D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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皆さん、どんどん強くなってきますね。


第142話 地下へ爆進

 一行は、ヴァレリーから聖杯が抜き取られるのを阻止するために地下の階段を駆け下りていった。アザゼルがくすねてきた城の見取り図と祐斗が滞在中に兵士たちの行動をある程度把握したおかげで、移動中に爆音が聞こえる中でも最低限の接敵のみで、地下の祭儀場に続くルートを進んでいけた。

 とはいえ、完全に戦いを回避することは出来ない。地下に入り込むと、どうあがいても敵との遭遇は回避できず、最初は100を超えるであろう吸血鬼の兵士たちが待ち構えていた。全員が聖杯で強化されているが、後に邪龍やリゼヴィムといった強敵との戦いを考えると、体力は温存する必要がある。この大群を相手に誰が行くのかを考えあぐねる中で前に出たのは…

 

「…問題ない」

《ま、ここはあっしらってことでしょうねぇ》

 

 ルガールとベンニーアが怯まずに前に出ると、大群を相手に突っ込んでいった。

 

《ほらほら死神っ娘のお通りですぜ》

 

 ベンニーアは自分の身の丈を超えるほどの鎌を取り出すと、残像を生みだすほどの高速移動で敵の合間を縫うように動いていく。死神の鎌は外傷を与えずに相手の魂だけを刈り取る力を持つ。彼女の一振りは強化された吸血鬼を瞬く間に倒れさせていった。また彼女の場合、「騎士」の特性が上手く噛み合っているため、素早さに磨きがかかっていた。

 

《死にやすぜ…あっしの姿を見た者は皆死んじまいやすぜ》

 

 機敏かつ鋭い動きで、ベンニーアは片っ端から吸血鬼たちを打ち倒していく。

 その一方でルガールはコートを脱ぐと、筋肉が力強く隆起していきシャツを弾き飛ばした。全身が灰色の毛におおわれ、鋭い牙と爪を持つ特徴的な獣人の姿へと変貌していった。

 

『俺もシトリーの者としてやらせてもらおう。吸血鬼とはやり合い慣れているのでね。容赦はせん』

 

 大きく咆哮を上げたルガールは吸血鬼たちに向かっていく。その姿に怯む吸血鬼たちを見た大一の中で、ディオーグが不思議そうに問う。

 

(なんで獣人一匹程度でビビるんだか)

(狼人間と吸血鬼は古くからの敵対関係なんだよ。相手もこの場に来るとは思ってなかったんだろうさ)

『わりと狼人間だってすぐわかりそうなものだけどな』

 

 3人ともルガールの正体は感づいていたため驚きこそしなかったものの、相手の吸血鬼はそうはいかなかったらしい。うろたえ、動揺しながらも刀剣類でルガールを攻撃するが、その屈強な体に「戦車」の特性が加わった彼には傷がつけられず、逆に刃が折れる形になった。

 さらに彼の両腕に魔法の紋様が浮かび上がると、腕を炎が包んでいき、それで敵を殴り飛ばす。なんでもルガールは高名な魔女と灰色の毛並みが有名な狼男とのハーフであり、強靭かつ軽やかな動きができる肉体に魔法を活かした攻防一体の戦い方は、向かってくる吸血鬼たちをものともしなかった。

 

『行け、グレモリー眷属。ここは俺とベンニーアに任せてもらおう』

「任せていいのね?」

《そのために派遣された面がありますぜ。新人コンビは能力の初お披露目と主役のための足止めが適任なんでさー》

『さっさと悪魔としての戦いに場慣れしろということだろう。我が主はスパルタだ』

 

 新入りとは思えない頼もしさのある2人にこの場を任せて一行は先を目指すのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

「…シトリーの戦力増強は凄まじいな。ゲームをしたら次はかなり食い込まれるんじゃないか?」

 

 階段を下りていく中、ぼそりと呟いたゼノヴィアの言葉にアザゼルが反応する。

 

「ゲームでの総合的なバランスなら、すでにソーナ側の方が上だろう。火力重視じゃ、将来のゲームで苦戦するぞ、リアス」

「わかっているわよ。私はソーナを舐めたことなんて1度だってありはしないわ」

 

 肩をすくめて答えるリアスであったが、彼女の下僕も同様の気持ちであった。ソーナの戦略眼はこれまでの戦いで経験してきたため、どうして侮ることが出来るだろうか。

 進んでいく一行は間もなく、再び開けた場所に出る。そこにいた吸血鬼は先ほどとは違って鎧の類は身に着けていなかったが、与えられる感覚は先ほどの比では無かった。クーデターの矢面に立った上役の直属の兵士らしい。

 一誠が禁手化して祐斗と攻めようかと考える一方で、ゼノヴィアとイリナが先制して相手に一撃加えようと駆けだそうとしていた。しかし…

 

「お前ら、ちょっと待った」

 

 大一が黒影を伸ばして、ゼノヴィアとイリナの肩を掴む。いきなりのことに2人は面食らった様子で、イリナが大一に抗議した。

 

「ちょっとお兄さん、止めないでよ。聖杯で強化されていた相手に聖剣がどれくらい通るのかを確認しなきゃ」

「確認するまでもない。普通にやったらかなり時間がかかるレベルだ。いつものゼノヴィアのデカい一撃ならいけるが、この狭い空間だと無理だしな」

 

 大一は相手を見ながらさらりと答える。すでに錨を取り出して感知をしていたが、ここ数日で様々な吸血鬼と触れ合う機会が多かったため、魔力や生命力の違いは把握できた。

 

「だいたいルガールさんやベンニーアがせっかく引き受けてくれたんだから、お前らは温存していろ。俺が行く」

 

 大一は前に踏み出して吸血鬼相手に睨みを利かせる。吸血鬼の特効になるような力こそ持っていないが、重さを重視した腕力と捕縛や妨害に秀でたシャドウの力であれば、十二分に対抗できる算段であった。

 同時に彼の横に並ぶように小猫が立つ。

 

「…私も行きます。姉さまから教えてもらったものがここで役立ちそうです」

「お前だって貴重な戦力だから温存しておけよ」

「…その言葉、そっくり返しますよ。早々に決めなければなりませんから、サポートお願いします」

 

 答える小猫の身体を淡い白い光が包んでいく。闘気を纏いつつ全身が発光していき、徐々に光が落ち着くと姿を現したのは白い着物を羽織った美女であった。白い猫耳や二股の尻尾が特徴的で、女性的な体型も相まって色の違う黒歌のような印象を抱かせた。

 

『近隣に存在する自然の気を集めて、自身の闘気と同調させることで強制的に成長させました』

「…だいぶ変わったな」

『先輩に見せるのは初めてでしたね。仙術を扱えるようになったこの姿、白音モードです』

「魔力も生命力も段違い…負けていられないな」

 

 大一は小さく息を吐くと、龍人状態へと体を変化させた。右腕だけは相変わらず義手であったが、シャドウと纏っているため黒く変色している。

吸血鬼たちは大きく姿を変えた2人の相手を見て嘆息する。

 

「悪魔にも異形がいるようだな」

『俺はともかく小猫に失礼だな。やるぞ』

『了解です』

 

 小猫は滑らかに腕を横に挙げると、白い炎に包まれた大きな車輪が現れた。さらに複数出していくと、車輪は一斉に敵の吸血鬼に向かわせる。速度はそれなりであったが、吸血鬼が避けられないほどではない。しかし回避したところで車輪は空中で軌道を変えて、吸血鬼たちを狙っていった。どれだけ逃げようとも車輪は追っていき、ついにはひとりが捉えられて車輪が命中する。その瞬間、敵の身体は白い炎に包まれて絶叫と共に灰へと化した。

 

「な、なぜだ!?なぜ、燃える!?我らは炎すらも寄せ付けない体を手に入れたはずだ!?」

『無駄です。その炎は死者を燃やし尽くすまで決して消えることはありません』

 

「火車」と呼ばれる猫又の能力は、浄化の力をそのまま具現化したようなものであった。彼女が取り込んだ自然の力を仙術により浄化の力へと変化させ、邪気があるものが触ればそれ自体を浄化するために弱点なども関係ない。火車はもちろん、小猫自身もその状態であるため、彼女に触れることも叶わない。すなわち、この吸血鬼たちでは対抗手段はなかった。

 小猫の能力を把握した大一は素早く動く吸血鬼たちに目を向ける。

 

『なるほど…だったら俺がやることは』

 

 大一は小さく呟くと脚部に魔力を集中させると、素早い動きで吸血鬼たちを殴り飛ばしていく。いかに彼らが弱点を克服しているとはいえ、直接的な物理攻撃には怯まざるを得なかった。さらにシャドウで相手を縛る、視界を封じることで吸血鬼の動きを妨害した。おかげで吸血鬼たちは回避も上手くいかず瞬く間に火車の餌食になり、この場にいる敵を全滅させた。

 大一は龍人状態を解除すると小猫へと近づく。顔には疲労の色が見え、白音モードの維持に苦慮している様子であった。

 

「小猫、大丈夫か?」

『…この力を実戦で使うのが初めてだったので、ちょっと疲れちゃいました。それよりも先輩、私の姿どうですか?』

「どうって…成長したな」

 

 大一の反応に、小猫は顔を嬉しそうにほころばせる。いつもの小さない姿と異なり、身長は大きく伸びて大人びた印象を与え、彼女のコンプレックスであった胸はしっかりとした膨らみがある。それらを覆う着物姿も丁寧ながら色気を纏っていた。

 

『今は浄化の力が溢れているので先輩と触れ合うことは出来ませんが、完璧にコントロールすればこの姿でも触れ合えます。朱乃さんやお姉様にも負けません』

 

 何かを期待するかのように瞳を潤ませる小猫に、大一は頭の中で必死にライザーから教わったことを復唱していた。

 そして短い時間で散々迷ったあげく、不器用に言葉を紡ぐ。

 

「あー…うん、よく似合っていると思う。いつもの姿もその姿もとても綺麗だ」

『嬉しいです』

 

 その言葉を最後に小猫は白音モードが解除されて倒れそうになるが、小さくなった体を素早く大一が支える。完全に意識を失う前にリアスが彼女の頭を労わるように撫でた。

 

「お疲れ様、小猫」

 

────────────────────────────────────────────

 

 2つ目の突破した一行は急いで次の階層へと向かっていく。大一は気を失っている小猫を背負いながら走っているが、それ自体は特に苦ではなかった。むしろ苛立つのは頭の中で響く声達であった。

 

(あぁ、戦い足りねえ!さっきの戦闘なんて白猫の援護だけだったし、もっと激しくぶつかり合って暴れてえ!イライラが止まらねえ!)

『神滅具持ちを助けるためにこの煮え切らない状況の繰り返し…はー、かったるいな』

(うるせえぞ、お前ら!)

 

 愚痴だらけのディオーグとシャドウに対して、大一がイライラしながら反応する。悪感情を我慢する習慣のない2人は、邪念まみれの存在のようにも思えてしまう。火車の説明の際にアザゼルが邪念を持つ一誠が触れられれば消滅する旨を話していたようだが、大一自身も彼らを内包しているのだから瞬く間に消えるだろうと思ってしまった。

 3つ目の階層の扉を開き、いよいよヴァレリーがいるはずの祭儀場まであと1つの階層というところで待ちわびていたのは、黒い鱗と銀色の瞳が印象的なドラゴンであった。

 

『グハハハハハッッ!この間ぶりだなぁ、ドライグちゃんよぉぉぉっ!』

「グレンデルッ!」

『そうだぜぇ、お前らをぶっ殺したくてたまんねぇグレンデル様だぜぇぇっ!ちょっとだけ遊んでいいっつーからよぉ、この間の続きをしに来てやったのよっ!』

 

 ゲラゲラと凶悪な笑い声をあげるグレンデルに、大一は眉をひそめる。警戒するのはもちろんなのだが、彼としてはどうしても別の感情を抱いてしまった。このわずかな敵の態度だけでも、彼はある存在のことを想起してしまう。

 彼の想いを引き継ぐようにシャドウが言葉を紡ぐ。

 

『僕さあ、邪龍グレンデルって初めて見たんだよ。それで話では防御がスゴイって言っていたけど、あの反応って…』

(ああ、俺も同じこと思ったよ)

(『ディオーグに似ている』)

(ふざけるんじゃねえぞ、雑魚ガキども!あんな中途半端な脳が足りねえドラゴンと一緒にされてたまるか!)

 

 大一の頭の中でディオーグが声を荒げる一方で、リアスが仲間達に視線で合図を送る。ほとんどのメンバーがグレンデルの実力を目の当たりにしているため、全員でかかることを決めていた。

 先手を打ったのは一誠と祐斗で、互いに猛スピードでグレンデルへと突っ込んでいく。特に祐斗の方は強力な龍殺しの特性を持つ魔剣グラムを持っており、周囲に展開させた龍騎士たちもジークフリートから倒して手に入れた名剣を持っている。さらに彼らに続くようにゼノヴィアとイリナも向かっていき、4人がかりで勢いよく振っていった。

 

『軽いなッ!』

 

 一誠が通常の禁手状態であることや、ゼノヴィアの溜めた一撃でないとはいえ、4人がかりの攻撃でグレンデルはまるでダメージを受けたような印象は無かった。

 その後も一誠が何度も倍加した拳で殴りつけ、イリナが天使の状態で巨大な光を放射するも、グレンデルは楽しそうに笑うだけであった。

 ならばとばかりに、グラムを持つ祐斗を筆頭に龍騎士団が斬りかかっていく。グレンデルの身体を斬り裂いていき、祐斗の一撃には全身から青い血を吹き出すほどであった。しかしここまで受けて尚、グレンデルは不敵に微笑む。

 

『グハハハハハッ!いってぇなっ!やるじゃねえか、剣士の坊主ぅっ!』

「…まいったね、僕が使いこなせていないとはいえ、龍殺しのグラムでもあの程度しか傷をつけられないなんて」

「無駄にかったいからな、あの野郎。やっぱり、真『女王』になるしかないのか…」

 

 一誠と祐斗が苦慮する中でロスヴァイセが魔法の攻撃で攻めたてる。あまりにもダメージを受けていないのを踏まえると、どうも本来の防御力に加えて魔法の耐久性も挙げられているようであった。

 大一も小猫をアーシアとアザゼルに任せると、龍人状態へと変化し素早く接近して敵の横顔を蹴りつけた。もっとも体重を上げてもまるで動かなかったため、すぐに腕で薙ぎ払われしまった。全身の筋肉を活用して受け身を取りながらリアスと朱乃の隣に立つと、龍と人間のものが混じったような奇妙な瞳は、痛みを感じていないようなグレンデルへと向けられる。

 

『どうします?このままじゃジリ貧ですよ』

「今のところはイッセーくんに釘付けみたいだけど…」

『どうしたどうしたドライグゥ!本気出せや!あの真紅の状態になって見せろよぉぉぉおっ!』

 

 朱乃の言う通り、グレンデルの銀色の双眸は一誠を追っており、鈍い光を輝かせていた。これを突破できないとまでは思わない。しかし後にクロウ・クルワッハやリゼヴィムが控えているのを踏まえると、まだ温存できる力は残しておきたかった。

 そんな相手にリアスは考えをまとめた様子で、静かに口を開く。

 

「ひとつだけ、あのドラゴンに致命傷を与えられる技があるわ」

「リアス、あれを使うつもりなのね」

「ええ、朱乃。あれしかないと思うわ。けれど、あれを使うには時間が必要なの。魔力を練るだけの時間が稼げれば勝てる見込みは増すわ」

 

 きっぱりと言い放つリアスの瞳には勝利を確信する力強さがあった。

 




オリ主が別行動も増えてきたから、こういう場面で初めて見るみたいな状況も増えてきました。
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