D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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散々引っ掻き回してきた設定の説明が少し入ります。


第163話 不得要領

 大一と黒歌は京都の妖怪と合流すると案内されるまま、本拠地である裏の都に足を踏み入れていた。大一もディオーグもこの地に足を踏み入れたのは2度目であるため特別大きな反応はせず、黒歌はいつの間にかいつもの着物姿に身を包んで面白そうに歩いていく。唯一、シャドウだけは周囲を物珍しそうに大一の肩から飛び出して見回していた。

 

『日本にはあまり来たことなかったから珍しいな。特にこんなに妖怪がいる場所なんて。外国の奴らとまた風体が違っていて面白い』

「ほどほどにしておけよ。これから京都妖怪の大将に会うんだから」

「むっ?赤龍帝の兄ではないか」

 

 屋敷まで案内された大一に気づいた巫女服の少女が近づいてくる。八坂の娘の九重であった。

 

「これは九重様、お久しぶりです」

「うむ、また会えて嬉しいぞ。今日は赤龍帝は一緒ではないのか?」

「残念ながら我々だけです」

「そうか…いつでも遊びに来て良いことを伝えておいてくれ」

 

 顔を赤らめながら話す九重に大一は苦笑い気味で頷く。ここでも弟に想いを寄せる相手を目の当たりにするのは、普段の生活を知っていると胸焼けするような奇妙な感覚を抱いた。

 一方で黒歌は面白そうにニヤニヤしながら大一に耳打ちする。

 

「モテるねぇ、赤龍帝ちん」

「はいはい、そうだな」

「ふむ、よく来た」

 

 大一が軽く流していると、奥から京都妖怪の大将にして九重の母親である八坂が現れた。相変わらず突出された色気を放っている彼女に、大一は頭を下げる。

 

「八坂様、お久しぶりです。サーゼクス様からの伝聞が───」

「よいよい、話はすでに聞いておる。ところで今日は赤龍帝は来ておらぬのか?」

「まったく同じことを九重様にも言われましたよ…」

「にゃはは、血は争えないって奴なのかね」

「やめてくれ、黒歌。あっ、これをどうぞ。手土産です」

「ありがたく貰おう。すでに零は来ておる。こっちじゃ」

 

 八坂は受け取った団子を部下の妖怪に渡すと、ついてくるように優雅に手招きをする。彼女の後を歩き、案内された和室には姿勢を崩して座る零の姿がいた。

 彼女は大一を一瞥すると、小さく鼻を鳴らす。

 

「久しぶりだな、炎駒の弟子。前以上に気味の悪い身体になっているな。鵺やキメラでも目指しているのか?」

「お久しぶりです、零様。そんなに自分の身体、おかしいですか?」

「意味不明な龍だけでもおかしいのに、奇妙な神器まで入ればそうもなるだろう。しかし…」

 

 零は言葉を切って、黒歌にちらりと視線を移す。明らかに嫌そうな彼女の表情に対して、黒歌は特別気にした様子なく愉快そうに手を振った。

 

「よくもまあ、テロリストを私の前に連れてきたものだ」

「彼女を含めて白龍皇のチームは『D×D』のメンバーですよ」

「きっちりケジメもつけてない奴に信用など」

「返す言葉はないわね。ま、別にどう思われてもいいけど」

 

 黒歌は小さく肩をすくめただけであったが、それに対して大一は困ったように鼻から息を吐く。はみ出し者を取りまとめる零であれば、黒歌にもそこまで露骨な態度を見せないと思っていたが、その期待は甘かったことを思い知らされた。紅葉がいれば少しはこの空気を和らげることも考えたが、残念ながら彼は別件でこの場にはいなかった。

 大一と黒歌はそのまま零の対面に座り、八坂も彼女の横に腰を下ろして話し始める。

 

「さて、冥界の魔王からすでに話は聞いている。クリフォトを倒すためにも、わらわ達も援助は惜しみなくするつもりじゃ。そうだろう、零?」

「…ここまで面倒ごとになればさすがに手は貸す。現にこちらからも人手は出しているからな」

「ありがとうございます、八坂様、零様」

 

 風格と威厳を纏った八坂と、不本意丸出しの零に対して、大一はぐっと頭を下げる。感情はさておき、この大きな問題に協力の手を差し伸べてくれることには感謝しかなかった。彼はそのままの流れで「異界の地」について、自分がたどり着いたこと、そこで出会ったアリッサという人物などについて説明した。

 

「『異界の地』か…わらわは名前しか知らん。ある程度の者であれば、この地について名前だけは知っているのが少なくはないからの」

「私も同様だ。気になる場所ではあるがな」

「そうですか…」

 

 八坂と零の答え方に、大一は静かに落胆する。特殊な術において妖怪という存在はかなり信頼できるものがあったため、情報を期待していた。解決の糸口が見えないことは不安を固められる想いであった。

 だが気持ちは表に出さず、大一はもうひとつの疑問に取りかかる。

 

「もうひとつお聞きします。これも『異界の地』に関係していることかもしれません。私はこれまで何度かクリフォトのメンバーと接触したのですが、その際に魔力が繋がったような奇妙な感覚がありました。私自身、その魔力は繋がらないと感じられないのですが、何か理由があると思うのです」

「ふむ…零、貴様も感知に優れておったの。どうじゃ?」

「私以外にも感知できそうな者はいるがね」

 

 ため息をつく零は、大一の隣に座る黒歌を見る。半ば挑戦的な視線を向けられて、黒歌は内心楽しんでいた。実力を計られている感覚、力を認められるような発言、わずかな敵意と緊張感、こういったことがちょっとした魅惑的スリルに感じるのであった。

 

「裏では名高い狐妖怪さんに認められて光栄にゃ♪たしかに大一の魔力って、最近になって掴みどころのない感覚があるのよね~」

「それ知っていて教えなかったのかよ…」

「そこまで気にしていなかったのよ。感知できるようになったのも最近だし。あと大一って赤龍帝ちんに劣らないほど、色々おかしいことになっちゃっているじゃない?未知の部分も多いから、私がわめくのも違うでしょ」

「今回はわめいてくれた方がありがたかったかな」

「まあまあ、過ぎたことにゃん♪」

 

 黒歌は元気づけるような力で大一の肩を軽く叩く。今さらであるが、掴みどころの無さで言えば彼女も大概に思えた。

 男が女に圧倒されているような光景に、零は面倒そうな表情を崩さずに話す。

 

「小僧とまったく同じ魔力を303年前に感知したことがある。その者とも戦った」

 

 零の発言に、部屋の空気が引き締まる。ここにきて初めて手がかりらしいものが期待できる状況に、大一は自然と胸が高鳴っていくのが感じられた。次の言葉を待つ部屋のメンバーに応えるように、零は話を続けた。

 

「まだ京都に腰を落ち着けていなかった私は全国を回っていた。北海道…当時は蝦夷か。そこで奇妙な蛇の妖怪と出会ってな。そいつと戦った際に同じ魔力を感知したのだ」

「その特徴というのはないでしょうか?なにか特別な感じとか…」

「さっき、その猫魈の悪魔が話した通りだ。掴みどころのない感覚、まるで煙のようなものだ」

 

 零の話に、大一は首をひねる思いであった。これまでの戦いの中で、そのような魔力の印象をまるで抱かなかったのだ。むしろモックに関してはかなり離れたところから攻撃してきたにもかかわらず、明確に方向などを感知できたため、彼女らにすぐに同意できなかった。

 大一は自らの考えを苦心しながら言葉にする。

 

「うーん…自分がクリフォトの相手と接敵した際はわずかでもハッキリした印象でした。こう…パズルがハマるような腑に落ちる感覚といいますか…磁石が引き寄せられるというか…」

 

 しどろもどろになりながら大一は話すが、言葉を紡ぐほど自信が無くなっていた。仲間内では感知に自信がある方だが、零は師匠の炎駒が認めるほどの相手で経験も圧倒的である。それを思えば、彼女の言葉の方が信頼できるのも当然であった。そもそも大一は繋がった時しか魔力を感知できておらず、零の話す魔力とは別物かもしれない。

 しかし大一の不安を切り捨てるように、零は思慮深い表情でつぶやく。

 

「…いや、むしろそれが特徴か?」

「どういうことです?」

「当時の私はその蛇の妖怪の魔力を不思議に思った。感知が本当に難しくてな、不意を突かれたのを今でも覚えている。一方で同じ魔力を持つ貴様はしっかりと感知している。思うに、この魔力は同種のものを持つ者と強く繋がるのではないか?」

 

 この仮説に、大一はこれまでの戦いを思い起こす。岩肌と同化して隠れていたギガンを感知できたこと、長距離にも関わらずモックの居場所をすぐに感知できたこと、接触した瞬間の力強い結びつき…様々な敵と戦っていたが、自分だけが素早く察知できたのは同じ魔力を持つものだけであった。元々の感知が難しく、慣れていないことを踏まえると、大一自身が普段は感知できないのも説明できる。

 同時に頭をよぎったこの魔力の厄介性を八坂が口にした。

 

「もしその推察が正しいのであれば、かなり厄介ではないか?敵はどこにでも潜り込み、裏工作や不意打ちもお手のものということになるじゃろう」 

「感知に秀でた者はどこにでもいる。まったく感知できないわけじゃないのだから、人員と質を上げればよい。というよりも、それ以外の具体案が思いつかないだけだが」

 

 その後もこの推察を主軸に話は進められたが、これ以上の対策案は出てこずに話し合いの場は終えることになった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 夕食も終わったであろう夜近く、転移魔法陣で戻ってきた大一の表情は渋く、それに対して黒歌が問う。

 

「まーた難しい顔しているにゃ。収穫あったのに、なにが不満?」

「その収穫でもっとわからないことが増えたからな」

 

 死の淵から生き残ってから何度か感じた繋がる魔力…おそらくこれがアリッサの話していた「異界の魔力」というものだろう。また以前にサーゼクスが話していたクリフォトの一部のメンバーの尻尾を掴めない話、これらを踏まえると零の推察は正しいものと思えた。

 同時に大一には疑念が湧いてくる。ディオーグが何も言及していないことであった。この魔力の繋がりをディオーグも気づいていたのに、彼の性格でまったく話を振ってこないのには違和感を抱いた。いよいよ話を聞く必要があると感じていたが、残念ながら彼は眠り込んでいた。

 困ったように頭を掻く大一はエレベーターに向かいながら呟く。

 

「とにかくサーゼクス様か炎駒さんに報告しなきゃな…そうだ、黒歌。アザゼルへの報告は頼んでいいか?」

「え~、面倒。あんたの方が出来るでしょ?」

「お前だってヴァ―リの方の伝手で話すだろ。そもそも今回はあの人に任されたのは、そっちなんだし」

「猫ってご褒美あった方がやる気出るのよ」

 

 誘うような目で話す黒歌を気にせずに、大一はネクタイを緩める。彼女の言葉をいちいち本気で取り上げていては、心労も計り知れなかった。

 

「仲間として頼むというだけじゃ不十分か?」

「おっと、あんたにしては珍しい発言ね。さっきの狐の妖怪の時もサラッとかばってくれたけど、そこまで警戒心なかったっけ?」

「俺だってそこまで頑固じゃないよ」

 

 瀕死の状態での決意、多くの戦いで敵にも複雑な思いがあるのを知ったこと、黒歌が小猫の成長に大きく関与していること、あらゆる事象が大一に対して強い成長を促していたのは間違いなかった。それは彼自身が知るところであり、黒歌も何度かその雰囲気を垣間見たような気持ちであった。

 

「…ま、ちょっとは磨きがかかったってやつかしら?でもせっかくだからご褒美は欲しいにゃん♪」

「そういうのは無茶振りだ」

 

 すっかり話し込んでいた大一達は、皆のいる場所を感知してVIPルームへと向かう。来客がいるのには気づいたが、あいさつもしない方がさすがに失礼だと思った彼はノックをしてから静かに入室する。

 

「失礼します。戻りました」

「おや?これは…大一くんじゃないか!」

 

 部屋に入っていの一番に声を上げたのは、牧師の服に身を包んだ栗色の髪をした男性であった。知らないはずなのにどこか見覚えのある風体の男性の明るい雰囲気に、大一は驚いて身体を震わせるが、相手は気にせずにハツラツとした笑顔で手を差し出す。

 

「いやあ、久しぶりですね」

「え、えっと…」

「おっと、たしかにイッセーくんよりも関わりは少なかったから当然の反応だ。イリナの父ですよ」

 

 その言葉に大一はようやく合点がいった。イリナに似た明るさと髪色、そして見覚えのある顔…紫藤トウジのことをようやく思いだした。

 彼はプロテスタントの牧師であり、支部の局長でもあった。エクソシストの経験もあり、天界、教会にとって重要な存在であった。

 今回、来たのは仕事があるとのことだが、例のクリスマス企画の発案者が彼であった。そのため企画の説明もかねて、久しぶりに兵藤家に赴いたと言う。夕方ごろに帰ってきた一誠達の話では、彼らの母とも懐かしの談笑しておりすっかり打ち解けていた。

 

「大一くんも今回の企画には参加してくれるんですよね?」

「ええ、微力ながらお手伝いさせていただきます」

「嬉しい限りだ。あっ、でも無理をしてはいけませんよ。ルシファー眷属なら仕事もあるだろう」

「知っているのですか?」

「ミカエル様から直々に聞きましたよ。イッセーくんも大一くんも悪魔になって、しかも2人とも素晴らしい活躍をしているとは…親交ある身としては嬉しい限りですよ。今後、イリナちゃんが義妹になってもよろしく!」

「…えっ?」

 

 耳を疑う発言がトウジの口から発せられるが、すぐに彼はアザゼルと話し込む。あまりの衝撃に彼はアザゼルへの報告がすっぽ抜けるが、よく見るとVIPルーム内にいるメンバーの様子もそれに劣らないほど奇妙であった。一誠はなにかメラメラと情熱に燃えており、イリナは恥ずかしそうに赤面する。アーシアやゼノヴィアはなぜか気合いに満ちており、リアスはぶつぶつと呟いていた。

 直前までなにがあったのか気になった大一は朱乃へと問う。

 

「トウジさんが来てから、なにがあったんだ?」

「いろいろとね。私はあなたの方に訊きたいところなんだけど。京都でお仕事と言っておきながら、実際は黒歌とデートだったのかしら?」

 

 まったく笑っていない笑顔のまま、朱乃は大一の耳を引っ張る。久しぶりの感覚であったが、できれば思いだしたくなかったこの痛みに彼は声を上げる。

 

「誤解だって!俺だって知らなかったんだ!あっ!アザゼルに報告しなきゃ!」

「ちゃんと説明するまで話すことは出来ませんわ」

「朱乃さんに賛成です。反省してください、先輩」

 

 小猫もむくれ顔で大一の足を踏みつける。これまた嫉妬の感情がこもっており、容赦の無さがダイレクトに伝わってくる。

 圧倒される大一を見ながら、黒歌は面白そうにいたずらっぽく舌を出す。

 

「いやー、大一とのデート楽しかったにゃん♪」

「お前も火に油を注がないでくれ!」

「大一?」「先輩?」

「や、やっぱり肉食的な方が好かれるんでしょうか…」

 

 怒りと嫉妬を抱く朱乃と小猫に大一は捕らわれ、その様子を黒歌は見世物を楽しむがごとく笑い、ロスヴァイセはイリナにも劣らないほど赤面しながら言葉を呟いていた。

 




例の子作り部屋の紹介の直後に合流したから、こんなことになった…いや、オリ主も悪いな、これ。
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