D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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ディオーグもシャドウも子どものことは嫌いなタイプです。


第154話 敵の来襲

 いつも朝のトレーニングをしているのもあって、大一はどのような場所でも睡眠時間は長くはない。それでも悪夢は見なくなったため、しっかり休めていた。この日も早々に目を覚ますと、誰もいない校庭を走っていた。

 

『今日くらい休んでもいいんじゃないの?』

(いつもよりは控えるつもりだ。あと部屋に居づらい)

 

 シャドウの言葉に、大一は渋い表情で答える。男子寮の2人部屋は2段ベッドなのだが、朝起きると上の段に寝ている一誠以外にも寝息が聞こえた。確認してみるとアーシアとレイヴェルが一誠の両側に抱きついて眠っていた。

 叩き起こして小言のひとつでも漏らしたい思いはあったが、前日の風呂での一件も踏まえるともはや諦めていた彼はそのまま部屋を出ていた。

 

『夜這いか…かのフェニックス家の令嬢の行動としてはいささか疑問だね』

(さすがに理由があると思いたいが…)

 

 実際のところはレイヴェルはゼノヴィアとイリナとアーシアのじゃんけん勝負を経て一誠のベッドに入り込んだのだが、シャドウの考えの方が近いのは間違いなかった。

 

『正直ね、キミらのところは相当関係が爛れていることを自覚するべきだろうね』

(否定はしないよ。俺ですら朱乃と小猫がいるくらいだし)

『本当にその2人だけで済むかな~?』

(なんだ、その含みのある言い方)

『いやいや、僕としてはあらゆる場面で神滅具持ちを超える人物になって欲しいと思っているだけだ』

 

 シャドウの言葉に、大一は疑問符を浮かべる。少なくとも自分が好意を寄せる、逆に寄せてくる相手に思い当たる節は無かった。敢えて上げるなら黒歌が近いかもしれないが、明らかにからかっているのだから気にもしていなかった。

 それにしてもここまでお節介を焼かれるのは、大一としても戸惑いを感じる。シャドウが彼に期待を寄せるのは理解できるが、こうも遠慮なく言われ続けると逆に自信が削がれる想いであった。

 そんな中、ディオーグが眠そうな声で発言する。

 

(小僧のエロ弟じゃあるまいし、女がいたところでこいつが強くなるわけじゃねえだろ)

『別に強さだけじゃないんだよ。言っただろ、あらゆる面で神滅具持ちを超えて欲しいんだ。僕の所有者はすごいってことを証明して欲しいし、それが僕らの存在をより強く有名にしてくれるはずさ。あと僕が優越感に浸れる』

(その前にてめえらが禁手とやらに至れる方が先だと思うがな。それかもっと実力的に変わるか)

『い、痛いところを突いてくれる…!』

 

 ディオーグとシャドウがそれぞれ理論を展開していくのを大一は聞きながらトレーニングに励む。彼らの主張は自分と違うことが多く、ヒートアップしている際は聞き流すことが圧倒的に多いのだが、改めて耳を傾ける必要性を彼なりに感じていた。というのも、一誠やヴァ―リを見ると、ドライグやアルビオンの様子が少なからず強さの変化に繋がっていると感じた。そこで彼らの話にも強くなるにあたりヒントは無いかと思ったが…。

 

(だいたいよ、あんなガキどもに魔法を教えたところで何も得がねえだろ)

『それには同意する。昨日はあのゲンドゥルとかも子ども達に教えていたみたいだけど、それを息抜きと言えるのは腑に落ちないね』

 

 愚痴が増えてきたところで、大一は自分のやることに集中するのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 朝食後、2日目の日程を周知されたメンバーは今日も授業の手伝いに入る。大方、前日と大差ないのだが、サイラオーグとその眷属がベリアルの映画に友情出演するため午後からの参加となっていた。それにあたり、アグレアスにはシークヴァイラ・アガレスもいるため、「若手四王」が付近に集合する形になっていた。また直接は関係していないのだが今日は例の魔法使いの集会がこの町で行われるため、アガレス家の領土は賑わっていた。

 そして大一にも少々変化があった。前日は子ども達の様子を見ていたことがほとんどであったが、この日は見学している親からも質問を受けることが多かった。

 

「家で魔法を学ぶにあたってはどうすればいいですかね?」

「私は座学でなんとかしていました。入門的なものであれば冥界でも売っています」

「実際、レーティングゲームでも使えますか?」

「私は特性上、魔法陣だけを使用していますが、磨けば十分発揮できると思いますよ。実際、ロスヴァイセさんがそうですし」

 

 内容は普遍的なものばかりで、魔法のわからないことを訊くというよりも、活用の仕方や学び方などばかりであった。ロスヴァイセが子ども達に付きっきりのため、必然的に親の対応を大一が行うことになっていた。

 悪魔ながら魔力に恵まれない子ども達を持つ親がほとんどのため、その熱意はすさまじく彼も対応に追われていた。

 懇切丁寧に相手する大一に、親たちは感心した様子で話す。

 

「いやはや、お若いのに色々知っていますね」

「あ、ありがとうございます。幸い、多くの経験をさせていただいているので…」

「赤龍帝のお兄様ですものね。そういえばリアス姫様の眷属を止めたようですが、今後はレーティングゲームには出ないのですか?」

「…見通しはありませんね」

 

 少し困惑気味に、大一は答える。現時点でレーティングゲームに参加する機会はほとんどない。それを踏まえると、この学校の方針とは違っているためソーナからの教師としての打診は自分に相応しいとは思えなかった。

 大一はちらりとロスヴァイセに目を向ける。子どもに魔法を教える彼女がいかに輝いているかが理解できる。以前、ゲンドゥルに問われたことについて自分の考えは間違っていないことを改めて確信したのと同時に、そんな彼女が重いものを抱えていることに感情がざわつく。

 そんな想いを馳せていると、舌なめずりするようなディオーグの声が聞こえる。

 

(気味の悪い魔力…誰だ?)

 

 大抵、ディオーグが何かを感知した際の発言は、まさに嵐の前の予兆と化していたため、大一もすぐに警戒する。間もなく、全身に悪寒が走りディオーグの言う通り気味の悪い魔力が感じられた。ロスヴァイセや他の大人たちもこの違和感に気づいて警戒が強まる中、校内放送が耳に届く。

 

『グラウンドにいる体験入学生、父兄の方、講師、スタッフの皆さんは速やかに校内に入ってください。繰り返します。グラウンドにいる体験入学生、父兄の方、講師、スタッフの皆さんは───』

(ディオーグ、シャドウ…)

(ハッハー!来やがったな!)

『か、勘弁してくれよ…!』

 

────────────────────────────────────────────

 

 不安に駆られる子ども達と父兄は体育館に集合させ、オカルト研究部と生徒会メンバーが職員室に集う。すでにスタッフが総動員で情報の収集にあたっていたが、難航していた。それもそのはず、連絡用魔法陣、転移用魔法陣を展開させても上手くいかず、かつて英雄派によって空間ごと閉じ込められたことが想起される。

 しかし決定的に違うのは、周りにあるものが本物であることであった。大一と小猫で気を探ったが、草木も石も本物であった。

 なんとか直近のアグレアスと魔法使いがいる町の集会場には連絡が繋がり、立体映像が映し出された。片やアグレアスにいるサイラオーグ、片や集会場にいるゲンドゥルであった。

 

『これはどうなっている?』

『この地域一帯丸ごと、敵対勢力の結果に覆われたと考えていいでしょう。いま、総動員で各々使役している生物に結界の規模を確認させていますが、どうやらこの町とアグレアスを楕円形にすっぽり覆っている可能性が高いと報告を受けています。それに加えて、私たち術者は魔法の大半を封じられてしまっています。この通り』

 

 サイラオーグの問いに、ゲンドゥルは答えて額を見せる。奇妙な魔法陣が禍々しい光を放っており、これによって魔法が封印されているようであった。とはいえ、これは集会場にいる魔法使い限定の封印であるようで、この場にいた一誠達は問題なく力を使える様子であった。

 この状況に匙が顔を引きつらせながら不安そうに心中を漏らす。

 

「こんな大規模で大胆なことが出来る者が敵にいるっていうのかよ…」

『───ええ、いますよ。千以上もの魔法を操ったという伝説の邪龍「魔源の禁龍(ディアボリズム・サウザンド・ドラゴン)」アジ・ダハーカ。かの邪龍ならば、魔法使いを封じる術も知っているでしょう』

 

 ゲンドゥルの言葉に全員が絶句した。伝説の邪龍の名前が出てきたことを思うと、間違いなくクリフォトが関わっているからだ。しかもこれほどの規模で封印を可能にする辺り、アジ・ダハーカが強化されていることが考えられる。それこそ聖杯やレプリカのブーステッド・ギアが相手にあるのだから、力を増大させることも可能だろう。

 相手の狙いを探ることが優先ではあるが、魔法使いたちを封じたことで真っ先に思いつくことは…。

 

『…ひとつは私たち、でしょうね。666に関する研究をしていた術者たち。彼らの狙いは私たちにあります。しかし、彼らはあのアグレアスまで結界を覆った。意図があるのでしょう』

 

 ゲンドゥルの話す通り、わざわざ魔法使いたちの魔法をピンポイントで封じたのだからそれは予想される。同時にアグレアスについて疑問はあるが、それについてレイヴェルがぼそりと呟く。

 

「───旧魔王時代の技術」

 

 これについてソーナも頷き、仲間達に説明する。

 

「あのアグレアスには、旧魔王時代の技術が使われています。いまだ解明できていない部分があり、アジュカ・ベルゼブブ様の研究機関が島の深部を調査中です。前ルシファーの息子であるリゼヴィム・リヴァン・ルシファーはあの島にある何かを狙っているのかもしれません」

 

 空中都市アグレアスには、今もなお解明されていないことが多く、旧魔王時代の技術が眠るといわれている。それがどういったものかを全員が考えはするものの、この場で答えが出るはずも無かった。

 とはいえ、この現状を打破するにあたり情報が少ないのも事実であった。外部からの助けも期待できないのが現実だ。これほど広大な結界を張る以上、外からの情報の遮断のために時空間をいじっていることも考えられる。アグレアスとその周辺は本来であれば、もっと早々に結界対策が施行されているはずであったが、冥界随一の観光地でもあるため後回しにしていたのが仇になっていた。

 頭を悩ます中、ひとりのスタッフが慌てたように職員室に入ってくる。

 

「───上空に映像が」

 

 一行が校庭に出て空を見上げると、花畑の映像に『しばしお待ちください』と悪魔文字で記されていた。この映像の雰囲気とはかけ離れたおふざけ感が満載の男性の声が聞こえる。

 

『え?もう始まってんの?マジで?ちょっと待ってよ~。おじさん、まだお弁当全部食べてないって。いいから、出ろって?わかったわかった』

 

 軽いノリで話し続けられる中、間もなく映像が切り替わりリゼヴィムの憎らしい姿が映し出された。

 

『んちゃ♪うひゃひゃひゃっ!皆のアイドル、リゼヴィムおじさんです☆皆、はじめまして、あるいはお久しぶり!説明なしではなんだから俺が直々に説明してあげようかなって思ったしだいです!ほら、敵方が説明するのがお約束でしょ?こちらが不利になっても種明かしをするのがお約束じゃん?

 実は僕たち、その辺一帯丸ごと、結界で包囲しちゃいました!いやー、いきなりのドッキリで申し訳ない!』

 

 言葉と違って謝罪の気持ちなど微塵もない様子で、リゼヴィムは説明を続ける。この結界は予想通りレプリカのブーステッド・ギアで強化された邪龍が関わっていた。話題にも挙げられた邪龍アジ・ダハーカと、初代ヘラクレスに討伐されたもう一匹の邪龍ラードゥンの2匹によって、外とは時間ごと隔絶されていた。

 敵の目的は2つ、協力を得られない魔法使いたちの全滅とアグレアスの技術の奪取であった。

 

『そこに俺たちの打倒を企てて結成したという「D×D」の皆がいるんだろう?事前情報ぐらいは得てるぜ。面白いから、勝負といこうぜ?量産型邪龍軍団の大群と、伝説の邪龍様がそちらと───あの空中都市に向かう。───蹂躙するためだ。それを止めてみろよ。ねぇ、止めてみてくれって』

 

 そう言ってリゼヴィムが指を鳴らすと、町を囲むように紫色の巨大な火柱が無数に天高く立ち上がっていく。

 これを見て、集会所からいつの間にかここまで移動してきたゲンドゥルが忌々しそうにつぶやく。

 

「───紫炎ですか。厄介な者が絡んできましたね」

「…これは『紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)』ッ!」

 

 紫炎が十字架を形作るのを確認してリアスは叫ぶ。聖杯同じ聖遺物(レリック)のひとつで、悪魔でも魔術師でもその紫炎は燃やし尽くすと言われる神滅具であった。

 

『てなわけで、踏ん張ってくれよ!3時間後、行動開始だっ!うひゃひゃひゃっ!』

 

────────────────────────────────────────────

 

 リゼヴィムの宣戦布告からすぐに彼らは行動を始めた。まずは体育館にいた子どもと父兄たちを臨時の避難場所である学校の地下に誘導する。残念ながら、結界と紫炎の守りは厚くこの結界から抜け出すことは不可能であった。

 またアグレアスの方でも同様で、すでにアジ・ダハーカを筆頭とした多くの邪龍軍団が待機しているとのことだ。

 それでも彼らがここで弱音を吐くわけにはいかない。この場に「D×D」として居合わせた以上、彼らはこの学園を守ることに全力を尽くさなければならなかった。

 最終ミーティング前に避難所に集まる皆に、大一は視線を走らせる。恐怖と不安に張り詰められているこの空気は、決して気分の良いものでは無かった。この悲しみに直面させられると、期待というものがいかに大きなものかを実感させられるのであった。

 緊張感に包まれる彼の様子を見た朱乃が声をかける。

 

「大丈夫?」

「あんまり…どうも守るべき対象をこんなふうに見ると、穏やかじゃいられない」

「そうね…でも私たち以上にあの子たちは不安なはず。私たちがここで頑張らなきゃ。それにほら、あんなふうに子どもが期待しているんだもの」

 

 朱乃の視線の先を大一も見ると、一誠がひとりの悪魔の男の子と話しているのが見えた。なんでも魔力の才能が無い子どもであったが、ロスヴァイセの授業のおかげで魔法を出すことが出来るようになったらしい。

 名前をリレンクスと言い、おっぱいドラゴンのイベントにも来ていたことで一誠が覚えていた。

 

「ほら、おっぱいドラゴンは僕のこと忘れてなかったでしょ!」

 

 そこにリアスやロスヴァイセも加わり、リレンクスを勇気づける。そこに映る彼らの姿は温かく、互いに勇気づけられているような雰囲気がそこにあった。

 

「…冥界を変えるのって難しいんだろうな」

「どうかした?」

「いや、俺には英雄って向いていないんだろうなと思っただけだよ」

 

 肩をすくめて避難場所を後にする大一を、朱乃は小さく嘆息して追っていくのであった。

 




次回あたりからバトルになると思います。
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