D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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今回から3巻に突入します。
一誠ほど直情的でなく面倒くさい性格のため、この状況はオリ主が一番肩見せまいと思います。


月光校舎のエクスカリバー
第16話 後輩の悩み


 兵藤大一の朝は早い。眠れない夜を過ごした彼は、誰よりも早く起きだして今日も日課のトレーニングや悪魔の教本を読みふけることに時間を費やす。先日のレーティングゲームで敗北を期したことで彼は変わろうとしていた。主の力になれなかった彼の苦悩は想像を絶するものであった。特に弟である一誠がどんどん強くなっていくことに後れを取らないためにも、尚のこと努力することを課していた。その気持ちもあってか、この早朝の時間はひとりでこなしていた。

 だが彼がひとりで過ごすことにはもうひとつ理由があった。その時間は毎日必ず来て、大きな心労を強いてくる…。

 

「いただきます」

 

 朝食の時間、この家に住む全員が必ず顔を合わせるこの時間こそ、大一にとってはもっとも手厳しいものであった。

 

「いやー、リアスさんは和食まで作るのが上手なんだね!」

「ありがとうございます、お父様。日本で暮らすのも長いものですから、一通りの調理は覚えましたわ。

 イッセー、おかわりはたくさんあるから落ち着いて食べなさい」

「は、はい、部長…」

 

 父はリアスの作る朝食に感動し、当の彼女は礼を言いながら親同様にその味に感動する弟をたしなめる。母も朝食作りを手伝ってもらったことにか、それともこんなに美人の女友達が一誠にいることが嬉しいのか、穏やかな表情であった。アーシアだけはむくれた面をしていたが、それがリアスへの嫉妬に起因しているものであることを大一はよく知っている。

 平和なこの一幕であったが、大一としては各々の感情を理解しているが故の桃色空気に当てられていることに、一種の疎外感と干渉を避けたい感情が入り混じったややこしい気持ちになった。出来ることなら一誠以上に食事を掻きこんでこの場を離れたいところだが、それがこの場を乱すことに繋がるのも目に見えている。

 ちまちまと箸を進める大一に、母が声をかける。

 

「大一、食が細いわね。どうかしたの?」

「なんでもないよ、母さん」

「あれだな、早起きしすぎて腹がすくピークが過ぎてしまったやつだろう」

 

 勝手に納得する父に、大一は肯定も否定もせずに箸を進めるのであった。

 

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 そんな朝を過ごした日の放課後、オカルト研究部のメンバーは兵藤家に集まっていた。部室が定例の掃除で使えないため、ここで会議をする予定になった。

 

「で、こっちが小学生の時のイッセーなのよ!」

「あらあら、全裸で海に」

「ちょっと朱乃さん!って、母さんも見せんなよ!」

 

 実際のところは母親が持ち込んだ兵藤兄弟のアルバム展覧会が実施された。見知った相手の思い出写真というのはそれだけで話題を発展させるものであった。

 小猫がペラペラとページをめくりながらつぶやく。

 

「…先輩の写真は少ないですね」

「どうも写真が苦手で撮りたがらなかったんだよな」

「兄貴はシャイだったからな…。本ばっかり読んでいたイメージだぜ」

「それがいつの間にか、体を鍛える方が多くなったわね。中学卒業前あたりだったかしら。受験勉強の息抜きで始めたトレーニングがここまでなるとはね」

「えっ…まあ、そうだな」

 

 母の発言に言葉を濁すような反応を見せる大一に眷属全員が納得したような表情を見せる。その時期こそ、彼が悪魔になった時期で彼が大きく変化した時期であるのだが、当然それを知る由もない母は自分を納得させるように頷くだけであった。

 

「…でも面白いものもありますね。大一先輩の顔がクリームまみれのやつとか」

「それは大一がクリスマスケーキにがっついた時ね。今はそんなに食べないけど、甘いもの大好きだったのよ」

(今は栄養と精神安定な意味で欲しくなること、多いけどな!)

 

 小猫が面白げにページをめくる一方で、リアスとアーシアは小さい頃の一誠に気持ちを高揚させたり、一誠はこれ以上見せまいと四苦八苦したりともはや会議どころでは無いのは明白であった。

 そんな中、祐斗がひとつの写真に目をつける。一誠と大一が覗き込んでみると、そこには幼稚園児の頃の一誠と彼が昔一緒に遊んでいた友達、そしてその父親が映っていた。祐斗はその父親の持っていた模造品と思われる剣を指さして問う。その声は震えつつも、真剣味をおびていた。

 

「これ、見覚えは?」

「うーん、いや、何分ガキの頃すぎて覚えてないけどな…兄貴は?」

「この子、近所に住んでいた子だろ?俺、お前ほど仲良かったわけじゃないし家にも行ったことないんだから、わからねえよ」

「こんなことがあるんだね。思いもかけない場所で見かけるなんて…これは聖剣だよ」

 

 その憎悪に満たされた祐斗の目は、忘れようにも忘れられないほど印象的なものであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 数日後の放課後、オカルト研究部は野球の練習をしていた。名前とはかけ離れた活動ではあるが、これは来週に控えている駒王学園球技大会であった。この球技大会は毎年恒例で、野球以外にもバスケやテニスなど一辺倒の球技を皆で行う。ただ組み合わせが当日発表のため、本気で勝ちたいなら全ての種目に手をつける必要があった。今日は野球の練習をしており、ちょうどリアスが打ったボールをアーシアが取りに行くところであった。

 元々、悪魔である彼らが体力勝負において人間相手に負けるということはあり得ないのだが、リアスがこの手のイベントには喜々として参加する性格のため、このように練習には力が入っていた。同時にライザーに敗北してから、目に見えて勝敗にこだわるようになったため、その気合いは人一倍であった。

 

「次、祐斗!行くわ!」

 

 リアスの掛け声とともにノックが打たれる。気合いの入った一球ではあったが、祐斗の身体能力では問題ないレベルだ。

 しかし祐斗はぼんやりとした様子で動かず、なんとボールが頭に当たったのだ。これには全員が驚きを隠せなかった。

 

「木場!シャキッとしろよ!」

「…あ、すみません。ボーッとしていました」

「祐斗、どうしたの?最近、ボケっとしてて、あなたらしくないわよ?」

「すみません」

 

 祐斗は素直に謝るも、それすらもどこか気の抜けた雰囲気があった。

 

────────────────────────────────────────────

 

(聖剣ねえ…)

 

 球技大会の練習後、ひとり旧校舎裏手の人目のつかない場所で連絡用の魔法陣を展開させる。そこには炎駒の半透明の顔が映し出されていた。大一が炎駒に事の次第を説明すると、彼は考え込むように目を細める。

 

『ふーむ、奇怪な…。それで大一殿、知り合いの家にあったそれは本当に聖剣なのですかな?』

「わかりませんよ。写真だけ見ればただの模造品としか思いませんし、俺だって見たことありませんから判断しようがありません。だいたいその子がいたのってもう10年以上前の話ですよ。仮に本物だとしてもどうこう出来るものじゃないんです」

 

 祐斗が悩む原因について、大一は心当たりがあった。詳しい事情までは知らないが、彼が聖剣に関することで苦しみ、森で倒れていたところをリアスに拾われたという経緯を知っていたからだ。

 そこで彼のために出来ることを考えた結果、炎駒に連絡を取っていた。

 

『それで私に何を望みますかな?貴殿のことです。まさかどうにもできないことを愚痴るためだけに連絡を寄こしたわけでは無いでしょう』

「ええ、もちろんです。それであの…なんとか沖田様と連絡を取ることは出来ませんか?」

 

 炎駒と同じルシファー眷属である『騎士』の沖田総司は祐斗の師匠であった。かつて新選組で一番隊を率いていた彼は、人間からサーゼクスのてによって転生悪魔となっていた。そんな彼によって剣術を叩きこまれた祐斗は、リアス以上に師匠に心を開いていることも知っている。大一は会ったことが無いものの、かつて一度だけ祐斗が自身の師匠のことを話したのを聞いた時にその信頼を目の当たりにした。

 おそらく今の祐斗としては聖剣を打ち砕くことこそが納得できるものなのかもしれないが、現状それが出来る見込みはない。ならば、せめてもっとも心を開いた相手と話せる機会があればと思って、同じルシファー眷属の炎駒に連絡を取ったのだ。

 炎駒も大一の意図には気づいたようだが、申し訳なさそうな表情で対応する。

 

『もちろん、私としても姫様の眷属の悩みについて全力で支援はしたいところです。しかし総司殿は現在別任務で各地を転々としております。…ここだけの話ですが、極秘の調査のようなもののため、他の悪魔との連絡は取れないのです』

「…そうですか」

『申し訳ありません。力及ばずのところで』

「炎駒さんが謝ることじゃないですよ!俺の方こそすいません。無理に時間を取っていただいて」

『これくらいであれば、お安い御用です。ところで姫の様子はいかがですかな?』

「…元気ですよ。ちょっと勢いがありすぎる気もしますが。それと、あー…」

 

 炎駒の問いに、大一の頭にはここ数日の自宅での居心地の悪さが頭をよぎる。さすがに主の恋心を話すのは、彼としても倫理的にはばかられた。

 

『どうかしましたかな?』

「いえいえ、ちょっと勝負ごとに敏感になっていると言いたかっただけです。もうすぐ球技大会なので」

『ふむ…ライザー殿とのレーティングゲームが尾を引いているのでしょうな』

「まあ、我々全員が似たり寄ったりなものですけどね」

『あまり無理だけはしないで頂きたいものです。おっとそろそろ行かねば…では、大一殿。また何かあったら連絡を』

「わかりました。お時間いただきありがとうございます」

 

 大一は魔法陣を消すと、困ったように頭を掻く。連絡を終えたことを少し後悔した。というのも、リアスの婚約破棄の計画を彼が知っていたかについてを聞きたかったのだ。もし知っていたのならば、どうして自分には…。すぐに余計なことを考えそうになった大一は、頭を大きく横に振る。今は後輩のために何が出来るかを考える方が先決であった。

 




炎駒からお目付け役を頼まれているオリ主の立場上、全員が悪魔になった経緯はざっくりながら知っています。
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