D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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最近、私自身がオリ主にやりすぎか?と思うことが増えてきました。キャラクターの性格と今後の展開を考えるとそのまま書くのみですが。
それと今後を見据えて、タグも追加しました。


第28話 巫女の告白

「朱乃さんに呼ばれたのは嬉しいけど、なんで兄貴まで一緒なんだよ」

「理由ないと俺だって来ないよ。まあ、道案内と護衛だな」

 

 次の休日、大一と一誠は2人で町のはずれを歩いていた。2人も朱乃に呼ばれており、あとでリアスも合流する手はずであった。

 

「なんか護衛って変な感じだな。俺にそこまでする必要あるかなぁ?」

「お前はむしろもうちょっと自覚を持て。赤龍帝という特別な存在であることにな」

 

 一誠の様子に、嘆息しながら大一は答える。これから向かう場所での目的が分かっていた彼としては、少しは気を引き締めて欲しい想いであった。

 実のところ、今回は別に同行しなくても良かった。しかしリアスと朱乃、別々に依頼されたのならば引き受けるしかなかった。リアスの方は前日の夜に朱乃が自分が来るまでにまた何かをしでかさないかという意味での抑止力、朱乃はメールで堕天使の件を話すかもしれないから同席して欲しいというものであった。

 

「いやー、でも朱乃さんに呼ばれるってだけで、胸の高鳴りがヤバいぜ。この前のことを考えると…フフフ」

「よく俺の前で堂々とそんな話できるよな」

「そりゃ、これが俺だからな」

「割り切りがいいよな、お前は。悪魔になった時もそうだったし…やっぱり心配しすぎじゃないかな」

 

 弟の笑みに、大一は頭を掻く。一誠の態度から朱乃を拒否する理由が思いつかないのだ。それでも彼女は不安になっている。同席してほしいというだけの話であったが、そこまで何もしないのは彼としても寝覚めが悪い想いだ。

 大一は静かに息を吐くと、言葉を少し考えて一誠の顔を見て問う。

 

「なあ、一誠。お前は朱乃さんのことは好きか?」

「へ?なんだよ、いきなり」

「あの人はあの人なりに抱えているものが大きいんだ。本人も気にしていると、俺は思う。だからこれは俺の勝手な頼みだと思ってくれ。彼女に何があろうとも受け入れて欲しい」

 

 あくまでも彼女の望みではなく、自分が勝手に思っている願い…そんなニュアンスで一誠には追求した。

 兄の様子が違うのをくみ取ってか、少し気恥しそうに頬をかきながら答える。

 

「…なんか、深刻だけど俺が朱乃さんを嫌うなんてありえねえよ。大事な仲間だし、憧れの先輩だし、それに…」

「それに?」

「兄貴がそれくらい信頼する人だしな」

「…そうか。ん、見えてきたな」

 

 一誠の自信たっぷりな表情を確認した大一は、視線の先の神社を指さす。それには一誠も面食らった様子であった。悪魔が神の領域でもある神社に入るのはとても難しいものなのを彼は知っていた。しかしこの神社がそれとは違う特殊な場所であることまでは知らなかった。

 石段の下に見知った女性が立っている。いつもと違い、巫女服に身を包んだ朱乃は笑顔で彼らを出迎えた。

 

「いらっしゃい、イッセーくん、大一」

 

 大一と一誠は、朱乃に続くように石段を上る。この神社は特別な約定が取り決められており、悪魔でも入れるという特殊な場所であった。同時に以前の神主が亡くなった後にこさえられた朱乃の住まいでもあった。

 石段を上がり切ると、間もなく聞き覚えの無い声が彼らの耳に入ってきた。

 

「彼が赤龍帝ですか?」

 

 突然の声に、一誠は驚きその方向を振り向く。そこには豪華な白いローブを身にまとった金髪の青年が立っていた。不思議な印象を抱かせるがもっとも目を引くのは、頭部の上にある輪っかだろう。

 驚く一誠をよそに、大一の方は軽く一礼する。男性の方も同じように礼を返すと、一誠に向かって手を差しだした。

 

「初めまして赤龍帝、兵藤一誠くん、私はミカエル。天使の長をしております。なるほど、このオーラの質、まさにドライグですね。懐かしい限りです」

 

────────────────────────────────────────────

 

 今回、この場所に来たのは赤龍帝である一誠にアスカロンと呼ばれる聖剣を天使側が提供することであった。アスカロンは「龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)」の異名を持つ聖剣。特殊なものではあったが一誠でも扱えるように特殊な儀礼を施し、ミカエルがブーステッド・ギアに同化させるのであった。

 ミカエルは今回の三大勢力の会談に大きな期待を寄せていた。互いに多くの戦力が失う中、小競り合いでもこのまま戦いを続ければ滅びの道を辿ることは必然。その前にこの会談で手を取り合い、この危機に終止符を打とうとしているのだ。アスカロンもそのための贈り物であり、すでに裏で互いに取引をしていた。

 この取引自体にあまり時間はかからなかった。ミカエルが去った後、大一と一誠は和室に通されて、朱乃が出したお茶を2人ですすっていた。3人の空気は静かでありながら、いつもとはどこか違う雰囲気であった。考えてみれば、この組み合わせでひとつの部屋にいるということは今まで無かったから当然かもしれない。ましてや、朱乃と大一は例の一件があるから気まずくもなる。大一としては、さすがに彼女の出生に関わることなので自分から話を切り出すつもりは無かったが、その口火を切ったのは意外にも一誠であった。

 

「ひとつ、訊いてもいいですか?…朱乃さんは堕天使の幹部の…」

「…そうよ。元々私は堕天使の幹部バラキエルと人間との間に生まれた者です」

 

 重苦しい雰囲気で彼女は自分のことを話し始める。かつてある神社の娘であった母親がひとりの堕天使と恋に落ちたこと、その堕天使がグリゴリ幹部のバラキエルであること、その2人からひとりの娘が生まれたこと…。

 その証拠を見せるかのように、翼を広げる。片や悪魔、片や堕天使とその事実を証明するかのような両翼であった。

 

「汚れた翼…。悪魔の翼と堕天使の翼、私はその両方を持っています。この羽が嫌で、私はリアスと出会い、悪魔となったの。でも、生まれたのは堕天使と悪魔の羽、両方を持ったもっとおぞましい生き物。ふふふ、汚れた血を身に宿す私にはお似合いかもしれません」

 

 自嘲しながら彼女はその翼に触れる。一見なまめかしいが、それでいてどこまでも存在を否定するかのような怒りと悲しみのある手つきであった。

 一誠はちらりと兄を見る。大一の方は特別驚いた様子もない。もっとも一誠はなんとなく分かっていた。彼女に対しての疑念、ここに来る前の兄の言動、だからこそ兄がいるこの場でも自分からこの疑問を投げかけることが出来たのだ。

 

「…兄貴は知っていたんだな。だから俺に…」

「当然だ。そしてお前がどういうかも予測はできるがな」

 

 一誠は生唾を飲み込むと、朱乃を正面から見る。

 

「堕天使は嫌いです。でも、朱乃さんのことは好きですよ。出生のこと、これ以上は詳しくは訊きません。ちょっと確認したかっただけなんで…。逆に俺が悪いこと訊いたかなって、いま後悔してて…。本当にすみません」

 

 驚く朱乃に対して、一誠はしどろもどろに言葉を続ける。

 

「なんていうか、朱乃さんは優しい先輩です。俺は確かに堕天使嫌いですけど、朱乃さんは違うと思うし、朱乃さんは朱乃さんで、オカルト研究部の副部長で…堕天使の血を引いてるって知っても朱乃さんのことを嫌いになりませんでした。今でも変わらず好きですから、問題ないんじゃないんでしょうか?あー…えっと…そうだよな、兄貴」

「困ったからって、俺に振るなよ…。

 まあ、でも一誠が言ったことが全てだ。俺にとってもリアスさん同様に一番信頼できる仲間なんだから、それであなたを否定する理由にはならないよ」

 

 うまく言葉が出てこない様子の一誠に、大一はこれで決まりともいうように付け加える。たったそれだけの言葉なのに、朱乃にとっては間違いなく救われた瞬間であった。

 潤む目を指で拭いながら、彼女は憑き物が落ちたような笑顔で2人を見る。

 

「ありがとう、2人とも…!」

 

 大一は安心した。彼女の背負うもの、忌み嫌う自分という存在、それを弟が受け入れてくれたことに。兄である彼がいなくてもこの結果は変わらなかっただろう。それでも自分が信頼する女性が、そのしがらみを少しでも振りほどけたことには安心しかなかった。

 朱乃は静かに息を吐くと、顔に手を当てていつもの笑顔になる。

 

「うふふ、それじゃあリアスが来る前にお楽しみをしちゃおうかしら?」

「もうその言葉だけで、いつもの調子に戻ったのが分かるよ」

「あらあら、誉め言葉として受け取りますわ。それじゃあ、まずはイッセーくんから…」

「マジっすか!?いやでもダメですよ、兄貴のいる前で!でも朱乃さんのを堪能できるなら…!」

「お前はまだ全容を聞いていないのに、何を想像しているんだ」

「それにもう来ちゃいましたし…残念ですわ」

「え?来たって…」

 

 一誠が言葉を続ける前に、ふすまの扉がピシャリと開かれた。そこには青筋を浮かべたリアスがその場に立っていた。どこから聞いていたのかは分からないが、この様子だと朱乃が誘惑しようとしていたのだけ聞こえたのは間違いないだろう。

 

「さて、朱乃?何をしようとしていたか説明の準備は?」

「んー…大一に任せようかしら」

「おい!…あー、とりあえずミカエル様は帰りましたし、一誠も例の剣は受け取りました。つまり全部終わりました」

「あなたにもちょっと話があるけれども、今日のところはとりあえずいいわ。終わったならば帰るわよ」

 

 その勢いに飲まれて、一誠はすぐに立ち上がり大一もやれやれといった様子で後に続こうとするが、朱乃に肩を掴まれて押し戻されてしまった。いきなりのことで驚く大一をよそに、朱乃はリアスと一誠を見ながら口を開く。

 

「悪いんだけど、大一はもうちょっと借りますわ。これから大事な打ち合わせがあるもの」

「大事な打ち合わせって…まさか、大一!あなた、朱乃の方を応援を!?」

「いや別にそういうのは無いですよ!」

「ウソだろ!兄貴が朱乃さんとそういう関係だったなんて!」

「お前も何の勘違いをしているんだ!」

 

 最後の最後まで言い合いに発展したまま、腑に落ちないリアスは一誠と共に先に帰っていった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 リアスと一誠が去った後、和室に残された大一は上半身を裸になり、その背中を朱乃が触っていた。傍から見れば妙な勘違いをされる状況であったが、実際は以前コカビエルにもぎ取られた翼の付け根のところに魔力を流してもらっていただけであった。

 

「いつから気づいていた?」

「この前のプール開きから。イッセーくんや後輩の前で弱みを見せないようにしているんだろうけど、私の目はごまかせないわ。まったくこの雑な処置…アーシアちゃんに回復してもらわなかったの?」

「アーシアにもやってもらったさ。ただ光の力の影響なのか、服の上からだと完全に回復とまでいかないんだよ」

「呆れた…。アーシアちゃん相手に、裸を見せたくなかったということでしょ」

 

 後ろにいて顔が見えないはずなのに妙なオーラと朱乃の嘆息した様子が見える気がした。かなり強引に問い詰められて、脱がされた形だったのでもはや大一も反論する余裕は残っていなかった。

 

「まさか、このためだけに残したわけじゃないだろうよ」

「まあ、あの時にリアスにやりすぎたから…ちょっとしたお詫びかしら」

 

 おそらくプールの一件を話しているのだろう。本人としてもリアスをからかうのが目的だったとはいえやりすぎたと思っていたようだ。今回、一誠と二人きりで帰るように仕向けたのが、彼女の話すお詫びなのだろう。

 彼らの間に沈黙が訪れる。いつもなら朱乃の冗談やからかい、大一のツッコミが飛び交うものだが、この日に限って不思議な雰囲気が場を支配していた。そんな状況で、大一はふと言葉を漏らす。

 

「ここに来たのは久しぶりだ」

「3年前でも覚えていたのね」

「ここで悪魔になったんだ。忘れようもないよ」

 

 この場所に再び足を踏み入れるとは大一も思わなかった。あの日のことは、今でもよく覚えている。静かな神社で彼らしくもない涙を流しながら悪魔になることを懇願した、あの瞬間から彼の人生は大きく変化したと言えるだろう。

 大一が何を思ったのか、朱乃は理解していた。まさにその場に彼女もいたのだから。魔力を流す手を離すと、背中から抱きしめるように静かに体を密着させた。

 

「無理しているのね…」

「朱乃さん、からかうにしてもそういうのは───」

「いいから話を聞いて」

 

 困惑しながらも振り払おうとする動きをする大一の言葉を、朱乃がさえぎる。いつもの穏やかな雰囲気と似ていたが、静寂の中にも鋭さのある声色であった。

 

「まずちゃんとお礼を言わせて。今日は本当にありがとう」

「俺は何もしていない。一緒にいただけで、約束通りのフォローも出来なかった」

「イッセーくんが話していたじゃない。ここに来る前になにか話してくれたのは分かるわ。それに傍にいてくれただけでも安心したの。内心、とても不安だったのよ…」

 

 朱乃の言葉に大一は押し黙る。その空気から彼女が自分の告白がいかに重く、苦しいものであるかを物語っていた。一方で彼がどのような感情を抱いているかは、まるでわからなかった。

 

「私ね、男の子が得意じゃないのは嘘じゃないのよ。でもそれ以上に嫌われることの方が怖いの。そんな私が本心で話せるあなたの存在はとても嬉しいし、心から救われる。あなたは私にとっても信頼できる人…一緒にリアスの隣を守ってきた強い人なんだもの。だから───」

「やめよう、こういうのは」

 

 朱乃の感情を切り崩すかのように大一は感情を抑えた声でさえぎる。そのまま彼女を優しく引き剥がすと、大一は自分の服を着ながら立ち上がった。

 

「俺なんかよりも良い人はたくさんいる。ちゃんと惚れた人に言うべきだよ」

「大一、私は…」

「俺だって、朱乃さんのことは本当に信頼しているし、仲間として大切だ。でもそれだけだ。治療、ありがとう。俺は帰るよ」

 

 それだけ言い残して、大一は足早に神社を去っていく。残された朱乃は唇を噛み、彼が出ていったふすまを見る。

 

「そう思うなら…私のことも頼ってよ…。私の想いだって…」

 

 ふすまから風が入る。夏の暑い風のはずなのに、もの悲しさを覚える冷たさを感じた。そしてこの風が、ひとりで歩いていた大一の自己嫌悪にまみれたため息を運ぶことは無かった。

 




こんな感じになるのは時間の問題だと思っていました。そしてそれすらも振り払うオリ主の心情は…。
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