D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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いよいよ戦わなくなってきたな主人公と思いながら、今回の話です。


第20話 上級生の会話

 大一はあまり自分から遊びに行くということはしない。誘われれば付き合うがその程度のことで、休日でも過ごし方は大きく変わらなかった。宿題をこなし、借りた悪魔の本を読み、いつもよりも負担の大きいトレーニングを行う。この繰り返しのため、両親からは異常なほどにストイックな印象を持たれていた。

 それでも平日と同じことの繰り返しというわけでもない。例えばランニングをする時なんかは契約相手から教えてもらった店の場所を確認するためにコースを変えて走るなど、本人なりに長く続けるための工夫を行っていた。

 そして休日、ランニングをしていた大一はファミレスから出てくる一誠を見かけた。それだけならば別におかしくないのだが、小猫に祐斗、見たことない男子、そしてなぜか教会関係者であるゼノヴィアとイリナもいた。6人は間もなく解散したが、そこには先日のしがらみを感じさせなかった。

 

「…とまあ、こんなことがこの前の休日にありまして」

 

 次の部活の際に、大一がリアスに詳細を説明する。部室にはリアス、朱乃、大一の3人しかおらず、他のメンバーは帰宅している時間であった。ただ一誠はアーシアと帰らず、用事があると言って小猫と共に出ていったが、その言動に大一達が疑問視するのは当然であった。

 大一の話を聞いている間、リアスは机に頬杖をつきながら顔をしかめ、朱乃も笑顔ながら困ったように眉を曲げていた。

 

「あらあら、この前の教会関係者に祐斗くんまでいて争いにならないとは」

「なんというか…目的が予想つくというか…」

「聖剣関連でしょうね」

 

 大一が言いづらそうにしていた言葉を引き出すと、リアスは大きくため息をつく。先日ゼノヴィアに負けた祐斗であったが、その後にはリアスの制止を振り切って「はぐれ悪魔」になる覚悟すら見せていた。しかし休日に見た彼の表情はだいぶ落ち着いており、ゼノヴィアやイリナとも友好的とまでは言えないが、話している姿も見られた。ここまでいくと、聖剣関連について妥協点を見つけたと思われる。

 

「もうひとりの男の子というのは?」

「俺は見覚え無いですが、おそらくソーナさんの新入りの眷属じゃないかと思います。一誠が現時点で頼れる男の関係者って限られますし」

「うふふ、大一がこの前サボった時の話ね」

「その言い方やめてくれよ…」

 

 朱乃が大一をからかうのも、まったく気にしない様子でリアスはさらに苦い表情をする。

 

「ソーナの眷属にまで声をかけるとは…そこで終わりってわけじゃないでしょうしね」

「アーシアちゃんはいなかったの?」

「おそらくだけど、巻き込みたくなかったんじゃないかな。まず今回の件についての提案者って悪魔としてまだ世間知らずの一誠だと思うんだ。しかし危険であることもわかってはいるから、あいつなりに彼女を巻き込むのは躊躇したんだろうよ。それに俺らに話さなかったのもこの件がマズいと理解しているからだろう」

「間違いないでしょうね。私達の誰かに知られたら、止められるってわかっているのでしょう」

 

 実際、彼らの予想は間違っていなかった。今回の件の提案者は一誠であり、隠していたのも余計な迷惑をかけないこととそもそも計画自体を止められると思ったからであった。実際、悪魔、天使、堕天使の3すくみが崩れる可能性もあるため、リアス達は反対しただろう。

 

「まったく、この前お互いに干渉しないということで収まったと思ったのに」

「でも部長も独自に調べていたではありませんか」

「そうなんですか?」

「…侵入してきた相手が相手だからね。でも大したことは分からなかったわ」

 

 そう言って、リアスは机に一枚の紙を置く。そこに記されていたのはひとりの人物についてであった。名前を「バルパー・ガリレイ」、当時の聖剣関連の非人道的な実験を主導していた人物で、教会では「皆殺しの大司教」と呼ばれている。今は堕天使と組んでいるとのことであった。

 大一と朱乃は内容にざっくりと目を通すと、リアスに視線を向ける。

 

「この人がコカビエルと共に潜伏していると?」

「可能性としては一番高いわ。あと気になるのは、聖剣を集めても扱える人物がどれくらいいるかってこと」

「そうなりますと名うてのはぐれ悪魔祓いもいるかもしれませんわ」

「その通り。この問題、一筋縄で解決しそうにないのよ」

 

 リアスは手を合わせて祈るような格好で目を閉じる。頭の中ではどうすることが最適解なのかを考えているのだろうが、ここで答えは出ないだろう。

 そして間もなく飛び上がるように立ち上がると、扉の方に向かっていく。

 

「あら、部長どちらに?」

「ちょっとソーナと話してくるわ。今後も含めてね」

 

────────────────────────────────────────────

 

「しかし見つからない…」

「なにか手を打っているのかしら?」

 

 部室に戻った大一と朱乃は困ったようにぼやく。一誠がなにかしているという情報を共有してから数日経っていた。彼らも放課後に一誠達を捜索したのだが、今のところ見つけることはできなかった。特に分からなかったのは、大一の魔力探知でも引っかからないことであった。実際のところ、一誠達は魔力を抑える服を借りていたため分からないのは当然なのだが、それを大一達が知る由もない。

 

「だいたい一誠はどうやって祐斗を説得したんだか…俺にはどうもできない」

「あらあら、大一だって炎駒様に連絡を取っていたんでしょう。リアスから聞いたわ」

「その話は結局どうにもできなかったよ。それに俺じゃ何もできないから、あの人に頼るしかなかっただけだ」

 

 やれやれといった表情で朱乃はお茶を淹れる。その間、2人の間に一切のやり取りは無く静かな沈黙が流れていた。大一はどうもこの空気が苦手であったため、リアスには早く戻ってきて欲しいと思っているが、残念ながら彼女はソーナと共に未だに一誠の捜索に当たっていた。

 この沈黙を破ったのは朱乃からであった。

 

「そういえば、家でのリアスってどうかしら?」

「どうっていうのは…」

「イッセーくんとの関係」

 

 紅茶の入ったカップを渡しながらいたずらっぽく笑う朱乃に対して、大一は渋い表情を見せる。先日のリアスが怒った件もあってか、この手の話題を彼女から振られたくなかった。それでも聞かれた以上、大一は冷静を取り繕いながら答える。

 

「相変わらず、アーシアと一誠の取り合いをしているよ。この前はどっちが一緒に寝るかで争っていた。まあ、そんなことの繰り返しだな」

「あらあら、だったら私が思っているほど進展はしていないのかしら。リアスったら奥手なのね」

「奥手だったら一緒に寝るとかしないよ。そりゃ、この前の朱乃さんのような誘惑はしていないけど」

「うふふ、盗み聞きするあなたに言われる筋合いもないわ」

 

 ささやかな反撃のつもりの皮肉も朱乃には全く通用しなかった。喧嘩をするつもりは毛頭ないものの、彼女相手に強く出られないもどかしさがむず痒く感じた。

 ふと大一は、目の前の女性の真意が気になった。彼女は本気で弟を狙っているのだろうか。彼女に男嫌いという一面があるのを知っていた。しかしその割には、一誠に対して初めから警戒心が無かった印象はあった。もちろん仲間に対しては優しいのはあるのだが、山での修行の時に混浴をあっさり引き受けるなど疑問があったからだ。

 誰に惚れようと口出しするつもりは無かったが、リアスの現状を考えると朱乃の気持ちがどこに向いているのかは友人として気になり、探りを入れる。

 

「年下が好みとは知らなかったな」

「意外だった?」

「というか、男はみんな同じみたいなスタンスなんだと思っていた」

「ふふっ、その考えは間違っていないわ。でもイッセーくんはカッコよかったもの。フェニックスとの戦いを見ていてドキドキしちゃったわ。今はリアスを焚きつけるのが目的なんだけど」

「本当にそれだけか?」

「どういうこと?」

「いや…なんというか、リアスさんはもともと下僕相手にはスキンシップを取る節があるけどさ、朱乃さんは嫌われないようにするように振舞っているように見えるというか」

 

 しかし大一はすぐに自分の発言を後悔した。目の前の朱乃が憂いを帯びたような、バツの悪いような中途半端な笑顔になったからだ。

 

「…そうね、たしかにそうかもしれない。怖く感じる時はあるわ。イッセーくんが私を受け入れてくれないんじゃないかって」

 

 この言葉だけで彼女が言いたいことを理解した。朱乃はただの転生悪魔ではない。人間と堕天使のハーフという特異な家系であった。一誠の命を奪おうとした堕天使と同じ血が彼女には流れており、しかもそれが原因で家を追われた過去まである。

 そんな彼女だからこそ、仲間に受け入れてもらえるかは不安であった。親しい者からの拒絶、否定、不信…これらに対して彼女が敏感になっているのだろう。

 大一は困った様子で頭を掻くと、カップをテーブルに置いて頭を下げる。

 

「ごめん、軽率な発言だった」

「謝らないで。そんなふうに思われるのも仕方ないわ。でもなんというか…あなたが思うほど、私は強くないのね」

 

 憂いのこもったため息をつきながら、朱乃は呟く。

 大一にとって、朱乃はリアスと並ぶほどの付き合いであった。そんな彼女が見せる今の表情は長い付き合いの中でも初めて見た。その言葉通りともいうべきだろうか、いつもの余裕たっぷりの態度とは打って変わって、触れれば崩れそうな弱さすら感じた。

 なぜ彼女がここまで負い目を感じるのだろうか、いやたしかに堕天使はここ最近活動が活発な印象を受ける。一誠やアーシアは現に堕天使に殺されかけ、今は最高幹部のひとりが聖剣を利用しようと企んでいる。その事実こそが、彼女に負い目を感じさせるのだろう。

 

「大一だって私を恨まなかったのかしら?弟が殺されかけたのよ」

「朱乃さんがやったわけじゃないのに、恨むわけないな。それに恨むなら…」

 

 大一は再び言葉を切る。さっきとは違い、舌が重く感じる。自分の考えを口にすることこそが彼にとって禁忌なことであるように思えたのだ。

 出かかった言葉を飲み込むと、大一は言葉を続ける。

 

「とにかく一誠が朱乃さんを否定することは無い。俺が保証する」

「でも根拠は無いのでしょう」

「まあ、あいつがどれくらい堕天使に悪い印象を持っているかは分からないが…それでもだ。心配だったら説明する時に呼んでくれよ。俺が何とかする」

 

 上手く言葉が見つからないも、大一はハッキリと言い切る。彼としては祐斗のために力になれないことを少しでも払拭するために言っている気持ちになって微妙な心情になったが、言葉自体に偽りはなかった。

 そんな彼の言葉に、朱乃は面食らった表情をする。大一としては初めて見た表情だったが、間もなくいつもの余裕ある笑顔になった。

 

「ええ、期待するわ。でもちょっと意外ね。大一が私にそんなこと言うなんて」

「付き合い長いんだ。力になるよ」

「あらあら、見栄ばっかり」

「そういう毒づきが出るならいつも通りだろうな、チクショウ!」

 

 間もなく、リアスから一誠達を見つけたという連絡が入り、この日は解散となった。

 




一誠とのやり取りと同じくらい、リアスや朱乃とのやり取りが書きやすい気がします。オリ主の立場を考えれば、こんな会話があってもおかしくないと思います。
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