命の選択を
赤き惑星。
もはやアザゼルの肉体となってしまった、その大いなる母体に三位一体のシン槍・アルベスが深々と突き刺さる。
そこを起点に広がっていく、淡い光。
3人の魂と記憶がアルベスを通して、地球へと流れ込む。
数多の生命を育んできた星の記憶。
それを読み取り、シン槍を構成するレガリアが侵食された世界を再生させていく。
あと少しで全てが終わる。
そう思ったその時、残された赤い大地を割り、その中から巨大な球体が浮上していく。
マズイ!逃げる気か!?
そう思い至り、皆と思考を合わせ光のエヴァで追撃をかけようとするが、融合していた機体が解けていく。
制限時間!?予測よりも早い…
8号機に搭載していたオーバーラッピング装置により、半ば無理やり融合させていた反動なのか。
融合が解けた今、動く事が出来る機体は、全身をレガリア細胞により構成されていたMark7だけだった。
宇宙空間へと逃げていくアザゼル。
赤い巨大な球体となった奴の姿は、地上から見上げると、まるで紅い月の様にも見える。
動くことが出来ない皆のエヴァ。
地球とアザゼルの融合を解いたといっても、なおもエヴァよりも遥かに大きい相手だ。
恐らく、エヴァ単騎では相手にならない可能性が高い。
…。
しかし、このまま逃してしまったら、取り返しのつかない未来が訪れるのは明らかだ。
マリが乗る8号機を見つめる。
…会って、話がしたい。
しかし、ダウンした8号機の通信装置を修理している時間は無い。
それにエントリープラグを外に出す暇も…
統合体となった私は、翼を羽ばたかせる。
手元にアルベスの槍・オリジンを呼び寄せ上を見上げ、奴を睨む。
飛び立とうとしたその時、私の側へと舞い降りてくる巨体。
紫色のエヴァンゲリオン。
エヴァンゲリオン13+初号機が、限界を超え動けなくなってしまった2号機とMark9を抱えている。
『長門さん。』
こちらを見つめるシンジ君の瞳は、まるで炎を纏った刃のように、熱さと鋭利さを宿している。
彼が言いたいことは何となく察する事が出来た。
しかし、それを私が受け入れる事が出来るかは別の問題だ。
『いえ、今度は私がやります。』
貴方は既にやった事だから…。
言外にそう答える私に、彼は静かに首を振る。
『いや、僕が決着をつけるよ。今度こそ。』
優しい微笑み。
私が初めて合った時から変わらぬ彼の心。
覚悟を決めた彼は、何時だって止まらないから。
それは解っている。
だって、ワタシがそれを知っていたから…
抱えていた2号機とMark9を地面に横たえ、こちらへと向き合う紫色のエヴァ。
その手にはカシウスの槍を携えている。
『その槍を、アルベスの槍を僕に渡してくれ。長門さん。』
『いえ、貴方こそカシウスの槍を私にください。碇さん。』
方法はお互いに解っていた。
一つの魂でニ本の槍を扱う必要がある。
これが他の使徒なら、カシウスとロンギヌスで良かったのだが、奴の場合はカシウスとアルベスが必要だ。
『問答している時間は有りません。しかし、力尽くという訳にもいきませんね。
では後は心の中で、全てはそこで…。』
私の言いたいことは伝わっている。
カシウスの槍を引き、構えるシンジ君。
それに対して私はアルベスの槍を上段に構える。
お互い、相手を見つめる。
同時に踏み出す私達。
ぶつかり合う槍が甲高い音を響かせると共に、私とシンジ君の世界が交わった。
まるで微睡みから覚めたような感覚。
意識をすると、そこは火星の湖畔。
皆と遊んだあの場所だ。
心の中で相対する私達。
「現実世界に戻った時、1秒も時間は過ぎていないでしょう。
ここなら思う存分、時間が取れますよ。碇さん。」
微笑む私に、苦笑いするシンジ君。
Mark7となった私と、初号機となったシンジ君。
お互いその手には槍を握っている。
「お願いだ、長門さん。アルベスの槍を僕に…。」
「いえ、私は何度でも言いますよ…。
そのカシウスの槍を私にください。」
少しも譲ることが無いお互いに、苦笑いを交わす。
言葉だけでは解決しないことも有る。
疾走し槍を交える私達。
「碇さん。何故そうまでして自分で決着をつけようとするんですか?
その先に待っているものを知っている筈でしょう?」
疑問を投げかける私に、アルベスの槍を払い除けながら答えるシンジ君。
「知っているからこそだよ。そんな役目を長門さんに負わせたくないんだ。」
「それが、それが皆を傷つける事になるのは理解しているのに、何でそんな事を!
アスカとマナと綾波さんとマユミちゃんとサクラの気持ちはどうなるんですか!?
彼女達の気持ち、それに気づいて無いなんて言わせませんよ!
私が何年も見てきた、あの彼女達の想いはどうなるの!?」
怒りを顕にする私は、荒々しくも的確に槍を振るう。
「…気がついているよ。それでも僕は、君に幸せになって欲しいんだ。
だからこそ、君を救うために槍を手に入れる。」
「何故ですか?貴方にとっては私に馴染なんて無い筈なのに…。どうしてそこまで?」
「夢の中で君を見てたんだ。
そこで見た君は他人の為に、自分を犠牲に出来る人だった。
他人の為に喜んで、怒って、哀しんで…。
そして、楽しそうに過ごす姿は輝いているように見えた。
そんな君みたいになりたいって思ったんだ。
そうだね、…多分、僕は長門さんのファンなんだと思う。」
微笑んで喋るシンジ君から、つい目を逸らしてしまう。
正面から私を見据え、恥ずかしげも無くそんな事を言う彼に照れてしまう私。
そんな風にしながらも、彼が繰り出す槍を捌いていく私。
槍を操る技術は私が圧倒しているのに押しきれない。
以前から、彼が操る槍には既視感のような物があった。
今、打ち合ってみて解る…
彼の槍から読み取れる術理は、私のそれと似かよっているという事に。
見て覚えたのか。
ファンか…あながち間違っていないのかな?
槍を引くシンジ君に合わせ、身体を捻り遠心力を利用しカシウスの矛先を払いぬく。
体勢の崩れる初号機に渾身の蹴りを放つ。
腕でガードするが、吹き飛ぶ初号機。
例え、どれほど私を見てきたのだとしても、槍さばきでは負けることなんかない。
…今までだって、私は本気で槍を振るった事なんか無かったのだから!
両腕を、肘を、体動を駆使して槍を操り、大振りである攻撃を隙無く繰り出していく。
ギリギリのガードしか出来ないシンジ君。
「君こそ、真希波さんの事はいいの!?」
苦し紛れ。
私の動揺を誘うなら、それは失敗だ。
今の私は精神が揺れることなんか無い。
「貴方はこうと決めると、それ以外が見えなくなる癖がありますね。
私だって…貴方に幸せになって欲しいんだ!」
お互いの我儘を押し通さんという思い。
これは単なる私とシンジ君のエゴのぶつかり合いでしかないのだ。
荒い息づかいが聞こえてくる。
疲弊しているシンジ君を私は見据え槍を構える。
これが普通の戦いなら、既に決着は付いている。
だけど、そうじゃないんだ…
そうじゃ、ないんだ
大きく距離を取り、睨み合う私達。
お互いが同時に走り出す。
正面から相手を見据え、槍を振り上げる。
最後の踏み込みを行う私とシンジ君。
2本の槍がぶつかりあった瞬間、お互いの心に映し出される断片的な相手の記憶。
貴方は死なないわ、私が守るもの。
私の事、アスカで良いわよ。私もバカシンジって呼ぶから。
いつか、いつか逢いに来るよ。
私もシンジ君みたいに頑張れるかもしれないって。
僕は君に会うために生まれてきたのかもしれない。
碇さんが、皆がエヴァに乗らんでも良いように!
行きなさい!シンジ君!誰かの為じゃなく、貴方自身の願いの為に!
済まなかったな、シンジ。
逃げなよ、早く逃げないと死んじゃうよ?
彼女の姿を見ると、私のココロが揺れていくのを感じる。
それが他人の記憶の中の姿だとしても
マリ…
私は、
私…
___________、マリ。
そんな言葉が世界を覆う
シン・エヴァンゲリオン
100億円突破おめでとうございます!
100億円記念何かやるかな?