オリ主がルシファー眷属になって間もない頃の話を想定しています。
日常系を書くのは楽しいけど、湿っぽい内容の方が筆が乗る気が…。
数十人は余裕で入りそうな大きな会議室、その中央には円形のテーブルが鎮座している。周囲は暗く、そこにだけスポットライトが当たっているような状態は物々しい雰囲気を作り上げていた。
そこに集まったメンバーのうち2人が覇気を感じさせるような緊張感を醸し出しながら、厳かな声で会話していた。
「ついにここまで来たのだ。これが終わる時、我々の栄光が果たされるのだ」
「長かったわね、SL。これが始まることをどれほど長く待ちわびたことか…感極まっちゃうわ」
「SS、キミの気持ちもよく分かる。何度もこのような場は夢見ていたからな。だからこそ、今日ここで行うことに意味があるのだ」
「ああ、楽しみだわ…今こそ始めましょう!」
「「ハッハッハッハッハッ!!」」
舞踏会に使われていそうな目元の隠れた仮面をつけた2人の男女は高らかに笑い声をあげる。会議室に響き渡る笑い声は明るくも力強く、一種の恐ろしさすら感じさせるものがあった。冥界の一角にあるこの場で、どのような画策が行われるか、それは当事者たちにしか分からなかった。
そして彼らと卓を囲むもうひとり、同じような仮面をつけていた男…兵藤大一はゆっくりと口を開いて、ただ一言つぶやいた。
「なにこれ?」
サーゼクスから呼び出しを受けて、参上した彼は渡された謎の仮面の下で懐疑的な表情をしていた。声以外の物音が無い空間、壮大な雰囲気、部屋の規模、あらゆる要素が特別感を放っていたが、着いてから間もなく呼び出しの目的を知ったため、腑に落ちない感覚が心の中に貼りついていた。
そんな彼に対して、先ほど「SL」と呼ばれたサーゼクスが声をかける。
「来てくれて嬉しいよ、D。やはりキミも我々と同じ志を抱くものであったのだな」
「いや、主であるあなたが緊急の招集をかけたんじゃないですか…というか、なんですか。この『お兄ちゃん・お姉ちゃんの会』って」
大一は自分の席に置かれてある資料のタイトルを見ながら問う。『第1回、お兄ちゃん・お姉ちゃんの会資料』と書かれており、目次が立ち並んでいた。
「言葉通りだよ。兄として、姉として、自分たちの弟や妹への愛と魅力を語り合う場さ」
「いつもやっていることじゃないですか」
「しかしこのように集まって会合することは無かったからね。今回を皮切りにどんどん規模を広めていきたいね」
うんうんと真面目に頷くサーゼクスであったが、話す内容がその真面目な雰囲気とは対照的なほどふざけているため、早々にこの場から去りたい想いが募っていく。
そんな彼に畳みかけるように仮面をつけたセラフォルーが話す。
「Dも普段から弟くんのことを大切に思っているものね。ここでいっぱい語っていってね☆」
「いや前も言いましたけど、俺はそういった感情は無いですよ、セラフォルー様」
「ストップ!ここではプライベート性を守るため、コードネーム呼びよ!気をつけて、D!」
「なんで自分はDなんですか?」
「大一くんの頭文字がDだからね。カッコいいでしょう?」
「なんかアウトな雰囲気漂いますがね…それにあっさり名前言っているじゃないですか、セラ…あー…SS様。お二人はどうしてそのコードネームに?」
戸惑い気味の大一の問いに、サーゼクスとセラフォルーは自信ありげに答える。
「私もキミと同じく頭文字だよ。LはルシファーのLだね」
(機関車みたい…)
「私はサーゼクスちゃんと頭文字が同じになるから、ソーナちゃんとの名前を合体したSSよ。セラフォルー&ソーナというところね☆」
(もう普通に名前を言っちゃっているよ、この人…)
「そうか、その手があったか!Lでなくて、Rにしておけばリアスの名前も入れられたか…くっ、どうしてルシファーはRのスペルじゃなかったんだ…!」
「ふっふっふ、愛情表現は私に分があったようね、SL!」
(俺は何のために呼ばれたのだろうか…?)
『冥界トップの姿か、これが?』
(ぐおごごご)
さっそく目の前で繰り広げられる愛情表現に、大一は戸惑い、頭の中でシャドウは呆れ、ディオーグはいびきを立てる。これを皮切りにさっそく「お兄ちゃん・お姉ちゃんの会」が始まるのであった。
第1回目となる今回の議題として挙げられたのは「弟妹の魅力を語り合う」というものであった。サーゼクス、セラフォルー共に日頃から発信しているものだと思えたが、意外なことに2人とも悩むようにうーんと唸っていた。
「これは難しいところだな。そもそも弟と妹では違いもあるから、これを語るのは難易度が高いな」
「それにどういった分野について語るのかも議題よね。それでプレゼンの内容も違うもの」
「…今更ですが、この議題を考えたのはお二人じゃないのですか?」
「いや、それだと公平性に欠けるからね。アザゼルに頼んだ」
(適当に決められたな)
『適当に流されたな』
(んぐぐ…むにゃむにゃ…)
アザゼルすら匙を投げたことが容易に想像できるふわっとした議題であったが、サーゼクスもセラフォルーも本気で悩んでいる。
「一番のポイントを語り合いたいところだが、リアスは素晴らしすぎて迷うしなぁ」
「私も同意見だわ。ソーナちゃんの魅力を1点に絞ることなど出来ないもの」
このままでは話が平行線…どころか話自体が進まずにだらだらと長引きそうな空気まで感じられるが、そこに介入するように大一の肩から飛び出したシャドウの甲高い声が響き渡る。
『ったく、だったらこれだけは譲れないみたいなのを見た目と中身からそれぞれ言うのは?いくら絞れないからって他の奴らに魅力を伝えたいなら、どうしてもってのはあるだろ』
「おおっ!それは良い案だ!」
「よーし、それでソーナちゃんの魅力をたっぷり教えてあげるんだから☆」
シャドウの案に乗ったサーゼクスとセラフォルーはどこからともなく現れたフリップとマーカーを持って妹たちの魅力を書き始める。
一方で、大一は引っ込んだシャドウに対して意外そうな声で語りかけた。
(お前がこういうのに乗るってどういう了見だ?)
『だってこうでもしないと終わらないじゃん。何が楽しくてシスコンどもに付き合わなきゃいけないんだよ。さっさと終わらせよう』
(そ、そうか…。しかし問題は俺の方だな…)
半ば舌打ちする思いで大一もペンを持つ。彼にとって弟の数々の思い出は…
「やっぱりソーナちゃんと言ったらこれでしょう!」
セラフォルーが叩きつけるかのような勢いでフリップを示す。そこにはサインのような特徴的かつ可愛いらしい文字で『ソーナちゃんはシュッとして可愛い♡そしてとっても優しい♡』と書かれていた。最後にはデフォルメされたソーナの似顔絵まで描かれている。
「ソーナちゃんの知的でキリっとした雰囲気はとても愛らしいの。冷静沈着なその素晴らしさは2人もリアスちゃんとのレーティングゲームを見てわかっていると思うわ☆」
「カッコいいじゃないんですね」
「甘いわ、D!そこで効いてくるのが、この優しいところよ!一見すれば冷静さとクールを兼ね備えたソーナちゃんだけど、その心は優しさに満ちている…そのギャップを理解した時、もう全てが愛らしく可愛いのよ☆やっぱりお姉ちゃんとして、妹の見えないながらも素晴らしいところはしっかり実感したいわ☆」
セラフォルーの目の奥からビカビカと輝くような光が漏れだしているように見えた。言葉ひとつひとつに熱意が込められており、彼女の妹への並々ならぬ想いが垣間見られる。
いつもであればその勢いに気圧されるだけだろう。しかしセラフォルーの熱弁は、ソーナとの付き合いの中で徐々に気づかされたことであった。それを溺愛するだけじゃなく、姉として理解している彼女の姿に心が震わされた。
大一が小さく感心するような息を吐く一方で、サーゼクスは心から同意するように頷く。
「わかる。わかるよ、SS。やっぱり大切な妹の美点はハッキリと理解したいものな。これは負けていられないな。私は…こうだ!」
サーゼクスはセラフォルーにも負けず劣らずの勢いでフリップを示す。彼女と違って余計な絵などは無くごちゃついた印象は無いが、丸みを感じて穏やかな文字で、リアスの美点が書かれていた。『堂々とした立ち振る舞いが美しい。夢に向かって突き進むその信念はさらに美しい』というものだ。
「これは決定的だと思うんだよ。リアスの立ち振る舞いは、若いながらも王としての懸命さが窺える。もちろん彼女が乙女心を熱く秘めているのはわかっているのだが、それと合わさって愛らしくも期待を感じさせるものだ。そんな彼女にみずみずしい若きゆえの大きな信念が入るとどうなるか。彼女の王としての気品、立ち振る舞い、強さ、美しさ…その他もろもろがさらに厚みを帯びるのだよ」
サーゼクスの語気は落ち着いていたにもかかわらず、言葉の表面化にはリアスへの並々ならぬ想いが感じられた。セラフォルーに勝るとも劣らないほどの、妹への矢印の大きさは相変わらずであった。
しかし、彼が語ったのは愛情というよりも信頼に近いものに感じられた。リアスは必ずや夢を実現するだろう、その確固たる信頼も踏まえた妹のアピールポイントであった。
「やっぱり、SLちゃんの妹への理解は素晴らしいわ。若手を集めた時のリアスちゃんの立ち振る舞いとか見れば、その可愛さがよくわかるもの!」
「いやはや、キミの情熱にも頭が下がるよ。お題通り、ソーナの素晴らしさをキッチリと伝えてくれたからね」
「「ハッハッハ!!」」
2人の魔王は再び高笑いをして、互いに妹への愛をたたえる。その勢いから、これからとんでもない計画でも練っているかのような光景であったが、大一としてはとりあえず上司たちが満足している様子に安堵する。
願わくば、これでお開きになって欲しかったが、サーゼクスとセラフォルーが期待するかのように大一へと視線を向ける。
「さあ、最後にD。思う存分、語ってくれたまえ」
「唯一の、弟での参戦だものね!期待しているわ!」
「えーと…じゃあ、これで」
戸惑い気味に大一はフリップを提示する。そこには義手に慣れておらず、半分のたくったような文字で『諦めない。程よく鍛え上げている』と書かれていた。
「まあ、何事に対しても諦めないところは、弟の強みでしょう。見た目は…いちおう鍛えているおかげか夏休み辺りから仕上がってきているのでその点を挙げました」
淡々と説明する大一に、セラフォルーは首を横に振る。その動きは明らかに納得していないようであった。
「…甘い。甘いわ、D!あなたの弟への想いは、その程度の熱量なの!仮にも『お兄ちゃん・お姉ちゃんの会』の会員なのよ!?」
指を突きつけながら熱弁するセラフォルーの姿に、大一は困ったように頭を掻く。言ってはなんだが、大一の一誠への想いと、サーゼクスやセラフォルーが妹たちに抱く想いは根本的に違った。別に弟のことが嫌いなわけではない。
しかし溺愛するような関係性ではなく、兄としての責任感の一点を中心に置いたものなのだ。
併せて、そもそも彼の良さ以上に、悪い点に目がつくのも当然であった。昔から覗きなどのセクハラ行為で他の学生からの苦情が真っ先に自分の下に来る。謝らせようとして追いかけっこ状態になることはざらにあり、生徒会や職員室に赴いて頭を下げた回数も両手の指じゃまったく足りないほどだ。
彼の良さが分からないわけでもない。その優しさや面倒見の良さ、実力など認めている点は確かにある。ただそれ以上に彼の経験上、受けてきた迷惑が多く結果としてマイナスの評価の方が大きくなっていた。大一としては妹分である小猫やアーシアの美点を語った方が100倍出てくるだろう。
するとそこでサーゼクスが思慮深い声で発言する。
「いや待ちたまえ、SS。彼の言うことにも一理ある。我々は先ほどまで多くを語ることこそが全てだと思っていた。しかしDが多くを語らないのは、彼にとって弟の魅力とはもはや当然のものであり、わざわざ発言するまでもないとは捉えられないか?」
「俺はそういうつもりは───」
「な、なんですって!?たしかに私はここでソーナちゃんの魅力を語ることだけを目的にしていた…もっとみんなに知って欲しいと思って…でもDにとっては弟くんの魅力はすでに公然の事実!つまり今さら語るほどではないということなの!」
「別に俺はそこまで弟のことを───」
「その通り。そしてこれによって示される兄弟の絆。我々の予想をはるかに上回るものであった…」
「あ、あの、サーゼクス様!?」
明らかに話の方向性がおかしくなっていると感じた大一は反論しようと口を開く。しかしサーゼクスが片手を上げてそれを制した。
「キミはもう喋る必要はないよ、D。私たちの負けだ。キミたちの兄弟の絆は見事なものだった。ここまで見せるお兄ちゃんは、まさに弟想いの概念と言っても過言ではない」
「悔しいけど、負けを認めざるをえないわね。冥界の妹想いを統べる私が宣言するわ…あなたがお兄ちゃんナンバー1よ、D!」
仮面越しにもわかるほど、すっきりした表情のサーゼクスとセラフォルーに対して、大一は困惑するばかりであった。
(いや、結局なにもしてねえぞ…俺…)
開いた口が塞がらない状態であり、同時にこの称号は弟への苦労も重ねたことを踏まえて、どこか不名誉的な気持ちを抱かせたため、なにか覆せるものを探していた。そこで手元にあった資料に書かれている今回の議題に目をつけた。
「あの、サー…じゃなくてSL様、SS様。そもそも今回の議題は語り合うことですから、勝敗などは関係ないのでは?」
「な、なんと…!敗北した我々にまでそのように言えるとは…!」
「圧倒的余裕…いや違うわ!純粋に同じ志を持つ者への慈悲…それはまさに『お兄ちゃんお姉ちゃんアガペー』!」
「感動したよ、大一くん!やはりキミを眷属に入れて正解だった!」
「よーし、じゃあ今からみんなで一緒にご飯を食べながら朝まで語り合いましょう!愛する下の子たちのことを☆」
テンションの高低差がとんでもないことになっているサーゼクスとセラフォルーは大一の肩に手を置いて、半ば連行するようにその場を後にしようとする。もはや彼は自分の先ほどの決断を後悔するのであった。
(どこで間違えた…)
『ははーん、さては魔王ってバカだな?』
(うーん…腹減った…)
もっともこの後、グレイフィアとセラフォルーの眷属数人に見つかって、説教と同時にこの会は解散することとなったのだが。
「次回はライザーくんを呼ぼうか?」
「どうせならフェニックス家のお兄ちゃん3人とも呼びましょう☆」
(まだやる気かい!)
長編の構想を練っても、なかなか手が付けられません…。