D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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主人公の決定打の無さが出てきているこの頃です。


第13話 試合の中盤

 兵士3人を倒した祐斗と大一は分かれて、別々に目的の運動場に向かっていた。戦いを終えた後、リアスから通信が入り小猫を倒したのが相手の女王であることが分かった。現在は朱乃が一騎打ちをしているが、まとまっていては一気にやられる可能性を彼女は危惧したようだ。そこで祐斗は予定通り運動場へと向かい、大一は持ち前の感知能力を活かし大回りをして敵の拠点へと近づくことにした。

 

(スタミナはある方だがやはりキツイな…)

 

 頭の中で大一はつぶやく。元より相手の攻撃を喰らっての戦いをして、現在は魔力の探知で気を張った状態で走らなければならないのだ。体力に自信があるにしても、この長い距離を進むのは骨が折れる思いであった。

 とはいえ、森をあと少しで抜けられそうなところまで来た。その時、大一は右を向いて素早く神器を振り払う。彼に向かってきた氷の塊が砕け散った。

 

「罠…じゃないな」

 

 彼の視線の先には十二単を来た穏やかそうな女性が立っていた。彼女の手のひらから魔力を感じ、今の攻撃は彼女が撃ちだしたことが分かった。

 

「ライザー様の『僧侶』だったか?」

「美南風と申します。お見知りおきを」

「ご紹介どうも。グレモリー眷属の『兵士』兵藤大一です。それで…ひとりってことは無いだろうよ」

「察しが良いのですね」

 

 彼女の隣から姿を現した女性は大きな剣を背負っていた。ライザーの眷属『騎士』のシーリスだ。

 

「兵藤大一…たしかライザー様が話していたルシファー眷属の弟子か」

「ウチは俺以外にもルシファー眷属の弟子がいるんだが…まあ、ライザー様が知っているのは俺だけだろうな」

「しかし所詮は転生悪魔。大きな強みがないことも分かっている」

「その割にはずいぶん警戒しているな」

 

 大一はちらりと後ろに視線を移す。その木の陰に何者かが隠れているのは、分かっていた。数は2人、魔力から兵士だと思われたが動く気配は見られない。

 

「隠れて出てこないなら別にいいが…」

「倒すために徹底するものでね!」

 

 シーリスが接近して大剣を右から振りつける。さすが騎士といったところか攻撃速度も目を見張るものがある。大一は神器の柄を使って剣を正面から受け止めた。同時に彼の後ろの木から隠れていた2人の獣耳を生やした女性が格闘戦を仕掛けに来る。ひとりの右からの裏拳には腕で防いだが、もう一人の背中からのかかと落としはまともに受けてしまった。

 それでも態勢を揺らさずに、薙ぎ払うように体と神器を動かして彼女らに距離を取らせた。

 

「ニィ、リィ、攻撃の手を休めるな!」

「言われなくても!」

「そのつもり!」

 

 シーリスの掛け声とともに、ニィとリィも大一に向かってくる。かわるがわるの連続の近接戦を仕掛けてこられ、大一も手を焼いた。反撃しようとすればすぐに距離を取られて、視覚外から入れ替わるように他の相手が攻撃を仕掛けてくる。数を活かしたかわるがわるの戦術であった。

 大一はとにかく魔力を全身に行きわたらせて、肉体を強化する。それでもこの猛攻は彼の至る所に傷を残してくのであった。

 ようやく攻撃が落ち着いたところで、距離を取ったライザーの眷属は大一を見る。体中に切り傷と打撲痕が見られるが、その眼はぎらついていた。

 

「まったくタフな相手。ある意味、ひとりで突っ走っていたのは納得するわ」

「それでも各個撃破の可能性を考えないとは馬鹿だねえ」

「いえ、おそらく彼の目的は足止めでしょう。私達4人がかりでたったひとり相手に撃破できずの状況ですから」

「なかなか聡明な方なことで」

 

 大一は顔の切り傷を拭いながら、最初の一撃以外仕掛けてこない美南風を見る。まさに彼女の言う通りであった。ここで4人という数に出くわすことは想定外であったが、裏を返せば彼女らを足止めすることで運動場にいるであろう一誠と祐斗が戦いに集中できる。それが相手の戦力を削るチャンスだと確信したからだ。間もなく、彼の考えが正しかったことを証明するアナウンスが全域に響き渡る。

 

『ライザー・フェニックス様の『戦車』一名、リタイヤ』

「げぇ!?本当!?」

 

 青髪の獣人のニィが声を上げる。ここまで来ると、運動場のライザーの眷属も決して人数が足りる状況じゃなくなった。

 

「さてあっちに援護に行ってもいいが、俺はまだまだやれるぞ。ここで下手に人数を減らすのは得策ではないんじゃないか?」

「そのようだな。ここまで戦って攻めはできても、貴様を切り崩すのにはかなり骨が折れることが分かった。だから別のやり方で動きを止める」

 

 シーリスが笑うと、大一の上空をすっぽり覆うような小さな魔法陣が展開されていた。それに気づいた時はすでに遅く、彼の周囲を小型の結界が覆い出られない状況が出来上がっていた。

 

「いつの間に結界を…!」

「魔力感知には自信があったみたいだが、さすがに多勢を相手にしていては気づかないだろう」

「即席のものなので耐久は高くありません。その間にこちらも一気に詰めさせてもらいます。行きましょう」

 

 彼女らは大一を放置して、そのまま運動場を目指す。ここで彼を消耗させるよりも全員で運動場の援護に行った方が得策だと考えたのだろう。

 一方で大一は己の間抜けさを呪いながらも、自分が今すぐに取るべき行動を考えていた。結界術などからっきしな彼としては、これを破る方法はひとつしか思い浮かばない。

 

「スゥ…やるか」

 

 ゆっくりと息を吸って、目を閉じる。あとは魔力で打ち破れそうな場所を探すことに神経を注ぐだけであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 一誠の気持ちは高揚していた。祐斗と合流した彼は共にライザーの眷属である『騎士』のカーラマインと『戦車』のイザベラを相手に戦っていた。相手は戦闘経験が豊富なものの、一誠は新技『洋服破壊』とブーステッド・ギアの力で、イザベラから辛くも勝利をもぎ取った。祐斗もカーラマイン相手にかなり有利に立ち回っていることで、士気は上がるばかりだ。

 しかし相手は自分たちよりも多数。どこからともなく運動場には『王』であるライザーと『女王』であるユーベルーナ以外の敵が集結していた。すでに体力をかなり消費していた彼からすれば、それは絶望的な状況であった。イザベラを倒したことで相手も一誠と彼の持つ神器の強大な力に警戒を強め、ライザーの妹であるレイヴェルの指示のもと一誠を倒すことを最優先に動き始めた。

 それでも彼はこのまま負けたくなかった。新校舎の屋上ではすでに『王』同士の戦いが始まっており、リアスが押されていた。ここで自分が負けてしまえば、祐斗もこの場に孤立してしまう。仲間の奮闘と危機を知るほど、一誠は負けたくなかった。

 

「俺に力を貸しやがれ!ブーステッド・ギアッ!」

 

 一誠の想いに応えるかのように、ブーステッド・ギアはさらに強化される。籠手はより堅牢な見た目に変化し、宝玉の数も増えていた。間もなく、この力がどういうものかを理解した彼は祐斗に神器を発動させるように呼び掛ける。

 祐斗の発動した神器によりいくつもの魔剣が現れると、一誠はさらに地面にブーステッド・ギアの力を流し込んだ。新たに得たブーステッド・ギアの力『赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)』はその名の通り、倍加させた力をいかなる対象に渡すことが出来た。これにより強化された祐斗の神器は、辺り一帯に刃を出すほどの広範囲と強力な威力を纏い、ライザーの眷属を5人まとめてリタイヤさせるのであった。

 

 一誠の気持ちは高揚していた。ブーステッド・ギアの強化に祐斗とのコンビネーションで敵をことごとく倒したこと、ついに数的不利を逆転したこと、それらのあらゆる事実がライザー・フェニックスの打倒を確信させるものであった。

 だからこそ間もなく聞こえたアナウンスに衝撃を受けた。

 

『リアス・グレモリー様の『女王』一名、リタイヤ』

 

 さらに続けて彼の目の前で大きな爆発が起こる。そこには先ほどまで共に戦ってきた騎士が倒れ込んでいた。

 

『リアス・グレモリー様の『騎士』一名、リタイヤ』

 

 ことごとく負けていく仲間達に、一誠は呆然とした。何がどうなってこうなっているかもよく分からない気持ちであった。先ほどまで多くの悪魔が駆けていた運動場には彼しか残っていなかったのだ。

 呆然とする中、彼の視線にひとつの影が映る。上空に浮かぶその姿を見ると、そこには朱乃と戦っていたはずのユーベルーナがたたずんでいた。

 

「朱乃さんと木場をやったのもてめぇか!降りてこい!朱乃さんの!小猫ちゃんの!木場の仇を取ってやる!」

 

 一誠の怒りの叫びにも、彼女はまったく動じない。それどころか一瞥を送ると、ゆっくりと手を上げてその狙いを彼につけるのであった。彼女の手のひらに魔力が集中する。今まさに攻撃が起こり、またひとりグレモリー眷属が散るかと思われた。

 

「やらせはしない」

「…あら」

 

 弾丸のように飛び込む大一の蹴りを完全に防ぎながら、ユーベルーナは意外とも思っていないように眉を上げる。空中故に少々飛ばされるも、彼女はあっさりと態勢を立て直した。

 突然の乱入者に一誠は声を上げる。

 

「兄貴!」

「一誠、すぐに相手の陣地に行ってプロモーション!リアスさん、アーシアと組んで『王』をやれ!ここは俺が食い止める!」

「…わかった!」

 

 ユーベルーナから視線を外さない兄の指示に、一誠はすぐに従った。心のどこかで思っているのだ、兄ならばこの状況すらなんとかできるのだと。

 一誠は傷ついた体を引きずって、敵の本陣へと向かっていくのであった。

 




正直、もっと早く終わるかと思いました。意外とそうでもありませんでした…。
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