D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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オリ主、結局天界には行きません。一誠と違って、天界とは繋がりが全くできていませんね。


第167話 奇襲の連続

「ユーグリットから得た最新情報では、クロウ・クルワッハ、アジ・ダハーカ、アポプスがリゼヴィム相手に取引をしていることだが、また新しい情報が更新されたってわけだ」

 

 黒歌と話した翌日、大一はアザゼルと共にグリゴリへと足を運んでいた。前日は駒王町で起きた事件について話し込んでいたため、昨日のユーグリットの件について報告する必要があった。

 

「サザージュ…やっぱり聞いたことねえな。そいつがクーフーに成りすましていたと話したんだな?」

「ええ。その情報の裏はまだ取れていませんが、探る価値はあると思います」

「それには俺も同意する。ただ調べようがないのは厄介だな。ハーフ悪魔なんざ、探せばざらにいるし…」

「まずは曹操に当たってみるのが早いと思います。共に英雄派で戦っていたのですから、何かを知っている可能性もあるでしょう」

 

 現状、仲間のユーグリットですらその素性を詳しくわからない相手を調査するにあたり、なにか糸口を見込めるとすれば、やはり英雄派でリーダーをしていた曹操だろう。そもそもハーフとはいえ、悪魔の血が混じっている人物が英雄派にいたという事実が、余計にも疑問を強め、曹操への相談の必要性を強めるのであった。

 

「ヴァ―リしかり、曹操しかり、よくもまあ味方になったもんだ。どういう心境があったのか…」

「それぞれ思うことがあったんじゃないですか。特別な力もありますから、それに向き合うこともしたでしょうし」

「そんなものかねえ。…特別な力と言えば、お前に聞いておきたいことがあったんだ。『異界の魔力』についてだ」

 

 アザゼルの声の調子が緊迫感を醸し出す。彼にとってもこの話題はクリフォトに関わっているため、注視する必要があった。

 

「あれについては、前に報告したこと以上のことは何もわかっていませんよ。それともアザゼル先生の方で、なにか分かったのですか?」

「いや、分かったことはない。しかし推測ってのは言えるだろ。『異界の魔力』の特性を知って思ったんだが、あれは神器とか種族の特性とはまた違ったものじゃねえか?」

「いまいち分かりませんね」

「お前がいきなりその魔力を得たこと、同じ魔力を持っている奴らがまるで統一性が無いことを踏まえると、この魔力を得るにあたって俺としては『異界の地』に行くことがカギになると思うんだよ」

 

 アザゼルの考えに、大一は納得したように頷く。思い返せば、あの魔力の繋がりを初めて感じたのも、異界の地で助けられてからだ。同じく魔力を持つアリッサがあの地で過ごしていることも踏まえれば、彼の推測は筋が通っていると思われる。

 また異界の地自体に例の魔力が存在しているとすれば感知は難しく、元々の世間からの興味の薄さと併せて、長年発見されてこなかったことも説明はつく。

 

「クリフォトがそこに潜伏している可能性も…」

「もちろんあり得る。だからこそ、俺らは早くその地を発見しなければな」

 

 アグレアスほどではないにしろ、その不透明性と異質性からこの件に関しては蔑ろに出来ない。その感覚を肌でも理解している大一は、アザゼルの言葉に強く頷いた。

 

「しかし悪いな。今日もお前を引き留めてしまって」

「別に謝ることは無いでしょう。必要なことなんですから」

 

 傍から見れば、たしかにアザゼルが大一を引き留めているのは間違いなかった。この日、一誠達は天界に向かっており、改めて駒王町で起きた事件の当事者であるトウジから話を聞こうとしていた。そのため、今回も大一は仲間達とは別行動を取っていた。もっとも大一としてはルシファー眷属の立場やシャドウの心情もあるため、あまり天界には足を運ぶべきではないと考えていた。

 

「でもなあ、最近は仲間たちと過ごす時間も減っているんじゃねえか」

「否定はしませんが、こればかりはどうしようも…」

「バラキエル辺りが知れば、小言を言われるぞ」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべながら、アザゼルは話す。現在、副総督として多忙であるバラキエルは出払っていたが、娘のことを溺愛している彼が今の大一に会えば、文句のひとつどころか数千も言ってくるのは、容易に想像できた。

 

「やめてくださいよ、そういうの…いや、悪いのは自分ですけど」

「俺は丁寧に忠告してあげただけだぜ?イッセーほどじゃねえが、お前もなかなかモテているし、頑張らなきゃ泣きを見るぞ。聖夜を性夜にするくらいよ。なんだったら、俺がいろいろ教えてやろうか?」

「アザゼル先生、結婚していないじゃないですか」

「おいおい、この世は結婚が全てじゃねえぞ。むしろ堕天使は異性の扱いには慣れた奴らがほとんどだ。俺やシェムハザ、コカビエルですら女のハーレムを作ったのは1度や2度じゃないくらいだ。バラキエルだって元をたどれば、朱乃の母親に出会う前は女性への興味はすごかったんだぜ。まあ、堅物ゆえに付き合うのはひとりずつだったが」

 

 ゲラゲラと笑うアザゼルに大一が渋い表情を見せる中、いきなりひとりの堕天使が部屋の扉を開ける。その顔は焦りに満ちており、息を切らしながら叫ぶように話し始めた。

 

「アザゼル前総督!緊急事態です!」

「穏やかじゃねえな。どうした?」

「天界と人間界の扉が何者かによって閉じられました!」

 

────────────────────────────────────────────

 

 数分後、兵藤家に戻った大一は魔法陣部屋でアザゼルと共に一誠達と連絡を取っていた。天界には邪龍が現れたという報告まで上がっているため、今回の首謀者がクリフォトであるのは疑いようもなかった。

 侵入経路についても人間界から入っていないことがわかれば、他に可能性がある道は限られていた。

 

『辺獄と煉獄!』

 

 グリゼルダの言葉にアザゼルが頷く。天国や地獄とも別の場所で、特殊な事情を抱いたまま亡くなった信徒が身を清めて、天界へと入れる場所であった。教会では「ハデス」とも呼ばれているため、アザゼルとしては冥府の神であるハーデスの関係性も疑っているようであった。

 そこに天界側の方でひとりの天使の報告が入る。

 

『報告です!煉獄から第三天へ通じる扉が破壊されているとのことです!』

 

 もはやこれで決定したと考えても良いだろう。クリフォトは煉獄から天界へと進行することに成功したという事実に。

 併せて、さらにこの問題をややこしくするのが、邪龍アポプスが冥府に降り立ったという情報とユーグリットから得た一部の邪龍たちがリゼヴィムと取引しているという情報であった。邪龍たちの取り引きは、至極単純なもので「解放しても良い」というものであった。聖杯がある以上、邪龍たちは基本的に従わざるを得ないが、ある条件を呑むことで彼らは解放されているとアザゼルは考えていた。それは「神クラスの勢力と契約する」というものであった。アポプスが冥府に降り立ったのも、ハーデスと契約して天界への侵入経路を確保する為ではないかと推測される。

 アザゼルの考えを聞いた一誠は腑に落ちない様子で叫ぶ。

 

『じゃ、じゃあ、あれですか!?クリフォト的には「アポプスたちは解散した」とか「逃げ出した」とか理由つけて、勝手に神と契約したとでも言い訳を!?んで、ハーデスもハーデスで逃げ出した邪龍と契約しただけで、クリフォトには契約していないと!?んな言い訳、通じるわけがないでしょ!?あまりにも無茶苦茶だ!』

「…わかっている。悔しいが、いまはそれを追求している場合でもない。俺たちはこっちから、天界の門をどうにか開けようと思う。そちら側からも開門できるよう試みてくれ」

 

 アザゼルの指示に「御使い(ブレイブ・セイント)」は頷いて行動を開始する。

 早々に味方の援護を必要とするためにも開門は必須であったが、同時にすでに敵が侵入している以上は防衛も重要であった。それにあたり、敵の目的は気になることではある。天界はいくつかの階層に分かれているが、敵の侵入経路や戦力を踏まえると第三天前後の可能性が高かった。第二天のバベルの塔や第五天の研究施設が挙げられる中、アザゼルはグリゼルダに問う。

 

「…グリゼルダ、第三天にある生命の樹と第四天ことエデンの園にある知恵の樹はいまどうなっている?」

『どちらも樹自体は健在ですが、実は久しく成っていません。主が亡くなられて以来、果実の生育は止まったままです』

「生命の樹の逆位置となる『クリフォト』。それを名乗る奴らだ。狙っていてもおかしくない。あれらの実があれば666の封印解呪も劇的に早まるだろうしな…。それをネタに他勢力の邪な考えを抱く神クラスと交渉するってのもあり得る話だったが…」

 

 アザゼルが考えを張り巡らせる中、天界側の方にまた別の映像が映し出された。邪龍を宿した刀を持つ男性…八重垣が第五天の研究施設周辺へと足を踏み入れていたのだ。

 

『…いけません。現在、第五天には、解毒の最終段階のために紫藤局長が上がっています!』

『…パパッ!』

 

 映像越しでもハッキリとイリナのつぶやきが耳に届く。考えている暇など無い。天界側の彼らはすぐに動くことを強いられていた。

 リアスが仲間達に檄を送る。

 

『行きましょう!どちらにしても、ここでじっとはしていられないわ!私たちは対テロリストチームの「D×D」よ!上層に上がりながら、天使と共闘して邪龍たちを倒しましょう!』

「俺も天界の門が開き次第、増援を送る!お前ら、気張れよ!」

「みんな、くれぐれも気をつけてくれよ」

 

 アザゼルと大一の言葉に天界にいるメンバーは強く頷き、通信が切れた。大一は落ちつかなさそうに胸を撫でる。

 

「仲間が戦いの最中にいると思うと、落ち着かないですよ」

「気持ちはわかるが落ち着け。とりあえず、お前はすぐに動ける準備をしておけよ」

 

 指摘した矢先、アザゼルの携帯が鳴る。軽くため息をついた彼はすぐに電話に出るが、いらだつ声を隠そうとしなかった。

 

「俺だ。今は…ああ!?くっそ…わかった。それについてもなんとかする」

「…なにかありましたか?」

「…国外で調査しているヴァ―リチームからの連絡が途絶えた。どうも魔力の探知も妨害されているようだ。くっそ、天界は囮か?いや逆か?どうするか…」

 

 アザゼルは顎に手を当てるが、その指がせわしなく動いていた。ユーグリットが明かしたクリフォトの隠れ家への襲撃も重なっていたため、悪魔も堕天使もすぐに派遣できる人手が足りていなかった。だからこそ、この連絡もシェムハザやバラキエルの前に前総督のもとに来たのだろう。

 

「…なあ、大一」

「言われなくてもそのつもりです。俺が行きますよ」

「お前の方から言ってくれて助かる。グリゴリで何人かの堕天使と共に現場に向かってくれ」

 

 アザゼルは急いでポケットから紙切れを取り出すと、手早く魔法陣を描くと、それを押し付けるように大一に渡した。

 

「ヴァ―リチームと合流したら、それに魔力を通してくれ」

「任せてください。大切なヴァ―リは助けますよ」

「お前も皮肉が言えるようになってきたな」

 

────────────────────────────────────────────

 

 日本も12月となれば、場所にもよるが雪は降る。しかしヴァ―リチームがいた場所は山付近で、豪雪という言葉がぴったり当てはまるほど雪が積もっていた。おかげで戦いの中でも脚部への魔力を集中させなければ、足を取られそうになる。

 もっともこの程度の悪環境は、そこまで大きな問題でもなかった。それ以上に相対する敵が厄介であったからだ。

 

「最悪…!」

 

 黒歌が小さく舌打ちしながら呟く。クリフォトの件で調査していた彼女らであったが、接近を許し奇襲を受けてしまった。そのおかげで現在は混戦状態に陥っている。

 

「数が減らないですね…!」

 

 ルフェイが呼び出したゴグマゴグは向かってくる量産型邪龍を片っ端から殴りつけるが、おかげで完全に足止めを喰らっている。援護しているルフェイの魔法でも捌くのには苦労していた。

 

「ただの魔物とは思えませんね」

「こんな化け物をどうやって手懐けているんだよッ!」

 

 ルフェイの兄のアーサーは美猴と組んで、巨大な龍のキメラと戦っている。邪龍とは別物だがこれまたずば抜けた魔力を持っており、殴りつけられても斬られても、そこから別の龍の頭が出てきて向かってくるのだ。

 フェンリルも同じように邪龍とは違う魔物と戦っている。サソリと蛇が合わさったような恐ろしさをしており、複数の目が神殺しの狼の素早い動きを見据えていた。互いに身体の芯を冷やすような雄たけびを上げながらぶつかっていく。

 この2匹の魔物を召喚したスーツに身を包んだ紳士は、上空でヴァ―リと激突していた。まだ「極覇龍」は発動していないものの、彼の動きからして決して手を抜いている様子はない。それでも敵は互角以上に立ち回っているように見えた。

 

「というか、どうもヴァ―リの動きが変ね。神器の効果も当てられずに避けられてばかり。…いや狙いが定まっていない?もしかしてあれがこの前、赤龍帝ちんを追い詰めた奴かしら?搦め手が得意なタイプっぽいけど、ヴァ―リ相手にここまでやる奴をどうしたものか…」

「独り言の暇があると思うな。猫又女」

「おっとっと」

 

 突然の声と共に黒歌が立っていた場所の地面が棘のように隆起する。彼女は魅惑的なバク宙でそれを回避すると、横に視線を向けて魔力と仙術を合わせた塊を撃ち出す。

 だがそれを地面から生えだしたような岩石の腕があっさりと弾いた。そして水から這い上がるように地面から巨漢が現れる。

 

「感知が上手いのは面倒だ」

「あんたみたいに隠れるのを繰り返すのも厄介だけどね」

 

 そして黒歌が戦っていたのは、岩石を操る男であった。それがギガンというクリフォトのメンバーであることを、彼女も理解している。

 

「噂に聞く白龍皇のチーム…その実力は確かだが、相性が悪いな」

「舐めないでもらえるかしら?こう見えても『僧侶』の駒を2つも消費しているの。悪魔の中でも相応の実力にゃ」

「だろうな。それは理解しているが、俺には勝てんよ。パワーも防御もその程度ではな」

 

 ギガンは大木のような腕を上げると、大量の岩石を撃ち出してきた。防御魔法陣を展開しようかと思案するが、攻撃の規模と質量を踏まえるとあまり得策ではない。幻術との組み合わせで隙間を縫うように回避していくと、黒歌はギガンの上を取ろうと大きく飛ぶ。

 

「俺も見た目の割りには飛べるんでな」

「うげっ!?」

 

 素っ頓狂な声を上げる黒歌の前には、大きく腕を振りかぶったギガンが飛んでいた。このまま叩き落されること覚悟した彼女は、すぐに防御魔法陣を張るが…

 

「にゃっ!?」

 

 ギガンの拳は空振りに終わった。黒歌の腰に巻き付いた黒いロープのようなものが空中にいる彼女を大きく後退させていた。

 

「怪我無いか、黒歌?」

「おかげさまで♪」

 

 内心で胸を撫でおろす黒歌は、大一に対して軽い調子で答えるのであった。

 




事件の裏で別の事件と対峙している系はけっこう好きです。
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