D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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前回、オリ主が戦いでいちいち駒の特性を変えているのは、根本的に「女王」の駒と相性が良くないからです。それでも彼は兵士として戦うしかありません。


第22話 聖魔と龍

 祐斗の望みは生きることであった。その望みはリアスとの出会いにより叶った。だが人生が満たされるほど、かつての仲間達の顔がちらついた。共に非道な扱いを受けた仲間の無念を晴らしたい、自分だけが幸せであってはならない、まるで呪いのように絡みつく使命感に苛まれていた。

 しかし先ほどの光が教えてくれた。彼らが本当に祐斗に望んでいることを。それを知った彼の心境はどれほど救われただろうか。だからこそ、彼は最後にけじめをつけなければならなかった。

 

「…バルパー・ガリレイ。あなたを滅ぼさない限り、第二、第三の僕達が生を無視される」

「ふん、研究に犠牲は付き物だと昔から言うではないか。ただそれだけの事だぞ?」

 

 眼前に立つバルパーの邪悪さを改めて実感する。彼の存在をこれ以上許す気は無かった。

 

「ハハハ!何泣いてんだよ?幽霊ちゃん達と戦場のど真ん中で楽しく歌っちゃってさ。ウザいったらありゃしない。もう最悪。俺的にあの歌が大嫌いなんスよ。聞くだけで玉のお肌がガサついちゃう!もう嫌、もう限界!てめえを切り刻んで気分を落ち着かせてもらいますよ!この四本統合させた、無敵の聖剣ちゃんで!!」

「僕が剣になる。部長、仲間達の剣となる!今こそ僕の想いに応えてくれッ!魔剣創造(ソード・バース)!!」

 

 醜悪に笑うフリードに対して、祐斗はまったく動じない。そして彼の剣には強力な魔と光という相反するはずの力が込められていた。禁手化した神器「双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)」による剣がその手に握られていた。

 祐斗は持ち前の速度でフリードに攻撃を入れる。フリードも対応してエクスカリバーで攻撃を防ぐが、聖なるオーラは祐斗の聖魔剣によりかき消されていく。

 

「本家本元の聖剣を凌駕すんのか、その駄剣が!?」

「それが真のエクスカリバーならば、勝てなかっただろうね。でも、そのエクスカリバーでは僕と同志たちの想いは絶てない!」

「チィ!伸びろぉぉぉぉ!!」

 

 苛立つフリードはエクスカリバーの能力を使い始める。伸縮自在、高速、透過と複数の能力が合わさった連撃であったが、今の祐斗に通用するはずもなくその攻撃を見事に防ぎ切った。

 

「そうだ。そのままにしておけよ」

 

 この戦いにゼノヴィアが介入する。聞き覚えの無い言霊を発すると、彼女はゆがんだ空間から別の聖剣を取り出した。

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。デュランダル!」

「デュランダルだと!?」

「貴様!エクスカリバーの使い手ではなかったのか!?」

 

 突然の出来事にバルパーどころか、コカビエルも驚いていた。

 

「残念。私は元々聖剣デュランダルの使い手だ。エクスカリバーの使い手も兼任していたに過ぎない」

 

 ゼノヴィアがイリナと決定的に違ったところは、彼女は元々聖剣使いとして適正があった。すなわちその才能は先天的なもので、デュランダルもそれにより扱えていた。この聖剣はエクスカリバーを超えるじゃじゃ馬…しかしその破壊力は約束されたものであった。

 

「そんなのアリですかぁぁぁ!?ここにきてのチョー展開!クソッタレのクソビッチが!そんな設定いらねぇんだよォォォォ!」

 

 怒りを露わにしたフリードはゼノヴィアに向かってエクスカリバーを振るも、彼女のデュランダルの一振りが目に見えない攻撃を一気に打ち砕いた。

 

「所詮は折れた聖剣か。このデュランダルの相手にもならない」

「マジかよマジかよマジですかよ!!伝説のエクスカリバーちゃんが木っ端微塵の四散霧散かよ!これは酷すぎる!かぁーっ!!折れた物を再利用しようなんて思うのがいけなかったのでしょうか?人間の浅はかさ、教会の愚かさ、いろんなものを垣間見て俺様は成長していきたい!」

 

 武器を折られた彼の殺気はどんどん弱まっていく。祐斗がそんな哀れな男を見逃すはずも無かった。祐斗の一振りでフリードの体は斬りはらわれた。

 

「見ていてくれたかい?僕らの力は、エクスカリバーを超えたよ…」

 

────────────────────────────────────────────

 

 事の顛末を見ていたバルパーはすっかりうろたえていた。自身の聖剣が打ち砕かれたことよりも、祐斗の持つ矛盾した力が同時にあることの方に驚いている様子であった。徐々に祐斗が距離を詰めていく中、バルパーは何かを理解したかのような表情になる。

 

「…そうか!分かったぞ!聖と魔、それらを司る存在のバランスが大きく崩れているとするならば説明はつく!つまり、魔王だけではなく神も───」

 

 バルパーの言葉は続くことは無かった。その胸に大きな光の槍が貫いていたからだ。彼は大きく吐血すると倒れ込み動くことは無かった。

 当然、これができるのは上空にいた堕天使だけであった。

 

「お前は優秀だったよ。そこに思考が至ったのも優れているがゆえだろうな。だが、俺はお前がいなくとも別に良いんだ。最初から一人でやれる」

 

 宙に浮かんでいたコカビエルは嘲笑いながら、ゆっくりと降りてくる。彼が地に降り立っただけで世界の空気が変わったような感覚になった。

 大一はつばを飲み込む。今まで生きてきた中でもこれほどの敵意とプレッシャーを感じたことは無かった。

 

「限界まで赤龍帝の力を上げて、誰かに譲渡しろ」

「私達にチャンスでも与えるというの!?ふざけないで!」

「ハハハ、ふざけているのはお前達の方だ。俺を倒せると思っているのか?」

 

 睨みつける眼光だけで恐怖に体が支配されるような気がした。それほど目の前の男は強大なのだ。

 だが彼を倒さなければ、町は滅びる。コカビエルに立ち向かわなければ全てが終わるのだ。

 一誠がブーステッド・ギアの力を発動させる。間もなく倍加の力が溜まると、彼はリアスにそれを譲渡した。リアスの撃ちだした魔力の塊がコカビエルに向かって飛んでいく。その規模はケルベロスを屠った時よりも強力であるのは間違いなかった。

 しかしコカビエルはその一撃すらも真正面から受け止める。両手を使っており、血も吹き出ていたが、防ぎ切ったその戦いを楽しむ狂気の笑顔からまだまだ余力を残していた。

 

「雷よ!」

 

 リアスの攻撃に気を取られていたコカビエルに今度は朱乃が雷で仕掛ける。だが不意を突いた程度で倒せる相手ではない。彼女の一撃をコカビエルはその黒翼の羽ばたきで防いだのだ。

 

「俺の邪魔をするか、バラキエルの力を宿すもの」

「私を…あの者と一緒にするな!!」

 

 憎しみに表情をゆがめながら朱乃が追撃するも、すべて薙ぎ払われた。

 

「ハハハ!全く愉快な眷属を持っているな?リアス・グレモリーよ!!赤龍帝、禁手に至った聖剣計画の成れ果て、そしてバラキエルの力を宿す娘とは───」

「それ以上、仲間をいじめるのはやめてもらおう!」

 

 「騎士」へと変化した大一が距離を詰めて、真横から錨で刺突する。しかしその攻撃をコカビエルは視線を向けることも無く光の槍で防いだ。

 

「まあ、大したことないやつもいるようだが…ん?」

 

 一瞬、防いだのを確認した時にコカビエルの目に輝きがあるように見えた。大一に気が向いたその瞬間に、今度は祐斗とゼノヴィアが同時に斬り込んでいく。

 だがその同時攻撃も届く前に空いている手から放つ波動により吹き飛ばされた。大一とゼノヴィアはそのまま地に叩きつけられるが、祐斗は聖剣と聖魔剣の合わせ技で再び立ち向かっていく。だが槍を剣へと変化させたコカビエルは祐斗の剣術すらも凌駕していた。

 今度は後ろから小猫が打撃を打ち込もうとするも、翼を刃と化して逆に彼女に手傷を負わせた。すぐに一誠とアーシアが介抱へと向かう。

 向かってくる怒涛の攻撃を捌くコカビエルの表情は戦いを楽しんでいた。だが同時に、何かを思案する感情も混じっている妙な表情であった。

 

「大一!」

「任せろ!」

 

 朱乃の手から放たれた雷が大一の神器に命中する。大一は翼を出すと雷の魔力を纏った錨を上空から大きく振り下ろした。「戦車」に変化したことも合わさってその威力は間違いなかったが、パワーでもコカビエルに軍配が上がる。

 コカビエルは先ほどの光の剣で防ぎながら、何かに気づいた様子を見せると、歓喜の表情になる。

 

「やはり間違いない!ようやく見つけたぞ、手がかりを!まさか今度はこんな下級悪魔の手にあるとは!」

「ああ!?何の話だ?」

「知りたければ俺を倒してみることだな。その前に俺が貴様からその力を引きずり出してやるが!」

 

 コカビエルは腕を伸ばし、大一の喉元を掴むと大きく投げ飛ばす。さらに手に持っていた光の剣を投げ飛ばした。一直線に向かうその光は彼の右翼を斬り落とした。

 

「ぐおっ!」

「これで少しは大人しくなる。その力は全てが終わってからゆっくり頂くとしようか…さて、こんなものか」

 

 戦いに区切りをつけたコカビエルは嘆息する。全員で攻め立てても、この男にまともにダメージを入れられない。全てが片手間でいなされているような感覚なのだ。

 

「しかし、仕えるべき主を亡くしてまで、おまえたち神の信者と悪魔はよく戦う」

「…どういうこと?」

「フハハハハハ!そうだったな!お前達下々まであれの真相は語られていなかったな!なら、ついでだ。教えてやるよ。先の三つ巴の戦争で四大魔王だけでなく、神も死んだのさ」

 

 コカビエルの言葉に、その場にいた者の多くが衝撃を受ける。この事実を知っていたのは、各勢力の中でも一部であった。先の戦争での被害はどの勢力も甚大であった。中核を失い、兵を失い、戦力を失い、争いどころではないほど追いつめられた彼らは人間を頼りにし、戦争を望むようなことはできなかった。

 しかしコカビエルは納得できなかった。あの戦争で多くのものを失いながらも勝機を見出していたのに、総督であるアザゼルは戦争への意欲を無くしていた。堕天使が絶対的な存在を誇示する、最強であることこそが彼にとっての誇りでもあったのだ。戦争を再び始めること、それにより彼は堕天使の存在を改めて誇示しようとしたのだ。

 コカビエルが力強く猛るのに対して、彼に勝るとも劣らないほどの声を張り上げて一誠が立ち上がる。

 

「ふざけんな!お前の勝手な言い分で俺の町を、仲間を、部長を、アーシアを消されてたまるかッ!それに俺はハーレム王になるんだぜ、てめえに俺の計画を邪魔されちゃ困るんだよ!」

「ハーレム王?赤龍帝はそれがお望みか。なら俺と来るか?すぐにハーレム王になれるぞ?行く先々で美女を見繕ってやる」

「…そ、そんな甘い言葉で俺が騙されるものかよ」

 

 誰でもわかるその奇妙な間に、大一とリアスが抗議する。

 

「この愚弟!お前、一瞬コカビエルの言葉に本気で揺れただろう!」

「イッセー!よだれを拭きなさい!あなたどうしてこんなときまで!」

「…す、すみません。どうにもハーレムって言葉に弱くて…」

「そんなに女の子がいいなら、この場から生きて帰ったら私がいろいろとしてあげるわよ!」

 

 リアスの言葉に、ブーステッド・ギアの宝玉が輝きを増す。彼の強い想いはリアスへの胸に集中していた。

 当然、この珍妙な力の上がり方にコカビエルすら当惑を隠せなかった。

 

「…女の乳首を吸う想いだけで力を解き放つ赤龍帝は初めてだ。…なんだ、お前は?」

「リアス・グレモリー眷属の『兵士』!兵藤一誠さ!覚えとけ、コカビエル!俺はエロと熱血で生きるブーステッド・ギアの宿主さ!」

 

 ああ、馬鹿馬鹿しい。それが大一の正直な感想であった。こんなことに振り回されるなど自分の甘さを呪いたくなるほどであった。もがれた片翼はまだ熱を帯びる感覚だが、死ぬほどではない。それが分かればやることはひとつであった。気を引き締めた彼は再び地面を大きく踏みしめて立ち上がった。

 その時、上空から声が聞こえる。

 

「ふふふ、面白いな」

 

 全身を纏う白い鎧、背中には8枚の光輝く翼、姿は大きく違うはずなのに一誠がライザーとの戦いで見せた「赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)」と似ている印象を抱かせた。

 そして現れた存在を確認した瞬間、大一は頭を抑える。突然、割れたかと思うほどの激しい頭痛が襲ってきたのだ。突然の来訪者に、コカビエルの存在と油断ならない状況で悟られないように声は出さずに、痛みに耐えながら見守っていた。

 

「…『白い龍(バニシング・ドラゴン)』」

 

 現れた存在に、コカビエルが呟く。一誠の「赤い龍」と対になる存在…この鎧の人物こそが「白い龍」であった。

 彼の神器「白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)」は一誠のブーステッド・ギアと同じ神滅具、すでに鎧状態の禁手化にまで発展させていた。

 白い龍がいきなり仕掛けたのは、なんとコカビエルに対してであった。その漆黒の翼をもぎ取ったかと思えば、神器から声が出る。

 

「我が名はアルビオン」

『Divide!』

 

 これこそがディバイン・ディバイディングの能力。触れた相手の力を半減させ、その力を自分自身に還元させるものであった。

 怒りに震えるコカビエルは反撃を試みるも、高速で動くアルビオンを捕らえられずにどんどん能力で力を半減させられていった。気づけば、その力はせいぜい中級堕天使程度にまで弱められていたのだ。あっという間に無力化されたコカビエルに、アルビオンは拳を腹部に打ち込んだ。

 

「あんたを無理やりにでも連れて帰るようアザゼルに言われているんだ。あんたは少しばかり勝手が過ぎた」

「貴様!アザゼルが───。アザゼルゥゥゥ!お、俺はぁぁぁ!」

 

 大きく叫ぶコカビエルに、アルビオンの拳が入り込み彼は気絶した。あれほど規格外の存在であったコカビエルが瞬く間に地に伏せられた光景に、誰もが動くことが出来なかった。アルビオンの方は悪魔たちには目もくれずに、コカビエルとフリードを回収して去ろうとしていた。

 そんな相手にブーステッド・ギアの宝玉が光りだし、呼応するかのように相手の宝玉も光りだした。

 

『無視か、白いの』

『起きていたか、赤いの』

『せっかく出会ったのにこの状況ではな』

『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういう事もある』

『しかし、白いの。以前の様な敵意が伝わってこないが?』

『赤いの、そちらも敵意が段違いに低いじゃないか』

『お互い、戦い以外の興味対象があるという事か』

『そういう事だ。こちらはしばらく独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう?また会おう、ドライグ』

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

 

 一誠も同じように前に出て去ろうとする存在に声をかける。もっともリアスの胸の件が無しになったため、ブーステッド・ギアにいる龍のドライグとは違い喧嘩腰であった。

 

「おい!どういうことだ!?お前は何者で、何をやってんだよ!?てか、お前のせいで俺は部長のお乳が吸えなくなったんだぞ!」

「すべてを理解するには力が必要だ。強くなれよ、いずれ戦う俺の宿敵くん」

 

 それだけ言い残すと、その存在は白い光となって消えてしまった。彼が視界から消えたことで、ようやく大一の頭痛も収まる。今度は一気に脱力感が襲ってきた。ひとまず町が滅ぶという危機を乗り越えたのだから。

 皆が祐斗の元へと集まる。少なくとも今回の一件で、彼の禍根は一度ケリがついたのだ。彼は頭を下げながらリアスを見据える。

 

「部長…僕はここに改めて誓います。僕、木場祐斗はリアス・グレモリーの眷属の『騎士』として、あなたと仲間達を終生お守りします」

「うふふ。ありがとう。でも、それをイッセーの前で言ってはダメよ?」

「俺だって、『騎士』になって部長を守りたかったんだぞ!でも、お前以外に部長の『騎士』を務まる奴がいないんだよ!責任持って、任務を完遂しろ!」

 

 彼の戦いはひとまず終わり、仲間の下に帰ってきた。お仕置きと言われて祐斗はリアスに何度も尻を叩かれるものの、仲間と共にいる実感がより湧いてきた。

 祐斗がお仕置きを受けているのを皆が見守る中、大一はそれが視界に入りながらも心は違う場所にいるような感覚であった。コカビエルの言葉、アルビオンを見た時の頭痛、祐斗が戻ってきた安堵だけでは払拭できない靄が彼にはつきまとっていた。

 




次回で3巻分は終わると思います。書いてみたけど、コカビエルが2話しか持たなかったとは…。
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