徐々に大きく見えてくる赤い星を見ながら、私はインダクションレバーを握りしめる。
その赤い星からは、四半世紀以上前の面影は微塵も感じられない。
青く美しく、生命の息吹を感じられたその星は、今や生命を感じられない寂しさをかもし出している。
生きているモノがいない訳では無い。
しかしこの星に住まう生き物は、どこか無機質で、躍動感というものが無い。
それが、ここまで表層に現れるなんて…
そんな事を思いながら、自らを形造るレガリア細胞を変質させていく。
これから必要なのは演算機としての能力、ただ一つだけ…
そのように自身とエヴァMark7を特化させていく。
しかしどのように変質しようとも、ムーンセル・オートマトンの能力を十全に使用する事が出来ない…。
未だにレガリア細胞がムーンセル・オートマトンに馴染んでいないのだろうか?
そうなると、やっぱりあの方法しかないのか…
不確定要素が有るから、頼りたくなかったのだが。
そろそろ作戦域へと到達する。
あまり時間は残されていない。
コード・000ガブリエル
そのように名付けられたリミッターを解放する。
『…これは?エヴァMark7の形態制御のリミッターが解放されていきます。
エヴァMark7、ガブリエル統合体へと変性!』
オペレーターの声が聞こえる。
容姿が女性的になるMark7。
マリ曰く、エロいにゃとのことだ…
私自身も、意識がエヴァと混ざり合い、エントリープラグ内にいる感覚は無くなる。
まるでエヴァが私であるかの様に知覚する。
もはやエヴァと成った私は、ムーンセル・オートマトンに意識を割き起動させる。
やはり、この形態なら多少は負荷がかかるが使うことができる。
機能を押し出すムーンセル・オートマトンだが、まだそれを完璧には使えないと察する。
しかし、構わない。
その演算機能さえ使えれば…
これからの戦闘に思考を傾ける。
ムーンセル・オートマトンが行う天文学的回数の未来演算から、より良い未来を選択するのが私の仕事だ。
『エヴァMark7より各艦・各機。
これより光波通信を使い、随時軌道データを送っていきます。
…皆の武運長久を祈ります。以上。』
『了解。総員、これより戦闘シフトへ移ります。作戦域まで残り10000。』
ミサトさんの通信を聞き、マリへと視線を移す。
既にこちらを見つめているマリ。
何時も私を見てるのかな?マリの方を向くと毎回目線が合う。
微笑む私に、投げキッスを送ってくるマリ。
言葉は要らないね。
自らの意識を更にエヴァへと沈み込ませる。
『作戦域到達!葛城中将。』
日向さんの声を聞き、ミサトさんが力強く頷く。
『私の気持ちは出撃前に、既に伝えています。
今更長々と語るつもりは無い!
ヤマト作戦、開始!各艦、主機全力運転!』
ミサトさんの号令の元、各艦が最大戦速で陣形を組みながら前進する。
『敵防衛エリアへ侵入!動体反応多数!
えっと、とうてい数え切れないけど億は越えてるっぽい!
マジありえないんですけど…
あ!それと、アザゼルの体動を検知!』
ミドリが敵の動向を伝えるが、数が多過ぎて細かくは精査出来ないでいた。
遠目で見ても地球を覆う程の敵の数が見て取れる。
『Mark7より軌道データが来ました!』
青葉さんの報告を聞き、ミサトさんが下知をくだす。
『艦の軌道は、データに沿って。
日向君、主砲を除いた艦の攻撃は貴方に一任します。』
『了解です!一番から十番までの多連装ミサイルランチャーのロックを解除!
各火器管制オペレーターに標準は一任。
撃ち方始め!
ミサイルの残量は気にするな。
距離が詰まる前にミサイルを撃ちまくれ!』
日向さんが各オペレーターへと命令を下す。
全ての艦から多数のミサイルが飛んでいく。
それらがアポストルの大群へと着弾し、次々と敵の数を減らしている。
情報宮装備弾と同じ機能を有した、特別製のミサイル群。
ATフィールド中和範囲外からの攻撃に為す術もなく討たれていくアポストル。
ヴンダーのリフトから姿を表すエヴァ5号機。
『それでは私も攻撃開始します!
いくよ!エヴァ5号機JA改ニコイチ。
ミサイル全弾発射!』
JA改を外装のように纏った5号機が、全身に付いた小型ミサイルランチャーを発射する。
侵食型ATフィールドを内包した小型のスマートミサイルは、一つ一つがアポストルの急所であるQRシグナムへと自動で飛んでいく。
ミサイルに内蔵されたAIは目標以外を正確に避け、QRシグナムへと迫る。
ATフィールドを侵食、後着弾。
QRシグナムを破壊され、エネルギー崩壊を起こし消滅していくアポストル。
暗き宇宙に、墓標の様に十字の光を残して…
『続いて全副砲、対空砲ロックを解除。
標準・発砲は各オペレーター任意で行え!
うちーかた始め!』
日向さんもノリノリに掛け声を入れる。
外部ユニットにより、さらなる増設を施された大量の砲台が火を吹く。
せわしなく動き、次々と標準を変えていき、短い間隔で発砲する。
『シンジ君を除いた、残りのエヴァ全機発進!アポストルの迎撃へ移れ!
もしも艦から振り落とされた場合、拾いに行かないので注意してね。』
ミサトさんが笑いながら、笑えない事柄を言う。
『解ってるちゅうの!ホント、ミサトの冗談は笑えないわね。』
不敵な笑みを浮かべるアスカが2号機でマステマセカンドを構え、嵐のような銃弾を敵へ浴びせていく。
マステマセカンドの弾倉は、今回は特殊使用になっており、ゲヘートヘと直接繋るベルト式になっている為、通常のマステマよりも膨大な弾の雨を降らせる事が出来る。
後方に位置された綾波さんとサクラも、マユミちゃんの動かすMark10シャマシュと共に後ろに回り込もうとするアポストルを討っていく。
『ホンマ数が多いわ。マユちゃん、七時の方向に敵の大群を確認!迎撃するよ!』
『了解、サクラちゃん。…標準良し。火器管制リンク良し。撃ち方始め!』
Mark10とMark11が息のあった射撃で無駄無く敵を撃ち抜いていく。
さらにシャマシュの艦載システム・ナブーがマユミちゃんの意識外の敵を、副砲で薙ぎ払う。
同様にMark9の綾波さんが後方の残敵を確実に、素早く始末してゆく。
作戦に参加しているフォロー型は各艦に半ば固定され戦闘を行っている。
マリとカヲル君は私の周りを周回し、Mark7を防衛している。
『ヨー、ロー、フィッチと。
宇宙戦仕様の特製ガンスーツ。
全手動になったから、また難しくなったけど、このスーパーマリちゃんには無問題!
ななちゃんの、ナイトの座は私が頂いた!』
四肢に付いた重機関銃を使いアポストルを殲滅していく8号機。
撃ち漏らして近づいて来た敵は、外装式F型装備を着用したMark6が大槍で斬り払う。
これじゃあ、カヲル君の方がナイトだよ…マリ
敵の居なくなったところを算出し、艦隊の機動を私がコントロールする。
割っていくように前進する艦隊だが、それは同時に敵を四方八方に置くリスクを負っている。
『ヴンダー増設砲台4番、12番沈黙!
続いて、対空砲21から25も沈黙!』
『第3区画にて火災発生!死者多数!』
『ヴンダーのミサイル砲台、全滅。』
『ゲヘート船尾損傷!』
『エアレーズング、損傷率1割を超えました!』
『フォロー型、戦力2割を失ってます!』
『5号機、小破!』
『ヴーセの左翼損壊!さらに第8区画崩壊!艦内の生命維持に支障が出ます!』
『Mark10シャマシュ、船体への損害多数!』
叫ぶように各艦のオペレーターが状況を報告していく声が聞こえる。
それを各艦長は怯むことなく対策を打っていく。
『こいつはいいぞ、どっちを向いても敵ばかりだ。
狙いをつける必要もない、とにかく撃てばアポストル共に当たるぞ!』
そんな獰猛な声すらも聞こえてくる。
大きな被害を出しながらも前進していく艦隊。
そんな私達に一気に優位にたとうと、敵は包囲しつつ、一部が密集していく。
でも、その動きは計算通りなんだよね…
『今よ!各N2ミサイル、密集目標へ発射!』
ミサトさんの合図の元、N2ミサイルが目標へ向けて高速で接近する。
数多の密集陣形が光の中へと飲み込まれていく。
広大なフィールド中和範囲を持つMark10のエンキにより、防御手段を失ったアポストル達は跡形もなく消え去った。
『アポストル反応大幅に消失!予想進路オールクリア!葛城中将!』
青葉さんが読み上げるデータを聞き、ミサトさんが口を開く。
『密集陣形を維持!全艦主機全力運転!
ゴーヘッド!』
『ゴーヘッド!ヨーソロー!』
長良ちゃんが艦を前進させるため、操舵レバーを押し込む。
残りの敵を置き去りにして、勢いよく加速する艦隊。
『フラーレンシフトを抜けた!
うん?アザゼルの更なる体動を確認!
うぎゃ〜!えっぐい!あのデカイ触手がキモいんですけど!』
アザゼルが展開する触手群を見てミドリが悲鳴をあげる。
大量に湧く大小の触手と、何より目立つのはヴンダーよりも大きいワームのような器官。
確かにアレは生理的に受け付けないよね。
『アンタもビックリするような物を用意しているわよ、アザゼル。
今よ!シンジ君!』
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、動じないミサトさん。
『はい、ミサトさん。エヴァンゲリオン13+初号機起動!』
そして聞こえてくるシンジ君の声。
もはや離れていても感知出来る程のエヴァ反応。
他のエヴァよりも大きな紫色のエヴァ。
エヴァ13号機と融合した初号機がヴンダーより発進する。
2対の腕でカシウスとロンギヌスを持つ紫のエヴァは、疑似シン化を果たし光翼を展開し飛び立つ。
カシウスとロンギヌス、2本の槍を交叉させ、先端にATフィールドにより操作されたブラックホールを展開、大小多数の触手群を飲み込んでいく。
私達の進路を開けるように、それていくシンジ君。
後ろから周り込んで来る触手を2本の槍を振り回し斬り払っている。
大多数の触手を引き受けてくれたシンジ君。
しかしヴンダーの前方を、今度はひときわ大きなワームの様な器官が打ち据えんと迫って来る。
『リツコ、例のやつ、準備は出来てるわよね?』
『ええ、出来ているわ。』
『そう…、それでは、ヴンダーのレオニダスシステムを起動。
続いて全艦の増設相転移エンジン全力稼働!』
そして、ヴンダーの通信画面を見つめ、続けて言葉を発するミサトさん。
『ヴンダー総員に告ぐ。これよりレオニダスシステムを起動。
全員のATフィールドを隆起させ、ヴンダーのフィールドへと上乗せします。
意地でも自身のLCL化を食い止めてちょうだい。
では、幸運を…』
ヴンダーへと迫る巨大な触手。もう、あまり距離は無い。
『リツコ!』
ミサトさんの呼ぶ声に、反応して下知を下すリツコ先生。
『マヤ!アルベス・デミクロン展開!』
『了解です!先輩!艦首外部装甲パージ!』
マヤさんが整備班へと命令を下す。
艦首より現れる巨大な刃。
『総員、ATフィールド全開!
その生命を、魂を燃やせ!
行くわよ…。吶喊!』
ミサトさんの声と共に激突するヴンダーとアザゼル。
力強く光を増すヴンダーのATフィールド。
しかし…
『マズイ!艦長!このままでは押し負けるぞ!』
高雄さんの警告を聞き、ミサトさんはさらに命令を下す。
『主機が焼け付いても構わないわ!オーバーロードさせて!』
『了解。主機オーバーロード!』
雄叫びをあげるように吠える高雄さん。
『さらに艦首を上げて!かち上げるわよ。』
『それでは艦の損傷率が上がっていきます!』
多摩さんの警告が響くが、獰猛な笑みを浮かべるミサトさん。
『構うな!レオニダスシステムの最終リミッターを解除!』
その命令に反応しリツコ先生がIFSでシステムを開放する。
苦痛の表情が全員に浮かぶ。
『発動!テルモピュライ・エノモタイアー!』
雄叫びを上げるヴンダー乗員の声が通信越しに響き渡る。
魂の咆哮に呼応してヴンダーが更にフィールドを強めていく。
下から上方向に、アルベスデミクロンがワームに突き刺さる。
『今だ!取り舵一杯!』
『了解!取り舵一杯!』
長良ちゃんが操舵レバーを捻ると同時に、回転していくヴンダー。
千切れ飛ぶ巨大なワーム。
そして内部を奔る強力な衝撃波により、本体付け根の方までバラバラになっていく。
テルモピュライ・エノモタイアーによる反転させた圧縮貫通衝撃波とATフィールドの開放。
しかし反動により大きな損傷を負うヴンダー。
大きく開けた前方。
それを見てミサトさんは続けて指示を出す。
『各艦!作戦行動開始!』
上へと進路がそれるヴンダーの変わりに、前へ出るエヴァMark10シャマシュ。
上下左右に位置した各艦が艦を斜め上へ倒立させる。
相転移エンジンを臨界寸前まで稼働させた4隻が、各々の方向に位置する触手群へと、追加ユニットの主砲の標準を定めている。
『全艦準備できました!葛城中将!』
日向さんが状況を伝える。
『各NHG、相転移砲、撃てぇ!』
4方向へと放たれる光。
広大な領域を相転移させるその砲撃は、ATフィールドをも無効化し触手群を消滅させる。
『マユミ!』
ミサトさんがマユミちゃんへと合図を発する。
前方に艦首を向けるMark10シャマシュ。
『はい…。
行くよMark10。
シリウス・ロア発射!』
雄叫びをあげながら、勢いよくインダクションレバーを押し込むマユミちゃん。
艦首砲台から自壊性アルベスの槍を大出力で一斉に撃ち出す。
オーバーロードさせたシリウス・ロアは次々と爆発していき、次の瞬間粉々に吹き飛ぶシャマシュの船体。
『マユミ!』
皆がマユミちゃんを心配して声をあげる。
シャマシュから発生した爆煙を突き抜けてくるMark11。
その両腕にはMark10の主機を抱えている。
ナイス!サクラ!
助かって良かったよ、マユミちゃん。
射出された自壊性アルベスは、突き刺さった部分から徐々に侵食し、共に崩壊させていく。
かな切り声のようなものをあげるアザセル。
大きな触手をヤケクソのように展開するが、先程と違い隙間がかなり空いている。
その隙間へ飛び込むようにブースターを使い、飛び出していく2号機と5号機。
2号機はビゼンオサフネを、5号機は巨大な電動鋸のような兵器を手に持ち触手を足場に駆けていく。
機体を翻し触手を避けながら手に持つ武器で斬りつける。
『ヤバい!あんまりパワーが出ない!ごめんアスカ!』
予想より遅れてしまう5号機。アポストルとの戦闘で負った損傷が響いているようだ。
先行する2号機が孤立してしまう。
『作戦継続!このまま行くわ!裏コード999!』
リスク度外視で作戦継続を決めるアスカ。
次から次へと迫りくる触手を避けながら、ビゼンオサフネで道を斬り開いていく。
敵本体へと近づくにつれ、大小触手の数が増えていく。
遂に重力圏へと到達する2号機。
落下に任せながら、身を翻しビゼンオサフネを閃かせる。
しかし、遂に処理限界が訪れたのか右腕を持っていかれる2号機。
ビゼンオサフネを握っていた腕の為、武器を損失する。
マズイ、アスカが!
2号機へと迫っていく触手。
そんな迫りくる絶望を払ったのは紫と白の閃光。
一対の腕で2号機を横抱きにし、もう一対の腕で2本槍を振るう。
『シンジ…。』
唖然としているアスカへ、シンジ君が声をかける。
『アスカ、無事かい?もう大丈夫、僕が来た。』
不敵な笑みを浮かべるシンジ君。
こんな表情のシンジ君なんて初めて見た。
そんなシンジ君を包囲しようとする触手を、上から降り注ぐ閃光が焼き切っていく。
頭上には輝きを放ち、エンジェル・ヘイローを掲げたMark9の姿。
綾波さん、遂に疑似シン化形態を…
『貴方達は死なないわ…私が守るもの。』
モノアイからレーザーを放ち、両手からエネルギー波を放出して遠近の敵へ対応するMark9。
そんな綾波さんの姿を見て、13+初号機の腕から抜け出すアスカ。
『全く、生意気なのよファースト。
アンタに出来ることが、私に出来ない訳ないでしょ。』
輝いてゆく2号機。
ここに来て、アスカまで…
2号機が損失した腕はATフィールドが形造る。
さらにフィールドが巨大な刃となって両手へと収まっていく。
『絶対に負けてらんないのよ!この戦いは!』
アスカの咆哮と共に斬撃が空間を奔る。
『行こう、綾波、アスカ。』
シンジ君の声と共に、不敵な笑みを浮かべる3人が通信ディスプレイへと映る。
そんな彼らを見送り、私は周りを見回す。
奴との距離も近くなってきた。
そろそろ行こうか、マリ、カヲル君。
『キタキタ!ななちゃん待ってたよ〜ん!』
『了解だよ、長門さん。』
ワタシを真ん中に左右に8号機とMark6が位置する。
マリ…
呼びかける私に、反応するマリ。
『8号機、リミッター解除!』
顎部シールドが上がり、咆哮する8号機。
しかしこれからという時に、待ったが入る。
『待って待って!私も入れて!
これじゃあ私、良いところないよ!』
とマナが5号機のブースターを吹かせこちらに来ている。
『待って私達も入れてください!』
『仲間外れは勘弁しといてください!』
Mark11に担がれたMark10も近くに来た。
『どうする?ななちゃん?』
マリが私に聞いてくる。
これは、是非もないよね。
『OK牧場!それじゃあ、ななちゃんをカゴメカゴメ!』
ワタシの周りに囲むように位置取る5機のエヴァ。
『いっくよ〜ん!
エヴァンゲリオン・オーバーラッピング!』
同化装置であるオーバーラッピング装備を展開する8号機。
するとワタシを中心に光が広がっていく。
光が収まった時、頭上には光により構築されたかの様なエヴァンゲリオン。
さらに周りを見渡すと淡い青色の空間。地面には一面の百合の花。
そして、腕を胸の前で交差して、宙に翼を固定されたように浮かぶ私の周りに、5方向に伸びたエントリープラグがゆっくりと周回している。
真下にはエヴァのコアの様な赤い球体。
何だか、懐かしい様な不思議な場所だ。
しかし、こんな場所は見覚えもない。
「うわ!何これ!」
マナが驚きの声をあげてる。
「これは、そうか長門さんの心象世界に物理的に入ってしまったのか…」
カヲル君が面白そうに周りを見渡す。
私の心象世界…心の中?
「ななちゃんの中に入れたのは嬉しいけど、私一人でないのが悔しいにゃ!」
ムフムフと口を動かすマリ。
それ、どんな表情よ?
「暖かいですね。何時までも居たい気分です。」
景色を楽しむように下を眺めるマユミちゃん。
「あの!あんまり時間ないんやないんですか?」
サクラが皆に注意する。
うん、サクラの言うとおりだよ…
「じゃあ皆で声を合わせるよ?」
すぅ、と息を吸う音がシンクロする。
「「エヴァンゲリオン・5+6+7+8+10+11号機、起動!!」」
皆の声が、思いが重なる。
私の世界へと映し出される外界。
敵を見据える巨大な光のエヴァ。
怯えたように体動する赤い地球。
巨大な触手群が私達に向かってくるも、腕の一振りで消し飛び、地球の地表も吹き飛ぶ。
全然力を入れてなかったのに。
「すっごーい!」
マナが無邪気にはしゃいでいる。
「不思議な感覚ですね。私の思考が皆の思考になっています。」
マユミちゃんが感想を告げる。
「話してる暇は無いよ…制限時間はもう3分も無いからね!」
私の注意により気を引き締める皆。
それにしても、いささか機体が大きすぎる。
これではアルベスの槍が小過ぎて持てない…
「確かに、これでは倒しきれないかもだにゃ。
ななちゃん、大きいアルベスの槍を造って。」
マリが私に提案するが、出来ない。
「ごめん、この状態だとレガリア細胞をコントロール出来ないみたい。」
私の返答を聞き、青ざめるカヲル君以外の皆。
「うそ。え、そんな。強化したら、それが仇になるなんて。」
マナが泣きそうな顔をしている。
「何とかならんの?」
サクラが懇願するように私へ問うも、答えは出ない。
…おかしい、ムーンセル・オートマトンはこの未来を私に見せなかった。
どうして?成功の未来を提示していたハズなのに…
そんな困惑し佇む私達に声がかけられる。
『何をしているのかね?』
オーバーラッピングにより通信は機能していないはず。
これは心に語りかけられているの?
「冬月先生!?」
聞こえてきた声に、マリが驚いたように名前をあげる。
『君達は開いた道を歩め。槍は私達が用意しよう。』
「っ!これはキール議長、貴方までとはね。驚いたよ。」
目を見開いたカヲル君。
『ユウカ、貴女はこのまま戦いなさい。』
どうして?リツコ先生!?
ヴーセ、エアレーズング、ゲヘート。
3隻のNHGが連なるように前進してくる。
他の乗組員を降ろし、ワンマンオペレーションシップとなった3隻。
その3隻を構築しているレガリア細胞が変性していく。
主機となっていた3機のウルトビーズ・アダムスとアルベス・オリジンを中心に長く細くなり、繋がる3隻。
贖罪が、救いが、祈りが合わさる。
『全てはこれで良い。ご苦労だったな渚カヲル。
…罪を精算する時が来たのだ。それは私が持っていこう。』
『マリ君、君は君の幸せの為に生きなさい。
…これが私の最後の教えだよ。君は人の為に生きすぎる。』
『ユウカ、大丈夫よ。私の肉体は失われるけれど、これが終わればきっと、貴女の中でまた会えるわ。
…ずっと愛しているわ、ユウカ。』
リツコ先生、私も愛しています…。
目の前に巨大な槍が静止する。
そのシン槍アルベスを持ち、構える光のエヴァ。
「シンジ君、頑張っている君に答えないとね。」
「待たせたよね、零式。…ようやく仇を取れそうだよ。」
「冬月先生、最後までありがとうございます。」
「この時が来たのは、皆で頑張ったからですね。シンジ君。あの時、電車の前でした約束を果たせそうです。強くなれた私を見てください。」
「碇さんが、皆がもうエヴァに乗らんでええように!」
シンジ君が、アスカが、綾波さんが切り開いてくれている道を進む光のエヴァ。
もはや妨害など、なんの壁にもならない。
圧倒的なこのパワーがなければ、3人が奮闘してくれていても難しかったかもしれない。
これで、これで良かったんだ…
溢れ出る涙を払うように私は叫ぶ
「行くよ!アルベス!」
これが私達のラストダイブだ!
原作キャラ死亡?に関しては申し訳ないです。
ようやっとここまで来ました。
この次は、マリエンドとなります。