D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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原作のサイラオーグと匙の場面は飛ばします。だって何も変わらないんですもの。
それにしてもこの辺りは、とにかくキャラが出てきますね。


第197話 各々の役割

 一誠との会話に区切りをつけたアザゼルは、リアス、朱乃、大一、祐斗、ギャスパー、ロスヴァイセを連れて、同階の休憩フロアまで足を運んだ。そこには幾瀬が見慣れないメンバーを連れて立っていた。

 

「全員揃えました」

「おおっ、鳶雄。急に呼びだしてしまって、悪かったな」

「いえ、俺たちも『D×D』と共に前に出る時期かなと思っていましたから。微力ながら、協力させてもらいます」

「リアス、お前ら。うちの刃狗チームも、今回は裏方から表に出てきてもらうことになった。あとで連携やらの相談をしてくれ」

 

 グリゴリでも名うての実力者集団である刃狗チーム、その参戦は非常に心強いものであった。噂ではそれぞれが高い実力を誇っており、グリゴリの戦力の一端を担っていると聞いている。

 そんな中、朱乃は驚いたようにある女性に注目していた。年齢は20前半、その容姿は朱乃が成長したかのように似ていた。

 

「朱雀姉さま!」

「しばらく顔を見られなくて心配していたけれど、元気そうで何よりだわ」

「こちらこそ、連絡もせずに申し訳ありませんでした」

「いいのよ。あなたの立場を考えれば仕方のないことだわ」

 

 姫島朱雀…日本を古くより異形から守っている異能集団である5大宗家のひとつ、姫島家の現当主であった。朱乃とは従姉妹の関係にあたり、彼女に理解を示した数少ない身内であった。幾瀬も家の系譜に姫島の血を引いているため、彼女とは顔見知りであった。

 そんな彼女に面識のあったリアスが話しかける。

 

「お久しぶりね、朱雀」

「ええ、リアスさん。小うるさい家の者たちを黙らせてきたわ。私も鳶雄たちやあなたたちと共に行かせてもらうわね。他の4家からも術者が参加するので、戦線に加わらせてもらいますわね」

 

 彼女が当主になったことで、大きな意識改革が行われたためか、朱乃とも落ち着いて接することができるようになっていた。同時に異形とは関りになることを避けていた5大宗家が動くあたり、あらためて事の大きさがうかがえた。

 朱雀は朱乃の頭を撫でながら、大一へと目を向ける。

 

「初めまして。あなたが大一さんですね。噂はかねがね聞いています。よろしくお願いいたしますね」

「えっと…こちらこそお願いします」

 

 大一は面食らいながら答える。リアスや朱乃と違って、彼は朱雀とは面識がなかったし、5大宗家のことも通り一辺倒のことしか知らない。それゆえに彼女が自分に対して、声をかけてきたことには驚きしかなかった。

 そんな彼の様子に気づいた朱雀は言葉を続ける。

 

「宗家の中で異例に付き合いのある妖怪から聞いていたんですよ。親友の弟子で、グレモリー眷属にいる悪魔が不思議な力を持っていると」

「親友の弟子…零さんですか!」

 

 京都で出会った狐妖怪の顔を思い浮かべながら、大一は別のベクトルで声を上げる。予想外のつながりに驚きを隠せなかった。

 

「ええ。あのお方は、妖怪でありながら遥か昔に5大宗家のひとりから術を伝授されました。その義理もあってか、彼女は妖怪でありながら、私たちの協力者で付き合いもあるのです」

「そうだったんですか。あの人たちには私も何度か協力いただいています。しかし自分の話が出るとは…」

「それだけ印象的だったのでしょうね。私としても朱乃と同じ眷属だから気になって。改めて今回はお願いします」

 

 穏やかに微笑む朱雀に、大一は身体を脈打つような感覚を抱く。美しい容姿とその余裕が緊張感を走らせた。いや並みの美人ではこのような感覚は起こらないだろう。朱乃に似た見た目だからこそ、感じたものであった。

 彼氏の緊張に気づいた朱乃は頬を膨らませながら、嫉妬するように耳を引っ張る。

 

「痛いって、朱乃!」

「朱雀姉さまに色目を使うからですわ」

「そういうのじゃないって!」

 

 2人のやり取りに、今度は朱雀の方が一瞬だけ面食らうものの、その意味に気づくと先ほどの微笑み以上に嬉しそうな顔でリアスに問う。

 

「リアスさん、もしかして2人って」

「ええ、お察しの通りよ」

「やっぱり…!従姉妹として嬉しいわ」

 

 朱雀が目を輝かせる一方で、朱乃は耳を引っ張り、大一は抗議する。傍目から見れば、なんとも緊張感の無い光景だと思われたが、それは別のチームの登場によって幕が下ろされた。

 

「鳶雄、あんたが顔を出すとはな」

「ヴァ―リ、復讐は遂げたようだね」

 

 幾瀬の言葉にヴァ―リはふっと笑みを漏らす。彼らのチームも北欧の戦いには参加しており、多くの邪龍を薙ぎ払っていた。防衛を終えた後、人知れずに姿を消していたが、幾瀬達がいるのを知ってかこの場に参じていた。

 

「久しぶりにあんたの本気が見られるのか?ふっ、それだけの事態ということだな。出来れば、あんたとの再戦時にあれを見たかったが…」

「ははは、格好つける癖はいつまで経っても変わらないな。やはり、キミの出番のようだ。頼む」

 

 幾瀬が声をかけるとひとりの女性が前に出る。年齢は朱雀と同じくらい、長い金髪と碧眼が印象的な魔法使いであった。

 ただの美人な魔法使いにしか見えなかったが、彼女を見たとたんにヴァ―リは凍りついたように固まり、緊張強く動揺していた。

 

「また、わがままを言っているのですね?」

「ラ、ラヴィニア…ッ!」

「メフィスト会長とアザゼル元総督から表に出ていいとお許しが出たのです。また、一緒に戦えるのです、ヴァ―くん」

 

 ヴァ―リを手玉に取るような彼女の名前はラヴィニア。メフィスト・フェレスの教会の秘蔵っ子にして、神滅具「永遠の氷姫(アブソリュート・ディマイズ)」の所有者、「氷姫のラヴィニア」の異名を持つ魔女であった。

 どうやらヴァ―リにとって、彼女は姉のような存在であり、まるで頭が上がらなかった。実際、抱き寄せられた彼は頬を紅潮させてすっかり固まっており、あまりの意外な反応にリアス達はポカンと口を開けて見ていた。

 事情を知っているゆえに面白そうに笑うアザゼルは、呼吸を整えると集まったメンバーを見渡す。

 

「ま、事が事だ。今回は皆の力を貸してもらう。冥界だけじゃない。全勢力の危機だ。それだけ悪意を、奴らは有している。今まで互いの事情を抱えて避けあっていた者たちも今回だけは協力しないと、無残にやられるぞ。世界が滅ぶのに比べたら個々のプライドなんて役に立たないからな」

 

 アザゼルの言葉に全員が頷く。敵はまさに世界を終焉へと導こうとしているのだ。彼の言う通り、プライドを優先させて命を捨てるのはバカバカしいことであった。もっともディオーグが苛立つように小さく舌打ちをしたことを、大一は気づいていたのだが。

 

「ロスヴァイセ、ギャスパー、聖杯についての新たな情報を得た。トライヘキサの対策のために、お前らの意見と協力を仰ぎたい。それと大一、お前も来い。事情はサーゼクスから聞いているな?

 あとの者たちは、いったん魔王城で待機していてくれ。何か動きがあったら───」

 

 アザゼルが指示を出していく中、いきなり言葉を切る。彼の視線の先に慌てた様子のスーツ姿のスタッフの男性が走ってきた。顔面蒼白の彼の言葉は、最悪なことにその様子に相応しい内容であった。

 

「トライヘキサと邪龍軍団が行動を再開させたとのことですっ」

 

 敵が再び動き出したという情報に、その場にいた全員の顔が険しくなる。すぐにでも動き出そうとする一行であったが、スタッフからの情報がそれを制した。

 トライヘキサが現れた場所は1か所だけではなかった。ギリシャ神話のいるオリュンポスの領域、須弥山のふもと、エジプト神話やケルト神話にゆかりある場所にも姿を見せたのだ。トライヘキサは頭の数だけ身体を分裂させることで、同時に複数の場所を侵攻していた。大陸をも変化させる敵の破壊力に更なる物量が加わったおかげで、先ほどの防衛成功の勢いは一気にしぼんでいくような感覚であった。

 ここまでくると、更なる援軍が欲しいところではあるが、絶望は止まることなく襲い掛かる。スタッフはインカムから入った新しい情報を、アザゼル達に伝えた。

 

「バアル、シトリー両チームは現在バアル領中枢である城にいるそうです。…バアルの城が、反逆者からの襲撃を受けているとのことですっ!」

 

────────────────────────────────────────────

 

 病院の休憩室、大一はぼんやりとした様子で座っていた。すでにギャスパーやロスヴァイセを交えた作戦協議は終えており、リアス達が待機しているこの部屋に戻って体を休めていた。

 先ほどの報告では、バアル家の城に襲撃を行ったのは、なんとレーティングゲームランキングの3位であるビィディゼ・アバドンであった。襲撃の理由は定かでなかったが、先日のディハウザー・ベリアルの告白では、彼も2位のロイガン・ベルフェゴールと同じく「王」の駒を使用している。それを踏まえれば、名誉を守るために現魔王派と根深い対立関係にある初代バアルを討ち、自分たちの正義を主張するなどいくつかありえそうな理由は思いついた。

 

『むしろ僕は絶対あると思うね』

 

 頭の中でシャドウは自信満々に話す。あらゆる負の面が強い感情を見てきた彼にとって、こういった暗くもありえる展開を予想することには長けていた。

 この件についてリアス達も援護を出そうとしたが、通信でソーナからストップがかけられた。すでに匙が城に向かっており、併せてサイラオーグにも連絡を入れているため、前線で戦っていたリアス達は少しの間でも休んでいて欲しいというものであった。転移するには少々距離もあり、余裕のない状況であるため、アザゼルが別の救援を送るだけで、ソーナとサイラオーグに任せることに決まった。それもあって、彼女たちは魔王城には戻らずにこの病院で待機していた。

 

『しっかし、レーティングゲーム3位だろ?相当な実力者って聞くぜ?』

(たしかにビィディゼ様はかなりの実力者だ。俺も何度かゲームの様子を映像で見たことがあるし、「王」の駒もある。でも無事ではあると思うよ。たしかあそこにはサイラオーグさんの弟もいるはずだし)

『え?バアル家って兄弟なの?』

(腹違いのな。たしかマグダランさんという名前だったな。眷属もいるし、それなりの実力はあると聞いているよ)

 

 もっとも兄弟仲は決して良い方じゃない、ということも含めて大一は耳に挟んでいた。サイラオーグの生い立ちに加えて、弟の方は逆転されるようにバアル家次期当主の立場を奪われたのだから、察するに余りある内容ではあったのだ。

 しかし同時に和解もありえるのではないかと、大一は思っていた。サイラオーグは自分と違って力強く真摯に向きあう性格をしているし、マグダランも植物の研究という兄とは違う方向で才能を見せているため、大王家としての拘りやプライド、負い目を払拭するチャンスさえあれば兄弟仲の修復に近づけると思えた。

 もっともこれらは、以前サーゼクスとの雑談で聞いたことの受け売りであった。しかし兄妹関連には常に目を光らせているような面がある彼だからこそ、妙に説得力も感じられた。そんな主の覚悟を思い返すと、再び胸が締め付けられるような想いであった。

 

「…あの人の覚悟に応じるんだろうが」

(てめえは自分本位とか言いながら、いつもそれだもんな)

 

 自分に言い聞かせるようにつぶやく大一に、ディオーグはため息をつく。いよいよこの龍にまで、そういった感想を持たせるようになったことに、思わず苦笑いがこぼれた。

 

『しかしトライヘキサがグレートレッドと並ぶ存在なら、ディオーグも完全復活したらやりあえるんじゃないの?』

(言われてみれば、ありえそうだな。あの体格を見るに、ディオーグとはどっこいどっこいだと思うぞ)

 

 大一はかつて封印されていたディオーグの姿を思い出す。腕や半身は地面へと埋め込まれていたが、目視できるだけでも彼はその龍に匹敵する体格をグレートレッド以外に見たことは無かった。

 

(たしかにあのデカい獣とぶつかってはみてえな)

『おーう、さすがの闘争心…』

(まあ、今回は無理だけどな)

 

 バッサリと答える大一は疲れたようにため息をつく。聖杯を封じるにあたって、彼は仲間達と別行動をすることになっていた。トライヘキサとも直接的にぶつかる可能性は少ないため、ディオーグの言うような戦いはありえなかった。

 

「大一くん、大丈夫ですか?」

 

 隣に座ったロスヴァイセが覗き込むように問う。現時点で、大一が別行動をすることを知っている数少ないひとりだ。

 

「ええ、大丈夫ですよ。ちょっと疲れているだけです」

「あんまり、大一くんの大丈夫って信じられませんよ」

「否定できないのが情けないです…。でも今回は本当に大丈夫ですって」

 

 ここ最近、様々な場面で戦ってきた彼にとっては、仲間と共に前線に立てないことに心配はなかった。与えられた仕事をこなす責任感は、別行動で彼に動揺を与えなかった。もし動揺するとすれば、その後の作戦についてだが…。

 ロスヴァイセは少し考えこむような表情をすると、納得するように頷く。

 

「わかりました。でも心配な時は言ってください」

「お互い様ですよ。俺よりもあなたの方が大切ですから」

 

 安心させるように大一が落ち着いた表情を見せると、ロスヴァイセは緊張気味に頬を掻く。なぜ彼の雰囲気や言葉に緊張する必要があるのだろうか、そんな考えが頭をよぎるが、同時に生島や小猫から指摘を受けたことを思い出す。

 次の戦いはどれだけ心を奮い立たせても足りないくらいのものだ。トライヘキサを抑えるにあたり、自分の術式が重要であることも理解していたため大きな責任感も付随する。それゆえに振り払おうにも緊張がついてくる。少しでも安心を求めた彼女は…。

 

「あの…前に頼って欲しいと言ってましたよね?」

「ええ、言いましたよ」

「それって今でもいいですか?」

「頼るのに許可なんていらないでしょう。俺に出来ることなら───」

 

 大一は言葉を切って、目を丸くしていた。ロスヴァイセが彼の左手を祈るように握ったのだ。手の温もりと、彼女の少々荒い息遣いが、妙に印象的であった。たった数秒のはずであったが、妙に長い時間が流れたような錯覚を互いに感じ、彼女はゆっくりと手を放す。

 

「ゆ、勇気をもらいました」

「えっと、あー…」

「その…いいんです。これだけでも十分ですから」

 

 戸惑う大一にロスヴァイセは答える。彼には朱乃や小猫、黒歌までいる。自分が入り込む余地など無いのだから、その現実を受け入れてひとつの区切りにするつもりであった。

 一方で、大一はロスヴァイセから握られた手を静かに見つめる。自信の無さゆえに鈍感な方ではあったが、ここまで直接的に感情を向けられれば、さすがに彼も感づく。今度は立とうとする彼女の手を優しく握りかえした。

 

「だ、大一くん…!」

「…えっと、俺も勇気をもらいましたよ。トライヘキサをなんとかしましょう」

 

 短い上に、周りからも気づかれないような静かなやり取りであったが、間違いなくロスヴァイセにとっては関係性が一歩進んだと実感するのであった。

 




もう逃がしません。向き合わせます。
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