D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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あけましておめでとうございます。今年も粛々と更新を続けていきます。
ということで、新年一発目はこのようなお話です。


第121話 各々の相談

 ある日のこと、駒王学園の生徒会室ではリアス、朱乃、ソーナ、椿姫の4人が集まっていた。若手悪魔として期待が集まるのは4人いるが、同じ学園にいるリアスとソーナが情報をやり取りにするにあたり、もっとも軽易に出来ることは疑いようもない。

 禍の団の旧魔王派と英雄派をほとんど機能停止に追い込んだこと、最近の互いの眷属の調子など、悪魔としての話題は事欠かない。そんな中、先日の一誠達の復活劇が出るのは自然なことであった。

 

「でも良かったわね、リアス。兵藤くん達が戻ってきて」

「安心もあるけど、ちょっと悩みもあるのよ。大一の駒の件とか」

「その件は私も聞きましたね」

 

 ソーナが紅茶の入ったカップを手にしながら答える。現在、兵藤大一は転生悪魔の括りに入らない。元々所持していた「悪魔の駒」の影響でわずかに力は残していたが、特別な能力を所持している人間という状態なのだ。これには元主のリアスとしても不満を抱かざるを得ない。彼女からすれば片翼をもがれたような気持ちなのだ。

 

「大一くんなら私も眷属にしたいくらいですが」

「いくらソーナでも、易々と納得する私じゃないわよ」

「わかっていますし、そもそも不可能です。最近、私の方でも新たに眷属を募りましたし、なによりも彼の駒の数が想像つきませんからね」

「1つ…とはいかないでしょうしね」

 

 ソーナと椿姫の言葉に、リアスがわかりきっているかのようなため息をつく。大一自身の潜在能力は決して高くなかったからこそ、「兵士」の駒ひとつで済んでいた。しかし後付けで無名とはいえ怪物クラスの龍に、各界から厄介者としてマークされている特異な神器も備わっている今の彼では、リアスもソーナも以前同様に駒のひとつで済むとは思えなかった。アジュカの話では、そもそも「悪魔の駒」自体もひとつであり続けることに限界があったようで、それ故に耐えきれずに錨の引き上げで飛び出し、駒自体にもヒビが入ったのだと推測されていた。

 

「まあ、イッセーくんの潜在能力を考慮すれば駒の数としては妥当ですから仕方ないことだとは思います。彼の場合、いずれ独立することもあるでしょうし」

 

 赤龍帝としての知名度と実力、異常なほどの中級悪魔への昇格のスピード、彼自身がハーレムを目指していること、多くの要因がソーナの言葉を裏付けていた。

 とはいえ、リアスとしてはあまり笑顔になれるような話題では無かったが。

 

「あんまり聞きたい話題では無いわね…」

「おっと失礼。今がラブラブなリアスには、あまり嬉しくない話題でしたね」

「もう!自覚があるなら言わないでよ!」

 

 むすっとした表情で答えるリアスに、ソーナがおかしそうに笑みを浮かべる。これを機に彼女らも年相応の恋愛話へと移行していくのが、手に取るように感じられた。

 

「いいじゃないですか。幼馴染として、恋が成就したことは祝っていますよ。ただそれはそれとして、イッセーくんは引く手数多な印象ですが。匙から聞きましたが、仲間内でも人気だそうですね」

「が、学園の人気は祐斗ほどじゃないし…」

「…木場くんってやっぱりそれだけ人気あるんですか?」

「彼が1年生の頃にラブレターの仕分けを大一が手伝っていたくらいには凄かったわね」

「へ、へえ…」

 

 椿姫の表情には驚きと同時に思案するような雰囲気が含まれていた。ソーナに劣らぬほどの生真面目さを有する彼女にしては、色めき立つような印象を受けたリアスと朱乃は少し不思議そうに顔を見合わせ、その一方で隣に座るソーナはリアスに向けたような笑みを続けていた。夏休みの試合を皮切りに、その後も何度か交流のあった椿姫の感情は、祐斗への恋心へと傾倒していた。その副官の思いを知っているソーナからすれば、わかりやすい彼女の反応はおかしいことこの上なかった。

 

「仲間の中では、祐斗くんは間違いなくモテますものね」

「私としては彼も誰か相手を作っていいような気もするけど…」

「2人とも彼氏がいる余裕故の発言に聞こえますね。特に朱乃の方はそういった印象が強いですが…」

「あらあら、ソーナ会長ったらそんなことありませんわ」

 

 ソーナの言葉に、朱乃は何度も振りまいてきた穏やかな笑みを見せる。ただ彼女の内心はこの笑顔ほど自信に満ちたものではなく、それもあってか自分に言い聞かせるように大一との関係性を強調した言葉を放つ。

 

「でもたしかに私と大一の関係はリアスと比べれば圧倒的なものだと自負していますわ」

「…私の方がイッセーとラブラブだもん」

 

 リアスの小さい呟きに、朱乃は目を光らせながらSっ気のある笑みを浮かべた。それがリアスや大一に幾度となく向けていたからかいの表情であることをソーナは熟知していた。

 

「うふふ、どうかしら?信頼においては、私と大一の右に出るものはいませんわ」

「彼氏の好みもまだ把握していないあなたに言われたくないわ」

 

 売り言葉に買い言葉、これが着火剤となり2人の言葉の応酬は激しくなっていった。

 

「リアスだって同じようなものでしょう?」

「私はイッセーがおっぱい大好きなこと知っているもの!付き合う前からいっぱいスキンシップしているし、一緒にお風呂入るし、その気になれば一線だってすぐ超えられるわ!」

「大一はそうしなくても私のことをしっかり見てくれているわ!お願いも聞いてくれるから、もっと愛し合えるもの!それに私だって彼のためにコスプレとかいっぱい用意しているから、飽きさせないわ!」

 

 リアスの方は一誠が戻ってきたことへの安堵を抱きつつも、いまだにたくさんいる恋のライバルの動向や、最近では男性陣にも目をつけられていること、そして彼の名声が上がるほどに彼に期待する女性が増えていることに不安を禁じえなかった。

 一方で朱乃もリアスに指摘されたようにいまだに大一の好みを把握しきれないことだけでなく、彼と小猫の距離感が縮まったことに焦燥感と緊張感が内包されるのであった。彼の片腕が義手になり、温もりを感じられないのも不満であった。

 

(お風呂もコスプレもやりすぎな気がしますが…)

 

 そんな不安だらけの2人の会話を見ながら、ソーナはため息をつく。その横では椿姫がいまだに祐斗関連で頭と感情を整理するために黙りこくっていた。

 

────────────────────────────────────────────

 

 ほぼ同時刻、旧校舎の人気のない部屋で小猫がギャスパーとレイヴェルを招集していた。これにはレイヴェルが不思議そうな顔で、小猫に話を要約した内容を口にする。

 

「大一お兄様と距離を縮めるためにどうしたいかを話し合いたいと」

「…『好きな人』とだよ」

「同じことじゃありません?」

「…焼き鳥娘は、イッセー先輩のことが好きなんだから違う。ライバルが強いし、たくさんいるからここだけでも団結しなきゃ…」

「…まあ、その呼ばれ方は不本意ですが、考え方は納得ですわね」

 

 小猫のあまり感情を出さない声に、レイヴェルは納得したように頷く。正直、小猫の発言であれば連れてこられた理由がいまいち腑に落ちないギャスパーであったが、それを話すとまた面倒な小言に巻き込まれるのは明らかなため口をつぐむ方を選択した。小猫からすれば男の視点を期待した故の人選であったが。

 そんなギャスパーをよそに親友2人は想い人を振り向かせる方法に苦慮していた。

 

「…相手の好みに合わせるのが一番なのかな」

「イッセー様は…わかりやすいですが、リアス様の胸に勝てる気がしません」

 

 完全な敗北を勝手に感じるレイヴェルに、小猫は軽く不快な表情になり、ギャスパーは苦笑いを浮かべる。小猫と大差ない身長のレイヴェルであったが、彼女と違い胸のふくらみはしっかりあるため嫌味のようにも捉えかねない。アザゼル辺りが口を開けば、「将来が有望だ」という言葉が出ていただろう。

 小猫の苛立つ視線に気づいていないレイヴェルはそのまま話を進める。

 

「大一お兄様の方はわかりませんけど、何が好きなのでしょうか?」

「…かなり前に食べ物ではおそばが好きって言っていた。けどイッセー先輩みたいな好みは知らない。ギャーくんは?」

「僕も聞いたことないな」

「ギャスパーさんでわからないなら…難しいですわね」

 

 再びうなるように黙り込みながら腕を組み、小猫とレイヴェルは考え込む。恋慕の情を抱く相手から好かれたいと思うのは当然であり、悪魔という立場上いくらでも恋人関係になれることを踏まえれば、彼女らの熱意も納得はできる。

 それでもギャスパーとしては、戦い以上の白熱した親友の真面目さを目の当たりにして、戸惑いが優先されるのはごく自然なことであった。このままでは決着がつきそうにないと思った彼は、遠慮がちにこの議論に別の方向性を提示した。

 

「で、でも好みに合わせるだけじゃなく、その人にとって特別な関係を築くことも大事じゃないかな?」

「特別…そういう意味ではレイヴェルは、イッセー先輩のマネージャーになっているから大きな一歩だね」

 

 小猫の言葉に、レイヴェルが赤面しながらまんざらでもない様子で答える。

 

「わ、私は別にイッセー様の力になれればと思って…それに小猫さんだって最近は大一お兄様と一緒の時間が増えたではありませんか」

「そうなの?いいじゃない、小猫ちゃん」

 

 レイヴェルの言うとおり、たしかに小猫は大一との時間を確立していた。なんでも転生悪魔でなくなった彼の回復力は著しく低下しており、同時に疑似空間で一誠に生命力の大半を渡したため、彼自身の生命力の回復を図るにあたり小猫が一誠にしているマッサージを大一もたまに受けていた。朱乃が心配を抱いたのは、大一と小猫の間にこういった事情が構築されたのが理由であった。

 しかしこの指摘に小猫は目を細め、眉を八の字にして明るいとは程遠い表情をしていた。こんな表情でも可愛らしさが優先されるのだから才能の領域だろう。

 

「…朱乃さんほど一緒にいるわけじゃないし…すぐ終わるし…」

「ま、まあまあ。2人だけの時間で、朱乃さんの次に一緒にいるのは小猫ちゃんなんだから」

「…私よりもロスヴァイセさんの方が長いもん」

 

 半ば不貞腐れたような態度で小猫は顔を背ける。ロスヴァイセから魔法を学んでいること、同じ契約相手がいることに加えて、大一は修学旅行時から大人の悪魔と同様の立場を強いられるようになっていた。その辺りの事情と相まって彼がロスヴァイセと長くいる時間が増えるのは必然的であった。小猫からすれば恋愛関係でないのは重々承知の上であったが、朱乃がかつて大一をまるで意識してなかったことと同様に、きっかけで発展に繋がるのはあり得る気がしていた。小猫が姉である黒歌と同じレベルで警戒する相手と言えるだろう。

 あまりにも意外な名前が出てきたことにレイヴェルは驚き、ギャスパーは自分の失言を強く後悔するのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 このような会話が行われていたのは、女子だけではなかった。大一と祐斗は人目のつかない校舎裏で、自動販売機で買った缶コーヒーを片手に立っていた。ベクトルは違えど、共に目立つ要素が色濃く反映されている2人が、相談事のために人目を避けた場所を選ぶのは当然であった。

 ただ今回は珍しく大一の方から祐斗を誘っていた。内容は朱乃と小猫を悲しませない方法というものであったが…。

 

「大一さんらしくない話ですよね」

「それは重々承知している…。こういうのは一誠の領分だろうしな」

「だったら、イッセーくんの方が…」

「あいつにこの相談をするのは死んでも嫌だし、答えが返ってくると思えない」

 

 針にも劣らない真っすぐな鋭い言い方で大一は反応する。彼から見て弟の一誠はハーレム願望こそあるものの、自分から積極的にハーレムを組み立てず、女性陣の方からアプローチをかけている印象があった。恋愛要素において弟に頼ることを良しとしないプライドと併せて、一誠に相談したところで的を射る回答は期待できなかった。アザゼルも思いついたが、他の勢力からの評価を踏まえるとやはり頼りない。事情を知ったシャドウが立候補もしたが、まともな恋愛観が期待できない。他にも様々な相談相手を思いついたが、要するに彼が頼れる相手は祐斗のみであった。

 

「いちおう聞いておきますけど、朱乃さんは好きなんですよね?」

「当然だ。心から好きだ」

「小猫ちゃんとの関係は?」

「…そこがまた微妙なところでな。この前の中級悪魔の試験時に、女性として視ると約束してさ…」

「イッセーくんのことをどうこう言えないことを自覚するべきですね」

「…ごめん」

 

 大一は困ったように頭を掻く。もともとハーレム願望は無く、見知らぬ相手であればここまで悩むこともなかっただろう。惚れた相手と大切な妹分だからこそ、彼はここまで悩んでいた。

 悪魔的価値観を意識する割にはなんとも面倒な先輩だと思いつつ、祐斗は自分の感性から言葉を紡ぎだした。

 

「僕なりの意見を言わせてもらいますと、2人は今の大一さんを好きになったんだと思います。だとすれば、今のままでいることが一番じゃないんでしょうか?」

「そうも言ってられないよ。女の子の方にばかり期待して、自分が期待に沿えないのは申し訳ないだろう。俺なりに彼女らを傷つけない方法を考えたいんだ」

「じゃあ、簡単ですよ。2人とも受け入れる甲斐性を持つことですね」

「…やっぱりそれしかないか」

 

 祐斗の発言を何度も噛みしめた大一は、口をへの字の形にして不安そうな表情になる。本人も理解はしていたが、元来の自信の無さが負い目を生み、無駄な生真面目さがハーレムの形成を邪魔し、仲間や愛する人たちを大切にするほど苦しむという悪循環に陥っていた。もっとも実力の足りなさに絶望していた頃と比べると、天と地の差を感じるほど幸せな悩みではあったが。

 大一は軽く息を吐くと、祐斗に向き直る。無意識な動作のためか、身長の高さと相まって妙に大人びた雰囲気を醸し出していた。

 

「ごめんな、祐斗。お前に話すことでは無かったんだろうけど、吐き出さないと整理がつかなくて。本当にありがとう」

「いいんですよ。僕としても頼られるのは嬉しいですから」

 

 笑顔で反応する祐斗としては、大一がいつものように兄として振舞えばそれなりの甲斐性は見せられると思っていたが、下手に口に出して彼の態度が不自然になることは避けたかった。

 

「今度、なにか埋め合わせはする。飯とかおごるよ」

「この缶コーヒーだっておごってくれたじゃないですか」

「それとは別だ。お前にはいつも世話になりっぱなしだからな」

 

 少し疲れてはいるが穏やかな表情の大一に、祐斗は少し思案するとゆっくりと話し始める。

 

「…でしたら、ご飯じゃなくてちょっとした相談があるのですが」

「俺でよければ、なんだって聞くよ」

「真面目に大一さんもテクニックを伸ばしませんか?」

「…ああ、グレモリー眷属がパワーだらけの脳筋チームって言われていることか」

「せっかく例の神器も得たので搦め手をなんとか…」

 

 先ほどとは打って変わって、半ばげっそりした様子で祐斗が懇願し始め、大一が慰めるように彼の肩を叩きながら話を聞く。

 この日、学園の幾多の場所で悩みが勃発していたことは誰も知りえなかった。

 




本筋と同時にヒロイン関連も考えなければ…と思いつつ書いていきます。
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