D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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オリ主がかなり便利扱いできるポジションになったと思いました。


第126話 男達の話し合い

 グレモリー眷属の利点の一つとして挙げられるのは、その実力の高さである。それは互いを高め合うことにも繋がる。この日も一誠達はグレモリー領の地下にあるフィールドでトレーニングをしていた。模擬戦をして鍛え上げるもの、新たな武器の使い方に悩むもの、さらに強力な技の考案に精を出すもの、これまでとは違った方法で更なる強化を求めるもの…とにかくそれぞれの方法で高みを目指している。

 このトレーニングに大一は参加せずに、別領土にあるビルへと赴いていた。理由は単純なもので、マグレガーへ荷物を届けるためであった。部屋を開けると相当な量の書類が山積みにされており、彼の仕事量をうかがわせるものであった。しかしほぼ同時に視線に入った相手の方が、大一にもたらした驚きは大きかった。

 

「失礼します。マグレガーさん、頼まれていたものを…あっ」

「ん?大一殿?」

「おっと、この前ぶりスね。大一くん」

 

 部屋には炎駒とベオウルフもいた。同じルシファー眷属であるのだから、同席しているのはおかしくない筈なのだが、ルシファー眷属自体が集まることが難しいという印象を抱いていたために少なからず驚きを抱いた。

 

「お二人とも、どうしてここに?」

「ちょっと、魔法関連でマグレガーさんの意見を聞きに。大一くんは?」

「自分は頼まれた荷物を届けに来ました」

「マグレガー殿、それは我が弟子を使いっぱしりにしたと解釈してよろしいので?」

 

 炎駒が椅子に座るマグレガーに強い視線を向ける。彼はその視線にもまったく動じず、ベオウルフの意見書から目を離さずに答える。

 

「悪い言い方だとそうなりますね。しかし炎駒も知っての通り、ここは私の秘密主義を前面に押し出した仕事部屋のひとつ。今回持ってきてもらった荷物は少なからず強力な力を持つ道具なので、信頼とこの秘密を守れる相手を選びたかったのですよ。彼もルシファー眷属として見聞を広めるとして、ちょうどいいでしょうし」

「うーむ…しかし…」

「自分は全然問題ないですよ」

「ほら、こう言っているし大丈夫だって。炎駒は気にしすぎだよ」

 

 炎駒の背中をバシバシと叩きながら、ベオウルフが諌める。大一に対して、あまり余計な負担をさせたくない炎駒であったが、マグレガーの方はルシファー眷属として同等の扱いをしながら鍛えるつもりでいたし、ベオウルフも同様の気持ちであった。ベオウルフの場合は後輩の存在に気が良くなっているのも間違いなくあったが。

 大一は荷物を指定された場所に置いた後にもうひとつ小さなバスケットを机に置く。

 

「ヴェネラナ様からの差し入れも持ってきたので、それのついでということにしておけば大丈夫です」

「おっとマスター・サーゼクスの母君から…これはありがたい」

「その時にグレイフィア様とも会いましたよ」

 

 この一言にこの場の空気の温度が数度下がったかのような錯覚を覚える。炎駒の視線にもまるで気にしなかったマグレガーが静かに資料から目を離すと、大一に向かって少し震えた声で問いかける。

 

「…なにか言われましたか?」

「用事を訊かれて、マグレガーさんに荷物を届けると説明しました。いろいろ渋い表情はしていましたが、フォローは入れて納得はしてくださいましたよ」

「うーん、炎駒は良い弟子を育てましたね」

 

 安心したようにマグレガーは頷く。以前、ミリキャスがグレイフィアこそ一番強いと話していたが、ルシファー眷属になってからそれが事実であることをますます実感せざるを得ない。彼女に対して上手いかわし方が可能なのは、それこそ炎駒と総司くらいであった。

 マグレガーの態度に炎駒は軽く鼻を鳴らす。

 

「まったく調子がいい…」

「いずれ埋め合わせはしますよ」

「でしたら、ひとつ訊きたいことがあるのです。マグレガーさん、アリッサという女性を知りませんか?」

「アリッサ?」

 

 マグレガーはあごに手を当てて少々押し黙るが、間もなく肩をすくめて答える。余裕ありげな表情は、男性でありながら色気を感じさせるような不思議な雰囲気があった。

 

「…いえ、まったく聞いたことはありませんが。まあ、私に恋愛相談するのは賢明ですよ。ベオにするよりかは的確なものは出来ると思います」

「し、失礼な!魔法一辺倒のマグレガーさんよりも経験豊富…のはずです!」

「いえ、恋愛相談ではなくてですね…実は───」

 

 大一は以前リアス達に説明したように、3人にも話し始める。初めての打ち合わせで戻ってきた経緯についてザックリとは話したが、今度は記憶の出る限り事細かに説明をした。

 話の中で、マグレガーやベオウルフは神妙な表情になり、炎駒の方は渋い表情へと変化していった。大一が話し終えた時、マグレガーは額を指で叩きながら考えを張り巡らせていた。

 

「『異界の地』か…久しぶりに聞きましたね。数十年前に書物で読んだことがあります。あれの著書は数百年前ですが」

「そんなに昔からあったんですか?」

「それ以上ですよ。私は魔法使いの関連でメフィスト様とも親交はあるのですが、あの方が現役であった頃にその存在を確認したと聞きます。なので、正確な年数は分かったものじゃありません」

「でもその割に俺は聞いたことないスね…炎駒は?」

 

 ベオウルフの問いに炎駒は無言で首を横に振る。大一もアリッサの話で初めて聞いたことであり、その地が勢力間の中では重要視されていないものであることがわかる。

 

「奇妙な地ですよ。存在が確認できても、その全容は未だに把握されない。どうやって行くのかもわからない。どのような始まりで把握されたのか、それすらも謎です。その謎ゆえに好奇心を刺激させる魅惑を持っているとも捉えられますが」

「それほどの場所を調査しようと思わなかったのですが?」

「もっと明確に特別なことが確認される場所なんていくらでもありますからね。あの地を本気で調べているのなんて一部の神話形態のみですよ。あの地にはまだ見ぬ特別な何かがある…根拠のない理由で調査をしていますね。伝聞だけ知って一攫千金の宝島を目指すようなものです」

 

 マグレガーはさらりと言ってのける。彼もアザゼル同様に、異界の地についてはあまり気にしていないような雰囲気であった。自分の考えすぎか、大一はそう思ったが心の中で何かが引っかかっていた。あの地に降り立った時、薄れゆく意識の中で彼は間違いなく特別な何かを感じていたが、それを言葉にするのは難しかった。

 いずれにせよ、この場で答えが出ないと判断した大一はマグレガーに礼を言う。

 

「マグレガーさん、ありがとうございます。お手数をおかけして」

「この程度はお手数でもなんでもありませんよ。私の方でも、もう少し調べてみますよ。ところで大一くんはこの後の予定は?」

「このまま戻って皆とのトレーニングに合流するつもりですが…」

「なるほど…大一くん、表立っていないとは言えルシファー眷属になった以上、それ相応の実力は必要です。それは心得ていますね?」

「もちろんです。例の男のことも踏まえれば、弱くていいというのは理由になりません」

「よろしい。では、せっかく足を運んでもらったし、こちらも誠意を見せましょう」

 

 マグレガーは資料を机に置いて立ち上がる。いつものローブ姿でありながらその立ち振る舞いは、質の良い劇の役者のような優美な印象を抱かせた。

 

「ここの地下もそこそこのフィールドがあります。いつもはセカンドの発散用として使われることが多いですが…稽古をつけてあげましょう」

「あ、ありがとうございます」

「炎駒はどうしますか?」

「当然、一緒に行きますよ。私は大一殿の師なのですから」

「あ、あの、マグレガーさん。俺の意見書の方は…」

「では行きますよ、3人とも」

 

 マグレガーを先頭に大一はルシファー眷属を3人相手に訓練をつけてもらった。いつも仲間内でやる模擬戦とのレベルの違いに驚愕した彼がリアス達の下に戻った際には、まったく歯が立たない実力差を実感し、ぼろぼろの状態であったのをアーシアに治療してもらうことになった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 翌日の放課後、部活が終わってから大一はそのまま帰らずに校庭のベンチに座り、げんなりとした表情で匙の話を聞いていた。なんでもこの日の昼休みに一誠が生徒会室に遊びに来ていたのだが、その際の会話の中で彼は初めて一誠とリアスが付き合っていたことを知ったらしい。併せて、ソーナが「イッセーくん」と呼んでいたことがかなり気になっており、部活後に大一に話を聞いてもらうという約束を取り付けていた。

 

「先輩…!俺は…俺はどうしたらッ!」

「よーしよし、大丈夫だぞ。お前の気持ちはよくわかった。いろいろ感情が追いつかないよな、うん」

 

 隣に座る匙を慰めるように、大一は背中をさする。すでに何度も行っていることであったが、彼の様子は一向に落ちつく様子は無かった。

 

「やっぱりあいつくらいグイグイ行かないと無理なんでしょうか…!」

「あのソーナさんがそれで落ちる印象もないけどな。あと別に一誠はそこまで積極的でないと思うぞ。普段の生活ではむしろ受け身一方だ。ここぞという場面では、しっかり決めるけどな」

「先輩はどうだったんですか…?」

「俺にも振るか…」

 

 うなだれた匙の問いに、大一は困った様子で考え込む。朱乃との関係性を振り返るも、その答えは短い言葉でまとめられた。

 

「俺の場合は…言ってはあれだが付き合いの長さがあったからな。あんまり参考にならないよ」

「で、でもその場合は会長とも付き合いの長さは…」

「心配しすぎだ。俺はソーナさんとは純粋な仲間でいるつもりだぞ。心配になる前にどうやったら振り向いてもらえるかを考えろ」

「すいません…」

 

 匙は力なくため息をつく。もっとも彼の心配もわからなくはない。ソーナと結婚することまで目標にしている彼としては、似たような志を持つ一誠が先に歩を進めているのに対して、最高の触れ合いが眷属たちと映画鑑賞に止まっているのが気になるのだろう。ソーナとの仲がまるで進展していないことには、泣きたくもなるはずだ。

 もっとも匙とてモテないわけではない。同じ眷属の花戒桃と仁村留流子から好意を抱かれていた。匙としてはどこまで気づいているのかは分からないが。

 ただ大一としては匙が望む方向に幸せをつかんで欲しいと思っていた。できちゃった婚はソーナ相手にはさすがに不可能と思っていたが、男女の仲になるのは推していきたかった。

 

「前にも言ったが、ひたむきに考えるのはお前のいい点でもあるんだ。ソーナさんへのアピールも忘れずにすれば、その想いは気づいてくれると思うよ。また悩んだら相談には乗るさ」

「大一先輩…ありがとうございます…!」

 

 半分涙ぐみながら匙は、大一の手を握る。彼の家庭環境を踏まえると、直近で頼れる同性の先輩の存在というのは匙にとって心を健康的な方向に向かわせていた。大一にとっても、彼の強みと気質を知って幸せを祈っていたため、見守っていくつもりであった。

 

「やっぱり同性の先輩は身近にいるとありがたいですね」

「お前のところ、男一人だもんな」

「いやいや、実はこの度新しい眷属が入ることになりまして」

「おっ、念願の同性か。ソーナさんから正式に紹介されることを楽しみにしよう」

 

 大一は手に持っていた缶コーヒーの残りをグイっとあおる。純粋な苦みは頭の中でディオーグが騒ぐことになったが、大一としてはこちらの方が好みであった。

 隣では匙もジュースの残りを飲み干すと、ふとした疑問を口にする。

 

「そういえば、先輩はルシファー眷属になったんですけど、下級悪魔のままなんですか?」

「そうだな。中級悪魔になったのは朱乃、祐斗、一誠の3人だな。まあ、あっちは近いうちに上級になって自分の眷属を持てるようになるだろ。匙はそういう目標ないのか?」

「俺は…会長が言っていた学校の先生になりたいだけですね。眷属を持つことにはまだそこまで。先輩こそ、自分の眷属を持ちたいと思わないんですか?」

「俺にはそういうのは向いていないよ」

 

 大一は静かに首を振って否定する。一誠と違い、彼は独立を勧められてこなかったし、彼自身も積極的に考えてこなかった。今後もリアスのために眷属として戦っていくつもりであったことが理由であったが、もうひとつの大きな理由として彼自身が矢面に立って人を率いていくというのが性分に合っていないと考えていたからだ。あくまで人の下で戦うのが自分らしいのだ。無責任な考え方ではあるが、彼自身が余計な責任を負うことを避けたがっていると無意識のうちに考えているようにも思われる。

 だが現状の実績を知っている匙としては、あまり賛成できない考えであった。

 

「先輩はむしろ『王』を目指してもいい気がしますがね…」

「おいおい、お世辞を言っても何もでないぞ」

「本心ですよ。兵藤とは違う方向で先輩は人を率いることは出来る気がします」

 

 冥界の英雄であり多くの人を魅了する一誠であり、京都での経験も踏まえて匙は粗削りながらも彼のリーダーシップには肯定的な感情を持っていた。ハーレムを目指していることも理解しているため、本人の意志も考えればいずれ眷属を持って独立するのは間違いないだろう。

 その一方で、大一は一誠とは別ベクトルながらも独立するタイプだと考えていた。弟のような名声は無いが、仲間を支えてその力を存分に発揮できる土台を作る。サイラオーグ戦の一件などからいざという時は仲間も止めることも厭わない。彼の重厚質実な性格と相まって、上に行ってもおかしくないと匙は考えていた。

 

「まあ、眷属にしたいと思えるような人が現れたらあるかもな」

「ある意味、兵藤以上に見てみたい気もしますよ」

「だが、あったとしてもだいぶ先のことだ。まずは目の前のことから。明日の吸血鬼との会談についてだな」

 

 大一はベンチから立ち上がるとグッと伸びをする。グレモリー眷属にとって大きな問題のひとつである吸血鬼関連のことについて、明日の夜に会談が行われることが本日決まっていた。シトリー眷属も聞いており、一種の緊張感を抱かざるを得なかった。

 

「吸血鬼って独特の考え方を持っているようですが…気をつけてくださいね」

「戦うわけじゃないが、肝に銘じておくよ」

 

 日も短くなり夜特有の暗さが辺りを支配する。この状況は悪魔の本分でもあったが、それ以上に好みそうな種族との邂逅に心を引き締めるのであった。

 




最新刊まで追っていると、眷属関連も複雑だと思います。
彼は…どうするかなー。
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