大気成分もやっと問題なしか…。
手に持っている、携帯端末に映るデータを確認し、ホッと安堵する。
上天人造恒星・カグツチも問題なく稼働しており、温度も快適だ。
経過は上々。
後ろを振り返る私の目には、1年半程前とは一変した景色が映る。
もの凄く巨大な禿山だった山は、今や緑に覆われ、小さいが川も流れている。
麓には、広大な食料プラントが幾つも建設されており、稼働試験を行っている。
なおも増えていくプラント。
大きな煙突のような大気ナノマシン散布機。
オートメーションで建造されていく、高層ビル。
既に幾つものマンションが完成しており、その全てには光発電システムが取り付けられている。
かなり前から建てていた風力発電システムは、最近になってようやく稼働してきた。
少し離れた所には、もの凄く広大な湖。
そこには空中戦艦の発着場と、大きなドックが有る。
さらに離れた場所には巨大な軌道エレベーターがそびえ立っている。
まあ、まだまだ完成には程遠いがギリギリ間に合った。
全く、こき使い過ぎだよ…
それに期日を伸ばせないなんてさ、私じゃなければ過労死まっしぐらだったよ。
復活して1年半で、再度死ぬのは勘弁だ。
ひとまずは、ここには物資も含め5億人を養える衣食住環境は整備出来た。
まだまだ足りないのだけど、仕方ない…
ふと後ろからゴソゴソと小さな音が聞こえてくる。
振り向くと、そこには全身宇宙服を着たマリが立っていた。
「ありゃ?気づかれた?」
「まあ、そりゃそんな宇宙服を着て音を立てないのは無理だよ?」
「おっかしいな〜、私の耳には音がしなかったのに。」
ヘルメットの中で小首を傾げるマリ。
心底不思議そうな表情を浮かべている。
そんなマリのヘルメットをコンコンとノックする私。
「外の音はそう聞こえないって…。会話出来てるのは疑似鼓膜とIFS、あと外部スピーカーのおかげだけど、勝手に雑音は消すから、物が擦れるような音は自分に聞こえないよ。」
「ななちゃんは、羨ましいにゃ。
生身で外に出れるんだから。」
少しむくれ顔になるマリ。珍しい表情だ。
そんなマリの顔を見ながら笑いかける。
疑問符を浮かべるマリに顔を近づけ、ヘルメットを取る。
「にゃんと〜!
えっ!?
メット取って大丈夫なの?」
「うん、問題はなくなったよ。」
「心臓に悪いにゃ〜。ちょっとドキドキしちゃったよ。」
急に吹き付ける風が、マリの髪をたなびかせる。
あっ、と風に驚くマリ。
マリにとっては久々の風だろう。
髪を抑えるマリ。気持ちの良い風を肌に感じながら、私達は空を見上げた。
雲の少ない空は、遮るものが無く、遙か先まで見える。
空に浮かぶ光源。
そこから視線をそらすと月のような物が。
…宇宙要塞が日に日に近づいてきているのを実感できる。
さらに視線を別に移すと、赤い星が瞳に映る。
「明後日には第一便が到着するだなんて、感慨深いものがあるね。」
マリが腕を上へと伸ばして、懐かしむように呟く。
私はだらんと垂らした左腕の肘を右手で掴みながら、上に上げていた視線をマリへと移す。
「ねぇ、マリ…。」
「うん?」
「付いてきてくれて、ありがとね。」
本来、このミッションは私一人で行う事になっていた。
それを強引に付いてきたのがマリだった。
久しぶりだな…皆に会うのは。
肩を寄せ合い、寄り添う私達。
再び青い空を見上げながら、目を細める。
「当たり前じゃん、ななちゃんの側が私の居場所だからね。」
うん…
第一陣が到着する前夜、マリの好物である桃と紅茶を嗜みながら夜天光を浴びる。
人工の光が全く無い、澄んだ空。
一面に映る星海原を眺め、デッキチェアに身を委ねる。
二人の間にあるテーブルから、既に切り分けてあった桃を摘む。
レガリアにより品種改良された桃は、よく出来ている。
うん、甘い…。
ここへ来るときに、荷物へ忍ばせていた高級茶葉、シルバーディップスインペリアルを使っての御茶会。
今や手に入らない代物である。
「あの時からMプランを考えていたなんて、委員会は何処まで用意周到なのか…
この展開を読んでいたとしか思えないにゃ。
ホント、まいっちんぐね。」
ティーカップを置きながら、マリが常々思っていた疑問を口にする。
「彼らが、死海文書って呼ばれる一種の予言書を持ってるのは知ってる?」
「…名前はね。内容は一部しか知らないけど。私としては、ななちゃんが死海文書を知っている事に驚いたよ。」
「死海文書外典・断章。
そこに、私達が経験した事の一部が記載されているってカヲル君から聞いたよ。
それでも、大体の事はゼーレが自身でシナリオを書いている、とも聞いたけれど。
底しれないね、彼らの先を読む力は…」
「ふ〜ん、渚くんがね〜。
結構仲が良い見たいだけど、もしかして異性として好きなのかにゃ?」
共に過ごす時間が長い私だからこそ解かる、どこか、棘のある雰囲気。
笑顔だが、少しだけ睨んでいるようにも見えるマリの表情。
異性か…
「あまり考えたことが無かったよ。
う~ん、異性というよりも兄弟の方が近いのかな?手のかかる兄?」
実際お兄さんなのかな?
いや、私は生粋の使徒では無いから従兄弟かな?
それを言ってしまうとアザゼルとも、親戚とか、そうなってしまうのか。
内心苦笑してしまう。
「ほうほう、にゃるほどな〜。
それは一安心だにゃ。」
私の返答を聞き、朗らかな笑みを浮かべるマリ。
安心か…
それって、やっぱりそういう事なんだよね?
でも、使徒である自分がどこかで、こういうのを留めている。
いや、違うか。ただ意気地なしなだけかもしれない。
桃を食べながら私を見つめるマリを、見つめ返す。
良く視線が合うよね、君とは…
小首をかしげるマリ。
近いうちに結論を出す必要があると決意する。
それまで、ごめんねマリ。
遥か上空から降下してくる、空中戦艦群や避難シャトル群。
軌道エレベーターも降りてくるのが見える。
ついに、この日が来たのか…
新たなる新天地に降り立つリリン。
大気も、環境も、建造物も、全てがレガリアナノマシンにより構成せれたMプランの集大成。
テラフォーミングされた、火星へようこそ。
皆さん。
「よっ!久しぶりだな、二人共。」
手を挙げて、私とマリに挨拶する加持さん。
その後ろにはナンバーズを始めとしたヴィレのスタッフ。
そして科学者やエンジニア等、これから更に火星を発展させていくために必要な人材も続いてくる。
「「ようこそ〜火星へ!」」
二人揃ってお辞儀をして出迎える。
「お疲れ様。マリ、ユウカ。」
私達を抱きしめるミサトさん。
そんなミサトさんの行動に感化されたのか、次々とハグをすることに…
アスカ、綾波さん、マナ、マユミちゃん、サクラ、カヲル君と会話しながらハグをしていく。
そして、目の前に来るシンジ君。
少し顔を赤く染め、固まってしまう彼。
「お久しぶりです、碇さん。
元気そうで良かったです。」
ハグをする私に、固まってしまうシンジ君。
「えっと、あ、あの。ひ、久しぶりだね。長門さん。」
…かわいい。
女性慣れしていない様子の彼。
散々マナに抱きつかれたりしているのに。
そんなシンジ君へ、ハグくらい軽くしなさいよっ!と頭を小突くアスカ。
何すんだよ、アスカ!と拗ねたようなシンジ君の表情を見ると、凄く安心する。
シンジ君を小突いた、アスカの頭を小突く綾波さん。
いやアスカが凄く、つんのめったんだけど…
ファースト!と綾波さんへ噛みつくアスカと、無視してシンジ君へと寄り添う綾波さん。
いつの間にかファースト呼びになっているのに驚いた。
こんな日常を見ていると、やっと帰ってきたんだと感じる。
私がサルベージされてから、直ぐにテラフォーミングミッションへと駆り出されたため、皆と過ごす時間はあまり無かった。
再会を分かち合った時間は、あっという間に過ぎ、それから1年半も離れていたから…
最後にリツコ先生が私を強く抱きしめる。
そこに言葉は必要無かった。
久しぶりに触れ合った皆との時間はあっという間だった。
発着場から外へ案内する。
外へ出て、身体全体で風を浴びるようにする皆。
閉鎖された空間で2年近く過ごしてきた皆は、造られた自然環境に喜びを顕にしている。
口々に感動を表現する皆を見ていると、やってきた事を誇らしく感じる。
マリと目を合わせ、笑い合う。
そして手を打ち合った。
やったね!
加速していく、火星の開発。
IFS処理を施したリリンは、レガリア細胞をある程度、増幅・操作出来るようにまでなっていた。
進化していくリリン。
数年前までの生活と比べると、その急激な発展は凄まじいの一言だ。
IFSを使用した電脳化、拡張現実、仮想現実。
肉体の義体化や、もはや資材を使うことなく造られる構築物。
理論だけであった、科学技術の実現。
神器を手に入れたリリンは大きく躍進していく。
大きくなっていく都市を、高所から見つめる。
「凄いものだね、リリンは。
こうやって、何でも自らに取り込んでいき、生きようともがく。
そこが美しくも醜くも有るけど、同時にどこか愛おしさも感じるよ。
そうは思わないかい?長門さん。」
斜め後ろに佇むカヲル君が、私と同じものを見つめながら話す。
「そうだね。」
そんなカヲル君の言葉を肯定する私。
リリンよりも高次の存在であるからか、どこか種族としてのリリンが幼く感じる。
「…そろそろ行こうか、長門さん。
老人達が待ってるよ。」
振り返り頷く私に微笑み、カヲル君が先導する。
高所にある吹き抜けた廊下の先にある扉へと入っていく私達。
その先には巨大な能面のエヴァが…
「エヴァンゲリオン・リルインフィニティ…。」
呟く私に返答したのは一人の老人。
「その通りだ、ガブリエルよ。
お前が生み出した、あのエヴァンゲリオンだ。」
キール・ローレンツ。
他にも11人の老人達が居る。ゼーレか
「ガブリエル?」
天使の名前?
唐突な呼び方に疑問符を浮かべる私に答えるカヲル君。
「君の使徒としての名前だよ、長門さん。」
そう、私の使徒しての名前ね…
「それで、私をここへ呼んだのは何故なのですか?」
目線をキール・ローレンツへ向けて問う。
「君に、このエヴァンゲリオン・リルインフィニティを起動してもらいたい。
人類の次なる段階への進化のために。」
真剣な表情を浮かべるキール・ローレンツ。
「神々の麗しき霊感、天上楽園の乙女よ。」
「我々は火のように酔いしれて。崇高なる者よ、汝の聖域へと入る事を願う。」
「汝の魔力は再び結び合わせるのだ、時流が強く切り離したものを。」
「全ての人々は一つとなる、汝の柔らかな羽根が留まるその場所で。」
キール・ローレンツの言葉の後に、一部のゼーレが詩を唄うように言葉を紡いだ。
「死で持って人間を受け入れた貴女は、今や箱を取り込み、神に等しいほどの力を手に入れた。」
「さよう、ムーンセル・オートマトンを取り込んだ貴女と繋がっていた、このエヴァンゲリオン・リルインフィニティにも、それは影響を与えているのだ。」
「相補性を保ちつつ、一つとなれる魂の揺り籠。
新たなる世界。虚構世界SE.RA.PHの構築。
そこに住まい、保管される魂。」
「死という概念が、真に肉体だけのものとなる人類は高次の生命へと至るのだ。」
「全てのIFSに内蔵された、極小サイズの魂の槍、アルベス。」
「それにより魂は、このエヴァンゲリオン・リルインフィニティへと移ることが出来るのだ。」
「アルベスの槍・オリジンに集約した人々の祈りと、貴様の内向きのATフィールドが欠けた魂を補完する。」
一人づつ紡いだ言葉を、締めるようにキール・ローレンツが私に向き合う。
「人類補完計画。
これこそが我々、滅びゆく人類に残された最後の希望なのだ、ガブリエルよ。」
私の知らない人類補完計画。
破綻した計画をここまで形にしたのは、彼等が持つ信念と義務感。
そこに嘘を感じない。
ただ人類を良くしたいという意思…
目の前の、淡い青色を宿す純白のエヴァンゲリオンを見つめる。
母たるリリスを失ったリリンは、もしかしたら無意識に自立の精神を手に入れたのかもしれない。
それが、この流れに影響しているのかも…
「第三の神の奇跡を此処に。」
声を合わせ、私へと強い視線を送るゼーレ。
カヲル君はそんな私達を笑顔で見守っている。
手を伸ばす、私。
ATフィールドで水のように、柔らかくエヴァを包み込む。
エヴァンゲリオン・リルインフィニティ
起動
私の思念と共に、エヴァが宿す淡い青色の光がさらに強くなる。
「はじめまして、エヴァンゲリオン・リルインフィニティ。」
アンケート終了しました。
今後の展開、主にマルチエンディングについて
■回答
(65) マリルート、ずっと一緒に
(18) カヲル君ルート、カヲル君を助ける
(23) シンジ君ルート、シンジ君どこいったの?
(5) マリはシンジ君だけだろ、フザケンナ
(26) 主人公は読者の嫁に決まってんだろ
Bパートに関しても、エンディング後でという方の方が多かったため、ひとまずはエンディングへと進めたいと思います。
最初に、恐らくマリルートエンドを書き、その後シンジ君、カヲル君ルートと分岐別エンディングとなります。
最後にシークレットエンディングとして、読者様ルートを書いていきます。
正直、最後の質問に関してはただのお遊びで作った質問だったので、二番目に多い事に驚いております!
ノリで投票した人も居るでしょうが、正直嬉しく思います。
駄菓子菓子!私の娘をそう簡単に貰えると思うなよ!(笑)
マリシンの方には申し訳ないですが、具体的にマリシンの話を書くことはしません。