D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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本当にメンタルが段階的にしか成長しないな、オリ主。


第175話 夜の話し合い

 夜、兵藤家のVIPルームに「D×D」のメンバーが集まっていた。オカルト研究部、生徒会、グリゼルダ、デュリオがその場に集い、通信用魔法陣に投影されるミカエルの立体映像を前に放課後の一件を話していた。

 

『申し訳ありません。立て続けにこちらの関与する事件に巻き込んでしまって…。彼らの要求は「D×D」との一戦です。特に駒王町に住まうあなた方との一戦を所望しているのです』

「どうして俺達と…?」

「この地は各勢力同士で行っている同名のスタート地点になった場所だ。あいつらにとっちゃ何よりも複雑な思いのところだろうよ。んで、お前たちはその事件にもろに関わった。逆恨みにも近いが、それでも奴らにとってみれば『D×D』ってのは、複雑極まりなく、また憎々しい相手に違いない」

 

 一誠の問いにアザゼルが答える。悪魔を滅するために戦うエクソシストに対して、あらゆるメンバーが集う「D×D」はその存在意義に一石を投じるものであった。

 グリゼルダやイリナの話では、今回のクーデターに加担した大半が悪魔や吸血鬼によって大切な人を失ったり、人生を狂わされた者ばかりであった。三大同盟が締結されることにもっとも異を唱えていたのも彼らであり、その確執がいかに複雑なものかは明白だろう。大一自身、シャドウを発動した際に周囲の戦士から向けられた敵意によって、それを肌で感じていた。

 

「今回の事件は、正直言って内輪もめだ。サイラオーグとシークヴァイラも呼びたいところだが、あいつらも自分の持ち場を守る役目がある。クリフォト相手ならいざ知らず、これに大王家、大公家の次期当主を呼び寄せるとなると、あっちのお偉いジジイどもが文句を言いそうだからな…」

 

 同盟が決まっても、関係性がすぐさま修復されるというのは難しいことであるのは誰もが理解していた。上層部の悪魔の価値観を何度も見てきた彼らとしても納得せざるを得ない。

 クーデターの現状に、ミカエルは苦々しく呟く。

 

『…我々の管理が行き届かなかったことがそもそもの原因。私たちの力を以て───』

「待て、お前は動くな。お前は天界の象徴であるべきだ。ここで厳しい決断を下すのも、トップの役目だろうと思う。だが、この一件はいわばケンカだ。複雑な事情があろうとも、無理やり抑え込めば禍根は残るだろう。だったら、今回の落としどころはきちんとつけさせた方がいい」

 

 きっぱりと言い切るアザゼルは思慮深い表情を見せる。ストラーダやクリスタルディといった聡明と経験に満ち溢れた人物が、いくら教え子たちに押し立てられたとはいえ、その通りにクーデターなど引き起こすだろうか。ミカエルもアザゼルも彼らのことを知る分、そのような懸念が強く存在していた。

 そうなると、必然的にもうひとりの首謀者に注意が向けられる。

 

『…もう一人の若き枢機卿、テオドロ・レグレンツィは「奇跡の子」のなかで最も秀でた能力を持った子です。それゆえ、若くしてあの地位に抜擢された経緯があります』

 

 天使と人間のハーフである「奇跡の子」、欲を持てば堕天する天使が特殊な儀礼と専用の結界を用いて、肉欲ではなく純粋な愛を持ったうえで行為に及ぶ…この複雑な経過を以て生まれてくるのだ。

 そんな話題が出たためか、ミカエルは一誠とイリナを交互に見る。

 

『…こんなときに訊くのも野暮ですが、使ってますか?例の部屋。意外と期待しているのですが…』

「じ、時間の問題です!」

 

 真っ赤になったイリナが凄まじい緊張と併せて報告する。一誠の話では、彼女は定期的に先回りして例の堕天しない子作り部屋に変化させていた。ご丁寧に水着やブルマなど誘惑する衣装も用意している場合もあれば、アーシアやゼノヴィアも彼女と共に行動することもあった。おかげでドアノブを確認する癖がついた、という愚痴を一誠から耳にしていた。エロさに定評のある彼でも、誘い方と雰囲気作りがあまりにも皆無なため、さすがに腰が引けるようであった。

 完全に部屋の空気が変な方向に向きかけていたのを、アザゼルが修正する。

 

「ってわけでだ。悪いが、あいつらの挑戦を受けてもらいたい。まあ、天使と教会の尻拭いってやつだ。いつも貧乏くじを引かせて悪い」

「コカビエル戦で関与したのは、私たちだもの。サイラオーグやシークヴァイラの協力がなくても問題ないわ。何よりも、挑戦を受けた以上、引き受けましょう」

「私たちシトリーも挑戦を受けます。この町の学園に通っている以上、捨て置けませんし、私たちもコカビエルとの一戦にも三大勢力の会談にも関わりましたから」

 

 リアスとソーナが不敵に笑む。彼女らを筆頭にその仲間達も因縁深い戦いを避けるつもりなど毛頭無かった。

 

「ま、ミカエル様が悩む必要なんてありゃしませんって。こういうのはどこでも起こりうる事件です。何かを変えるってことは、何かを犠牲にするってことで、不満を抱く者は必ず現れてしまうもんですよ」

「あなたがリーダーらしいことを言うなんて…成長しましたね、デュリオ」

「姐さん、もう少し俺のこと評価してくれると嬉しいんだけどなぁ…」

 

 デュリオががっくりと肩を落とす一方で、グリゼルダは向き直って宣言する。

 

「私やデュリオを含めて、この地を任された天界、教会のスタッフは皆さんをバックアップします。同盟を肯定している者もいるということです」

 

 この申し出は非常に頼もしく感じた。実力面はもちろん、この同盟を否定する者ばかりでないことも実感できる精神的な面でも安心を抱く援護であった。

 つまり今回の挑戦を引き受けるのはリアスとソーナのチーム、「D×D」の「御使い」組、さらにアザゼルの提案で幾瀬も裏方としてサポートにあたることとなった。

 なかなか手厚いメンバーであったが、グリゼルダが話すにはストラーダとクリスタルディの実力はすさまじく、ジョーカーであるデュリオ級のため、これでも足りないとすら感じそうになった。

 

「加えて、クリフォトもこの機会を狙っているだろうな」

 

 アザゼルの指摘はもっともであった。そもそもこのクーデター自体、リゼヴィムの扇動が関わっているため、敵がこの挑戦を機に動いてくることなど想像に難くなかった。

 

「そういえば、敵の中に天使もいるんですよね…」

 

 思い出すかのように一誠は口にする。彼の頭には、アウロス学園の事件でリアスと共に戦ったひとりの大天使の存在が想起されていた。

 彼の言葉にアザゼルも誰を指しているか察したようで、ちらりとミカエルに目を向ける。

 

「正直なところ、ハニエルの奴がリゼヴィムと組んだのが信じられねえよ。俺が天使だった頃から、お前以上に神に妄信的だったあいつがだぜ」

『妄信というのは言い過ぎですね。確かに信仰深い印象でしたが、視野は狭くありませんでした。常に仲間や信徒を考えていましたよ。…だからこそ、信じたくなかったのですが』

 

 ゆっくりと息を吐きながらミカエルは付け足すように呟く。哀愁に満ちたその言葉は、天界を率いる男のものにしては非常に弱々しく感じた。

 その姿にイリナやグリゼルダといった天界のメンバーは心配そうに視線を送っていた。飄々とした態度がほとんどのデュリオですら、目を丸くしており言葉が紡げない様子であった。

 

『意外そうですね』

「い、いえ…ただミカエル様がそこまで…」

『思ってしまうんですよ。彼とは何度も衝突しましたが、同じくらい肩を並べてきました。戦争で死んだと思っていましたし、尚のこと口惜しいのですよ』

 

 奇妙な空気が部屋に広まっていく中、アザゼルが手を叩いて自分に注意を向けさせる。

 

「いずれにせよ、リゼヴィムやハニエルを筆頭にクリフォトへの警戒も必要だ。頼むぞ」

 

 決戦は3日後、その短い期間にも一行は気を引き締めるのであった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 話し合いに区切りがついた一行は解散となった。目を覚ますように顔を撫でる大一に、小猫が感想を漏らす。

 

「疲れる話し合いでした」

「同意する」

 

 決して長い時間では無かったものの、非情にエネルギーを消費したような錯覚を覚える話し合いであったのは間違いない。同盟を組んだ相手と戦うという事実、それが種族間による価値観の違いが表れたものなのだから、精神的に疲労もするだろう。

 そこに朱乃も話に加わる。

 

「ミカエル様もああいった表情するのは驚きましたわ。天界ではリゼヴィム相手にも、覇気のある態度で相対したとイッセーくんから聞いていましたし」

「まあ、それに一番驚いているのはイリナ先輩達でしょうけど…」

 

 小猫がちらりと天界関係者に目を向ける。クーデターしかり、ミカエルの態度しかり彼女らの不安は悪魔側と比べるとより複雑化しているのは間違いないだろう。それを証明するかのようにイリナはゼノヴィア、祐斗と共に気難しそうな顔で話し込んでいる。

 一方で、大一としてもミカエルの表情は思うところがあった。あの表情には悲しみはもちろん、後悔のようなものが感じられた。ハニエルとの関係性は現時点では元同士ということくらいしか分からない。

 しかし天界のメンバーですら動揺させるほどの姿を見せたことを踏まえれば、ミカエルとハニエルの関係性は相応のものと察するのは難しくない。

 併せて、それほど特別な相手が敵対しているのであれば他のメンバーの経緯も気にかかる。サザージュ、ギガン、バーナ…彼らが僅かに見せた激情は、その壮絶さを窺わせるものなのだ。彼らもハニエルと同じように特別な過去を持っているのだろうか。

 

「…まあ、今はクーデターの方に集中しなければいけないのですが」

「そういえば、大一はよくストラーダさんの動きを察知できましたわね」

「まぐれだよ…」

 

 実際のところは、いつもの感知能力に加えて目にした瞬間に呟いたシャドウの言葉で警戒を強めた故の行動であった。また日頃からルシファー眷属に鍛えられているおかげで素早く反応できたものの、接触した瞬間にその実力差を肌で感じたため、あの行動に自信を持つことなど不可能であったが。

 どちらにしても、次に彼らと戦うとすれば、聖剣繋がりでゼノヴィア達が相手をすることになるだろう。

 むしろ大一にとって危惧したのは、シャドウを使った際に向けられた敵意であった。あの鋭く心臓に食い込むかのような感覚は、かつて自分の無力感に追い詰められていた時と似たように感じていた。

 シャドウの件は自分が責任を持つと言い切った。それならば、彼らが抱える恨みとも向き合わなければならない。どうすればこの罪悪感を払拭できる、彼らを救うことができる、堂々巡りとなる疑問に体が重くなっていくようであった。

 この負の面を仲間に見せることを、彼はためらった。完全に自分のことであればもう少し頼ることもできただろう。しかし今回の問題は、生島の件は悪魔になる前に起こり、シャドウの件もかつての彼が振りまいた混乱とそれによる禍根であった。今回は向けられた恨みや己に抱く罪悪感と、自分の無力さだけであれば吐き出せることもできた彼でも処理しきれない内容であった。

 

(いっそのこと…)

 

 破滅的な思考がよぎろうとする大一であったが、そこにロスヴァイセが声をかける。

 

「あの、大一くん。ちょっと今から付き合ってくれませんか」

「今からですか?しかし…」

 

 言いよどむ大一はちらりと時計へと目を向ける。すでに時刻は22時を過ぎており、深夜と言っても差し支えない時刻であった。

 それでもロスヴァイセは真っすぐな目で、彼に強く訴える。

 

「今からです。どうしても今じゃないと難しいんです」

「…わかりました」

 

 大一は朱乃達に別れを告げると、彼女に連れられて部屋を出ていく。残された朱乃と小猫はその後を静かに見ていた。

 

「…告白とかじゃないですよね」

「さすがに違うと思いますわ。でももしかしたら今の大一を救ってくれるかも…」

「朱乃さんも気づいていたんですか?先輩の様子が最近おかしいことを」

「あらあら、これでも彼と一緒にいる時間は仲間内では一番長いんだもの。話してくれるのを待っていたけど、私じゃダメだったのかしら」

 

 朱乃は寂しそうにため息をつく。弱みを見せると約束していたのに、いざこういった状況となれば頼られないことに彼女の気持ちはざわめいていた。自分を救ってくれた相手の力になれないことを口惜しく感じる。

 陰りのある朱乃に、小猫は元気づけるように言う。

 

「成長したはずの先輩がああいう態度ですから、これまでとは違う悩みを抱えているんだと思います。そしてロスヴァイセさんが気づいて、助けてあげようとしている…だったら、私たちは2人を信じるだけでしょう」

 

 小猫の言葉に、朱乃は感嘆の息を吐く。自分よりも年下であったが、彼女の強さにはいつも目を見張るものがある。冥界での時も不屈の心で戦っていた彼女には、自分よりも遥かに強い力を持っている。一瞬だけ、自分よりも彼女の方が大一に相応しいのではないかと考えてしまったが、それをすぐに振り払った朱乃はいつものように余裕のある笑みを浮かべる。

 

「そうね。私が信じなくちゃ」

 




基本的にオリキャラには過去をしっかり設定しています。
次回あたりにこのモヤモヤとはケリをつけたい…。
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