D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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一誠の昇格の儀式の話です。
流れ自体はあまり変わりません。


第210話 昇格儀式

 魔王領の駅に着いた一行は、リムジンに乗って式場へと移動する。トライヘキサや邪龍との戦いは終わったものの、いまだに警戒を強める警備は、少し見渡すだけでも厳戒態勢であることが察せられた。多くのお偉方や期待の新星が集まることを踏まえれば当然だろう。シャドウは『また赤龍帝だけ…』とブツブツと文句を垂れ流していたが。

 式場につくと、一誠とリアスはせわしなく準備をさせられる。その一方で、服装を整えた大一たちは関係者席についていた。

 

「なあ、大一。本当に座っているだけで大丈夫だよな?」

「大丈夫だって。リアスさんのご両親も話していただろう。俺らはここに座っているだけでいいの」

「ああ、緊張するわ…。大一の卒業式の前に、こういうことを経験すると思わなかった」

「いや、卒業式よりも遥かにこっちの方が凄いからね」

 

 会場の広さと絢爛性に両親は圧倒されていた。式場の大きさはプロ野球のドームにも劣らないほど大きく、そこにいる人たちが一誠の昇格を祝うために集まっているのだ。自分たちの知らないところで息子がこれほど慕われているのを目の当たりにすれば、その動揺と緊張も当然であった。

 

「しかし上級悪魔の式ってここまで盛大なんだな」

「いえ、ここまで大規模であるのは珍しいですわ。世界的にも有名なイッセーくんだからこその対応だと思うの」

 

 大一の隣に座る朱乃が耳打ちする。実際、彼女の指摘通りの意図は組まれているだろう。ヴァ―リが最上級悪魔への昇格をひっそりと終わらせたことを思いだせば察するのは難しくないだろう。

 

『力の誇示は一種の牽制でもあるからね。いや~、赤龍帝は愛されているからな~』

「別に私はそういうつもりで言ってません」

『ハイハイ』

 

 露骨に悪意を隠そうとしない皮肉めいた言い方をするシャドウに、朱乃がピシャリと言い放つ。所有者である大一はともかく、彼の嫉妬深い性格には、仲間達はいまだに慣れていなかった。

 とはいえ、このような会話も早々に打ち止めとなった。一誠とリアスが入場して来たのだ。一誠は悪魔の正装姿で、髪までワックスで強引に整えられていた。リアスの方は儀式用のドレスを着ており、化粧を施した美しさは遠目からでも理解できた。

 

「すごいな」

 

 無意識に口から言葉が紡がれる。とっくに弟が自分よりも先に進んでいることなど、とっくに気づいている。列車内での会話から、彼が内心とてつもない緊張を抱えているのも知っている。

 それでもリアスと共に、この式場を歩いていく姿は冥界を救った「英雄」として堂々たるものに見えた。思い返せば、堕天使から殺されかけたのを皮切りに彼は多くのことを救い、打倒してきた。主を、仲間を、家族を、世界を…。それらの結果がこれから始まるのであった。

 そしていよいよ儀式が始まる。一誠の数々の功績が読み上げられ、魔王アジュカ・ベルゼブブから期待の言葉が寄せられる。さらにはこの日のために冥界きってのオペラ歌手がオファーされて、祭壇で歌まで披露された。もっともその歌は…

 

『と~あるぅ国のぉ、隅っこにぃ、おおおおおっぱい大好きぃ、ドラゴォン住んでいるぅぅぅッ♪』

(なんで『おっぱいドラゴンの歌』なんだよ…!)

 

 どれだけ弟が認められようとも、兄として認めたくない歌と呼び名にすぐにでも耳を抑えたくなった。隣に座る朱乃が察したように彼の片手を抑えていたため、それは叶わなかったが。

 ようやく歌も終わり、本命である昇格の瞬間が近づいてくる。一誠とリアスが祭壇に立ち、まずはアジュカからの承認証の授与が始まった。

 

「リアス・グレモリー眷属たる汝、兵藤一誠を上級悪魔とする」

「謹んでお受けいたします」

 

 片膝をついた一誠は、魔王から承認証を受け取る。ここで長々と語る者もいるようだが、さすがに高校生の彼としては、リアスからの助言もあってシンプルな方を選んだようだ。

 次にリアスと向かい合った一誠は、再びその場で片膝をつく。そして彼女は係の者から受け取った王冠を、大切な「兵士」であった彼の頭の上に乗せた。主から被せられた旅立つ下僕への印は、ずしりと確かな重みを感じさせた。

 そしてアジュカが手を上げると、祭壇に黒光りする大きな石碑がゆっくりと降り立った。この石碑に触れることによって『王』としての登録が済むのであった。

 

「さあ、新たな『王』、兵藤一誠。石碑の前へ」

 

 魔王に促されて、一誠はオーラを纏わせた右手で石碑に触れる。すると石碑は紅に輝き、彼の手形を浮かび上がらせると、あっという間に輝きを失っていった。この一連の流れで上級悪魔としての登録が完了となる。最後にアジュカが一誠に「悪魔の駒」が15個入った箱を渡されて、彼らの出番は終了となる。

 あとは来賓による祝いの言葉が続く。一誠とリアスにとっては実質的な昇格の儀式を終えて、ようやく重荷を下ろしたように息を吐いていた。

 

────────────────────────────────────────────

 

 式は滞りなく終わり、一行は先に退場した一誠とリアスのいる控え室に集まっていた。仲間達が改めて祝いの言葉をかける中、両親は目元を潤ませている。

 

「なんだかわからんが、イッセーの晴れ舞台はやっぱり感動するなぁっ!なあ、母さん!」

「ええ、お父さん。うちの息子は、父親よりも出世しているようで感動しちゃうわね!ところで、上級悪魔って何が特権なのかしら?お給料が上がったりするのかしら?」

「イッセー!俺よりも偉くなったんだから、今度のボーナスで旅行券でもくれ!息子からのお祝いで母さんと旅行に行くのが夢のひとつでもあったんだ!」

「草津温泉とかいいわねぇ」

「いえ、お二人とも。イッセーの現在の立場でしたら、世界一周旅行もゆめではありませんわ」

「「せ、せ、せ、せ、世界一周ぅぅぅっっ!?」」

 

 リアスの回答に、2人とも身体を震わせて驚く。あまりの様子に、大一はシャドウで手を形成して支えるように肩をつかんだ。

 

「父さんも母さんも落ち着いてくれよ」

「だ、だって、世界一周だぞ!?そんなにすごいのか!?」

「上級悪魔はそれくらい特別なんだよ。というか、温泉旅行くらいだったら俺が出すよ」

「大一もお給料もらっていたの!?」

「一誠ほど荒稼ぎじゃないけどね。それに今後はどうなるか…いや、それはどうでもいい」

 

 大一は煩わしそうに首を横に振る。ルシファー眷属としての給料は彼の冥界の口座にしっかりと振り込まれている。サーゼクスは丁寧に相応の金額を振り込んでくれており、まったく手を付けていなかったためそれなりの額が貯まっていた。もっとも一誠の「おっぱいドラゴン」関連の荒稼ぎと比べると、雲泥の差であったが。

 そんな会話が繰り広げられる中、控え室に予想外の人物が来訪する。ライザーと母親であるフェニックス家当主の夫人が現れた。

 

「兵藤一誠さん、ごきげんよう。上級悪魔になられたようで、あらためておめでとうございます」

「こ、これは、レイヴェルのお母さん!お久しぶりです!それと、ありがとうございます!」

 

 少しあたふたしながら一誠は頭を下げて対応する。今回、彼女がここに来たのは他でもなり娘のレイヴェルのトレードの件であった。

 

「早速トレードを致しましょう。こういうのはパパッと早めに片付けた方がよろしくてよ?私も時間が取れないので、次にお会いできるのがいつになるかわかりませんし」

「そうね、確かにちょうどいいわ。こちらもトレードをしましょう。アーシアとゼノヴィアをね」

 

 夫人の話に、リアスも便乗してアーシアとゼノヴィアに声をかける。去年から2人が一誠についていくことで話がついており、いよいよそれが実現しようとしていた。

 彼女たちがトレードの準備を進めている一方で、ライザーは大一に話しかける。

 

「リアスから聞いた。今度の大会に、お前は出ないんだってな」

「ええ。一誠が抜けた分を埋めることで話は頂いていたのですが見送ろうかと。一誠もまだ迷っているみたいですが、ライザーさんは出場するんですよね」

「ああ。ウチは俺と長兄のチームが出ることになっている。優勝は難しいが、神クラスとも戦えるような機会だ。参加すること自体に意味があると思っている。だから、お前も出れば名を上げるチャンスだと思ったんだがなぁ」

 

 ライザーの言葉は、決意と同時に落胆めいたものが感じられる。彼としては兵藤兄弟の参加には強い期待があったのは間違いなかった。もっとも大一は一誠が参加することに微塵も疑いを持っていないのだが。

 

「聞けば、レーティングゲーム復帰を期待するようなファンレターまで来たみたいじゃないか。もったいないな」

「…俺も迷いましたけどね。あれを貰ったからこそ、俺は自分のチームで出たいと思ったんですよ」

「まあ、無理強いをするつもりはないけどよ…。しかしリアスの方は大丈夫なのか?お前も弟もいないし、このままだと他の眷属も何人かあっちに行くんだろう?だいぶ難しそうに思えるのだが…」

「そのあたりは大丈夫です。チームメイトについては、目星がついているようなので。しかも引けを取らないレベルですよ」

 

 先日の釣りの際に、大一が参加しない旨を話したことに、リアスと朱乃は少々残念そうな様子を見せたものの、彼を引き留めることはしなかった。もちろん、真意は違ったかもしれないが、とにかく彼の不参加については納得してくれていた。その際に、リアスの方から大会に参加する際に新たなメンバーを招き入れる予定を明かした。彼女の方も、一誠が別枠で参加することを疑っていない様子であった。

 大一とライザーが話をしている間に、気づけばトレードは済まされていた。アーシアとゼノヴィアは嬉しそうに一誠に抱きついており、レイヴェルは気合いを入れなおすように握りこぶしを作っていた。

 

「イッセーさん!大好きですっ!もう離れません!」

「ははは、アーシアが離れたことなんてないじゃないか」

「私も一緒だぞ!大暴れしてやろうなっ!」

「ほどほどに頼むぜ、ゼノヴィア!レイヴェルも、これからよろしく頼むぞ!」

「もちろんですわ。眷属としても、マネージャーとしても、『王』であるイッセー様のために尽くしますわ」

 

 さっそく眷属を得た一誠に、フェニックス家の夫人はなにやら耳打ちをする。さらに入れ替わるように、今度はライザーが彼に声をかけた。

 

「それで、兵藤一誠。念願の上級悪魔になったが、目標に変わりはないんだろうな?」

「そりゃ、もちろん、酒池肉林!美少女美女てんこもり!おっぱいいっぱい、夢いっぱいなハーレム王ォオッ!…ってのがスタートだったんですけどね。今はプラスして、身内、仲間、家族で平和に過ごせるようにできたらいいなって思います。ただ、もうひとつだけ加えることがあります。俺の大切なものを傷つける者は何人であろうと、神だろうと、絶対に倒す」

 

 一誠は部屋にいる皆に聞こえるようにハッキリと告げる。禍の団、クリフォト、邪龍、トライヘキサ…強敵たちとの戦いは、彼に強い決意を抱かせるには充分なものであった。

 それを聞いた大一はただ瞑目し、弟の放った言葉を頭の中でかみしめていた。

 

────────────────────────────────────────────

 

 ライザーたちとの話も終わり、この後に開かれるパーティーの会場へと向かおうとしていたところに、控室に3人の来客が現れた。

 ひとりはアジュカ・ベルゼブブ、そして彼と共に来たのは、たくましい体を民族衣装に包む黒髪と白い肌が特徴的な男性と、青光りする黒髪を持つ奇妙な雰囲気の中学生くらいの少年であった。特に少年の方は品定めするように一誠を見ていた。

 

「初めて見るけど、噂通りの面とそうでない面が見えるね。とはいえ、賛辞は贈らないと。上級悪魔昇格おめでとう、赤龍帝」

 

このような相手だから、警戒を感じてしまうが、アジュカが手を上げて制する。

 

「警戒を解いてくれ。このお方がキミたちに会いたいとおっしゃられたものだから、突然で驚いたかもしれないが、お連れした。───シヴァ様だ」

 

 兵藤両親を除いたメンバーが、アジュカの言葉に仰天する。グレートレッドとオーフィスを除けば、神の中でも最強と名高い破壊の存在がこの場に来ていたのだ。

 

『ディオーグが知ったら、敵意をむき出しにしそうだね』

(まったくだ。アジュカ様があの人と組んで大会を考えていたのは知っていたが、まさか一誠の昇格の儀式にまで来ているとは…)

 

 大一もシャドウも落ち着かないまま、少年…シヴァは一行ににっこりと微笑む。

 

「はじめまして、『D×D』の…駒王学園サイド、とでも呼べばいいのかな。僕はインドの三柱神の一柱たるシヴァだ。今後は付き合いが長くなるだろうから、あらためてよろしく」

「あ、ありがとうございます…」

 

 おずおずと握手をする一誠に対して、さらに男性の方も話しかけてきた。

 

「上級悪魔昇格の件、私からも祝辞を述べよう」

「…あ、あなたは、えーと」

「彼は阿修羅神族の若き王子だよ」

「マハーバリという、お初にお目にかかる。特に赤龍帝の兵藤一誠、貴殿には会いたいと思っていた。邪龍戦役での活躍は耳にしている。私も貴殿と共にトライヘキサと打ち合いたかったぞ」

「そ、それはどうも…」

 

 一誠は完全に圧倒されていた。いきなり目の前に2人も神の中でもずば抜けた存在が、祝辞を伝えに来たのだから縮み上がらない方が無理な話であった。おかげでシヴァが性欲関連の話題を振れば、緊張して早口になりながら自分のセクハラ技をぼろぼろとこぼしていうほどであった。もっともシヴァは頷きながらも、あまり本気で受け止めていないような雰囲気であった。

 

「その手の技を考案したのは、煩悩から直結したからだろう。でも、今のキミからは性による欲望を大きくは感じさせないね。キミは今、何を一番望んでいる?やはり女?それとも富?」

「ど、どっちも欲しいです!…ということではないんですかね?」

「もっと根底だ。いま、一番欲しているのはなんだい?個ではない。全とした場合だよ」

「…平穏、でしょうか。争いもなく普通に暮らしたいです。そのために、全力で戦ってます」

 

 投げかけた問いに一拍置いた一誠の答えに、シヴァは考え込むように頷く。思慮深い表情が腑に落ちる様子は、少年らしい見た目には不釣り合いであった。

 

「…そうか、そういうことか。キミの今の身体の源流たるグレートレッドは、何を求めている?」

「…次元の狭間で…平穏に泳ぐこと、でしたか?」

「そう、彼もまた何に縛られることなく、ただ自由気ままに平和にあの狭間を泳いでいたいだけだ。オーフィスも昔はともかく、今は平穏を楽しんでいるんだろう?キミの第2の肉親ともいえる二つの存在が、総じて欲するのが平穏ならば、彼らの力で構成されたキミの本質が変化していてもおかしくはないということだ。その逆もしかり。キミが本当のハーレム王になりたいのならば、その思いを落ち着かせなければ先には進めないのかもしれないね」

 

 シヴァの見立てでは、グレートレッドとオーフィスが平穏を欲していることが、一誠自身にも強く影響しているようであった。それにより、本来の彼の欲求であった性欲に枷がつけられていると思われる。

 弟に向けられた指摘に大一は自分の手のひらを見る。ひどい傷を負った皮膚は、神をも超える2匹の龍と張り合った相棒が命をかけた名残だ。もしシヴァの言うような指摘が正しいのであれば、ディオーグの望みも大一自身に少なからず影響があるのだろうか。

 戸惑う一誠に対して、シヴァの方はおかしそうに笑っていた。

 

「僕をも超えるドラゴン2体の力を得ている冗談のような存在が、何よりも平和を望み、ハーレム王を目指すか。…ふふふ、気に入った。

 アジュカ、アザゼルが僕に出した条件を覚えているのかい?」

「…欲しいものがあれば、なんでも用意するという件ですか?」

「そう、それだ。───赤龍帝、僕の陣営に来ないかい?」

 

 シヴァの申し出に再び全員が驚く。もっともシヴァはリアスの下を離れて欲しいわけでは無かった。将来、帝釈天ことインドラとの戦いになった際に、対抗する味方が欲しいようであった。相手には初代孫悟空や曹操がいることを思えば、強力な味方を求めるのは必然的なことだ。ただし苛烈な戦争を望んでいるというよりかは、趣向を凝らしたようなものを求めているようであった。

 

「これだけは覚えておくといい。今後、キミと『明星の白龍皇』のもとに訪れる存在は神クラスが多くなるはずだ。必然的に付き合いも戦いも神クラスが多くなるだろう。キミは何よりも女人と平和が好きなドラゴンかもしれない。でもね、僕はもうひとつの真実があると見ているよ。キミは強者が好きなのだろう?味方はもちろん、敵だろうと、信念を持った戦士の戦いが何よりも大好物のはずだ」

 

 シヴァという存在は、どこまでも一誠を見透かしたような態度を取っていた。そしてそれは正しかった。一誠自身、強者へと目を奪われ、気づけばそれを目標とし、超えていきたいと感じる、この1年でそれを実感していた。そうなれば、彼が取る道はすでに決まっていた。

 レーティングゲーム国際大会…これを以前から計画していた堕天使元総督アザゼルの名を関して「アザゼル杯」への参加を一誠は静かに決心していた。

 




根本的に一誠とオリ主は相容れない点も少なくありません。
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