失敗や躓きゆえの学びもあるでしょう。
「いや本当に助かった。危うく不審者として変な目で見られるところだった」
「私だってそんな目で先輩を見ることにはなりたくないですよ」
大一は申し訳なさそうに隣を歩く花戒桃に謝る。学校に着いたは良かったものの、門が閉まっており呼び鈴やインターホンの類を探していたところ、学校の職員と子ども達に見つかった。長身の黒スーツの男が怪しくうろついている、それだけでも不審者として疑われるには十分であり、近くにいた彼女がすぐに現れて事なきを得た。
あやうく学校見学が色々おじゃんになりかけた大一がショックを受けたのは、子ども達を泣かせる一歩手前の状態になっていたことであった。別に好かれようとは思っていなかったが、半泣きで引いている子どもの原因が自分にあると知っては相応にへこんでしまう。
「俺、そんなに怖いかな…」
「怖いというか…兵藤くんや木場くんとかと比べると愛嬌は無い気がします。あと大きいから、子どもも驚くのは仕方ないことかと」
「それを言ったら、サイラオーグさんも似たような…いや、あの人はさっぱりしているものな」
実際、案内途中でサイラオーグが子ども達に打撃の講師をしていた場面を遠めに彼は見ていた。離れていてもわかる慕われぶりに感嘆の息が漏れたほどであった。
「先輩、湿っぽいというか、げっそりとしているというか、あまり健康的じゃない時ありますものね」
「容赦なさすぎだろ、花戒…」
「いや、生徒会に来るたびにくまだらけの顔で土下座を繰り返しているのを見ればそうも思いますよ」
実際、生徒会のメンバーが大一に抱く印象はほとんどが疲れているという印象であった。今でこそ足を運ぶことはほとんど無くなったが、2年生の頃は一誠含む変態3人組への謝罪で入り浸っていたため、当然の感想とも言えた。
「一誠が悪魔になって忙しくなり、モテることにもなったおかげで、学園生活はだいぶ落ち着いたと思うよ。家ではそこまででも無いが…」
「まあ、兵藤くんの全てを肯定はしませんが、良いところも知れたと思います。学園ではなかなか…」
「否定はしないよ。ところで学園といえば、この学校のデザイン…」
歩きながら大一は校内の光景に視線を走らせる。教室、廊下、校庭…デザインや学園の様子があまりにも見慣れていた雰囲気があった。
「お察しの通りですよ」
いつの間にか後ろにいたソーナの一言に、大一と花戒はびくりと身体を震わせる。
「び、ビックリした…会長、驚かないでくださいよ!」
「ちょうど曲がり角で見かけて声をかけたのよ。大一くん、いらっしゃい。どうですか、『アウロス学園』は?」
「まだ少ししか見ていませんが…駒王学園を参考にしていますね」
「私がもっとも素晴らしいと考える学び舎ですから」
学校の外観、建物や運動場の配置、校内の作り、あらゆる箇所でこの「アウロス学園」は彼女らの母校「駒王学園」を踏襲していた。ソーナの想いがふんだんに込められており、ピカピカの新築校舎は新鮮さと馴染み深さという2つの矛盾した想いを抱かせた。
この学園はまだ正式な開校はしておらず、現在は体験入学の段階であったがそれでも子どもは150人以上集まっており、父兄も含めればこの校内いる人数は倍以上いた。口コミで噂が広まった結果であったが、上々の滑り出しであることはソーナも自覚していた。
「しかし本当にすごい…こんなふうに夢を叶えてしまうとは」
「まだまだ第一歩でしかありませんよ。これから本当の意味で平等に皆がレーティングゲームを学べるようにしなければ」
冷静に、しかし目に爛々とした輝きを灯しながらソーナは語る。自身の夢を実直に語る彼女に大一は小さく微笑む。リアスと幼馴染だけあってか、その野心と目標の高さは本物であった。彼女の強みである知力と行動力も踏まえれば、ここまでこぎつけるのも当然の結果であろう。
「リアス達はすでに手伝ってくれています。イッセーくんなんかは人気が凄すぎて、少し前までおっぱいドラゴンのファンイベントになってしまったくらいですよ。先ほどまで来ていたディハウザー・ベリアルに次ぐほどでしたね」
「なにやっているんだか…って、ベリアル様が来ていたんですか!?」
「ええ、先ほど帰られましたけど」
冷静に対応するソーナに、大一は呆けたように息を吐く。アグレアスで明日、ディハウザー・ベリアル主演の映画撮影があるため見学に来たそうだ。レーティングゲームの現覇者、「皇帝(エンペラー)」の異名を持つその存在は大一も興味があり、つい先ほどまでいたという事実に驚きを隠せなかった。
「それは本当にすごい…ま、まあ、皆さんに比べれば微力ですが、俺も手伝いますよ」
「ありがとうございます。ぜひ色々見ていただいて、いずれ学園の先生として来て欲しいものです」
眼鏡越しにきらりと光る彼女の瞳は、期待に満ちた様子で大一へと向けられていた。
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リアス達は自分たちの強みや立場を活かして授業のサポートにあたっていた。リアスと朱乃は「王」と「女王」という特別な立場ゆえの経験や知識、祐斗やゼノヴィアの「騎士」コンビは剣を用いた実技、イリナは悪魔からすれば珍しい転生天使としての布教に片足突っ込んだ講義となかなか強烈なものであった。小猫やギャスパーも出生の特異さを活かした授業の手伝いに入っており、一誠は匙と共に「兵士」の実演を行う。アーシアはエクソシスト関連であったが、ファーブニルのおかげでゼノヴィアやイリナに介抱されるところにまで発展した。
仲間達が活躍する中、大一はそうもいかなかった。元々、一誠のように「兵士」としてプロモーションを多用しない上に、「女王」とは相性が悪いため使用すらしない。ルシファー眷属の立場を明らかにするわけにもいかず、ヴェネラナの眷属としてもレーティングゲームに参加できないため、いまいち教える立場としては説得力に欠ける。
そんな彼が任されたのは、ロスヴァイセによる魔法の授業の手伝いであった。
「もう少しで出来ますよ。こうすれば…」
「やったぁ!ちょっとだけど火が出た!」
はしゃぐ子ども達にロスヴァイセが中心になって魔法を教えていく。彼女の知識量の凄まじさに加えて、積み上げてきた教師の経験を存分に活かされていた。以前の会議後にサイラオーグが彼女に対して冥界で教鞭を取ってほしい旨を強く伝えていた。彼のように魔力の素質が無い悪魔はいくらでもいる。そんな悪魔も魔法を使えば、出来ることの幅が一気に広がるのだ。苦い経験を知るサイラオーグだからこその願いと要望に、彼女はすぐに答えを出せなかったが、その現状を目の当たりにしているような気分であった。
「兄貴先生、水が出ません」
「うん、見せてみな」
ひとりの少年悪魔が手を上げて、大一を呼ぶ。ここで教えられているのは基礎的な魔法ばかりであった。メンバー内では座学で魔法を習得してきた彼でも十分に見て教えられるレベルであり、ロスヴァイセでは手が回らないところをサポートする形を取っていた。
大一は近くに向かうと、少年悪魔が手の平に展開させていた魔法陣を調べる。
「…あー、ここの術式か。ここを直してまとめれば…」
「わっ!水が出た!」
魔法陣から噴き出る水を見て、子どもが歓喜の声を上げる。実戦では素早い展開や威力の足りなさでほとんど活用できない彼の魔法も、この穏やかな現状で教える分には事欠かなかった。
『しかし兄貴先生って…』
不穏な声色でシャドウが頭の中でつぶやく。大一の「兄貴先生」という名称は、一誠が兄貴と呼んだことに起因していた。赤龍帝ありきの名づけに不満を抱く者がいる一方で、大一としては怖がられるよりも遥かに安心した。それでも距離感が掴めずに苦慮しているが。
それを思えば、数十人いる子ども達を相手に魔法の講義を行っているロスヴァイセの手腕に感心した。
「ロスヴァイセ先生!」
「先生、もっと教えて!」
「順番ですよ、皆さん」
ロスヴァイセとしても教えるのには間違いなく手ごたえと喜びを感じていた。これほど魔法を学びたがる悪魔が多いことに驚きも感じ、学びへの意欲に更なる驚きもあった。とはいえ、全員が上手くいくわけではない。子ども達に教える中、彼女は初歩の魔法の発動が上手くいかない少年が視界に入る。マンツーマンで指導すれば上手くいくかもしれないが、今の彼女にそこまでの余裕はない。
そんな中、大一はひとり苦慮している少年の下に歩いていった。
「…出ないな」
「…うん」
「どこがわからない?」
「…全部。これで良いはずなのに出ないんだ」
静かに答える少年に大一は頭を掻いて術式を確認し始める。ひとつひとつ文字をつぶさに調べていきながら、大一は少年に問う。
「魔法を知りたいってことは、魔力関連は苦手かな?」
「…なにもできないんだ。頭も悪いし、魔力も上手く使えない。魔法だって…」
「…嫌になるよな。みんなができるのに自分だけができないとか」
「うん…」
「まあ、初めてのことは誰でも上手くいかないものだよ。それにキミは何も出来ないわけじゃない。こうすれば…」
「わッ…!」
少年はびくりと身体を震わせる。展開させていた魔法陣から薄い霧が噴き出していた。彼の顔には靄がかかり、空いた手でそれを振り払っていく。視界が晴れて飛び出るその表情は驚きながらも、魔法を発動させることができたことの興奮が上回っていた。
「ここの文字が反転していたから発動しなかったんだ。それ以外は完璧だったよ」
「僕も出せた…」
「そう、キミが出した。キミが諦めずに頑張って術式を組んだ結果だ。できることはこれからひとつずつ増やしていけばいい」
「…ありがとう、兄貴先生」
少年の笑顔に大一は気恥ずかしくなり、少しだけ頷いて立ち上がると他の子ども達の様子を見て回るのであった。
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「あー、なんとか終わったなぁ…」
この日の深夜、一誠は風呂に浸かりながらぼやく。最終プログラムを終えた一誠達は他のメンバーや講師と夕食を取った後に一息ついて明日のミーティング、入浴の時間になっていた。彼らが泊まっているのは敷地内にある学生寮となる予定の建物であった。ほとんど完成に近づいており、部屋割りの関係上、兵藤兄弟が同じ一室になっていた。
彼の対面で足湯のような状態で座っている大一が労わる。
「お前、今日はかなりすごかったみたいだな。お疲れ」
「まあな。兄貴の方はどうだった?」
「んー…まずまずだな。そもそも俺はロスヴァイセさんを手伝っていただけだし。それでも子ども相手の距離感は難しいな」
「意外だな。兄貴ってそういうの得意な方だと思ったよ」
「一対一ならまだしも複数だとな…お前はそれこそ特撮の方で慣れているだろ」
「まあ、今日もいろいろあったからな。レイヴェルがいなきゃ、マジであたふたしていたぜ」
一誠のげんなりした様子に大一は小さく笑う。表情は穏やかであったが、使い込まれた肉体に義手を外したその姿はどこか以前の兄と比べると頼りなさげな印象を抱かせた。
義手自体は防水用ではあるのだが、隙間に水が入ってくるやら上がった後の手入れやらで面倒なため、風呂では出来るだけ外していた。もっとも父と兼用している状態のため、そのまま入ることも少なくなかったが。
すでにない兄の腕のあたりを見ながら一誠は話す。
「兄貴も大浴場の方を使えばいいのに」
「それこそリアスさん達が使うだろ。お前は母さんの注意喚起を無視しているみたいだけどな」
「ま、まあ、それはほら…俺もいろいろあるからさ。
それよりも聞いておきたかったんだけど、サーゼクス様に会ったんだろ?元気だった?」
露骨な話題逸らしに半ば呆れながらも、大一は主の顔を思いだす。その美形に隠しきれない疲労の表情は思いだすのに苦労しなかった。
「元気とはいえないな。ユーグリットの件もあるからな」
「それもそうか…なあ、兄貴。思うんだけど、ユーグリットはまた俺の前に立ちはだかると思うんだ」
「わざわざ偽物の赤龍帝としているからか?」
「まあ、そうだな。だからサーゼクス様とグレイフィアさんに俺が必ず突き出して見せる。それにロスヴァイセさんの件もあるしな」
決意を込めるように握りこぶしを見せる弟の姿に、大一は目を細める。力強い信念だ。幾度となく見てきたその姿は頼もしく、彼が冥界で英雄として子ども達や多くの人に慕われる裏付けでもあるだろう。
「…頼もしいな。だがその想いはお前に負けないほど俺も抱いているよ。非公式とはいえルシファー眷属だ。俺にも思うことはあるんでな。いずれにせよ、危険なのにお前とロスヴァイセさんのデートの際に接触してきたくらいだ。あいつは必ずまたどこかで会うだろうな」
「あれは俺も驚いたよ。まさかデート中にあんな形で会ってくるなんてさ。俺らに示すために聖書読んだり、なんかロスヴァイセさんの髪を撫でたりとか…いろいろ不気味な感じもした」
一誠の発言に大一は眉をひそめて思案した表情になる。なにか思い当たる節があったのか、片腕で顎を撫でながらか考えを張り巡らせていた。どことなくアザゼルを想起させる兄の姿に、一誠は不思議そうに彼を見た。
「…もしかして…いや、どうだろうな。まあ、確証もないか。じゃあ、俺はそろそろ上がるよ」
「ええ!?兄貴、あんまり入っていないじゃねえか」
「父さんに義手を見られないように注意していたせいか、長風呂が落ち着かないんだよ。あと単純に今日はいろいろ回って疲れた」
それだけ言うと大一は立ち上がり、右腕の縫合跡から黒い影を腕と形成して風呂の扉を開いて出て行った。右腕がない彼は確かに不安であったが、その大きな背中は紛れもなく多くを背負い続けて安心を感じられるものであった。
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風呂から上がった大一は早々に着替えて部屋に戻ろうと脱衣所から出るが、その近くの壁に寄りかかる女性を見て意外そうに声をかけた。
「ロスヴァイセさん。そこで何をやっているんですか?」
「あっ、大一くん。いえ、女子寮のお風呂のお湯が出なくなってしまって男子寮の方を使うように言われて。そしたら浴場で話し声が聞こえたので、ここで待っていたんです」
「おっと、それは申し訳ない。一誠に上がるように言ってきますので、待っていてください」
踵を返そうとする大一を、ロスヴァイセが慌てて呼び止めた。
「だ、大丈夫ですよ!急いでいるわけではありませんので!…あの、待っている間に少しお話いいですか?」
「それは構いませんが…」
ロスヴァイセの申し出に大一は再びくるりと身体の向きを変えると、彼女に並ぶように壁に寄りかかる。この状況で口火を切ったのはロスヴァイセの方からであった。
「今日はお手伝いありがとうございました」
「いえいえ、自分の力添えなんか些細なものです。やっぱりロスヴァイセさんの指導力あってこそですよ。あれだけの大人数に魔法を教えるのは、さすがだと思いました」
「そう言われると嬉しいですね。でも私は大一くんのお手伝いに助かったのも本音ですよ。ひとりだけ初期魔法で躓いていた子、あのままできないで終わらないか心配でしたけど、大一くんのおかげで彼も魔法が出せました」
頭の中で霧を出した少年の顔が思い浮かぶ。緊張気味でありながらも、成功を経験した少年の様子は、大一にとって非常に印象的であった。ロスヴァイセも上手くいかない様子が気になっており、その心配を払拭した彼への評価は順当なものであった。
「明日もお手伝いをお願いします」
「お任せください。俺で良ければいくらでも力になりますよ」
弟の強い信念にも劣らないほどハッキリした大一の意思表示にロスヴァイセは小さく微笑む。どこか無理して作ったような笑顔に彼は追及したくなるが、そこに触れるのはためらわれた。彼女の様子に思い当たる節があるからだ。
そんな彼の想いをどこまで理解しているかは不明だが、彼女は話し続ける。
「大一くんには迷惑をかけっぱなしですね。この前は祖母の案内までしてもらって…」
「俺は迷惑だと思っていませんよ」
「私がそう思えないんです。ひとりで頑張るあなたを知っているから、本当は頼るべきじゃないのに…」
半ば自分に向けるようにロスヴァイセは呟く。年上として教師として頼られることが多い彼女としては、大一を同じような立場の仲間だと思っていた。だからこそ負担や不安も理解しているつもりだし、グレモリー眷属とルシファー眷属の違いやまだ学生の身であることを考慮すれば自分よりも苦労しているのだろうと考えていた。
だから彼には負担を強いるつもりも無かったが、彼氏役の件では半ば動転していたのも相まって、一瞬でも自分も甘えかけたのが申し訳なかった。
不安を抱える彼女をちらりと見た大一は、思いだすように義手を見つめながら答える。
「…俺はひとりで背負っているつもりは無いですよ。そういう考えは…まあ、いろいろあって緩和しましたので」
彼の頭の中ではロスヴァイセが仲間になる前に起こった小さな、しかし彼にとっては大きな意味を持つ事件について想起されていた。そして同時に彼女がどのような苦難を抱えているのかを察して、ためらいを捨てて大一はゆっくりと語る。
「ロスヴァイセさん、ユーグリットの件で不安はあると思うでしょうが自分を犠牲にしようとはしないでくださいね」
「ふえっ!?わ、私は…どうしてわかったんですか…?」
「俺も似たような経験があったので。敵の手に落ちて仲間に迷惑をかけるくらいなら、死を選ぼうとしました。今はその選択が間違っていたことを強く実感しています」
「…それでも私は…」
「俺らがいますよ。何があってもあなたを敵の手に渡しません。心配な時は頼ってください。俺もみんなも迷惑だなんて思っていないのですから」
大一は落ち着いた声で言い切る。かつて愛する人が、仲間達が、自分の負の荷物を下ろすのを手伝ってくれたように、彼はロスヴァイセに対して抱え込む不安と苦悩を軽減させる手伝いをしようとした。彼にも気恥ずかしさはあったが、それ以上に彼女に自分のような苦しみを引きずってほしくなかった。
彼女は少し潤んだ瞳で大一を見つめ続けると、震える声で絞り出すように答える。
「…頼っていいんですか?」
「当たり前です」
「私は…」
「ん?2人ともそこで何をやっているんだ?」
不思議そうに問うゼノヴィアを筆頭に、アーシア、イリナ、小猫、レイヴェルが現れる。彼女らも入浴のために来たのだろう。
「一誠が上がるのを待っていたんだ」
「じゃあ、気にすることは無いな」
「そうね、イッセーくんだもの」
「イッセーさんとお風呂…いつもとは違うお風呂で一緒に…」
「わ、私がお背中を洗いますわ」
「ちょっとはためらえよ!」
気にせずに脱衣所に入ろうとする4人の肩を大一は義手から伸ばした黒い影で掴んで制止する。そんな彼に対して小猫は期待するような目つきで寄ってくる。
「先輩も一緒に入りましょう?」
「ごめん、上がったばっかりだ」
「むう…この前の時も結局一緒に入ってくれなかったじゃないですか」
「いやあれは仕方ないだろ。それどころじゃなかったし…」
申し訳なさで言いづらそうに答える大一に、小猫が彼の服の袖を引っ張り始める。
「だったら、二度風呂です。入りますよ」
「強制しないでくれって!」
「えーい、先輩!放してくれ!部長の邪魔もない今はチャンスなんだ!」
「お願いです、お兄様!見逃してください!」
一誠が騒ぎを聞いて上がるまでの間、この収集がつかない小さな騒ぎは続いた。そのおかげでロスヴァイセは小さく目を拭ったことに誰も気づくことは無かった。
割と似ている節はあると思うのですが…。