D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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関係性が複雑化してきましたね…。


第162話 進める企画

 終業式が終わった日、兵藤家の上階にあるVIPチームにオカルト研究部のメンバーは集まっていた。仕事を終えたアザゼルとロスヴァイセに加え、さらにグリゼルダまで来ており、全員が集まったことを確認したイリナが目的を口にする。

 

「そのようなわけで、クリスマスを通じて、この駒王町の皆さんにプレゼントを配るの!」

 

 今回、『D×D』を中心としたクリスマスの企画が進められていた。その内容が、イリナの話した駒王町に住む人々にクリスマスプレゼントを配布するというものであった。3大勢力が手を取り合ったこの重要な地は、すでに拠点のひとつとしても機能している。それ以前からもあらゆる件でこの町が危機にさらされたことは少なくなく、そのお詫びも兼ねたものであった。プレゼントは子どもから大人まで多種多様なものであるが、それぞれの陣営のトップもこの企画には好意的で全面的に協力をしていた。

 サンタ服を着て回るという力の入れようであるが、これまでの町への迷惑を踏まえれば足りないくらいではある。

 

「うふふ、こちらがサンタのコスチュームですわ」

「サンタクロースになれるなんて光栄だね」

「でも、サンタさんのお仕事を奪ってしまいそうで気も引けるわ。これって営業妨害よね」

「いやいや、だいたいサンタクロースなんているわけ…」

 

 朱乃がゼノヴィアとイリナに女性用のサンタ服の案を見せながら話していると、一誠がツッコミを入れかけるが、これに対してゼノヴィアとイリナのコンビが不思議そうな反応をする。

 

「「?いるけど?」」

「…え?いるの?」

「ええ、いちおうね。まあ、その話はまた別の案件になってしまいそうだから、説明は省くわ」

 

 リアスの言葉に、一誠は衝撃を受ける。この17年、1度もその存在に会えなかったことにはショックを感じ、兄にもその話題を振る。

 

「兄貴、知っていたか!?」

「存在はまあ…ただ見たことは無いな」

「…サンタさんはエロい子のもとにこなかったんですね」

「そうですね!エロい子どものところになんて来ませんよね!小学生の頃からエッチなDVDやエロ本を欲しがってすみませんでしたぁぁっ!」

 

 小猫の痛烈なツッコミに、大声で奇妙な謝罪をする一誠を苦笑い気味に大一は見る。そんな彼の頭の中では闘争心と興味をむき出しにしたディオーグとそれに反応するシャドウの声が響く。

 

(そのサンタクロースってのは?強いのか?)

『キリストの弟子だったかが貧しいガキどもに金貨配っていたのが、いつの間にかプレゼンを配るのだったか…まあ、戦うような奴じゃないね』

(なんだ、面白くもねえ。ということは、クリスマスってのも集まって戦うもんじゃねえのか。てっきり血で血を洗うような戦いで、区切りをつけるものかと)

『違うね。まあ、僕としては祝い事になっているのが不快だけど』

 

 クリスマスを戦いの行事としか捉えていない龍と、聖なる出来事には敵対心を抱く神器の会話は、大一のこれまでのクリスマス概念を覆しそうなものだが、さすがに慣れてきたため苦笑い気味になるだけで済んだ。もっとも悪魔としてもクリスマスは契約関連で忙しいことが多いため、一般的な学生のクリスマス的な観点とは違うのだが。

 

(クリスマスねえ…)

 

 大一はちらりと一誠と話す祐斗を見る。なぜか祐斗がケーキを作って一誠に食べて欲しい旨を伝え、彼の方は椿姫を誘うことを提案していた。一誠としては、祐斗と椿姫がくっつくことを画策しているようだ。

 別に彼らに倣うつもりは無いが、大一も朱乃のことを考えていた。高校生最後のクリスマスという肩書きが彼を魅了する。さすがに一緒にゆっくり過ごすというのは難しいだろうが、何らかの形で彼女と楽しみたいと考え、ライザーへの相談を決意した瞬間であった。

 もろもろと忙しくなりそうな状態であったが、それは彼らだけではない。シトリー眷属もアウロス学園の修繕に心血を注いでいた。そのためこの企画にはかなりギリギリの参加になる予定であった。

 そんなアウロス学園の事件は大々的に報道されており、冥界でもかなりの反響を呼んでいた。若手悪魔たちの奮戦は高い評価を獲得していたが、その一方でアグレアスを奪われたことの批判もつきまとう。

 しかしこの事件で敵の大戦力であるユーグリットやグレンデルを封じたのは大きいだろう。特にユーグリットを捕えたのは大きく、これによる情報やルシファー眷属が動きやすくなったのは大きかった。

 現在、彼の尋問は姉のグレイフィアが行っている。彼からの直々の指名であったらしい。リアスの話では相当苛烈な尋問を行っているようだが、ユーグリットはそれすらも楽しんでいる節があったようだ。大一としては、やはり彼は捕らわれたままに思えてあまり良い感情を持てなかった。

 

「グレイフィアにぽつぽつと話し始めたという情報では、クリフォトの隠れ家がいくつもあるそうでな。すでにそこへ各勢力、エージェントを送り込んでいる。もうそろそろ本格的に奇襲が始まるだろうな」

 

 アザゼルの話では、情報から割り出されたクリフォトの隠れ家にそれぞれの勢力が奇襲を仕掛ける予定とのことだ。もっとも主力勢はアグレアスにいる可能性が高いため、少々戦力を削る程度が関の山だろうが。未だに姿を捕捉できないアグレアス、研究者として名高いアジュカを筆頭にアザゼルなども推測を寄せるものの、どれも確信には至れなかった。

 話に区切りがついたところで、グリゼルダが時計を確認して全員に声をかける。

 

「まずはこのあと、一度皆さんを天界へお連れ致します。そこで、企画中の中身───プレゼントの確認と、ミカエル様から年を明ける前のごあいさつを頂ける予定です」

 

 彼女の言葉に、一誠を筆頭としたオカルト研究部は色めき立つ。天界…天使たちが住むその場所は悪魔や堕天使の住む冥界とは真逆の場所であった。かつての敵対関係では、悪魔が天界に行くなどありえないことであったため、この反応も当然だろう。

 

「んじゃ、ミカエルによろしくな」

「アザゼル先生は天界行かないんですか?」

「今更戻れると思うか?ま、昔の研究施設を始末させてもらえるなら、行ってもいいけどよ。企画には協力するんで、あとのことは若いお前らに任せる」

 

 アザゼルがひらひらと手を振るのと同時に、大一も仲間達に発言する。

 

「ついでに言うと、俺も行かないぞ」

「兄貴まで!?それってどうして?」

「別件の仕事があって、京都に向かわなければいけないんだ。大丈夫、そこまで長くかからないはずだから」

 

 朱乃達との不満な表情が視界に入った大一は付け加えるように答える。ルシファー眷属の仕事でもあるため、それでも先日の一件から申し訳なさは感じられた。ただ今回の場合、シャドウの件もあるため天界に行くことに精神的なブレーキがかかっていたことは否定できなかった。

 

「ま、こればかりは仕方ないわね。じゃあ、地下の魔法陣から天界に行くわよ!」

 

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 仲間達が天界に向かったのを見送ってから、大一は京都へと転移した。修学旅行などでは新幹線を使って往来したのを思えば、京都の妖怪と繋がったおかげで移動も遥かに楽であった。

 今回の出向いた目的は零から「異界の地」について聞くことであった。あらゆる勢力の繋がりと道理から外れた術を知る彼女なら、何か知ることを期待してサーゼクスと炎駒から任されたものであった。

 現在、大一は土産の串団子を大量に買い込んだ後、京都駅付近に迎えが来るまで、その店で時間を潰していた。零は八坂のもとに出向いているため、そこで合流する予定になっており、京都駅の近くで迎えが来ることになっていた。

 

「この餡子もいいし、みたらしも最高。まだまだいけちゃう♪」

「…本当になんでお前がいるんだか」

 

 お茶をすすりながら、大一は対面に座って団子を頬張る黒歌を見る。さすがにいつもの着物姿ではなく、暖かそうなセーターとロングスカートを身に着けており可愛さと綺麗が同居している姿であった。その服に身を包まれた細い身体のどこに入っているのかと思うほど、すでに大量の団子を食べており、今もなお彼女の動かす手は止まらなかった。

 舌鼓をうつ彼女は疲れた表情の大一とは反対に笑顔で答える。

 

「アザゼルに頼まれて、妖怪にも詳しい私が一緒に行くことになったからね。ヴァ―リも『異界の地』について興味あるみたいだし」

「俺は京都に来るまで知らなかったぞ…」

「だって話していないもの。あっ、白音たちにバレたらヤバいとか思っている?」

「ほっとけ」

「にゃははは、図星かにゃ♪」

 

 愉快そうに笑う黒歌に、大一は渋い表情をする。家に戻ってから朱乃や小猫に何を言われるか心配になる発言であり、実際それが起こるであろうことは容易に想像できた。

 

「あと私も興味あるしね」

「そういえば、ヴァ―リチームはいろいろな場所を冒険していたんだってな」

「『異界の地』については、場所の特定すら出来なかったし、特別な噂も聞かないから後回しにしていたんだけど、最近で気になることも増えてきたからね。まあ、私の場合は噂の京都妖怪も気になるのよね」

「零さんは確かに独特な妖怪だが…」

「裏ではそれなりに名の知れた奴だからね。実力においては九尾の狐ほどではないけど、各地に広がる人脈と妖怪でありながら人間に仕込まれた術の数々、道理を外れた研究、面白い点はいくらでもあるにゃ♪」

 

 黒歌は楽しそうに答えると、冷めたお茶を飲んで再び団子に手を付け始める。動作ひとつが好奇心と色気に満ちた印象を抱かせ、どこか引き込まれるような魅力に溢れていた。

 

「ヴァ―リチームは皆、好奇心に満ちているんだな」

「そうそう、もっと褒めてもいいにゃ♪まあ、でもヴァ―リには敵わないわね。あんたにもまた興味を向けていたわ」

「俺に?」

「だってユーグリットを倒したんでしょ。それでちょっと嬉しそうにしていたわよ」

「だとしたら、過大評価だな。あれはギリギリの戦いだった。まあ、以前よりは変わったと思うが…」

 

 濁すような言い方で大一は答える。以前、京都に赴いたのは彼女がディオーグを知っているかを期待した炎駒の考えであった。今回は大一の繋がった魔力について見てもらうために、再び直接会うことにしていた。もっとも彼女が重要な話ほど直接会うことにこだわっているため、連絡用魔法陣など使えば機嫌を損なうことも目に見えていたのも理由であったが。

 

「しかしあいつが実力方面で興味を持つのなんて、一誠くらいだと思っていた」

「ヴァ―リは強くなりそうな相手には基本的に興味を持つわ。特にドラゴン関連ね。だからこそ、あんたも気にしているんでしょ」

「嬉しくないな…」

「強くなることに貪欲なのよね。この前、赤龍帝ちんになんか色々聞いていたんでしょ?」

 

 黒歌の問いに、大一は眉をわずかに潜めただけで分からないと首を横に振る。実際のところは、ヴァ―リが一誠に性的興奮について聞いていたのを彼は知っていた。なんでもアザゼルから、さらに強くなりたいなら一誠を参考にすることを勧められたようだ。ご丁寧に「乳力」を例に挙げていたため、間違いなくスケベ根性を見習うように勧められたのだろう。二点龍の2人でエロDVDを鑑賞した際の、ヴァ―リのピントの合わない感想に苦労したことを、弟の愚痴として彼は聞いていた。

 しかしそれを口に出すのは、さすがにはばかられる。結局、彼は知らないふりを続けることを選択した。

 

「…そろそろ行くか」

 

 大一は腕時計を確認すると、黒歌が少し不満げな表情になる。

 

「もうそんな時間?締めのお汁粉、頼んでないのに~」

「今度にしろ」

「せっかく来たのに…まあ、仕方ないにゃ。ところでお会計なんだけど」

「…まさか財布ないとか言わないよな?」

「さすがにあるけど、ほとんど手持ちがないにゃ。ほら」

 

 黒歌はどこからともなく取り出した財布には少量の小銭しかなかった。ひとりぶんの団子とお茶ならともかく彼女が食べた量には全然足りなかった。

 

「勘弁してくれよ…貸しひとつだぞ」

「え~、白音をあんなにダイナマイトボディにしたのは私なんだから、これくらい奢ってよ」

「あれは小猫の努力の賜物でもあるだろうが。…まあ、わかったよ。お前のおかげで、小猫が強くなったのも間違いではないからな。ここは奢るよ」

 

 大一は自分の財布から支払いを済ませる。一誠ほどではないが、ルシファー眷属となって彼もほどほどに給料を貰っていた。大一としては申し訳なさで断ろうとしたが、サーゼクスの律義さとグレイフィアの厳格さがそれを許さなかった。

 店を出ると黒歌はいたずらっぽい笑顔を向けて、大一に言う。

 

「ありがとう、お兄ちゃん♪」

「だからその呼び方をやめろ」

「じゃあ、ダーリンとかにする?せっかくだから、おっぱいでサービスしてあげてもいいにゃん♪それともヴァ―リみたいにお尻派だった?」

「お前、ちょっとは恥じらいを持ってくれないかな。思うんだけど、そういうことばかりだと本気にしてもらえないぞ」

「いたずら野良猫にはこれくらいがちょうどいいのよ♪」

 

 黒歌の態度に、大一は小さくため息をつく。彼女の魅惑的でありながら掴めない雰囲気は大きな強みなのだろう。しかし同時に不安定さも感じられた。妹の小猫が特別な相手を見つけたように、彼女にもそういった人物が現れるのだろうか。

 余計なお世話に気づいた大一はその考えを振り払うように頭を振ると、彼女と共に約束の場所まで歩を進めるのであった。

 




珍しい兄姉コンビとなりました。
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