D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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どうしてもオリ主が入る隙間が少なかった状況になりました。同時に彼ならこうするだろうという動きではあると思います。



第15話 弟の代償

「私がいるんだから休んでいても良かったのに」

「主の大舞台に行かないなんてこと出来るわけがないよ。しかもサーゼクス様までいるんだから」

 

 整った黒い着物に身を包む朱乃に、大一は答える。彼もいつもと違って黒いスーツに姿に身を包んでいた。頭には包帯が巻かれており、アンバランスな印象を与える見た目だ。

 彼らがいる場所はリアスの婚約を祝う大披露宴の会場であった。周りを見渡せば両家の関係者や上級悪魔が多数おり、悪魔としてこの場が如何に重要なものかが察せられる。特に目を引くのは、リアスと同様に紅の髪を持つ男性、現魔王のサーゼクスの存在であった。彼ひとりだけでも緊迫感が一つも二つも違った。

 ライザーとのレーティングゲームに敗北した彼らは、治療を受けた後に眷属として彼女に付き添った。ただしゲーム終盤で気絶をした一誠と彼を看病するために自宅に残ったアーシアだけはこの場にいなかった。

 

「朱乃さんの言う通りですよ。それかアーシアさんの回復をしっかり受けるべきでした」

「俺よりも一誠の方が酷かったんだ。だったら魔力はあっちに回した方がいい」

「…どっちもどっち」

 

 レーティングゲームで敗北が決まっても大一は倒れなかったが、その傷はライザーに敗北して気絶していた一誠にも劣らずであった。当然、アーシアも傷の回復をしてくれるものの、動ける程度になったらあとは一誠の回復に専念するように言い残して彼は他の眷属たちと共に式へと向かった。アーシアからは抗議を受けたものの、そこは先輩という立場を使ったズルいやり方で流していた。

 正装した祐斗と小猫は大一のその態度に呆れた反応を見せ、朱乃はいつものごとくこれ以上の説得は無理だと判断して共にいる3人を見渡す。

 

「まあ、これ以上は言いませんわ。それよりも皆、心の準備はできていますか?」

「…もちろんです」

「今さら引き下がることはしませんよ」

「…なんとかするさ」

 

 全員が同意すると、壇上でライザーと一緒にいるリアスへと視線を向けた。その表情は憂いと諦めが入り混じっており、それが一種の儚い美しさを感じさせるものとなっていた。そんな主を助けるための手段がまだあることを知った彼らの決意は強固なものであった。

 この披露宴に参加して間もなく、大一はサーゼクスからひとつの紙切れを渡された。炎駒からの伝言、と念押しされて渡されたものだが、その内容はサーゼクスが裏で手を引いてもう一度だけこの縁談を破棄にするチャンスを作る計画についてであった。内容はいたって単純で、この婚約を盛り上げる余興としてドラゴンとフェニックスの対決を行うことであった。すでに一誠の方には彼の右腕であるグレイフィアがこの会場へと転移するための手立てを準備しており、あとは彼がこの場に来ることを決心するだけであった。もちろん必ず成功するとは限らない。一誠がライザーに勝てる算段があるわけじゃないし、もっと言えば彼がここに来るのも絶対とは限らないからだ。

 それでもこの話に、グレモリー眷属が乗らない筈がなかった。彼らも先の試合で負けたことについては、全員が責任を感じているところ。当然、主の望みを叶えられるものならそれに越したことはなかった。

 そして、兄として大一の個人的な見解を出すならば、一誠は必ずこの場に現れてリアスを返してもらうことを要求するだろう。弟は良くも悪くも周りを気にせずに突っ走る面があるのを知っていた。そして山での特訓で自信がついたことから、今回の戦いで負けてしまったことに負い目を感じていることも。だからこそチャンスのある披露宴の場には必ず現れるだろうと確信していた。

 間もなくその考えが当たっていたことが証明される、聞き慣れた叫び声が耳に届いた。

 

「部長ォォォォッッ!ここにいる上級悪魔の皆さん!それに部長のお兄さんの魔王様!俺は駒王学園オカルト研究部の兵藤一誠です!部長のリアス・グレモリー様を取り戻しに来ました!」

 

 会場がざわめき、衛兵が一誠へと向かっていく中、4人のグレモリー眷属が一斉に動いて彼らの足止めに向かった。

 

「イッセーくん!ここは僕たちに任せて!」

「…遅いです」

「あらあら、やっと来たんですね」

「押さえておくからさっさと済ませろ」

 

 彼らの援護を受けて、一誠はグングンと前に進んでいく。彼の頭の中には、自身を救ってくれた紅の髪の彼女を連れて帰ることしかなかった。

 急に現れた一誠に会場中が混乱するもサーゼクスがとりなし、一誠とライザーの対決が決まった。片や再び主を取り戻すため、片やフェニックス家のプライドのためにその覚悟は確固たるものであった。

 一誠とライザーが急遽作られた戦いのための特殊空間へと向かうのを、大一は後ろから見ながらつぶやく。

 

「勝ってくれよ、一誠」

 

────────────────────────────────────────────

 

 一誠とライザーの戦いは、大一がこれまで見てきた悪魔の戦いの中でもっとも常識はずれなものであった。実力差がある相手に一誠が勝つために、山での修行を活かし、聖水を用意し、果ては『禁手(バランス・ブレイカー)』と呼ばれる神器の禁じられた力を引き出すというもので、ブーステッド・ギアを鎧のように変化させた『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』を纏い打ち勝った。そのために自分の左腕を一本犠牲にしてまで…。

 大一に一誠のような真似ができたかと言えば、それはできなかっただろう。彼は悪魔として生きることに必死であった。悪魔になることにメリットを見出していたわけでは無く、ただ悪魔のルールに乗っ取ることを意識していたのだから。

 対して、一誠はまだ悪魔としては未成熟だ。上級悪魔のお家事情なんかはそこまで分かるはずもなく、退くということを知らない。だからこそ悪魔の常識を真っすぐに打ち破るように動くことが出来た。根回しがあったとはいえ、しり込みせずに立ち向かうことが出来た。そして激闘の末、見事に勝利をもぎ取ることが出来たのだ。

 ライザーに勝利した一誠はグレイフィアに渡された魔法陣から現れたグリフォンに乗って、リアスと共に夜の空へと飛んでいった。

 

「部室で待っているからな!」

 

 一誠の去り際の言葉に、眷属の皆が笑顔で送り出す。大一も表情は笑顔を見せるがその痛々しい弟の左腕には目を背けたいのが本音であった。弟が命を懸けたことが分かるその腕こそ、自分の不甲斐なさに直面させられる気持ちだからだ。

 しかし今はその感情を抑え込む。まずはリアスの望みが叶ったことに安堵するだけであった。

 

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「だからって…この状況はおかしいだろ!」

 

 兵藤家で大一の声が響く。一誠によってリアスの婚約が破棄となった一件からほんの数日後、リアスが兵藤家に現れて一緒に住むと言いだしたのだ。何があったか…正直なところ、大一としては3年も付き合いがあるため彼女の考えと心情は何となく想像ついたが、とにかくアーシア同様に同居することになった。

 現在、大一は彼女の荷物を部屋に運び入れていた。一誠の方もリアスの指示の下、あと少しで運び入れが終わりというところであった。すっかり上機嫌のリアスが嬉しそうに口を開く。

 

「イッセー、これが終わったらお風呂に入りたいわ。…そうね背中、流してあげるわね」

「マジっすか!?」

「ちょっとリアスさん、それはマズいでしょうよ!」

「もう!裸のお付き合いなら私もします!イッセーさんも部長さんも私だけ仲間外れにしないでください!」

「落ち着け、アーシア!冷静になって自分のやろうとしていることを見直してみろ!」

「まったく大一は小言が多いわね」

「だったら、言われないような振る舞いをしてくださいよ!」

 

 恋を見つけて上機嫌な主に、新たなライバルが現れてあたふたする同居人、その賑やかになっていく生活に喜びを見せる弟と、今後の生活を考えるだけで心的な負担を感じる兄がそこに立っていた。

 




短いですが、これで2巻終わりです。反省点を活かしながら、次回から3巻に突入していきたいと思います。
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