D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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某忍のゲームでコラボやっていましたが、ああいうのってゼノヴィアが本当に出ない印象です。まあ、私の方もあまり出ていないんですが。


第168話 黒い2人と岩の男

「また会ったな、龍交じりの悪魔。お前が援護に来たところで変わるとは思えないが」

「言ってろ。強くなった実力を見せてやる。『三位一体の魔生力』!」

 

 黒歌を救出した大一は全身に魔力を行きわたらせ龍人状態へと変化すると、大きくジャンプして黒く染まった右腕を思いっきり引く。正確にはシャドウによって弾力性の帯びた腕をバネのように縮めており、ギガンの腹部を見据えて狙いを定めた。放たれた拳は砲弾のごとく突き進んでいき、それをギガンは腕を交差して防いだ。

 

『これくらいじゃ決められないか』

「重いな。影にも魔力を通している…少し変わったようだな。面倒なことだ」

『面倒、面倒というなら、テロなんかやめて欲しいものだよ』

 

 口から魔力を連続で吐き出して牽制していくと、大一は一気に距離を詰めていく。ギガンが右の拳でフックを放つが、それを飛んで避けると脚部に魔力を集中させてかかと落としで敵の頭を狙った。左腕で防がれるが、硬度と魔力を存分に上げた大一の一撃は、空中に飛ぶ敵を叩き落した。

 大一はすぐに下がって黒歌の横へと降り立つ。その眼はギガンが地に落ちて雪が舞っている様子を油断なく見つめていた。

 

『かなり強化したんだが、これでもダメか』

「あいつ、硬いにゃ。私の仙術もまるで通さなかったし」

 

 感知に優れていた2人だからこそ、今の攻撃がほとんど通じていないことを理解することに時間はかからなかった。その証拠に雪煙が晴れると、頭を軽く掻きながらギガンが立ち上がってきた。

 

『わかっていたとはいえ、強くなった自負があったのに、あっさり立ち上がってくるのはショックだな』

「話には聞いていたけど厄介ね。というか、援軍にしては少なすぎない?」

『天界も攻められてな。人手が足りないんだ。すでにこの紙に魔力を流してアザゼルに位置は知らせたから、もっと援軍は来てくれるだろうよ。そこまで耐える必要はあるが…』

 

 口を尖らせる黒歌に答えながら、大一はちらりと周囲へと目を向ける。ヴァ―リはブルードを相手に苦戦しており、アーサー&美猴のコンビ、フェンリルは邪龍とは違った魔物に決定打を与えられずに激戦を繰り広げていた。

 唯一、状況が好転していたのはルフェイとゴグマゴグのコンビであった。大一と共に来た堕天使数人が量産型邪龍の討伐に当たっていたので、数に押されていたのを徐々に盛り返していた。

 この盛り返しが微妙な戦況への不安とは別に、ふと気づいたことを同じように感知に優れる黒歌へと向ける。

 

『なあ、黒歌。お前ならギガンが何者なのか分かるんじゃないか』

「…あんたは戦った時に気づかなかったの?」

『魔力だけなら悪魔だと思っていたが、生命力がまるで違うから分からなかった。だがここに来て、かなり似た感覚を持っている奴がいることに気づいたよ』

 

 大一の耳に邪龍たちが殴られている音が響く。ずっしりと重い殴打を放つゴグマゴグから感じる感覚は、彼が直前に打ち合ったギガンとそっくりであった。

 雪を軽く払っている敵から目を逸らさずに、黒歌へと問いを続ける。

 

『しかしゴグマゴグって意思はあるのか?』

「ウチのチームのあいつは一定以上の知能はあるにゃ。それを意思と取ることは出来ると思う。でもねえ、あの岩男みたいに生物って感じじゃないのよ、ゴグマゴグは」

 

 ゴグマゴグは古の神が造ったと言われている破壊兵器であった。巨大なゴーレムであり、そこに意思が介在しているような雰囲気はない。ヴァ―リチームのゴグマゴグは次元の狭間で再起動できそうなものを回収したに過ぎない。その破壊兵器の生命力は、ほんのわずかなものであった。

 ギガンも同様に生命力はわずかしか感じられず、その質もゴグマゴグとそっくりであった。しかし彼は自身の意志で考え戦う生物だ。この矛盾した要素が内在する巨漢はまさに不可思議と言えるだろう。

 

「そもそもゴグマゴグだとして、小さすぎるにゃ。本来なら倍以上はあってもおかしくないのに」

『ハーフ悪魔、精霊、天使に加えて、ゴグマゴグもどきと来たものだ。クリフォトの一部の奴らはどうなっているんだか…』

『種族なんざどうでもいい。強いか弱いかのどちらかだろうが』

「ああ、その龍の言う通りだな」

 

 大一の口から漏れ出るディオーグの荒々しい声が響く中、ギガンは小さくため息をつくと両腕を地面に突き刺す。周辺の岩肌に魔力が流れ込んでいるのが感じられ、2人の警戒が強める。

 

「詮索されるのは好きじゃない。さっさと死んでもらおう」

 

 その太い腕を力強く引き始める。それに伴って大一と黒歌が立つ周辺の地面が大きく隆起していき、彼らに覆いかぶさるように動いていく。

 

『両側から攻めるぞ』

「了解にゃ」

 

 このままでは埋められかねないと感じた2人は素早く散開すると、逆にギガンの側面に回り込む。腕を地面と同化させていることを踏まえれば、次の行動まで時間差があると考えその隙をつくつもりであった。

 左側から大一は硬度と重さを上げた腕を伸ばし、右側からは黒歌の仙術と魔力を混ぜ合わせた塊を撃ち込む。攻撃速度も充分であったが、それがギガンに届くことは無かった。彼が突っ込んでいる両腕のすぐ横が盛り上がり、攻撃を防いでいったのだ。威力は決して低くは無いものの、変化した地面を破壊するには不十分であった。

 攻撃を防いだ隙にギガンは岩肌と同化して、そのまま彼らの視界から消え去る。これに対してシャドウが遠慮のない苛立ちを口にする。

 

『前の時みたいに隠れやがった!あんのデカぶつめ…!』

『落ち着け。手の内が分かっていれば、それに対処するだけだ』

 

 意識を集中させた大一の視線は、ギガンのいた場所から移動していく。雪に覆われた地面でも、敵の魔力や生命力が動いているのはすぐにわかった。

 しかしギガンも感知されていることは理解していたため、すぐに対処するように動く。

 感知を続けていた大一には、生命力の動きに懐疑的な表情になった。

 

『生命力が分裂した?これは…』

 

 間もなく大一の目の前にギガンが拳を振り上げた状態で現れる。巨大なハンマーのように振り下ろされた拳は、大一を上から叩き潰し衝撃で周囲の雪を巻き上げるのであった。

 

「大一!?」

「元テロリストが心配とは甘いな」

 

 背後に現れたギガンの横殴りを黒歌はギリギリのところで後退して回避する。自分に攻撃が来るのはわかっていたはずなのに、気を取られて避けるのが遅れそうになった自分に内心苛立った。

 

「岩の分身、いや分裂体か。ただ硬いだけで終わらないのは厄介ね」

「厄介…手は焼くが俺を倒せると思っているということか?」

「これでも実力には自信ある方なの」

 

 迫ってくる筋骨隆々の腕から、軽い身のこなしで回避を続けながら黒歌は不敵に笑う。ただ内心は、言葉ほどの余裕は無かった。スピードと運動性に関しては間違いなく彼女の方が上回っている。しかしそれがこの戦いの優位性を示すことにはならなかった。

 パワーや攻撃の規模は非常に強力で、頑強な身体は仙術を使っても打ち崩すことが出来ない。その上、この場所自体が岩石豊富であり、敵に有利であることも否定できなかった。搦め手を使っても地形を利用して対策を取られるため、相性の悪さをことごとく実感する。

 とにかく距離を取る必要性を感じた黒歌は大きく後退しようとするが、大一を攻撃したギガンの分身が地面を隆起させて突起を生みだす。おかげで逃げ場を一気に狭められて、ギガンとの距離が詰まっていった。

 

(やっばい…!)

 

 いよいよ追い詰められた黒歌であったが、危機を感じたと同時に何かが砕き割れるような音が聞こえる。それは敵の分裂体が破壊された音であった。

 そして間もなく猛烈な速度で黒歌とギガンの間に入り込んだ大一は、影で生成された2本の錨を両手に携えて敵の横殴りを防いだ。その太い腕1本に対して、大一ですら硬度と重さを上げつつ両手を使う必要があり、歯を食いしばりながら必死で耐えていた。

 

「さっきのじゃやられなかったか…」

『不意は突かれたが、分裂体程度にやられるほど軟じゃないんだよ。シャドウ!』

『任せろって!』

 

 大一の胸部から黒い影の拳が、ギガンの顔に向かって伸びていく。魔力を込められるため、純粋な打撃としても威力は保っていたが、それを理解しているギガンは顔面を岩石化させて真正面から受け止めた。

 

「甘いな。本当に甘い…」

「そんじゃ、追加でこれもどうにゃ!」

 

 黒影による拳を受け止めるギガンの顔面に、黒歌が追い打ちをかけるように仙術の塊を放つ。これには相手も怯んでわずかに姿勢を崩すと、大一は腹部に全身全霊で角を使った頭突きを入れこんだ。身体がくの字に曲がるほどではないが、わずかに後退するギガンに初めてダメージの実感を得た2人は素早く距離を取って体勢を立て直す。

 

「まったく、復帰するならさっさとしてよ」

『仕方ないだろ。分裂体でも威力は本物だったんだ』

 

 大一は頭部から流れる血を抑えながら答える。これでも大きな怪我に見えないのは、彼の頑丈さの証明であろう。

 だが頑丈さにおいては敵に軍配が上がっていた。ギガンは鼻から出ている血を拭うと、気怠そうな瞳を彼らに向ける。

 

「…よくもまあ、その女も守ったものだ」

『何が言いたい?』

「言葉のままだ、龍交じりの悪魔。以前、お前は守らなきゃいけない人たちがいると話していたが、その女まで守るのかと思ってな。元々『禍の団』の一員のテロリストだぞ。そこまでの価値があるのか?」

「現在進行形でテロやっている相手が言ってくれるね~」

 

 黒歌は余裕な態度を崩さずに笑う。敵味方問わず、このような扱いなど慣れていた。もともと敵だったのだからすぐに信用されるとは思ってもいなかったし、いちいち本気で反応するような気苦労をする性分でもない。野良猫のように自由気まま、その本質を守っており相手からどのように思われるかなど、さらさら興味を抱かなかった。彼女にとって大切な妹さえ生きていれば…。

 

『価値がどうこうとか考えたこともない。だが理由を挙げろと言われれば、いくらでもある。小猫の姉で、心強い実力者で、信頼できる仲間だ』

「薄っぺらいな。その程度の言葉は何度も聞いた。そういう奴らの言葉が紛い物であったことも知っている」

『信じてもらわなくても結構。俺が勝手に思っていることだからな』

 

 自然と口から言葉が紡がれることに、大一は内心驚いていた。黒歌とは命のやり取りもしたほどではあり、その掴みどころの無い気ままな雰囲気は決して彼の得意とすることではなかった。

 しかし言葉自体に偽りは皆無であった。決して馬は合わないが、彼女の性格や境遇を知ったうえで考えさせられ、信頼にまで至っていたのは事実であった。もっとも先日の彼女からの言葉を筆頭に、兄姉としての立場、不器用な性格といった奇妙な共通点がその想いを支えていることまでは自覚していなかったが。

 ギガンは鼻から大きく息を吐くと、気怠そうな目を細める。相変わらず面倒そうな印象であったが、同時に無骨さからにじみ出るほどの苛立ちも感じられた。

 

「…やはりお前は殺さないと俺の気持ちが収まらない」

 

 それだけ言い残すとギガンは身体を地面の中に潜り込ませる。間もなく周辺が地震のように揺れたかと思うと、彼が潜った辺りの地面が大きく盛り上がっていき巨大な腕を形成していった。その大きさは本家ゴグマゴグのごとく10メートル近くはあり、視界に全貌が収まらないほどであった。

 これほどの存在感を前に、大一と黒歌はうろたえながらも構える。

 

「大きい!さすがにあれを食らえば、ひとたまりも無さそう」

『同意するよ。あれに対処するために提案がある。さっきの攻撃で一番効いていたもの、お前の仙術だったよな』

 

 大一の問いに黒歌は頷く。実際、先ほどの大一の頭突きではわずかに後退させても傷ひとつ出来ていなかったのに、黒歌の仙術は鼻血を出させる傷を負わせていた。

 

「さすがにあれをどうにかするなんて無理よ。私の術じゃすぐには無理。そもそもさっきの攻撃があいつに通じたのか、よくわかっていないのよね」

『だから力を貸して欲しいんだよ。俺が仙術でダメージを通す』

「…はあ?あんたが仙術を使えるわけないでしょ」

『使うことは無理だ。でも合わせることなら出来るかもしれない』

 

 大一の提案した作戦はシンプルなものであった。朱乃の雷光を錨に受けて纏わせたように、黒歌から仙術を受けて自身の黒影の腕に纏わせて攻撃を仕掛けるものであった。

 仙術を用いた攻撃はこれまで黒歌もギガンに対して撃ち込んできたが通用していなかった。では先ほどの顔面への攻撃がどうして通ったのかと考えると、大一の打撃が彼に入っていたからであった。強い衝撃を与える物理と内部から崩す仙術、この2つの要素がギガンの強固な身体にダメージを通したことを、シャドウを通して大一は実感していた。

 

「仙術は一長一短で身につくものじゃないわ。魔力の放出もへたくそなあんたに出来ると思えないにゃ」

『こう見えても生命力の感知はかなり経験してきた。合わせるだけなら、他の奴よりかは出来る可能性はあると思う。

 実力において、俺はお前に背中を預けるくらいには信頼できる。だからこの場だけでも俺を信じてほしい』

 

 黒歌は少し目を丸くすると、面食らったような表情になる。決して大一と過ごした時間は長くないものの、その実力においては本気で戦ったことにおいて信頼は感じていた。同時に先ほどギガンの分身に大一がやられた時の心配と似ていながらも、どこか昂るような熱い感情が身体を駆け巡った。

 自身の感傷的かつ少女らしい想いに気づいた黒歌は、軽く吹き出すと小さく呟く。

 

「私らしくないな…」

『なにが?』

「こっちの話。そんだけ言うくらいなら、信じてあげるにゃ。勝つわよ」

『ああ、一緒にな』

 




オリ主もヴァ―リチームには心をだいぶ許しています。
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