D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

199 / 221
やっと21巻分の対決の幕開けです。


第199話 決戦の皮切り

 何度かの魔法陣による転移を繰り返して、大一は魔法陣と同じ感覚が感知された土地へと行きついた。森が生い茂る一帯の上空を、炎駒、ベオウルフと共に、本来の巨大な魚の姿へと変身したバハムートに乗って進んでいる。

 

「最後に大一殿と肩を並べられるのは嬉しいですな」

 

 周囲を見渡しながら炎駒は笑う。トライヘキサとの終わりが見えない戦いを控えているにもかかわらず、この男は雰囲気をまるで変わらなかった。落ち着いた丁寧さと、芯の強さは何度も大一が見てきた師の姿をありありと映している。

 

「俺も炎駒さんと一緒に行くことになるとは思わなかったですよ。ただ最初で最後になりそうなのが…」

「嘆くことではありません。今生の別れとは限らないのですし、平和と未来を繋ぐために我々は戦うのです」

「ま、炎駒の言うとおりすよ」

「それに…サーゼクス様と生きると決めたから」

 

 炎駒の言葉に、ベオウルフとバハムートも続く。いまさらではあるが、大一はよく自分がサーゼクスに認められたと思った。ルシファー眷属の実力はもちろん、覚悟ひとつとっても並みの悪魔とは一線を画している。現に彼らに恐怖などはまるで感じられず、強い悪魔としての落ち着きを見せていた。

 

(…いや違うだろう)

 

 怖さや不安はあって当然なのだ。たとえ彼らがルシファー眷属であっても、感情を持つ存在である以上、相応の感情は抱いているはずだ。

 しかしそれ以上に覚悟や忠誠心、責任の重さやそれを支える強さがあるのだ。ならば自分に出来ることはなにか。任された任務と、彼らの目的を果たすために全力でサポートをすることであった。

 

「最後まで俺が皆さんを支えます」

「そう言ってもらえるとは…私はいい弟子を持った。しかし大一殿、気負いすぎないようにしてくだされ」

「大丈夫だ、炎駒。彼は強い。ベオよりは心配じゃない」

「ちょっと、バハムート!?俺を引き合いに出す意味なくない!」

 

 ベオウルフの反論に、どこか緩慢な空気が流れる。ほんのわずかな穏やかな時間も、彼らにとっては貴重に感じた。

 間もなく落ち着いた炎駒は周囲に目を凝らしながら、不思議そうにつぶやく。

 

「それにしても空に邪龍の一匹も見えないのは妙ですな」

「警戒してないんすかね?怪しい場所も見当たらないし、まさか当てが外れたか」

「…いや、姿を隠しているだけですよ。バハムートさん、南東に進んでください」

「わかった」

 

 大一の言葉に従ってバハムートは進んでいく。数分ほど進んだところで、大一は上空から魔力の塊を前方に撃ちだした。

 すると突如、森のど真ん中に大きな屋敷が現れた。木造の屋敷は、立派な西洋風の造りにいくつも小屋が無理やりくっつけたような奇妙な形状のものであった。

 

「よく気づきましたな」

「妙な結界が張られているのが感じられたので。わざわざこんな隠し方をするくらいですから…」

「目的はここで間違いないすね」

 

 大一、炎駒、ベオウルフは同時に素早く地上へと降り立ち、屋敷へと近づいていく。一方でバハムートは上空で警戒を強め、何人たりとも逃そうとしない状況を作り上げていた。

 そして3人が屋敷へと入ろうとするが…

 

「む?」

「なんすか、これ?」

 

 炎駒とベオウルフの面くらったような声が、大一の耳に届く。屋敷からほんの数メートル離れた場所で、彼らは立ち止まっていた。

 大一は振り返ると、2人に呼びかける。

 

「どうかしましたか?」

「見えない壁があるように通れないのです。おそらく結界のせいでしょうが…」

「…これ力で壊せるものじゃないな」

 

 目を細めながらベオウルフは、見えない結界をノックするように軽くたたく。コンコンと音も鳴り、そこに結界があることに大一も気づいた。感知すると先ほど屋敷自体を隠していた結界とはまた別物であり、全体に覆われていた。大一のみ通すあたり、これも特異な結界であることは疑いようもない。

 

「大一くんだけ通れたということは、『異界の魔力』を持つ者だけ通すみたいな性質がありそうすね」

「そんなことできるんですか?」

「ありえない話じゃないすよ。その魔力は持たない者には感知されにくい反面、持っている者同士は引き合わせるような性質もあるのだから、その応用とかじゃないかな」

 

 ベオウルフの予想に、かつて聞いた零の言葉が思い出される。そしてこの結界に「異界の魔力」が関係しているのであれば…。

 するといきなり周囲に魔法陣が展開されて、邪龍が姿を現す。量産型ではあったが、見た目はグレンデルやラードゥンに近く、並みの量産型邪龍よりもはるかに強い。しかもその数は100を超えるものと思われた。

 

「待ち伏せ…いや近づかれた際のトラップすか?」

「どちらでもいい。向かってくるなら倒すまで」

「バハムートの言う通り。我ら、ルシファー眷属の実力、たかだか量産型邪龍にやられるほど甘くない」

 

 素早く戦闘態勢を取る3人に援護するように、大一も向かおうとするが、それを炎駒がよく通る声で制止する。

 

「大一殿、待ってくだされ。貴殿はこのまま屋敷を調べて欲しい」

「しかし炎駒さん…」

「貴殿にしかできない仕事を果たすべきでしょう。それとも我々の実力に不安があると?」

「…その聞き方はずるいですよ。気をつけてくださいね」

 

 師匠と先輩たちからの想いを胸に、大一は屋敷の中へと入っていった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 作戦の肝は聖杯を防ぐことであった。そこでロスヴァイセとアザゼルたちが作り上げた結界でトライヘキサの動きを封じ、ヴァルブルガから回収した聖十字架を使って、敵の聖杯の動きを止めるというものであった。聖杯の不安定さや、持ち主を選ぶ聖十字架を同調させるというのは心もとない事象であったが、吸血鬼側から提出された資料が役に立った。なんでもマリウスが聖杯の研究をしていた際に1度だけ危険な状況に陥ったが、ツェペシュ派の秘宝である聖なる釘の欠片を使って、事態を鎮静化させたことがあった。

 これに目をつけたアザゼルは、聖十字架を再調整し、ヴァレリーの聖杯と波長を同調させることに成功した。つまりヴァレリーによって、邪龍たちの聖杯の働きも止められる可能性が出てきた。

 そして聖杯を持つ個体が、日本海に現れたトライヘキサであることが分かると、彼らは作戦を決行した。

 日本海のある場所、そこでリアスは奇妙な高揚を感じていた。トライヘキサと邪龍軍団、その圧倒的な強さに苦心した。愛する男は決して万全な状態でないため、不安を感じる。それでも彼女は第二の故郷とも言える日本を守るために、仲間達と奮闘していた。自分の眷属たちはもちろん、「D×D」のメンバーであるデュリオやグリゼルダも奮戦していた。そして彼女が見たのは…

 

『やったぞおおおぉぉぉっ!』

 

 周りで大きな歓声が上がる。なんとロスヴァイセの魔法陣が効果を発動して、トライヘキサの動きを止めたのだ。この歓喜する状況に持ち込むにあたり、多くのメンバーが加勢してくれた。サイラオーグとその眷属といったライバルたち、ストラーダに初代孫悟空と当時の仲間達、五大龍王の玉龍のベテラン勢、曹操とクロウ・クルワッハといったかつての強敵まで加勢に来てくれた。その猛攻は邪龍軍団を蹴散らし、トライヘキサの攻撃をことごとく薙ぎ払っていく。彼らの加勢もあって、時間を稼ぐことに成功し、トライヘキサの動きを封じることに成功したのだ。そして今、聖杯を止めるためにギャスパーとヴァレリーが目標へと向かっていた。

 赤龍帝の鎧をまとったリアスはちらりと近くの小島へと向かっていく影に視線を向ける。それはトライヘキサの頭部から逃げるように離脱するアポプスと、それを追う鎧姿の一誠であった。

 一瞬、彼を追うことを考えた。しかしその想いはすぐに留まった。邪龍たちは二天龍との戦いを望んでいることを、アザゼルから聞いていた。だからこそヨーロッパ側に出現したアジ・ダハーカにはヴァ―リたちが向かっている。となれば、ここで下手に加勢に向かう方が、先に邪魔ものを排除しようとして動くであろう敵に対して、一誠の足を引っ張りかねないと思ったのだ。

 

(それに…彼は私よりもすごい)

 

 心の中で小さく呟く。一誠はアポプスに必ず勝つ、その想いは揺るぎない。同時に彼は自分よりも先の道へと進んでいくだろうと実感していた。悪魔になって1年未満にもかかわらず、その証明を彼は次々と示してきた。それゆえに、恋人としては同じ道を歩けても、悪魔としては別の道をたどり、更なる高みへと上っていくだろう。その想いもあって、必ず一誠が勝つと考えていた。

 

「私は私のやることを果たさなきゃ」

 

 自分を奮い起こすようにリアスは呟く。トライヘキサの動きを止めたとはいえ、周囲には大量の邪龍や偽赤龍帝軍団がいる。ギャスパーとヴァレリーの邪魔をしないためにも、これらを倒さなければいけなかった。

 滅びの魔力を手に込めると、向かってくる一匹に放つ。うめき声を上げるものの、大口を開けて向かってきた。量産型邪龍も一筋縄ではいかない。よくこれほどの相手と何度も戦ってきたものだと思うのと同時に、日本を、世界を守るために気合いを入れなおすのであった。

 邪龍の攻撃を避けるとわき腹に痛烈な蹴りを入れる。吹っ飛んでいく邪龍に追撃の魔力の塊を撃ち込んで、その身を滅ぼした。

 

「さて次は…」

『部長、下がってください!』

 

 いきなりの声に、リアスは反射的に後退した。間もなく彼女の滞空していた場所にものすごい速さでミサイルのようなものが通った。リアスはすぐに先ほどの存在へと目を向ける。それは水をジェット噴射のようにしており、見事な曲線を描きながら方向転換すると、再びリアスへと向かっていった。

 

「見つけたぞ!リアス・グレモリーッ!!!」

 

 向かってくるモックに対して、リアスはすぐに防御用の魔法陣を展開する。しかし敵が突っ込んでくることは無かった。横から現れた猫又モードの小猫の鋭い蹴りによって、吹っ飛んでいったのだ。

 

「大丈夫ですか?」

「助かったわ、小猫。さっきの声もあなたね」

「はい。大一先輩が例の魔力を持つ相手なら、不意打ちをしてくるだろうと考えていましたので、ずっと警戒していたんです」

 

 落ち着いて答えた小猫は拳を合わせると、モックが吹っ飛んでいった方向を睨む。

 

「先日は逃げられましたが、今日はさせません。私がやります」

「だったら、僕も行くよ」

 

 いつの間にか、小猫の横に祐斗が降り立った。その手にはグラムが握られている。

 

「僕も彼を逃がしたからね。勝ちたい気持ちは小猫ちゃんにも負けていない。それに主が狙われているのであれば、守るのが『騎士』の役目だ」

 

 祐斗と小猫がリアスを守るように構える中、海面近くで本来のサメの姿となっているモックは、先ほど小猫に蹴られたわき腹を抑えながら歯を食いしばらせていた。

 

「邪魔をしやがって、ガキどもが…!」

 

────────────────────────────────────────────

 

 一方、トライヘキサ近くではデュリオを筆頭にゼノヴィア、イリナ、グリゼルダがひとりの相手に警戒を強めていた。そこにはひとりの男性が、魔法陣を足場に上空に立っていた。

 

「異界の魔力については、先輩から聞いている。だから不意を突いてくるものだと考えていたが、正面から挑んでくるとはな」

 

 ゼノヴィアは挑戦するようにデュランダルの切っ先を向ける。これに対してブルードはまるで怯む様子も無く、退屈そうにあごを掻いていた。

 

「キミらにとってはありがたいのではないかな?私がこの魔力を活用すれば、間違いなく数人は葬れたのだからな」

「バカにされたものだな。まあ、それほどの天使だってのはわかっているんだけどさ」

 

 ため息をつきながらデュリオは呟く。今の彼は禁手を発動させており、セラフと同様の12枚の翼を黄金に輝かせており、頭には4重の光輪をつけていた。

 圧倒的にも感じる聖なる姿に、ブルードは嘆息する。

 

「神滅具の中でも、最高峰のひとつである『煌天雷獄』の亜種禁手か。それを転生天使である貴殿が使うとは、なんとも世界の変化を感じるものだよ」

「その言葉、そっくりそのまま返させてもらうわ!伝説の天使で、ミカエル様とも友人であったあなたが、テロリストや邪龍に加担するなんて!」

「イリナの言う通りだ。天使ハニエル、私たちであなたを倒す」

 

 強い戦意をみなぎらせ、ゼノヴィアたちはブルードを睨む。対して、彼は背中から天使の翼を展開させる。かつて一誠と相対した際に見せた時よりも多く、10の翼をはためかせて、ふわりと浮かび上がった。

 

「世界が変わるのは喜ばしいこと…そのはずだったのにな。それじゃあ、始めようか」

 

────────────────────────────────────────────

 

 日本海の戦いから少し時をさかのぼった頃、大一は屋敷の中を走っていた。この屋敷を一言で表すのであれば、奇妙であった。廊下に描かれている紋様は悪魔特融のものであったり、まったく関係ない術式だったりと様々だ。たまに視界に入る飾られた絵や装飾品は全体的に古びており、点でバラバラな印象を抱かせた。廊下の暗い雰囲気にもまるで合っていない。要するに屋敷全体に統一性がなく、ちぐはぐであった。

 しかしこの奇妙さをいちいち気にするような慣性を持ち合わせてはいなかった。今はこの屋敷に隠されていると思われる魔法陣の手がかりを探すことに全力を尽くすべきであった。

 そして大一は目指すべき部屋に気づいていた。わずかながら煙のようにつかみどころがなく、同時に磁石のように引き合う感覚…「異界の魔力」がある部屋から感じられたのだ。

 間もなく目的の部屋の前にたどり着く。質素ではあるが、自分よりも遥かに大きな扉であった。大一は警戒を怠らずに、扉を開ける。

 

「これはッ…!」

 

 彼の視界に映った部屋は、ひどく荒らされていた。体育館ほどもある広さでありながら、床や壁には大量の斬撃や焦げた跡、ソファは破れて綿が無残に床へと散らばっている。テーブルは真っ二つに割れたり、脚が吹っ飛んでおり、部屋の中央には落ちたと思われる巨大なシャンデリアが割れていた。

 あまりの惨状に、大一は困ったようにつぶやく。

 

「いったいなにがあったんだ…?」

「貴様も来たか」

 

 生気の感じられない声と共に、部屋の奥の陰から鎧武者の無角が姿を現した。

 




このあたり、援軍が怒涛に出るので、私の方も一気にオリ敵を出していきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。