D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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主人公の役割が完全にヘイトとタンクの役目になっています。


第14話 耐える悪魔

 リアスとライザーのレーティングゲームは、想像を超える激戦となっていた。ライザー達の油断もさることながら、グレモリー眷属の奮闘も大きく傍から見れば勝負は拮抗していると言えるだろう。

 しかし実際のところはリアス達が追い詰められていた。『王』同士の勝負では、いくら攻撃を受けても炎と共に復活するライザーにリアスとアーシアのコンビは追い詰められており、彼女の下に急ぐ一誠も連戦続きにより満身創痍であった。

 一方、もうひとつの戦いでもリアス側の旗色が悪いのは否めなかった。ただでさえ『兵士』と『女王』では格が違うにもかかわらず、ユーベルーナはほとんど無傷で、大一の方は肩で息をしながら生傷が絶えない体であった。

 結界を破った大一の耳に入ってきたのは、朱乃の敗北のアナウンスであった。そしてすぐさま祐斗の敗北を告げるアナウンス、これに大一が焦らないわけがない。焦燥感に駆られて、すぐさま運動場に向かうとユーベルーナが一誠を狙っていたのでカットに入ったわけだ。

 そして突然、現れた大一にユーベルーナは大きくため息をつく。彼のやろうとしていることの哀れさに呆れているようであった。

 

「私に勝てると思っているのかしら?」

「まさか。俺は自分の実力を把握している。ただこのゲームは勝たせてもらう」

「リアス様がライザー様にねえ…それこそ無理な話じゃない?」

「まだ一誠とアーシアがいるのでね」

 

 わざと余裕の態度で大一は答える。本音を言えば、勝てる自信は微塵も無かった。相手はフェニックス家のひとりでその実力も確かなもの。いくら強力な攻撃をしても、どこまで通るかは未知数だ。

それでも一誠のブーステッド・ギアの力とアーシアの回復を使えば、まだ巻き返せる可能性はあった。彼の上級悪魔にも匹敵する一撃や彼女の手傷を消しさる癒しの力があれば、この追い詰められた盤面を覆せるだろう。

 そうなれば、自分がユーベルーナを足止めすることこそ、数少ない勝つための行動であった。

 ユーベルーナは小さくため息をつくと、魔力の塊を2、3発撃ち出す。大きさはせいぜい野球ボール程度だが、避けられる速度では無かった。大一は全身に魔力を込めて、錨で薙ぎ払う。だが錨が触れた瞬間、その魔力が爆発した。

 煙にむせながら、大一はユーベルーナを見る。規模からして牽制程度であるのだろう。しかしさすがは『女王』か、最初に戦った『兵士』よりもその威力は間違いなく上であった。併せて爆発する特性は近接戦しかできない大一にとっては相性最悪であった。

 

「このままやってもジリ貧なのは分かっているんじゃない?」

「それでもあなたをここで食い止めないと、わずかな勝ち筋も無くなるからな。やれることは全てやってやる」

「さすがルシファー眷属の弟子ってところかしら。じゃあこちらも少しだけ本気を出してあげる」

 

 ユーベルーナが指を鳴らすと、彼女を囲むように魔力の球体が現れる。その大きさは先ほどよりも大きく、それに伴って魔力も大きくなっていた。数も9つと連続で撃ちだす気満々であった。

 

「防げる?」

「チィッ!」

 

 再び魔力が撃ち出される。その速度は当然大一が避けられるほどのものでは無い。先ほどと同様に薙ぎ払うも爆発の威力は遥かに強力であった。魔力を行きわたらせることを緩めたら、間違いなく気絶させられるほどの威力だ。

 次々と向かってくる攻撃に対して、大一は煙で視界が遮られる中、ユーベルーナの場所を探る。どうやら彼女は場所を変えていない。それが分かると、玉砕覚悟で突撃し接近戦を狙う。

 だが相手もバカではない。わざわざ近接が得意な相手に合わせるようなことはしない。右へと移動し、同じ距離を保つことを意識する。

 

「ここまで攻撃をいなして、耐えられる…大したものね」

「そらどうも。しかし分からないな。いくら『爆発女王(ボムクイーン)』の異名を持つあなたが相手とは言え、こっちの『女王』と戦った割にはほとんどダメージを受けていない」

 

 口内にある血の塊を吐き出しながら、大一はユーベルーナを睨みつける。これがまだ本気では無いにしても、朱乃がまったく歯が立たないと思えるような実力ではない。にもかかわらず、彼女と戦った割にはユーベルーナはまだまだ余裕そうに見えた。

 その疑問の答えを示す言葉が、大一の後ろから聞こえた。

 

「フェニックスの涙をご存じ?」

 

 ちらりと視線を向けると金髪に大きな縦ロールが目を引く可愛らしいお嬢様が飛んでいた。彼女がライザーの妹であるレイヴェル・フェニックスであることを大一は知っていた。

 

「フェニックス家のご令嬢ですか」

「あら、私の事もご存じなのね」

「さすがにレーティングゲームにまで、参加しているとは思っていませんでしたがね。しかしフェニックスの涙とは…なるほど合点がいきました」

 

 『フェニックスの涙』はフェニックスの回復能力を活かしたアイテムであった。その効果は絶大でいかなる傷をも癒すことができる。レーティングゲームではその効果故に使用には制限がかけられており、公式のゲームでは2つまで認められていた。今回はレイヴェルとユーベルーナがそれぞれ持っていたようだ。

 

「ちょっとでも手心を加えてくれると思ったこちらが甘かったってことですかね」

「あら、両方レーティングゲームをやることで合意したのですよ。ならば、ルールに乗っ取るのは当然じゃないでしょうか?」

「ああ、まったくその通りです。それでも勝つのは我々です」

「これを喰らって、立っているのなら信憑性があるかもね」

 

 ユーベルーナが大技を放つために、魔力が収束してくるのが分かる。この一撃がこれまでとは遥かに別物であることが疑いようはなかった。避ける…いや避けようがない。最初に辺り一帯の広範囲に魔力を展開させると、その範囲を急速に狭めて最終的に大一の周囲に煙のようにまとわりつかせる。あとはユーベルーナの合図ひとつでその場所が爆発することは間違いなかった。

 

「ではさっきの言葉の真意を見せてもらいましょうか」

 

 ユーベルーナが再び指を鳴らすと、大一の下半身周辺が爆発した。その威力に態勢が崩れかけるもなんとか持ち直す。当然、この一撃で終わるはずがなく、ユーベルーナが指を鳴らすたびに各部位が爆発する。その爆風はどんどん広がっていき、彼の全身を何度も爆発していくのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

「まだ…ここからさ…!」

「まさか私の爆発に耐えるとは…」

「その耐久力は見事。ですけど、命が惜しくないのかしら?」

 

 数分間の爆発に大一は耐えきった。血は流れ、皮膚は焼け焦げ、全身から煙がくすぶっている。それでも彼は意識を保っていた。無理に余裕の表情を作ろうとして、顔がひん曲がっているように見える。その姿にユーベルーナは面食らい、レイヴェルは驚きと呆れが入り混じった表情になる。

 浅い呼吸の状態で、絞り出すように声を出す。

 

「あの人のために命を捧げると決めただけです…」

「それは惚れた相手の眷属になったということですの?リアス様もこんな下級に思われるのは大変ですわ」

「惚れた…はどうでしょうね。あの人に対して尊敬の念はあるが、それが恋慕の情なのかは考えたことも無い…」

 

 リアスに対して、大一は信頼を置いている。恋や愛かは分からないが、いっぱしの若者なりの憧れはあったかもしれない。だがそれ以上に、どこまでも自分を通そうとする彼女には命を預けられると信頼と尊敬があった。

 そんな大一が彼女のために出来ることは、悪魔として自分を磨くことだけであった。ただ彼女の眷属として恥ずかしくない振る舞いを身につけるために、必死で学ぶことしか出来ないのだ。彼女の無茶苦茶に苦言を呈するのも、自分を貫く中で他者にも認められるような悪魔になって欲しかったからだ。

 そして自分のやれることを全てやる。それこそが彼女に応えることで彼女のために出来ることだと、改めて確信していた。

 

「仮にもルシファー眷属の弟子が妄信的ですのね」

「その前にグレモリー眷属でもありますし…自分よりも凄い奴が多くなってくると必死にならざるを得ないんですよ…」

 

 全身を燻ぶらせながら、錨を握り直す。まだ耐えるつもりの大一は、ユーベルーナへの強い視線を外さなかった。

 しかしそんな彼の覚悟を打ち砕くようなアナウンスが流れる。それはリアスが「投了(リザイン)」したというものであった。彼の期待した勝ち筋は打ち砕かれ、その事実が鉛のように体にのしかかる。

 ユーベルーナは哀れみの感情を向けながら口を開く。

 

「勝負あり。もう倒れても誰もあなたを責めないわ。飛んでいるだけでもギリギリだろうに」

「俺は…それでも…」

「強情なのね」

 

 最後まで大一が飛び続ける中で、リアス・グレモリーの初めてのレーティングゲームは敗北で幕を閉じた。

 




上級悪魔でもないオリ主1人が入った程度で、この勝負の勝敗を覆せるわけがないと思うんですよ。
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