D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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グレンデルとの戦いは全カットします。
ついでに久しぶりのキャラも登場です。


第157話 介入

 眩い光はこの場にはあまりにも似つかないものであったが、ものの数秒で収まった。何が起こったのかと大一はすぐに自分の無くなっている腕を確認したが、すでに魔法陣は消えている。代わりに彼の前にひとりの女性が立っていた。

 

「やっと冥界で『異界の魔力』を強く感知できたと思ったらあんた達か」

 

 ふんわりとした金髪に、白いロングスカートと青いケープが印象的な女性は軽く顎を掻く。顔を見なくてもその声を聴いただけで、大一は現れた人物に驚きを隠せなかった。

 

『アリッサ、どうしてお前が!?』

「…ん?あんた、そんな見た目だったっけ?私と別れた後にいろいろあったのかしら?」

 

 大一の疑問にまったく答えず、アリッサは自分の疑問を考えながら彼にちらりと目を向ける。だがそこまで興味を惹かれるものでも無かったらしく、すぐにバーナとモックへと視線を戻した。

 一方で相対する姉弟はアリッサの突然の登場に少し意外そうな表情をしただけであり、バーナが非難するような声で話しかけた。

 

「誰かと思ったらアリッサかよ…。何しに来た?」

「ちょっと片付けにね。『無角』はどこ?」

「なんだいきなり。一番の新入りがあたしらの勧誘を断っただけでなく、上から目線で命令か?」

 

 2人の女性の間にバチバチと火花が散りそうな空気が組み立てられる中、モックが彼女たちをたしなめる。

 

「姉さん、落ち着いて。言い争っても意味がないだろ?

 アリッサ、キミはリーダーの仲間の勧誘を断ったことを別に否定はしない。しかしあの時、外のことには干渉しないと約束していたはずだ。なぜ彼らの肩入れをする?」

「うるさいわよ、モック。私は自分の残したことにケジメをつけるだけ。別にこいつらの仲間になったつもりは無いわ」

「彼の身体に魔法陣が仕掛けられていたみたいだけど?」

「ええ、偶然出会ったこの男に『異界の魔力』があるのに気づいたから、同じ魔力を持つあんた達と冥界で会ったらわかるようにしておいただけよ」

 

 あっけらかんと答えるアリッサの話に大一は縫合された腕を撫でる。内容は半分以上わからないことであったが、彼女が治療した際に自分にこの場に転移できるような仕込みをしていたのは理解できた。しかしディオーグに気づかれずに仕組んでいたことを思うと、彼女も敵と同様に侮れない底知れなさを感じられる。

 そんな悩む大一をよそに、アリッサはバーナとモックに敵意を向ける。

 

「さて目的はさっさと済ませたい質なの。だからあんた達をボコボコにして全部吐いてもらうわ」

 

 アリッサが指を鳴らすと彼女の両側に展開された魔法陣から鎧を身にまとった骸骨や人形が十数体も現れる。手には西洋の刀剣類や盾、古い拳銃など武器を携えている。

 

「面白い。小童のお前があたしに反逆するなんざ数万年早いことを教えてやるよ」

「あら、自信だけはあるわね」

 

 パチンと指を鳴らすと2体の骸骨が高速でバーナに接近して剣を振り下ろそうとする。すぐに両腕にマグマを纏わせるバーナであったが、対抗する前にモックが間に入って振り下ろされた剣を両腕で防いだ。いや実際のところは両方の前腕から三角形の突起が出ており、それで剣を防いだのであった。モックは剣をはじくと、そのまま前腕の突起で骸骨の首をはねた。

 この介入にバーナは小さく舌打ちをする。

 

「モック、てめえ!邪魔するんじゃねえ!」

「言ってる場合じゃないだろ、姉さん。アリッサの兵力は厄介だ。僕もやるよ」

「どの道、2人とも相手するつもりだわ」

 

 再びアリッサが指を鳴らすと、先ほど首を斬られた骸骨が自分の頭を持って立ち上がる。これには大一は驚いたが、敵は気にせずにアリッサへと睨みを利かせていた。

 どうも頭が混乱する現状ではあったが、彼女の登場が大一にとって好転したのは間違いなかった。アリッサを援護しようと彼は一歩前に出るが、彼女はバーナ達から目を逸らさずに冷たく鋭い声色で言う。

 

「邪魔だから下がって」

「しかしあいつらは相当強い。ここは協力が必要なはずだ」

「勘違いしているみたいだけど、私は別に仲間じゃないって言ったでしょ。むしろ少しでも邪魔になろうものなら、まずはあんたから叩きのめすわよ」

 

 反論も許さない雰囲気に大一は怯む。崖の底を覗き込むような暗さ、肩にのしかかる岩のように重い責任感、泥のように引きずる後悔、それらが彼女の声の調子だけで手に取るようにわかるのだ。

 アリッサは少し憂い気に言葉を続ける。

 

「…私の問題なの。外のあんたの手を借りるわけにはいかない。あんたが大切な人のために向かった時のように、私にも相応の理由がある。だから邪魔しないで」

「…わかった」

 

 彼女の覚悟を目の当たりにした大一はそのまま後退を始める。これに対して、モックは隣にいる姉に話しかけた。

 

「どうする、姉さん?このまま逃がしたらユーグリットにいろいろ言われるよ」

「『お姉様』と呼べ。まあ、放っておけばいいさ。今からじゃ間に合わねえだろうし、作戦自体があいつの趣味だろう。むしろアリッサと戦う方があたしにとっては重要だ。さあ、死体大好きな変人研究者、楽しませてくれよ!」

「死霊術者(ネクロマンサー)と呼んで欲しいわね」

 

────────────────────────────────────────────

 

 一誠の感情はかなり忙しく、驚きの連続であった。サイラオーグの救援と匙の尽力でグレンデルを倒し、さらに小猫が仙術の応用と一誠の神器の宝玉を使って敵の魂を見事に封印することが出来た。

 大きな勝利に興奮する中、ソーナの指示で学校の周囲まで後退して皆に合流するが、そこに兄がいないのが不安になった。どうも敵の長距離攻撃を止めに行ったようだが、先ほどから連絡が取れないらしい。

 しかしこれに考えを馳せる間もなく、衝撃的なことが起こる。なんとアグレアスが巨大な転移魔法陣の光に当てられていたのだ。ヴァルブルガの話では、アグレアスを攻めること自体が建前であり、空中に浮かぶ島そのものを敵は奪おうとしていたのだ。どうやら集まった魔法使いたちの中に敵と内通している者がいたため、子どもたちを避難させるための転移魔法陣の発動直前にアグレアスへと狙いを変えさせたのだという。最終的にアグレアスは転移の光の中に消えていった。

 そして立て続けにこの驚きに匹敵するような、しかし一誠達にとっては好転するようなことが起こった。幾重にも張られていた大規模な結界が破られたのだ。ヒビが入りそこの綻びから結界が破壊されていったのだ。結界を破った閃光は校庭へと落ちて突き刺さっていた。それが最強の神滅具「黄昏の聖槍」であることを確認すると、一誠達は驚き、ヴァルブルガは呆れるように嘆息する。

 

「…まさか、ここでこんなことになろうとは。けれど、もう遅いですわん。わたくし、殲滅するのが大好きですのん。お疲れのようですけれど、もう少しわたくしと遊んでくださいましねーん♪」

 

 ヴァルブルガが指示するように傘を振り下ろすと、邪龍たちが一気に向かってくる。さらに彼女の紫炎の十字架が校舎の一部を吹き飛ばした。

 

「学校がっ!ダメェェェェッ!!」

 

 いつもの冷静さを欠いたソーナに、ヴァルブルガは醜悪な笑い声をあげる。片や目の前で夢を砕かれてショックを受け、片やそれを行うことで自身の邪悪な喜びを満たしている。非情な対比の光景であった。

 しかも彼女の神滅具の力は、悪魔に対して特効とも言えるほど強力な力を持っている。触れるだけで悪魔にとっては致命傷になりかねず、遠距離で攻めようものなら邪龍が妨害する。彼女の紫炎が学園を守るソーナとロスヴァイセに迫る中、それを防いだのはヴリトラの黒い炎を纏った匙であった。妨害に特化した彼の炎でも、聖遺物の炎は容赦なくその身を焦がしていく。

 

「逃げなさいッ!サジ、このままでは死んでしまいますっ!」

 

 ソーナが必死に叫ぶが、匙は従わずに必死に紫炎を抑え込もうとする。紫炎を全身に受けながら、彼は小さく胸の奥を吐露し始めた。

 

「…俺は兵藤になりたかったんだ。俺と同期の『兵士』で…エロすぎて、下品で、どうしようもなくスケベな奴だけどよ…いっつも一生懸命で、仲間のために、誰かのために、真っすぐに突っ込める男でさ…。どんなに鍛えてもあいつは俺を遥かに超えていくんだ。『ああ、俺はこいつを絶対に越えられないんだ』ってわかっちまった瞬間に…俺は…心底悔しかった。

 でも違ったんだ。兵藤には、兵藤のやりたいことがあって、それに無我夢中だったからこそ、あいつはいつでも自分を高めていけた。俺があいつを超えられないのは当たり前だったんだよ。俺は兵藤じゃないんだからさ。いろいろな人から学んで…やっと気づけたよ」

 

 自分の想いを確認するように匙は言葉を紡ぐ。彼の眼には戦意と決意が光り、紫炎を少しずつ押し返していった。

 

「俺は兵藤になれない。でも、俺にもやれることがある。俺は…『先生』になるっ!あの子たちに!これからあそこに通うであろう子供たちに教えてやるんだッ!そいつにしかできないことが必ずあるってことをッ!」

 

 匙の決意をヴァルブルガは非難するような笑いを上げるが、彼の横に黒い大蛇であるヴリトラが神器の深奥から戻ってきた。

 

『遅くなったな、我が分身よ。少し見ない間に、ずいぶんと成長したように見えるぞ』

「…ああ、いまなら行けそうだ。吹っ切れたからよ」

 

 互いのやり取りに呼応するように、彼らの身体を特殊なオーラが包み込む。一誠はこの現象を何度か見てきた。仲間でも敵でも己自身でも、神器持ちが更なる境地へと至れた合図でもあった。

 

「『禁手化ッッ!!』」

 

 匙とヴリトラが叫ぶと、漆黒の炎をたぎらせた黒い触手のようなものを備え付けた鎧を身に着ける。

 

『「罪科の獄炎龍王(マーレボルジェ・ヴリトラ・プロモーション)」。地獄の業火に等しい俺…いや俺たちの黒炎とあんたの聖なる紫炎、どちらが強いか、一丁勝負だッ!』

「おもしろいわ、おもしろいわねん!」

 

 新たな力と決意に勢いをつける匙は、ヴァルブルガを相手にタイマンで空中戦を始める。これを後押しするかのように、ドライグやファーブニルの意識も戻ってきた。さっそくアーシアがファーブニルを呼び出すが、相も変わらずその第一声は一般人には理解の範疇を超えた変態極まるものであった。

 

『こんにちは、ファーブニル3分クッキングにようこそ。今日のお料理は、「ディアボラ風アーシアたんのおパンティー揚げ」です』

 

 敵味方関係なく疑問符とツッコミが頭の中に抱いて動きが止まる中、彼は気にせずに材料の紹介に入る。それらをみじん切りにした後、アーシアから下着を貰い文字通りの「唐揚げ」にすると、材料と一緒に盛り付けて一口でそれを食べた。

 しっかりと咀嚼を続けた後に、彼は味わうかのように頷きながらたった一言感想を述べる。

 

『ありのままのキミでいてほしい』

 

 意味の不明さと最低さにおいて他に類を見ないほどの光景であったが、これに対して一部の量産型邪龍は涙を流しながら拍手をしていた。これが一誠をさらに混乱させる光景であったが、彼は思考を放棄してドライグに問う。

 

「それで、ドライグ。確認だけしたいんだが、歴代白龍皇の皆さんはできたのかよ?」

『…あ、ああ、ま、まあな…』

 

 歯切れが悪いドライグだが、彼の話では記録した映像があるとのことだ。一誠は目を閉じて神器の内部でその映像を見たのだが、たしかに歴代白龍皇の残留思念は敵意なく晴れやかな表情をしていた。

 しかし最悪なのは彼らが目覚めた素晴らしさは、尻とパンツであった。とりわけその一端を担ったのがファーブニルであり、彼のアーシアの下着への並々ならぬ想いが彼らの心を動かしていた。

 

『我らはこれをもって和解の宣言としよう』

『『『『『アーシアたんのおパンティー、くんかくんか』』』』』

 

 ド変態の最低な和解の末に、吸血鬼領地で一誠が目覚めた白龍皇の力は使えるようになったが、その場に居合わせたドライグは不本意と困惑に塗れていた。当然、彼の想いを否定できるものもいないだろうが。

 

「しかし、邪龍を止めるとは…二天龍と龍王たちは読めませんね」

 

 聞き覚えのある声と同時に、赤い閃光がソーナとロスヴァイセの下に降ってくる。それはソーナを吹き飛ばすと、ロスヴァイセを包み込み、同時に赤い鎧をまとったユーグリットが彼女を抱き寄せていた。

 

「ごきげんよう、『D×D』の皆さん。ロスヴァイセとあの島は我らクリフォトが活用させてもらいます。アグレアスの転移も済みましたし、この一帯の不穏さに気づいて冥界の軍が来てしまう前にとっととおいとまさせてもらいたいところですが、そうはさせてくれないでしょうね」

「あったりめぇだっ!ロスヴァイセさんを放しやがれっ!」

 

 一誠を筆頭に仲間達はユーグリットを包囲しようとするが、彼が指を鳴らすと我に返った邪龍たちが一斉に攻めてくる。他のメンバーが対応する中、ユーグリットに対して魔法の矢を撃ち込んだ者がいた。酷く疲弊した様子のゲンドゥルであった。

 

「孫を…返してもらいます!」

「下で私の仲間が暴れ回ったのでしょう?それの対応で酷くお疲れのご様子とお見受けいたします」

「ばあちゃんっ!やめてっ!力を使い果たしてもう動けないんでしょう!?」

「…黙っていなさい。お前を救うぐらいはできます!」

 

 ロスヴァイセの必死の訴えを聞いても、ゲンドゥルは攻撃を続けていく。しかし呆れるようにユーグリットは息を吐くと、攻撃をいなしながら転移魔法陣を展開させた。このまま逃げられる…そう思った一誠達であったがゲンドゥルが渾身の魔法の矢をぶつけると魔法陣があっという間に消滅する。

 

「…転移封じ。なかなか、こざかしいことをしてくれますね」

 

 忌々しさを前面に押し出して呟いた彼は龍の両翼を展開させて飛び上がる。

 

「行かせるかっ!」

 

 一誠とリアスがそれを追うように飛び上がるが、その瞬間に一誠がどこからともなく現れた何者かに蹴り飛ばされた。

 

「イッセー!」

「よそ見は感心しないな。現魔王の妹よ」

 

 現れた男性は手元に魔法陣を展開すると、そこから蛇のように動く鎖を生みだしてリアスを捕えるとそのまま地面にたたきつけた。

 叩き落とされた2人が見上げると、品のよさそうな紳士が宙に浮かぶ魔法陣の上に立っていた。

 

「すまないな、ユーグリット。少々遅れた」

「いえ、ベストタイミングですよ。ブルード、ヴァルブルガと共にあとはお願いしますね。伝説のあなたの実力、たっぷりと振るって頂きたい」

「若い者にはわからないだろうが、ベストは尽くそう」

 

 スーツの襟を正すブルードに、ユーグリットは満足そうに頷くとそのまま飛び去っていく。

 

「ばあちゃん!リアスさん!イッセーくん!」

 

 ロスヴァイセが悲愴な叫びを上げるが、追おうにも目の前の男の放つ圧倒的なプレッシャーがそれを許さなかった。

 

「早く助けなければ…!」

「おっと行けると思うなよ、紳士淑女の諸君。格の違いを見せてあげよう」

 

 肌を切るような冷たい声のブルードに、一誠達は焦る想いを抱きながら魔力を溜めるのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 ロスヴァイセは悔しかった。仲間達に迷惑をかけないと決心していたはずなのに、これほどあっさりと連れていかれてしまっていることに。同時に心が潰れるような想いを抱いた。学園を最後まで守り切れず敵にさらわれて、あまつさえ去る寸前に祖母や大切な仲間達を結果的に傷つけることになってしまった。

 その激流のように流れる感情を表すかのように、全身に力が入る。一瞬、自分の舌を噛み切るなりして、このまま敵の手に落ちることを避けようとすら思った。

 だがその踏ん切りはつかなかった。最後まで自分を助けようとしてくれた祖母と仲間達、魔法を学ぶことに意欲的で慕ってくれる子どもたち…その顔を思いだすとどうしてもその残酷な選択肢を取れなかった。

 ユーグリットに連れられていく中、ひとりの男性との会話を思いだす。頼って欲しいと言ってくれた彼の言葉、もし心から頼っていたらこの結果を覆すことが出来たのだろうか。後悔と悲しみが蝕み、目に涙が溜まっていく。

 

「…このままだと追いつかれますね。迎え撃つか」

 

 空を飛ぶユーグリットは誰に言うでもなく呟く。一瞬、なんのことか不思議に思うロスヴァイセであったが、間もなく彼はスピードを落としゆっくりと降りていった。苦しみの感情に息を荒げるロスヴァイセは、不思議そうに彼を見た。鎧越しでも警戒するのが手に取るようにわかる。

 数分もしないうちにひとりの男性が翼を広げて飛んでくる。着ていたシャツにはところどころ焦げた跡があり、ロスヴァイセと別れた頃よりは消耗しているような印象があったが、兵藤大一が降り立った。

 

「見つけたぞ、ユーグリット」

「本当に不愉快ですよ、あなたという男は」

 




ということで、マッチアップ決定です。オリ主はどこまで食い下がれるか。
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