。

完全生命体ではない彼には、どれも身の丈に合わない能力だから。』

うん。確かに、カヲル君の言うとおりかもしれない。どこかチグハグさがある。

 

『…何かおかしいわ。あれ。』

綾波さんが敵の挙動に注意を促す。

 

敵が上を見上げている。

 

ん?

目線の先はMark10。

帯電するオップファータイプ。

私は瞬時に、奴とMark10の間に機体を割り込ませる。

 

強い衝撃、錐揉み回転する中、目の前には奴の顔が有る。

衝突して、組み付いた状態か。

空いている左腕で、奴の顔面にテレフォンパンチを叩き込む。

 

奴にとっても衝突が予想外だったのだろう。

ノーガードで入った。

 

よし!と勢い込んだ瞬間、再度の衝撃。

聞こえるマユミちゃんの驚く様な悲鳴。

これって、組み付いたままシャマシュに衝突した?

 

私が追撃を叩き込む寸前、下に位置する腕でこちらを掴もうとする。

この腕、Mark11の脚を引き千切った腕だ。

 

瞬時にATフィールドを推力に使い機体を動かす。

距離を取り、シャマシュの船体の上で対峙する私とオップファータイプ。

 

 

『ユウカ!悪いんだけど、そのままマユミと一緒にそいつを引き付けておいて。

アポストルの大群がすぐそこまで来ているわ。』

ミサトさんからの通信で、初めて大群の接近に気づく。

 

どれだけ、オップファータイプに気を取られてたのか…

 

アスカやマナの、アポストルへの罵詈雑言を聞くに、皆も同様だったようだ。

 

現在ウルトビーズはヴンダーやエアレーズングの護衛についている。

そのウルトビーズと残りのナンバーズ、展開したウルフパックで大群への対処をするようだ。

 

サクラは右脚のシンクロをカットし、ヴェルテクスユニットで空を飛び戦線に復帰している。

 

 

 

 

睨み合う私達。

ATフィールドの出力はオップファータイプの方が上回っている。

Mark10が居なかったら、中和しきれていなかっただろう。

 

構えながら敵を見据える。

もし、武器を使うならプログレッシブナイフだけだ…

槍や銃では奴の速さに対処出来ない。

 

 

帯電するオップファータイプ。

やっぱりそう来るよね…

 

身構える私、その瞬間閃光のように迫る敵。

 

ちっ!上部に位置する両手で首を掴まれた!

即座に振りほどこうとするが、中段の腕で両手を抑え込まれる。

奴の帯電が解け、予想通り下の手が動き出す。

 

その瞬間、捕まれている機体の腕を変形させる。

Mark7の腕の中から、割って出る様にカマキリの手に似たブレードが飛び出し、下と中段の腕を切り飛ばす。

そのまま、流れるように腕を振るい首を狙うが、明滅する甲殻の前にノーダメージで終わる。

 

 

再び帯電し距離を取る敵を見据える。

やっぱり速い…。

 

 

レガリア細胞によって無理矢理変形させていた両腕を元に戻しながら思考を加速させる。

 

こいつ、スピードの強化に関してはそれほど制限が無いみたいだ。

しかしトップスピードの維持は難しいのだろう。

本体の元のスピードはそれ程速くない事から見ても、他の能力を使っていない時は、常時スピードを強化しているようだ。

その強化具合は帯電の強さで判断可能だ。

 

 

恐らく下の腕を損失した事から、速さでの攻撃にシフトしてくるだろうと推察する。

持久戦か…。

 

 

プログレッシブナイフを逆手に構え、距離を詰め組み付こうと伸ばしてくる敵の腕を切り払う。

フェーズシフトによる局所防御により、滑っていくナイフ。

上段蹴りで敵の頭部を蹴り抜き体勢を崩す。

そのまま軽いステップを踏み、流れのままに上からナイフを振り下ろし頭部を狙うも、強引に体勢を変えた敵の翼に当たる。

 

切断した翼が私の視界を塞ぐ。

 

敵は残った翼を使い、渾身の力で私を打ちすえる。

私は翼へナイフを突き刺し押し込んでいくも、敵の血液によりナイフを手から滑らせてしまう。

 

勢いよく飛んでいくナイフは、シャマシュのレールガン砲台に直撃し爆発する。 

 

 

距離が開く。

殴りかかってくる敵をバックステップで適度に距離を取りながら回避し、カウンターを狙うが、中々速さについて行けない。

次々と場所を変えながら、拳と脚を打ち合う。

 

足場を蹴りつける脚が、振り下ろされる拳が、シャマシュの船体に傷を付けながら、戦いを進めていく。

痛みに喘ぐマユミちゃんの姿を見ると焦りが浮かんでくる。

ゴメン、マユミちゃん!!

 

一進一退の攻防。

決め手に欠ける戦い。

 

敵が徐々に緩急をつけてきた。

時折トップスピードを混ぜてくる為、こちらの防御をすり抜けて来る回数が多くなっていく。

 

 

やっぱり、コイツ急激に成長してる!?

パワー、スピード、テクニック。

いずれも成長していっている。

 

持久戦では不利になる一方だ。

 

自身もアポストルと戦いながら、隙を見て、時々撃ってきてくれる綾波さんの援護射撃が無ければ、もっと押されていただろう。

 

 

しかし、これ以上の戦闘継続は無理そうだ…。

演算機能を上げ並列分割思考により、何十通りもシミュレートした結果は全て敗北で終わっている。

 

 

飛んできた綾波さんの援護射撃を利用して敵から距離を取る。

 

 

 

 

 

 

 

使うしかないか…

 

 

覚悟を決め音声入力を行う。

 

 

 

「リミッター解除。裏コード・000」

 

 

 

言い終わるや、プラグ深度が急激に降下していく。

七色に光るエントリープラグ内。

 

私のプラグスーツの両腕に埋め込まれた装置が作動し、私の身体に液体が注入される。

同時にMark7の素体にも、装甲板から投与針が刺さり液体が入ってくる。

 

エンジェルブラッド。

そう呼ばれる薬液を自身とエヴァに注入し、使徒としての制限を開放する。

 

 

『ななちゃん!人を捨てる気!?』

マリの声が通信越しに聞こえて来る。

 

『ユウカ!辞めなさい!

それ以上は、ヒトに戻れるか解らないのよ!』

ごめんなさい、リツコ先生。

 

他の皆も叫ぶように静止してくる。

 

 

ごめん、そして…

 

 

 

 

皆、ありがとう。

 

「アイン・ソフ・オウル!」

私の声と共に、全てのリミッターが外れていく。

 

咆哮するエヴァMark7。

機体の頭上にはエンジェルヘイローが輝き、白亜の機体が更に白く、眩い程に輝きを帯びる。

 

 

リミットブレイクしたレガリア細胞が爆発的に増幅していく。

その増幅したレガリア細胞、それらが持つS2機関をオーバーロードさせ、そのエネルギーを推進力へ変えていく。

 

自壊していくレガリア細胞。

それらの痛みに耐えながら敵を殴打していく。

 

莫大な推進力から繰り出される殴打に、フェーズシフト防御で耐えるオップファータイプだが、押し出してくる衝撃までは無効化できない為か、吹き飛んでいく。

 

人知を超えた速度で空を飛び、追撃をかける。

目まぐるしく変わっていく景色は、以前の私なら認識も出来なかった事だろう。

 

 

 

相転移反応が絶え間なく感知出来る。

しかし次第に損傷していく敵の身体。

 

なるほどね…フェーズシフト防御の温存。

それに使うエネルギーを安々と賄えなかったって訳か。

 

供給しようとエネルギーをQRシグナムから取り出してはいるが、そのエネルギーに耐えられず身体が徐々に自壊していくオップファータイプ。

 

 

しかし、敵は急速に成長していく。

時間を少しでも掛ければ、何が起こるか解らない。

それに、この戦い方に私とMark7がそうは持たない。

残り時間は後、極僅か…。

 

 

 

 

成層圏から渾身の力で叩き落とし、それを追い越し、下から人知を超えた速度で高度を上げる。

すれ違う瞬間、エネルギーを貯めていた右脚で膝蹴りを叩き込んだ。

 

 

空間に走る大規模なプラズマと金属イオンの嵐。

私の雄叫びと共に、輝くATフィールドがそれらの逃げ道を塞ぐ。

 

 

一層輝く光に焼かれ敵が崩れていく。

3つに別れ、重力に導かれ堕ちていく影。

 

それらと共に落ちる私。

墜落の瞬間、ATフィールドを展開し、被害を最小限に留める。

 

 

 

ここ、ジオフロント?

 

 

…ヤバいなあ。もう機体が動かないや。

 

 

 

 

そんな私を嘲笑うかの様に、先に墜ちていた3つの影がうごめき、瓦礫から身体を起こしていく。

 

 

はあ、そういう事なの…?

先程までのオップファータイプ、4体が分子単位で融合していたのか?

だからって、あれで死んだのが一体だけだなんて。

もしかして、融合と分離の能力?分離の際は再構築させるタイプか。

全く、質量保存の法則はどこにいったのよ…

 

 

それじゃあ、分裂したコイツらが持つ能力は。

 

 

 

 

徐々に奴らの全貌が見えてくる。

 

一つは、時々帯電し、青黒い全身ラバースーツを着た筋骨隆々の男性のような風貌に見える生物。

 

 

一つは、巨大な頭を持ち、長い手足を持った生物。

 

一つは、まるで蟻とヒト型が融合したような生物。

 

3体のオップファータイプがその身体を起こし、私を見つめる。

 

 

 

 

 

締まらないなぁ、本当に。

苦笑いする私。

 

 

走る青い閃光。そして衝撃。

地面をバウンドしながら勢いよく吹き飛ぶ私。

帯電しているオップファータイプが拳を振り抜いている。

 

追撃をかけようと更に帯電する敵は、次の瞬間に爆炎に飲み込まれる。

これは、Mark10による面制圧重爆撃。

 

 

地表部分からジオフロントへと飛び降りてくる影。

動けない私の側に来て、奴らとの間に立ち塞がるアスカ、マリ、マナ、カヲル君、綾波さん、零式。

 

 

『本当に面倒くさい敵ね。黙って死んでなさいよ。バカユウカも奥の手出して何でトチってんのよ!』

 

『助けに来たよ、ななちゃん。』

 

『ユウカ、私怒ってるんだから!』

 

『また君は、無茶をしたものだね。』

 

『心配したわ。』

 

『案ずるな、長門ユウカ。我が全力で汝を護ろう。』

 

 

不敵に笑う皆。

 

 

口火を切ったのは鬼神化形態の2号機。

爆撃によりダメージを負った、帯電している敵へ接敵。

衝撃波と共に、ビゼンオサフネで突きを繰り出す。

 

回避するスピード型だが、その速さには以前の面影が無い。

横より追撃をかけるMark12はリミッターを外し、追いすがっていく。

血煙を上げながら、緩急をつけ踏み込んでいく2号機の動きに惑わされる敵。

剣閃が次々と傷をつけていく。

 

地を奔る青と赤と黒の光。

一条の光と化した戦いは、何回もぶつかっては離れてを繰り返す。

最後にはバラバラに切り裂かれたスピード型の死骸と、自損し行動不能に陥った2号機とMark12という決着に終わった。

 

 

 

 

 

蟻の様なヒト型と戦う、綾波さんとマリ。

距離を取りながら戦うも、フェーズシフト防御を抜けないでいる。

あの防御型は、防御力に関して融合体の時よりも高い。

このままでは勝てないと見越した綾波さんとマリは、戦法を一点突破へとシフトする。

 

8号機は装備しているレールガン・アダドを、Mark9は天使の背骨を、それぞれオーバーロードさせる。

ATフィールドを武器へと侵食させ、S2機関を最大出力で稼働、二人同時にコアブロックを守る殻の同じ部分へと着弾させる。

まさに神業的所業。

 

粉々に砕け散る武器と、それを構えていた両前腕。

 

フェーズシフト防御を貫いた弾丸だが、防御殻を僅かに突破するだけで消滅してしまう。

ひび割れた殻から覗くコア。

 

勝ち誇るように口元のハサミを鳴らし、8号機とMark9の居た所に視線を送るオップファータイプだが、既に二人はそこに居なかった。

 

跳躍、そしてツープラトンキック。

両腕の無い2機だが、凄まじいバランス感覚でそれを成功させる。

 

砕け散るコアブロック、形象崩壊する防御型。

後に残ったのは折り重なって倒れた8号機とMark9の姿だった。

 

 

 

 

 

 

大きな頭部を持つオップファータイプと戦うのは5号機アイギスとMark6。

 

短時間で成長、進化していく敵とぶつかり合う。

 

今や5号機の強化外骨格アイギスと同じような巨腕へと腕を進化させたオップファータイプは、轟音を鳴り響かせながら5号機アイギスの巨腕と拳を打ちあう。

 

技術で勝っていた筈のマナの動きを、遂に敵が上回る。

脆い肘に打撃を貰い、へし折れる5号機の左腕。

 

押される5号機を援護しようと槍を繰り出していくMark6の動きも、馴れたように捌いていく。

打ち上げる様に腕を振るう敵の巨腕を足蹴にして回避しようとするMark6だが、接触した瞬間に足が弾け飛ぶ。

まさか、5号機のショックウェーブパルサー!?

あれすらもコピーしたというの?

 

空中でバランスを崩すMark6。

追撃する奴の攻撃を防御するATフィールド。

何故?エヴァのフィールドは敵により中和されているはずなのに…

まさか、カヲル君本人のATフィールドか!

 

敵の側面より、無事な方の腕でロンギヌスパイルを打ち込もうと突撃する5号機。

フィールド偏向制御装置と脚部の生体パワーアシストが、爆発的な加速を生む。

粉々に砕け散った足元の瓦礫が、粉塵となり広く空中に舞っていく。

 

駄目!マナ!

敵の手から打ち出される光のパイル。

胸元を貫かれる5号機アイギス。

機体の中心…あれではエントリープラグまで。

 

絶望が心を覆っていく。

怒りが沸き起こり、強い殺意へと変わる。

 

 

 

コロシテヤル。

 

 

 

機体の修復に全力を傾けながら、さらに使徒としての力を高めていく。

 

 

 

 

…ふと感じた違和感。

目を凝らすと、貫かれた強化外骨格アイギスには中身が無かった。

 

粉塵に隠れ、空中で身を翻し敵の後ろへ落下していく緑の機体。

強化外骨格アイギスの背部にマウントされていたマゴロク・エクスタミネート・ソードを手に、落下と共に上段から振り下ろす。

 

コアブロックごと真っ二つになる、最後のオップファータイプ。

 

パターンの消滅を確認し、大の字で倒れる5号機。

 

 

 

 

笑みが浮かぶ、安堵する私。

 

 

 

 

最低限Mark7の修復を終え、機体を起こし皆の元へ行こうと、歩き始めたその時。

急にアスカが叫んだ。

 

『ユウカ!後ろ!』

 

その声に反応し、振り向いた私の目に飛び込んできたのは、大きく細長い飛来物。

間一髪ATフィールドを展開し、防御に成功する。

 

危なかった…

そう安堵した瞬間、それは形を変える。

 

 

先端は二股に、二重螺旋の構造物。赤い槍。

 

ウソ…

 

「ロンギヌス!?」

叫ぶ私。

 

それは、私のATフィールドを安々と貫き眼前へと迫る。

時がゆっくりと流れる中、私の脳裏に今までの記憶が断片的に蘇っていく。

 

矛先が右目の視界全てを覆う。

左目で見る、飛来する槍の延長線。

その先を見つめる私の瞳に映ったのは、紫色のエヴァ。

 

エヴァンゲリオン初号機…

 

 

 




やっと、やっとだ…
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