はじめまして、私のエヴァンゲリオン   作:siriusゆう

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カヲル君ルート
命の選択をからの分岐となります。


命の選択を 〜最後のシ者〜

マリの姿が脳裏によぎった瞬間、ふと自然に言葉が口をついて出る。

 

 

マリ、ありがとう。と

 

それは意識もしていない事だった。

そしてその言葉は世界を覆い、私の中に響き渡ったのだ。

 

 

ありがとう、感謝の言葉。

ずっと、私を助けてくれていたマリへの言葉。

 

それと同時に思い出す、とある約束。

その約束を私が守るために、どれだけ彼女が助けてくれたのか…。

それを自覚した時、私の瞳が熱を持つのを感じる。

 

動揺してしまう私。

何故、泣いているの?私は…

 

 

 

 

 

 

 

私達の戦い。

それは他人から見たら、きっと一瞬の事だったのだろう。

虚構と現実が合わさった時。

心の中での戦いは、現実での決着となっていた。

 

 

唖然とした私は宙を回転する槍の柄を見つめ、流れを追う。

 

弾き飛ばされた槍は、大きく空中を回転し、その矛先を地面へと沈めた。

 

 

私は、自らが乗るMark7の両手を見つめる。

 

 

 

 

 

 

その手の中には、何もない…。

先程まで確かに槍の重みを感じていた筈なのに、今はただ寂しさしか感じない。

 

 

視線を槍へと移す。

地面に刺さるアルベスの槍とカシウスの槍。

 

 

まさかこんな決着だなんて…

これじゃあ、締まらないね。

 

お互いに、様子見をし合う私達。

しかし時間は余り残されていない。

 

 

 

シンジ君の方が2本の槍に近い。

地面を蹴り、手を伸ばし、槍を掴もうとする13+初号機。

取らせまいと私もエヴァを走らせるが、ふと私の横を高速で通り過ぎる物体。

視界に映る13+初号機の背後へと飛来する影。

 

アルベスとカシウスの槍に気を取られているシンジ君はそれに気がついていない。

 

 

その影はシンジ君が乗るエヴァを背中から安々と貫き、エヴァを完全に停止させた。

 

その影の正体は赤い二叉の捻れた槍。

そう、ロンギヌスの槍だ。

 

 

そしてロンギヌスが飛んできた先を見ると、そこにはエヴァMark6と、その眼前に生身で浮かぶカヲル君の姿があった。

 

 

 

 

 

私に近づいてくるカヲル君とMark6。

ATフィールドを介して、意志のやり取りをする私達。

 

「良かったの?こんな事をして…。」

未だに唖然として、驚きを隠せない私に、苦笑いをしながら彼は答える。

 

「シンジ君には酷いことをしてしまった。

しかし、これで良いのさ。

彼らには止まっていて欲しかったからね…。」

停止してしまったエヴァ13+初号機を見つめるカヲル君。

その眼差しには優しい色が見える。

 

「そっか…。それじゃあ、後は私がやるから槍を頂戴。」

そう言う私に対して、緩やかに首を振るカヲル君。

拒否された事に驚く私を感じたのか言葉を紡ぐ。

 

「シンジ君を止めたのは僕だ。

だから、あとは任せてくれないかい?

それに君にも大切な人が居るからね。」

だから僕がやるのだと。

それでも渋る私に言葉を続けるカヲル君。

 

「感謝してるんだ、長門さん。

君が居なかったら、ここまで来れなかった筈だから。

…僕は今回もシンジ君を助ける事を諦めていたんだ。

しかし、それを救ってくれたのは君がしてくれた約束だった。

アザゼルと呼ばれた彼は、僕の繰り返しから生まれた一種の抑止力の様な存在と言っても良い。

それをどうにかする方策は僕に無かったのに…。

君が、君たちがその絶望打ち払ってくれた。

彼を生命の書から消す方法が見つかった。

そのおかげで、次の世界から彼が出てくることはもう無いだろうね。

だから、ありがとう。

君に会えて良かった。」

カヲル君にしては珍しい程のにこやかな笑み。

 

 

「…私こそありがとう、カヲル君。

いや、お兄ちゃん。」

少し悪戯な笑みを浮かべながら、そう呼ぶ私に驚くカヲル君。

同じ使徒なのだから、貴方が兄。

 

「お兄ちゃん、か。

兄妹とは素晴らしいね。

長門さん、…いやユウカ。

僕はもう大丈夫だよ。答えは得た。

だから、これからも頑張っていくよ。」

心配要らないと、にこやかに言う。

そして宇宙を見上げ呟いた。

 

 

「希望は残っている。どんな時でもね。」

それが、カヲル君が得た答えなんだね。

 

 

 

 

 

カヲル君を見送りながら、皆を動かなくなったエヴァから救出していく。

 

 

外に出られたことを察したのか、各々エントリープラグから外に出てくる。

自然と一箇所に集まる私達。

そこで大きな赤い月が消滅するのを皆で見届ける。

 

目元を押さえ、肩を震わせるシンジ君。

時折、込み上げてくる感情を押し殺したかのような声が小さく聞こえてくる。

そんな彼の周りを囲むように、5人の女性が寄り添う。

それを私とマリは、手を繋ぎながら見守っていた。

 

これが、私とカヲル君の見たかった終演。

 

…ねぇ、カヲル君。

本当にこれで良かったのかな?

 

 

 

 

 

人類補完計画が発動したリリンは、次のステージへと進む。

火星を新たなるリリンの本拠地として、地球には新たな生命の種を蒔いた。

 

 

以前までのリリンは、自らの発展の為に地球を破壊していた。

だからなのだろうか?

彼らは地球を離れることにしたようだ。

 

ヴンダーの主機として、自らの肉体であるエヴァンゲリオン・リルインフィニティを使い、星の大海原へと船を出す。

いずれ新たな生命が文明を築いた時に、邪魔にならない様に。

 

 

それとヴンダーの守り人として、定期的にエヴァに乗れば肉体の朽ちることがないエヴァパイロットが選ばれたのは当然の帰結だったのかもしれない。

 

 

 

 

 

最終決戦から数年が経ち、遂にリリンは新たなる旅路へと出発するようだ。

 

それを見送るのは、私とマリ。

QRシグナムとアルベスにより繋がった私達とエヴァンゲリオン・リルインフィニティには、距離なんてものは意味を成さない。

会おうと思えば、リルインフィニティが構築する虚構世界で何時でも会える。

 

だから寂しさは無い。

 

 

 

 

火星の地表から、飛び立つヴンダーを眺め感傷にひたる。

彼らがこの火星に来たのが、まるでついこの前のような感じだ。

 

そう思うのは、マリと二人きりで同じように空を見上げているのも有るだろう。

 

 

「行ったね。…ねえ、ユウカ。

この後、何処へ行くつもりなの?」

唐突に口を開くマリ。

 

彼らが旅立つ準備をしていた頃、私達もまた同じように準備をしていたのだ。

 

「…ちょっとだけ後悔している事があるの。

だから追いかけようかなってさ。」

空を見上げながら答える私。

 

そんな私を見つめるマリ。

そちらを向かなくても、感じる視線。

 

「何となくユウカの考えている事、解るよ。

でも私としては少し複雑かな?」

 

見上げていた顔を戻し、疑問符を浮かべる私に言葉を続けるマリ。

少し恥ずかしそうにしている。

 

「いや〜。実はちょっち嫉妬してたんだよね、彼に。

ユウカが妙に信頼してたからさ…。」

そう言い、目線をそらしながら頬を指で掻き、苦笑いする。

 

「それでもついて来てくれるんでしょ?」

背けたマリの視線に回り込むように動き、マリの顔を覗き込む。

 

「あたり前田のクラッカー。私は君のパートナーだからね!」

にこやかに笑うマリ。

そんな彼女へと伝える言葉は唯一つ。

 

「ありがとう、マリ。

それじゃあ私達も行こうか!」

白いプラグスーツを着た私達は手を繋ぎ、野原を駆け出した。

 

 

その先に待つ、エヴァンゲリオンMark7の元へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある惑星の遥か上空に位置する宇宙空間で、極秘の軍事作戦が行われようとしていた。

ノイズに被われた音声が、電波に乗って真空の暗闇を飛び交う。

その音声は、任務を担う少女達の耳へと届いていた。

 

 

『追跡班、全機の現在位置を報告。』

 

『ポッド・ツー・ダッシュ、作戦高度に到達。予定軌道に乗った。』

 

『ポッド・エイト、軌道投入に問題発生。高度が足りない。』

 

『確認した。以後はツー・ダッシュとセブンでのオペレーションへと切り替える。』

 

『了解。ポッド・エイトを直援。ポッド・セブンは遊撃シフト・デルタへ移行。遊撃に専念せよ。』

 

『ポッド・ツー・ダッシュ、不帰投点を通過。エリア88に侵入。』

 

オペレーターの音声通信が次々と発せられる。

作戦はなんの問題も無く進行しているように見えた。

 

『了解。これより、US作戦を開始。』

スピーカーから芯の強そうな女性の声が流れる。

声の主は葛城ミサト、その人であった。

 

『了解。ポッド・ツー・ダッシュ、作戦最終軌道に投入開始。減速行動へ移る。』

女性オペレーターが、それに応じて状況を展開させていく。

 

『第一弾、全エンジンを点火。燃焼を開始。』

男性オペレーターの音声が聞こえた直後、輸送ポッドが激しい明かりを放って、暗闇の中に幾何学的なシルエットを浮かばせる。

 

『S1C、燃焼終了。減速を確認。』

 

『第一弾、ブースターユニットをジェットソン。』

ポッド本体から4つのブースターユニットがゆっくりと分離する。

そして、充分な距離に達したところで推進装置が作動し、本体の軌道を外れて宇宙の闇へと消えて行った。

 

 

『分離を確認。電装系をチェック。異常なし。』

 

『了解した。燃焼タイミングはオート。第二弾全エンジンを点火。』

 

二度目の点火によって、暗闇の中に局所的な明かりが灯る。

ポッドの周囲には、大量のデブリが浮遊していた。

 

『S1C燃焼終了。圧力弁を閉鎖。』

 

『第二弾、ブースターユニットをジェットソン。』

ブースターユニットが本体から分離すると、本体を見送る星屑となって消えていった。

 

『減速行動を終了。』

 

『最終作戦軌道への投入準備。機首を反転。回頭開始。』

 

『降下角度、確認。誤差、修正内。』

輸送ポッドは、細かく推進装置を噴射しながら体勢を整えてゆく。

その全貌は、二本の大きな支柱に挟まれた巨大な楯であった。

支柱は末広がりの三角錐で、まるで電波塔の足下をロケットエンジンにして積んだような無骨な形をしている。

 

『相対速度、再計算。座標高度を再確認。すべて問題なし』

 

『軌道最終修正完了。』

 

『180℃回頭完了。』

 

『了解。ポッド・ツー・ダッシュ、交叉起動への遷移スタート。これより、作戦行動へと移る。』

 

『現時点で全てのリモート誘導を切る。

以後の制御はローカル。』

 

『では、グッドラック。』

輸送ポッドは、ゆっくりとした浮遊状態から一転して、重力に引き寄せられるようにして急降下を始めた。

その先には、赤い星、かつて青かった地球が広がっていた。

 

赤いヘルメットとプラグスーツに身を包んだ少女は、エントリープラグの中で次々と状況を伝える映像ディスプレイに意識を集中していた。

通信モニターからは、オペレーターの通信に混じって、緊張感の無い少女二人の鼻歌がシンクロして聞こえていた。

その鼻歌は、赤い少女のエントリープラグの中へと入り込んでいる。

 

『目標との交叉起動に乗った。接触まで残りハチマル。』

 

『目標物を確認。』

 

『接触地点に変更なし。』

 

『シフトMを維持。問題なし。』

赤い少女は、操縦レバーを握りしめながら、様々なスイッチを押して機体の微調整に努めていた。

 

『ツー・ダッシュはランデブー用意。セブンは護衛に専念せよ。

エイトが高度不足のため、再突入までの96秒間だけ援護可能。

それまでにケリを付けて。』

 

ミサトが緊張感のある声で作戦への士気を引き締める。

その時、エントリープラグにアラートが鳴り響き、正面の映像が切り替わった。

 

『目標宙域に反射波あり。妨害が入った。』

 

『自動防衛システムの質量兵器だ。問題ない。』

次の瞬間、ポッドの進行方向に多数の爆発が発生した。

急降下中のポッドは、そのまま爆発の中へと突っ込んでいく。

 

『爆散流発生。到達まで3・2・1…。』

カウントダウンが終わるや否や、金属を激しく打つ音が何度も響き渡る。

それと共に強い衝撃が赤い少女の乗るエントリープラグを揺らす。

 

 

『続いて第二破。パターン青、厄介な連中だ。』

 

『接近中の物体を識別。コード4Aと確認。』

 

オペレーターの声と共にレーダーがそれを捉えて間もなく、超高速の飛行物体がポッド・ツー・ダッシュ目掛けて突っ込んで来た。

 

飛行物体は、円盤状の本体の平面に二本の爪を生やし、それを前方に突き出した状態で体当たりを仕掛けてきた。

機体の目の前に現れる位相空間による防御壁、ATフィールドが飛行物体の進路を塞ぐ。

しかし、

 

『アンチATフィールド!?』

飛行物体の爪が、赤い少女の乗った機体前方に展開されたATフィールドへと突き刺さる。

そして、錐のようにし回転しながらATフィールドに穴を空けると、二本の爪を左右に開いてそれを引き裂く。

 

そのまま飛行物体は、ATフィールドを失った機体に向かって、すぐさま散弾銃のような攻撃を浴びせる。

楯状の装甲板に蜂の巣のように穴が開く。

 

『ちっ、タチ悪い!ええいっ!やっぱり…邪魔っ!!』

赤い少女は、ヘルメットを強引に脱ぎ捨てて髪を振り乱しながら前を向く。

インテリアの上で前のめりになった式波・アスカ・ラングレーの左目は眼帯に被われていた。

 

彼女の操る機体は、敵の攻撃で破損した楯を捨て去ると、そこにはエヴァンゲリオン改2号機が姿を表した。

 

 

『コネメガネ!コネモドキ!

いつまで歌ってんのよ!うっとおしい!』

アスカは、暖気な歌声の主に苛立ちを向けながら、特攻を仕掛けて来る飛行物体を弾き返して応戦する。

先程まで漂っていた静寂の中の緊張感はどこかへ消え、宇宙空間は一瞬にして戦場へと化した。

 

再び改2号機のATフィールドに食らいついた飛行物体を、今度は遠方から鼻歌の主の一人が狙撃して撃破する。

 

『援護射撃、2秒遅い!』

アスカは苛立った顔で、狙撃の方角を睨みつける。

 

『そっちの位置、3秒早い。』

アスカが睨んだその先には、二枚の楯に挟まるように身を隠したもう一体のエヴァが浮かんでいた。

そのエヴァの機体をすっぽりと被う楯の先端からは、長いライフルの銃身が突き出している。

 

『臨機応変!合わせなさいよ!』

ピンクのプラグスーツに身を包んだ少女が乗るエントリープラグの中に、アスカの声が響き渡った。

 

真希波・マリ・イラストリアスは、それを聞きながら次の獲物へと照準を合わせる。

 

『仰せの通りに…お姫様っ!』

マリは、正確な射撃によって次々と飛行物体を破壊していく。

 

同じように、もう一つの白い機体も動き出し飛行物体をライフルを操り撃破していく。

しかし、その動きは他の機体と大きく違いがある。

また機体には、ブースター等が取り付けられていなかった。

 

それでも宇宙を自由に移動するそのエヴァは、どこか異質な物のように見える。

 

 

『フラーレンシフトを抜けた!最終防衛エリア89を突破!』

アスカの操るエヴァ改2号機は、マリの掩護射撃の合間を縫うようにして敵の攻撃を躱して進む。

 

『!?…目標物が移動してる!』

アスカが見据えたその先には、目標物となる黒い固まりが浮かんでいた。

 

目標物は、十字架のような形をした巨大なコンテナだった。

黒く平坦な目標物の背後には、赤く染まる地球が迫っている。

 

『軌道修正が追い付かない!このまま強行する!』

とアスカは叫ぶ。

 

エヴァ改2号機が、目標物のコンテナに向かって三発のワイヤーロープを発射する。

ワイヤーロープの先端が、コンテナの表面に張り付いて固定される。

そのままの勢いで一度コンテナを追い越したエヴァ改2号機は、ワイヤーの反動を利用して減速し、そのままワイヤーを巻き上げて目標物へ急接近して行った。

 

 

『っ!減速!!』

コンテナにしがみついた改2号機は、進行方向に対して反対側へと機体に取り付けられた巨大ブースターの足を向けると、そのまま点火する。

巨大な火柱が二本吹き出して、目標物の慣性を沈めて行く。

 

『8、7、6、5、4、3、2、1……燃焼終了!』

燃料を使い切ったブースターは、その役目を終えて改2号機から切り離されると、推進装置を噴射して本機が取る軌道の外へと進路を向けた。

 

『2ダッシュ、最終ブースターをジェットソン。

再突入保安距離を確保。』

 

『強奪成功。帰投するわ。』

アスカは、息を荒げて胸を大きく上下させた後、呼吸を落ち着かせて外の景色に視線を向けた。

 

『了解。回収地点にて待つ。合流コードはサターン・ファイブ。』

ミサトの声が無線から流れる。

 

『了解…。』

無事に任務が果たされ、アスカは緊張の糸を緩めた。

 

 

 

しかし、休む暇もないまま、突然エントリープラグ内にアラートが鳴り響いた。

モニターには、即座に状況を解析したコード次々にが表示される。

そして映し出されるパターン青のコード。

 

 

『パターン青!?どこにいるの!』

アスカは顔色を変えて周囲を見渡した。

しかし、敵は何処にも見当たらない。

 

『妨害物はコード4B。フィールド反射膜を展開中!』

 

オペレーターの音声が届く。

 

 

なんと、敵は目の前にいた。

 

アスカが捕えたコンテナは、正方形の面をサイコロの展開図のように面を広げていき、あっという間に薄く長い触手を作り上げてしまった。

 

『ちっ、しゃらくさい!再突入直前だっちゅうの!』

 

アスカはその光景を目にしながらも、全く怯む様子を見せない。

 

 

『コネメガネ!援護!』

アスカは、マリのいる方向へ顎を向けて激を飛ばした。

しかし、マリの乗った機体は、掩護射撃を一発打ち込んだところで大気圏への突入を開始してしまう。

仕方なく超長距離ライフルを手放したエヴァ8号機は、正面の楯を蹴り飛ばして着陸体勢を取った。

 

『めんご!高度不足でおっ先に!

あとはセルフサービスで…よろぴくぅ〜。』

 

『ちっ、役立たず!ああ、もう、しつこい!

こんなの聞いてないわよ!』

アスカは苛立ちを押さえ切れずに、改2号機の足でコンテナを何度も蹴りつける。

まるで地団駄を踏むように。

 

 

『コネモドキはいったい何してんのよ!』

怒りを顕にして叫ぶアスカ。

 

そんなアスカへもう一人の声が届く。

 

『ん〜?今は残敵掃討中だよ〜ん。

そもそもシフト・デルタは少し遠すぎるって。

上の作戦ミスってやつ?

まあユウカと二人きりで宇宙デートだと思えば、最高の作戦ミスだにゃ!』

 

白いプラグスーツを着たマリと瓜二つの少女。

差異といえば、スーツの色か、眼鏡をしていないことと、金色の瞳だろうか?

 

以前から、自らが乗る白いエヴァを、ユウカと名付け呼ぶ少女。

そんな乙女思考をしているというのに、悪びれもなく嗤う。

 

そんな彼女の態度に舌打ちをするアスカ。

『コネメガネ!アンタのシリーズ、ムカつくわね!何とかしなさいよ!』

 

ギリギリ通信可能位置にいたマリは、そんなアスカへ答える。

『いや〜、私は認知しておりませんで…。

クレームはネルフの広報部へお電話をお願いしたいにゃ。』

 

 

本人曰く、ネルフにより作られたとされているマキナミシリーズ。

その彼女がエヴァンゲリオンMark7という白い次世代型のエヴァを強奪し、合流してきたというのは一年程前。

 

マキナミシリーズとの事だったが、

しかし、本人は[長門マリ]と名乗った。

 

 

 

そんなやり取り等知らぬと、コンテナから伸びた触手は、波打ちながら一つの束となって収束していく。

触手はコンテナと改2号機を取り囲むようにして輪を作ると、光を帯びて激しく輝き出した。

 

触手が放った光は、一点に集中して改2号機の顔を焼き付けるように照らす。

それを受け、眼帯で隠したアスカの左目が急に発光する。

 

『うわっちっちっちっち!なにこの光!?ATフィールドが中和してない!』

 

LCLで満たされたエントリープラグ内に、アスカの左目から血の色をした気泡が吹き出す。

 

『コアブロックをやらないと!ん?…逃げんなゴラァー!』

しかしコンテナの中心にあった円盤状のコアが、平面状の触手を伝って改2号機から離れて行く。

 

『ヤバい!降下角度が維持できない!このままじゃ機体が分解する!』

きりもみ状態で急降下を続けるコンテナと、必死でそれにしがみつくエヴァ改2号機。

 

『ツー・ダッシュ、作戦遂行を最優先。

機体を捨ててでも、目標物を離さないで。

…致し方ない。セブンは作戦を変更。目標の回収を優先して。』

ミサトの通信が改2号機の込み入った状況に割って入る。

 

『分かってるっちゅうの!』

アスカは果敢に体勢を立て直そうとするが、触手の放った光が臨界点を突破し大爆発を引き起こす。

 

『うあっ!』

衝撃で上半身を後ろに弾き飛ばされたエヴァ改2号機。

しかし、その姿勢を戻した時には、左肩から先が完全に失われていた。

 

『ぐうううぅぅぅ…。』

痛みに喘ぐアスカ。

大きく損傷した改2号機に対して、次々と触手の放つ光が襲いかかる。

チクチクと刺すような痛みと、爆発の衝撃を繰り返し浴びたアスカは、思わずコンテナに向かって叫んでいた。

 

『何とかしなさいよ……!バカシンジ!!』

その声に答えるようにして、コンテナに赤い亀裂が入る。

次の瞬間、紫色の光が一直線に伸びたかと思うと、一瞬のうちに触手を切り刻み、細切れにしてしまった。まるで海の藻屑のように。

その後直ぐに、強力な電磁砲が逃げ出したコアを追い立てるようにして放たれると、少ししてそれを安々と破壊した。

 

 

アスカは、唖然とした表情で目標物を見ていた。

その視線の先には、赤い亀裂の隙間から人の目のようなものが覗いていた。

その目は、ゆっくりとまぶたを閉じて、再度の眠りの中へと入っていったかのように見えた。

 

 

再び訪れる静寂。

目標物と改2号機は、青い光を放ちながら大気圏へ突入し、そして成層圏へ沈み込んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

「お帰り、碇シンジ君。待っていたよ。」

戦闘が起きた宇宙空間の遥か彼方、地表からその光景を眺める一人の少年の姿があった。

 

銀髪の少年は、全てを知っているかの表情で、地球に向かって降下する光を見ている。

 

しかし、次の瞬間驚いたように視線を少しだけ横にずらす。

 

 

「そうか、まさか君達までこんな所に…。

お転婆な妹を持つ兄とは、こんな感じなのかな?」

苦笑いを浮かべる少年は、しかし何処か安心したような雰囲気に変わる。

 

 

「久しぶり。…本当に久しぶりだね、ユウカ、真希波さん。

君達に会える日も楽しみだよ。」

 

 

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