D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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今回から17巻分スタートです。
いつものごとく、基盤作りからスタートです。


教員研修のヴァルキリー
第148話 女性の打診


 大一のトレーニングウェアは他のメンバーと比べると伸縮性に優れている。最大の理由は彼自身が龍人状態へと変化すると、筋肉が増強されてそれに合わせるためでもあった。今日も彼はその姿で模擬戦に励んでいた。場所はルシファー領地の施設にあるトレーニングフィールドで、炎駒が修行をつけていた。

 炎駒が吐き出す火の球を大一は魔法陣で防いでいく。その隙に義手からシャドウを伸ばして、横から掴もうとするがそれに気づいた炎駒は飛び上がって咆哮を上げる。

 

「お次はこれです!」

 

 雲が生み出されて雷が雨のように降り注ぐ。規模は小さいものの、その数は相当のものであった。

 これに対して魔法陣で防ごうと初めは思ったが、そのまま集中した攻撃で足止めされるのを危惧すると、感知をしながら強化した肉体で隙間を縫うように回避し始めた。

 

『さすがに多い…だが動きも止まっているなら!』

 

 上空に飛ぶ炎駒を狙って、大一は口から魔力を撃ち出す。さすがにこの方法にも慣れてきたため、威力、速度共にだいぶ上昇していた。炎駒はするりと避けるも気を取られたためわずかに雷の攻撃が収まる。そこを狙って大一は弾丸のように突進していった。炎駒もそれを正面から魔力の纏った頭突きで受け止める。互いに傷がつくことは無く、そのまま降り立った。

 大一が今度はシャドウを纏った義手に錨を持ち換えて回し始めるが、炎駒は力を抜くように小さく息を吐いた。

 

「この辺りにしておきましょう」

『まだまだ動けますよ』

「少し気になることがありましてな」

 

 師の言葉に、大一は龍人状態を解除する。まだまだ余力は残っていたため不完全燃焼な気持ちはあったが、さすがに無理を言うつもりもなかった。現状のルシファー眷属の立場の難しさも知っているのだから尚のことであった。もっとも炎駒やベオウルフ、セカンド辺りは下手に動きを制限されて時間があり余ることもあったようだが。

 炎駒はその長い頭を軽く振ると弟子に話す。

 

「さて、大一殿。今の模擬戦の動き、かなり良かったです。的確に受ける攻撃と避ける攻撃を見極めて、次の動きに繋げていく。苦手であった魔力の攻撃もなかなかの威力でした」

「俺はまだまだですよ」

 

 左手を見ながら大一は答える。『D×D』が結成されてから、仲間達の実力がめきめきと上がっていくのを目の当たりにした。特に一誠に関してはヴァ―リと共に初代孫悟空から指南を受けて、新たな力の使い方にも慣れ始めている。またデュリオや幾瀬といった神滅具持ちと模擬戦をしたが、その能力に歯が立たなかったのだ。それを思えば、強さへの貪欲さは当然であると彼は考えていた。

 そんな大一の様子に、炎駒は小さく首を振る。

 

「大一殿、急ぐ気持ちはわかります。しかし無理は禁物ですぞ」

「そうはいきません。無理しなければ、俺はあいつらに追いつけないのですから」

「…しかし言わせてもらえば、大一殿は自身を過小評価していると言わざるをありませんな」

「お世辞でも嬉しいですよ」

「いえ、大真面目です」

 

 きっぱりと言い放つ炎駒は、面食らっている大一を見ながらそのまま続ける。

 

「いいですか、大一殿。たしかに特殊能力という面において貴殿は他の仲間達よりも劣っているかもしれません。特別な神滅具、伝説の剣、特異な出自ゆえの能力…それらはありませんし、硬度を上げた防御や体重を上げた攻撃はそれを超える者達はいますし、シャドウの力も完全に発揮できていない」

「容赦ないですね」

 

 肩をすくめる大一であったが、この指摘は全て彼自身が思っていたことであった。むしろ炎駒の言い方ですら、優しく感じるほどの気持ちであった。

 

「しかしその経験から来る動きや立ち回りは間違いない。基礎的な部分ではすでに他の悪魔と一線を画すものにまで成長しています。目に見える能力ではないから実感し辛いのはわかりますが、私が保証します」

 

 その言葉に大一は困ったように頭をかく。炎駒の指摘は決して間違いでなかった。ルシファー眷属になってから、圧倒的にレベルが上の彼らと修行や模擬戦をする機会が多い大一は、その中で確実にレベルアップしていた。特別な能力というものは無かったが、体力やスタミナはもちろんのこと、戦いの中での動き方、魔力のコントロール、スタミナや余計な力を削ぎ落した戦法など上級悪魔に匹敵するほどであった。苦手とする魔力の放出ですら龍人状態でなくとも中級悪魔クラスはある。それほどの経験値もあるからこそ、ギガンやリゼヴィム相手にも生き残れていたのだが、これを大一は実感することが出来なかった。

 

「貴殿は十分に強い。自分を認めること、いかにそれが大切かは知っているものだと思っていましたが?」

「…そうですね。でもやっぱり強くなっている実感が湧かないんです」

「ふうむ、あくまで私の見解ですが、その原因のひとつとして思い当たるものがあります。その神器の扱いについてです」

『なんだと、妖獣!僕が神器として未熟だと言うのか!』

 

 炎駒の発言にシャドウが怒りながら、大一の肩から飛び出す。血走った眼が向けられるが、炎駒はまるで気にした様子はなくシャドウに対して淡々と答えた。

 

「神器云々というよりも大一殿との連携が上手くいっていないように思う。元々の戦闘スタイルが防御を活かした肉弾戦を武器にしているのに対して、貴様のはかく乱と手数に特化している。しかも義手の方を中心に動かしているのだから、彼は半身でいつものスタイル、半身で貴様の影を操っている。それ故に動きのぎこちなさや思考の遅さに繋がっているはずだ」

 

 炎駒の指摘は、シャドウも気づいていたのか反論できなかった。大一がシャドウを完全に扱えていないと感じるのは、この一体感を抱けない戦闘スタイルが起因していたのだが、彼自身はそこまで考えが及んでいなかった。

 

「むしろ大一殿は貴様に錨を持たせて、その伸縮性を利用しているあたりよくやっていると思うが」

『ぐっ…僕が禁手化すれば少しは…!いや、赤龍帝のように奇跡みたいな力があれば…!』

「あのな、シャドウ。奇跡なんていうのはまず起こらないんだ。俺みたいな奴には特にな」

「大一殿の場合は、積み上げてきたものが実を結ぶというところでしょうな。しかし下地はあるのです。ほんの小さなきっかけで、貴殿は劇的に強くなれるでしょう」

 

 炎駒は柔らかく微笑んで弟子を激励する。想いの強さをリアス以上に目の当たりにしてきた自負のある彼にとって、大一の不安は少しでも軽減させたかった。それこそ『D×D』として、より壮絶な経験をするのだろうから…。

 

「さて、お開きにしましょう。帰ったらしっかり休むのですよ。トレーニングばかりでは無くて、息抜きも大切ですからな」

「母親みたいなこと言いますね…。でも今日は帰る前にヴェネラナ様のところ寄らなければならないので」

 

 大一は義手の調整をしながら答える。炎駒とのトレーニングへ行く前に、リアスの母親であるヴェネラナから呼び出しを喰らっていた。帰りに寄る程度で良いとのことだったので、深刻な話にはならないと思われるが。

 むしろグレモリー城に軟禁状態であるグレイフィアの方が気がかりであった。未だにユーグリットの件で嫌疑が晴れていない彼女はあらゆる制約がつきまとい、公務やグレモリー家のメイドとしての仕事も禁じられている。当然、主で夫であるサーゼクスとの交流などもってのほかであった。会いに行くことも考えたが、行ったところで自分ができることなど何もない。唯一、フットワークの軽さもあるルシファー眷属なのに、力になれないのは歯がゆさを感じた。

 

────────────────────────────────────────────

 

 約30分後、スーツへと着替えた大一はヴェネラナの前に立っていた。場所はグレモリー城にある彼女の書斎で壁には多くの本が敷き詰められていた。見目麗しい彼女にしては質素であったが、同時にグレモリー家当主の妻としての教養の深さが部屋だけでも窺える。

 

「いつもならお茶でも淹れてあげたいのですが、時間も遅いですしなるべく早く帰りたいでしょう。用件はさっさと済ませます」

「お心遣いありがとうございます」

 

 きびきびと話すヴェネラナに、大一は軽く頭を下げる。冥界のため時間がわかりづらいが、時刻はすでに夜遅い。学園での生活も考えれば、彼女の言葉は助かった。

 

「さて間もなく12月ですが、その頭にアガレス領土で魔法使いの集会が行われます」

 

 大一は眉がピクリと動く。高名な魔法使いがここ最近、行方不明になる事件が多発していたのを、大一はマグレガーから聞いていた。クリフォトが裏で手引きしている可能性は高く、それを踏まえて情報交換も兼ねての集会なのだという。

 

「その集会に参加する女性の送り迎えをお願いしたいのですよ」

「それは構いませんが、護衛でなくていいのですか?」

「正式な護衛はあちらでつけていますし、テロ対策チーム『D×D』のあなたを縛り付けるわけにもいかないでしょう。そもそもグレモリー家が主催ということでもありませんし、あくまでグレモリー家としての誠意を見せるものですから」

 

 ヴェネラナが渡してきた1枚の紙を受け取りながら、大一は頭の中で考えを巡らせていた。ルシファー眷属であることを隠すために彼女の名前を借りているため大いに協力するつもりではあったが、グレモリー家と関係のない集会でそこまで力を入れる理由がわからなかった。

 大一の思いを見透かしたかのように、ヴェネラナは話を続けた。

 

「その方は魔法使いの集会に参加することに加えて、シトリー出資の学校で講演も行う予定なのです。あなたも近々皆さんと見学に行く予定でしょう?」

「そういうことだったんですね。しかし私はリアス様達とは時間をずらして行く予定だったのですが…」

「ええ、サーゼクスと会うために時間を取っているのは知っています。だから、そちらの家に寄る際の送り迎えなどで十分ですよ」

「ウチに来るんですか?どうしてまた?」

「この方はヴァルキリーの1人でした。名前をゲンドゥルさんと言い───」

 

────────────────────────────────────────────

 

 説明を受けてから約10分後、大一は兵藤家の地下にある転移魔方陣のある部屋へと降り立つ。炎駒のトレーニング以上に、ヴェネラナの話は頭への負担が強く感じ、疲れもあってか大きなあくびを噛み殺した。

 時間的に両親は眠っているだろうと思い、着替えを取りに自室に向かおうとしたが…。

 

「大一、お帰りなさい」

 

 穏やかな笑顔で朱乃が部屋へと降りてきた。ゆったりとした部屋着であり、スーツ姿の大一とはとても対照的な印象であった。

 

「ただいま。…えらくタイミングが良いな」

「魔力で帰ってきたことくらいわかるわ」

「まあ、それもそうか…先に寝ていても良かったのに」

「そうもいかないわ。今日はちょっと考えがあるんだもの」

 

 首をかしげる大一に、朱乃はいたずらっぽく笑って話を続けた。

 

「疲れたでしょう?ゆっくり休まなきゃ」

「炎駒さんにも同じようなこと言われたな。やることやってシャワー浴びたら寝るよ」

「あら、シャワーだけでは疲れが取れないと思うわ」

「でも父さんは寝ているだろうし、自分一人だけのために風呂を沸かすのもな…」

「だったら、一緒に入りましょう?背中洗ってあげる」

 

 笑顔を崩さない朱乃の発言に、大一の心に巨大な爆弾が投下されたような感覚を覚える。頭の中で必死に感情と興奮を抑えようと言葉を投げかけるが、それでも冷静さを取り戻すことは不可能に近かった。

 

「さ、さすがにそれはまだ早いんじゃないか?」

「リアスとイッセーくんは何度も入っているわ。アーシアちゃん達だってよく一緒に入っているのに」

「そもそも母さんが制限を加えているのに、普通に入っているあいつがおかしいだけだからね?」

「私の裸だって見たことあるじゃない」

「夏のあれは不可抗力だって…」

 

 半ば言い訳気味に反応する大一に、さすがの朱乃もしびれを切らしたのか近づいて彼の身体に抱きつくと上目遣いでその顔を見る。

 

「ねえ、一緒にいたいの。いいでしょう?」

 

 いよいよ大一の感情が燃えるように熱くなる。ほぼ同時にライザーから教えられたことを思いだした。『女性相手に恥をかかせるな』『ハーレムを作るなら相手を満足させるまで付き合え』といった内容だ。もはやただの理由作りにもなっていたが、そこに考えが至るほど彼は冷静ではなかった。

 

「…わかった。一緒に入ろう」

「やった。大一、大好きよ」

「じゃあ、部長たちが上がったら行きましょう」

 

 このやり取りに朱乃とは別の女性の声が耳に入る。いつの間にか小猫もその場にいて、小さくガッツポーズをしていた。

 

「小猫、いつの間に…」

「少し出遅れましたが間に合いました。朱乃さんが良くて、私がダメな理由はありませんよね?」

「…わかった。よろしくお願いします」

 

 もはや言い訳は止めて、自分が彼女らと一緒に入りたいのだと言い聞かせながら大一は頷いた。頭の中では興味なく寝息を立てるディオーグと、囃し立てるような言葉と笑いを連呼するシャドウで騒ぎ立てられていた。

 

「でもちょっと待ってくれ!まずやること終わらせなきゃ…」

「そうね。まずはスーツを脱がなきゃ」

「でも先輩のスーツ姿、しっかりして長身と合っているから脱ぐのもったいないですよね」

「意味変わってくるぞ、小猫。いやそうじゃなくて、ちょっとロスヴァイセさんと話さなきゃいけないんだよ」

「何かあったの?」

 

 不思議そうに問う朱乃であったが、ちょうどその時にロスヴァイセが少し慌てた様子で部屋に入り込んでくる。

 

「大一くん、帰って来ていて良かった。朱乃さん達もいますね。ちょっとお話があるんです」

「奇遇ですね、俺もちょっとお話したいことがありまして」

「うえっ!?そうでしたか…」

 

 誰がどう見ても落ち着きの無い彼女の様子に、大一も朱乃も小猫も面食らう。とはいえ事情も分からず、そこを突っ込んで焦燥を加速させる必要はない。

 まずは彼女の落ち着きを優先させた大一は、落ち着かせるようにゆっくりと話す。

 

「急ぐ話でもないのでお先にどうぞ」

「あ、ありがとうございます。あの、その前に朱乃さんや小猫ちゃん、ちょっと今からとんでもない話をしますけど勘違いしないでくださいね」

「え、ええ。わかりましたわ」

「…はあ」

 

 戸惑い気味に朱乃と小猫が反応したのを確認すると、ロスヴァイセは大きく深呼吸をして大一を見る。力が入りすぎて半ば睨みつけているようにも見えてしまった。

 

「大一くん、わ、私の彼氏になってください!」

 




さて、これに対してオリ主はどうするか。
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