D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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原作だと万歳三唱な展開もオリ主のおかげでお通夜気味です。


第114話 英雄の帰還

 首都リリスで炎駒は仲間と共に戦っていた。シャルバ・ベルゼブブにより冥界を混乱に陥れた超獣鬼、そのサイズは彼らの中でも最も巨体を誇るスルト・セカンドですら比べ物にならないほどの大きさであった。しかも自他共に認める屈指の実力者達である彼らの攻撃を受けきるのだ。名にふさわしい怪物は、ルシファー眷属を大いに苦戦させた。

 しかし強大な相手に手をこまねいている訳にもいかない。冥界をこれ以上荒らさせないように、彼らは全力で超獣鬼の討伐に当たっている。

 僧侶のマグレガー・メイザースによる猛烈な炎の魔法を、炎駒は自分が起こした竜巻で勢いを強めた火炎として攻撃へと繋げる。規模はかなり大きいものであったが、超獣鬼は少し視線を向けただけであった。もっとも陽動が狙いであり、相手の横腹にグレイフィアの大規模な魔力の一撃が殴りつけるように入れられた。

 炎駒は軽く舌打ちをする。アジュカ達による対抗術式が来たのにも関わらず、いまいち決定打に欠ける状況が続いていた。本来であれば戦車のスルト・セカンドが万全であればもっとやりようはあったのだろうが、最初から本気を出し過ぎたため、現在の彼の火力は本気の時と比べるとかなり弱い。おかげで今のように煮え切らない戦況が続いていた。

 もっとも…炎駒としても、最初からスルトのように思いのまま戦いたかった。らしくもなく思いのたけを目の前の怪物にぶつけたかった。それは実力による自信からではない。愛弟子が命を落としたという情報からであった。

 彼が最後に聞いた情報では、弟と共に別の時空から戻ってこなかったというもの。その後はグレイフィアがリアス達をアジュカの元へと向かわせたようだが、それ以降の事情は知らなかった。それ故に炎駒が知っている情報では、大一の生死は絶望的と思わざるを得ない。もっとも現状は真実が不明であるため、正確かつ非常な事実を知っているのはごく一部の者だけであったが。

 何度も後悔してきた。兵藤大一という男を悪魔にしたことを。特別な力を持っているとか、悪魔として見込みのある感性があるとかではない。環境と彼元来の責任を感じやすい性格によって、悪魔にする道を許してしまった。

 それでも夏休みの時やロキとの戦いの後に、彼が生き生きとした表情を見た炎駒は嬉しかった。ようやく彼が悪魔になって幸せを掴めるのだと期待もした。たまに耳に挟む話では、その可能性も充分に感じられた。

 そんな想いを抱いていたからこそ、彼が弟のために残り門から帰ってこなかったことには嘆いたものだ。信頼関係を築き、可愛がってきた大切な弟子がテロリストにより命を奪われたのだ。

 

「…入れ込まない方がいいぞ」

 

 少し前に旧友に忠告された言葉が、頭の中で反芻している。彼女の忠告は正しかっただろう。弟子を失った悲しみは、これまでの長い悪魔人生でも炎駒に大きな影を落とした出来事であった。

 しかし同時に彼の心は折れなかった。折るわけにはいかなかった。兵藤大一の師として、短い間ながら彼に悪魔として戦うことの必要性を説いてきたのだ。ならば、目の前でそびえ立つ相手に、その矜持を持って向かわなければ亡き弟子への示しがつかないというものだろう。

 間もなく、空間の裂け目から超獣鬼に匹敵するほどの巨体を持つドラゴンが現れたかと思うと、一瞬で鎧を着込んだ巨人へと姿を変えていた。映像越しでしかないが見たことのあるその姿は主の妹が愛する男で、亡き弟子の弟でもあった。

 グレイフィアの指示のもと、ルシファー眷属は彼のサポートのために動き、超獣鬼の巨体を上空へ浮かすと、一誠の鎧の胸部が大きく開く。

 

『ロンギヌス・スマッシャァァァァァアアアアッ!』

 

 彼の咆哮と共に放たれた大出力の赤いオーラはルシファー眷属の攻撃をものともしなかった怪物の姿を消し去ったのだ。

 戦いの勝利に安心するのと同時に、炎駒は確信した。元のサイズに戻っていく一誠の横には大一の魔力を感じない。自分の愛した弟子はこの場にはもういないという現実に、不健康な感情の入り混じった涙を静かに流すのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 数日かけて復活して、次元の狭間から脱出した一誠がさっそく目に入ったのは仲間の姿ではなく、騒動の根源である超獣鬼であった。

 それだけでも驚きであったが、この怪物に睨まれたと思ったグレートレッドが腹を立てて (もっと言葉もわからないためその感情がどれほどか不明だが)一誠に力を貸して戦うことになったのは、彼の経験の中でもスバ抜けた衝撃を与えたのは間違いない。グレートレッドが与えた力は、一誠を超獣鬼と殴りあえるほどにまで巨大化させた。いつもと同じ感覚で戦う一誠は、超獣鬼と戦っていたルシファー眷属の助力も得て、上空に飛ばした相手にグレートレッドとの力を合わせた強大なオーラ「ロンギヌス・スマッシャー」を決めて勝利を掴んだのだ。

 元に戻った一誠を残し、グレートレッドはそのまま飛び去っていった。規格外の存在は別れも嵐のようにあっという間であった。同時に去り際にわざわざ「おっぱいドラゴン」の歌の一節を残していくあたり、その俗っぽさに面食らう一誠でもあったが。

 彼はそのままオーフィスを背中に乗せて、仲間を探す。グレモリー眷属がこの首都にいることは確信していた。次元の狭間で聞こえる声と感じる魔力は、それこそ彼が導かれたものなのだから。

 オーフィスの指示もあって、間もなく彼は目的の相手を見つける。そこにいたメンバーはライバルも含めた仲間達であり、彼の想像を遥かに上回る安定を感じさせたのは間違いない。意図しなくても感情が昂る。彼女らのもとに向かう速度が速くなる。そしてついに渇望していた仲間達の元へとたどり着いた彼はその中心に降り立った。

 

「兵藤一誠!ただいま帰還しました!」

 

 この言葉に全員キョトンとした様子で静まり返ってしまう。もっと熱烈な歓迎を期待していたため一誠も面食らってしまったが、ドライグが少し面白がりなら指摘する。

 

『お前だと認識していないんじゃないか?』

「…マジかよ。そんなことありえるの?」

 

 軽いショックを受けつつも、すぐに取り直した一誠は少し考えてもっとも彼らしい言葉を選び抜いて素顔を見せた。

 

「えーと、おっぱい!グレートレッドに乗って帰ってきました!」

 

 この言葉が出た瞬間に、爆発したように仲間達から歓声が上がる。ある者は駆け寄って抱きつき、ある者は涙を流し、ある者はその登場に純粋に驚きを向ける。様々な反応が飛び交っていたが、一誠が最も会いたかった相手はゆっくりと近寄ると、その温もりを感じるように手を彼の頬に当てた。

 

「…よく、帰ってきたわね」

「そりゃ、もちろん。あなたや───仲間の皆がいるところが俺の生きるべき場所ですから」

 

 静かに答える一誠であったが、何とも言えない感情を抱いていた。リアスと再会できたことの喜びという健全なものから、彼女の胸が戻っていることに心から安堵しているという間抜けなものまでごちゃごちゃに入り組んでいる。しかしこの中には、常にひとつだけ心配が煙のように渦巻いて在中していた。

 いつ切り出すかを考えていると、英雄派のジャンヌの間の抜けた声が聞こえる。彼女が人質にしていた子どもを、隙をついて祐斗がお得意のスピードで助け出していた。

 

「…お帰り、イッセーくん?キミのおかげでこの子を救えたよ。さすがヒーローだね。キミが変わりなしで本当に良かった。グレートレッドと共に来るなんてさすがに読めなかったよ」

 

 仲間の安心した様子に触れるほど、これから直面するであろう兄の真実を打ち明けることへの緊張感が増していった。吐きそうになる感情をぐっと抑え込み集中するが、真実を打ち明ける前に苛立ちを見せたジャンヌがギラギラとした視線を向けていた。

 

「…まさか、シャルバの奸計から生き残るとはね。恐ろしいわ、赤龍帝」

「そりゃ、どうも。どうする?俺たちとやるのか?」

「…2度目の使用は相当寿命が縮まるけれど、使わざるを得ないわ」

 

 フェニックスの涙で傷を癒したジャンヌは懐から取り出したピストル式の注射器を自身の首に打ち込む。その瞬間、彼女の姿は大きく変化し上半身は血管の浮き出た筋骨隆々の状態になり、下半身は彼女の神器によって創られた聖剣が巨大な蛇を形作っていた。

 ラミアのような姿になったジャンヌに一誠は驚愕する。祐斗から英雄派の使うこの姿が肉体と神器を飛躍的に強化するものだと知った。

 しかし早々に撤退を目論む彼女に一誠は逃すつもりは無かった。自他共に認める煩悩から彼が最も好きなことのイメージを膨らませ、ジャンヌへと向ける。彼が発動した「乳語翻訳」は、ジャンヌが路面を破壊して下水道に逃げ込むことを知らせると、彼女の行く手を阻むように動いた。そして触れる直前に再び煩悩から泉のように湧き出るイメージを、最大限に活用した。女性の服を弾け飛ばす「洋服破壊」の一撃は、相も変わらず抗えない力であり、完全に無褒美になったジャンヌにドラゴンショットを叩きこむのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 ひとまず戦いを終えた一誠はここに戻るまでの経緯を仲間に説明していた。特に身体の面については、リアス達がアジュカから指摘を受けていた点でもあるため、グレートレッドやオーフィスの力を借りて受肉したと聞くと仲間達は驚愕していた。

 一誠は話す中で、とにかく自分に落ちつくように言い聞かせていた。ひとりでなら気持ちを処理できたことでも、いざ仲間の前で話すとなればその感情は揺れる陽炎のごとく、はかなげな不安を感じていた。

 

「…あ、あの、イッセー先輩。大一先輩は…」

 

 一誠が危惧していたことの口火を切ったのは小猫であった。この一言で周囲の空気が緊張感に包まれ、周りの気温が数度下がったかのような錯覚を抱かせた。

 一誠はゆっくりと息を吐く。隠し通すつもりは無い。ただそれでも彼の起伏する想いを鎮めるために、一息の時間を必要としていた。

 

「兄貴は…兄貴は俺のために死んだ」

 

 この言葉が始まってからは早かった。大一が死に際に魔力、生命力、悪魔の駒を一誠に託したこと、そのまま疑似空間の崩れゆく瓦礫に消えていったこと、ドライグの発言も交えながら一誠は静かに話し続けた。

 先ほどまでの空気とは打って変わった重い雰囲気になる。アーシアやイリナは悲しみの涙を流し、気丈なゼノヴィアですら沈痛な表情を隠せなかった。祐斗の方は表情を固く、感情を表に出さないようにこらえている様子であった。ソーナやロスヴァイセは目を伏せて腑に落ちない感情を見せ、匙は悔しそうに拳で額を叩く。サイラオーグはただ瞑目してその話を静かに聞いていた。この話を振った小猫は目を潤ませながら、口を真一文字にして必死に耐えているようであった。

 仲間やライバルの反応を見るのが辛かったが、一誠がもっとも心配だったのは兄と親交が深かったリアスと朱乃であった。2人ともこの話を聞いていたが、その表情が表すものを一誠は読み取ることができなかった。

 話し終えた一誠は、朱乃の方を向くと大きく頭を下げる。

 

「本当にすいません!兄貴を助けることができなくて…本当に…!」

 

 一誠の言葉が途切れるようになっていく。覚悟はしていたものの、兄がもっとも愛していた女性にこの真実を伝えた時の重責は、これまでの比じゃなかった。煙のようにこの場から消え去れたらどれだけ楽だろうか。ただそうなっても、彼の心は休まることは無いことだってわかっている。顔を上げた一誠に出来ることは、ただ朱乃の反応を待つだけであった。

 朱乃は一誠に近づくと静かに抱きしめる。

 

「…よかったわ。イッセーくんが帰ってきて…本当に安心したわ」

「朱乃さん…俺…」

「なんとなく…アジュカ様の話を聞いた時から嫌な予感はしていたの。あの人がやりそうなことだわ」

「…本当にすいません…ッ!」

「あなたは何も悪くない。あの人が選んだ道なんだもの。大一が命を懸けてまで救いたかったあなたが苦しんでいたら…彼が浮かばれないわ」

 

 一誠から離れた朱乃は笑みを向ける。哀しみは隠しきれず、必死で自分を奮い立たせていたものでありどこまでも美しいその顔は、一誠の胸を熱いもので締めつけた。

 朱乃と代わるようにリアスは一誠の前に立つ。彼女の潤んだ瞳には、軽く目を拭う亡き仲間の弟の姿がハッキリと映っていた。

 

「彼は私との約束を守ってくれたのね。…イッセー」

「はい」

「───私と共に生きなさい。あなたを救った兄の分まで」

「…はい、俺はリアスと共に生きます。───最強の『兵士』になるのが夢ですから」

 

 一誠の決意と共にリアスと彼の唇が重なる。これが彼の生きる心を強く支えるのであった。

 

「強者を引き寄せる力、ここまで来ると怖いな」

 

 間もなく、彼らのもとに常軌を逸した力を持った存在が姿を現す。英雄派のリーダーである曹操と、先日猛威を振るった最上級死神のプルートであった。もっとも今回は互いに仲間としてではない様子であったが。

 信頼ある仲間への悲しみを心に収めた彼らは、強敵の登場に臨戦態勢を取る。そしてそこにはもう一人の援軍が現れた。

 

「お前の相手は俺がしよう、最上級死神プルート。───やはり帰ってきたか、兵藤一誠」

「ヴァ―リッ!」

 

 頼もしいライバルであり援軍の登場に、一誠は声を上げる。彼としても敗北続きの鬱憤をぶつける相手が欲しかったらしい。プルートは油断なく、それでいて堂々とヴァ―リを見据えるが…。

 

「兵藤一誠は天龍の歴代所有者説き伏せたようだが、俺は違う。───歴代所有者の意識を完全に封じた『覇龍』のもうひとつの姿を見せてやろう」

 

 光り輝く白き翼を広げたヴァ―リの鎧姿に、これまでの彼とは一線を画す魔力が感じられる。彼が新たに独自に生みだした強化形態「白銀の極覇龍(エンピレオ・ジャガーノート・オーバードライブ)」は、言葉通りの凄まじさであった。向かってくるプルートの鎌をあっさり破壊すると、鋭いアッパーで上空へと打ち上げる。

 

「圧縮しろ」

 

 彼の言葉と同時に鎧からも音声が鳴る。その瞬間、プルートは横から大きな壁に挟み込まれたように身体が圧縮され、お次は潰れるように横に圧縮する。何度も何度も圧縮を続けるその様子にプルートは完全に戸惑っていた。

 

《こんなことが…!このような力が…ッ!》

「───滅べ」

 

 目にも捉えきれないほどの大きさにまで圧縮されたプルートは、そのままこの世から微塵の欠片もなく姿を消していった。

 プルートを圧倒したヴァ―リに曹操は目を輝かせていた。強者との戦いの渇望…ここにいる一誠、ヴァ―リ、サイラオーグ、祐斗などはまさに彼が期待する男達であった。しかし相手は決まっていた。曹操と決着をつけたい想いがもっとも強い男…一誠が一歩前に出て最強の神滅具を持つ相手に睨みを利かせている。

 

「俺の相手は赤龍帝か。他はそれを察してまるで動かないときた」

「ああ、借りを返さないと気が済まなくてさ」

「おもしろい。あの時はトリアイナの弱点を突いてさし込ませてもらったが、今度は全力のキミと戦おうじゃないか。成れ、紅の鎧に」

「もちろん、そうさせてもらうさッ!いくぜ、ドライグッ!」

『応ッ!相手は最強の神滅具ッ!ここで倒さねば赤龍帝を名乗れんぞ、相棒ッ!』

「あったり前だろうがッ!」

 

 ドライグとのやりとりを機に、強烈な紅い光と強固な鎧が形成される。赤龍帝として、おっぱいドラゴンとして、子ども達のヒーローとして彼は負ける気が無かった。強いライバル、大切な仲間、愛する女性、そして命を託してくれた兄への想いが彼の実力をどこまでも引き上げていた。

 

(見ていてくれよ、兄貴ッ!)

 




オリ主いませんがクーフーとの決着はしっかりつける予定です。
次回あたりですかね…。
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