D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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 とにかく書いたら投稿していきます。まず一巻分を消化できるようにしなければ。


第3話 互いの紹介

 早朝の駒王学園はさすがに人も少なかった。教師たちはまばら、朝練を始めている部活さえまだない。ましてや、オカルト研究部という文化的な部活は活動すらしていなかった。しかしそこには、すでに兵藤大一が頭を抱えながらノートを広げていた。いつもは禍々しさを醸し出す部室も、朝の光が少しでも入れば輝かしい雰囲気もありながらも、同時に掃除では拭いきれない古さも露呈している。そんな閑散とした部屋で大一は自分で淹れたお茶をすすりながら、ペンを走らせる。口の中には特別美味くもない味が広がっていった。勉強に集中するには、それで良かったかもしれないが。

 早朝から学校に来たのには、なるべく一誠やリアスと会いたくなかったからだ。昨晩、一誠を介抱した大一は家につくと服を脱がせそのまま彼のベッドに置き去りにした。彼が堕天使から受けた傷は想像よりも深く、悪魔にとって毒である光の力がよりダメージを大きくしていた。もちろん治療はできる。しかしそのやり方が問題であった。傷の深さから大量の魔力を体に流し込む必要があるのだが、体を直に密着させる必要があった。

 それにリアスは育ちのせいなのか、それとも悪魔的感性なのか、どこか一般常識に欠けるところがあった。特に性方面については突拍子もないところが目立つ。しかも身内にはかなり甘い性格なので、気を許して何をしでかすかわからない時も多々あるのだ。

 この2つのことから、リアスが一誠に対して取る行動を予測するのは難くない。それがわかれば、騒ぎに巻き込まれないように逃げるだけだ。

 

「あれ、大一さん?」

 

 後ろから呼ばれて振り返ってみると、木場祐斗がいた。相変わらず完璧ともいえる顔で大一のことを不思議そうに見ている。

 

「早いですね。なにかあったんですか?」

「昨日、弟が堕天使に襲われてな。光の攻撃喰らったから、部長が治療に当たっているんだよ」

「ああ…朝に顔を会わせるのが気まずいから早く来たと」

「それ以外、何があるんだって。お前こそ早かったじゃないか」

「ちょっと物を取りに」

 

 そう言って、祐斗は本棚を漁る。目当ての本はすぐに見つかり、大一も特に気にしていない様子でノートに視線を移していたのだが、何も言わず出るのも気まずかったのか、祐斗は話を続けた。

 

「僕も以前に一度だけ受けましたけど、あれはさすがに困りますからね。部長はそっちの方が早いし治癒の効果もあるって言いますけど」

「それなりに付き合いがあっても、理解しかねるな」

「大丈夫なんですか。一誠くんの評判を考えると手を出すかもしれませんよ」

「さすがに惚れてもいない相手に襲われたらあの人も黙らねえだろ。それにそんなことは万にひとつもありえない。弟は流されやすくも、基本はヘタレだからな」

「学校での評判を聞いていると、そういう勘繰りしちゃいますよ」

「お前、本気で言ってないだろ」

 

 大一は顔を上げて、口元に笑みを浮かべる。基本的に疲れているのか、げんなりした表情が多い男なのか、その笑顔すらもおぼつかないように祐斗は見えた。

 

「まあ、リアスさ…あー部長についてもちょっと振る舞いは考えて欲しいものだがな。あの人は次期当主になることについて、自覚が無さすぎる」

「でも大学までは好きにやらせてもらうという条件なんでしょう?」

「そうだよ。ただ俺としては今から意識くらいして欲しいものなだけ」

 

 再び視線をノートに移して答える大一に、祐斗は眉を上げた。彼の言うこともわかるのだが、はっきりと言うものだ。祐斗は大一との付き合いは学園に入ってからなので1年ほどだが、その期間でもこの男が転生悪魔とは思えないほど、悪魔の伝統的な考え方を抱いているのを知った。先日も弟が殺されたのに、怒りに身を任せた行動などは取っていない。呆然としていたが、それだけなのだ。

 

「大一さんって人間から転生した割には、悪魔の世界で規範的な考え方をしますよね」

「人間から転生したのは、お前もだろう。人のこと言えないものだぞ」

「…そうですけど、僕はこれでもそっちの方面とは関わりがありましたから。大一さんはなんというか…」

「ただの一般家庭」

「そうですね。ちょっとそれが不思議で」

 

 祐斗は少し遠慮するような言い方をする。大一のどこかドライかつ真面目な悪魔的価値観については祐斗も思い当たる節はあるのだが、又聞きな上に確証も無いので言及しようとは思わなかった。

 大一は大一で、祐斗の言い方に特に反応も見せず、残ったお茶を飲み干した後に話を続けた。

 

「言ってもこれからは俺だけじゃない。一誠だって同じような立場になるんだ」

「そういえば今日でしたね。一誠くんに真実を話すの」

「まあ、混乱しないことを祈るだけだな」

 

 あまりこの話を広げられたくなかったのか、大一はノートをパタンと閉じると、荷物をまとめ始める。祐斗もそれ以上は話さず最近の悪魔の仕事について当たり障りない話をしながら、大一と共に部室を後にした。

 

────────────────────────――――――――――――――――――

 

 早朝の兵藤家では大一の予想通り、裸のリアスが隣に寝ていたことで一誠と両親が混乱の状態だった。その場に出くわさなかった大一は胸をなでおろすような気持だったが、彼の意に反して別の方面でその日は苦労を迎えた。

 原因は一誠とリアスが2人で登校してきたことであった。リアスは学園の中で男女ともにずば抜けた人気があり、ファンと呼べる存在はこれでもかというほどいる。そんな彼女がエロいことで有名な男と一緒に学校に来たのだから、当然のごとく他の生徒が面食らっていた。

 これについて本人に確認しようとするのは少ない。リアスには遠慮があるし、一誠には関わりたがらない人も多いので親友くらいだ。そうなればリアスと同級生で、一誠の兄である大一に話が回ってくる。

 

「先輩!どうしてあんな奴とリアス先輩に関係があるんですか!」

「知らないよ」

「お前の監督責任だろ!どうにかしろよ!」

「無茶言うな」

「むしろお前が彼氏で、NTRの可能性は…」

「事実無根だ!」

 

 こんなやり取りがその日ずっと行われていたのだ。放課後にもなれば、逃げるように部室へと向かい、そのままソファに座り込んだ。部室の奥ではリアスがシャワーを浴びており、その近くで朱乃がタオルを用意していた。大一の対面に座る小猫はいつものごとく和菓子を食べている。祐斗はすでに一誠の迎えに向かっていた。

 

「まさかここまでなるとは思わなかったわ」

「部長はその辺り鈍感ですものね」

「朱乃さんも人のこと言えないけど…」

 

 朝の騒ぎについて上級生の3人が各々に口にする。女性陣は特に気にしていないような、一方で大一の方はすっかり疲れてどうでも良さげな口調だった。

 眠そうに目を抑える大一は、誰に言うでもなくぽつりと呟く。

 

「身内と改まった感じで会うのも不思議なもんだ」

「…食べます?」

「今はいいかな。気持ちだけ貰っとく」

 

 大一が笑顔で手を振ると、小猫はフォークに刺した羊羹をそのまま口に運ぶ。無表情ながらも、その気遣いが彼にはありがたかった。

 間もなく木場祐斗がノックして、扉の外からひょこっと顔を出した。

 

「部長、連れてきました」

「ええ、入ってちょうだい」

 

 このやり取りだけで切羽詰まったような緊張が大一を襲う。ただこの後の事実を弟が受け入れてくれることを願うだけであった。

 

────────────────────────――――――――――――――――――

 

 一誠は状況が読みこめなかった。昨日の夜から不可思議なことが起きすぎているのだ。とてつもない痛みに気絶したと思ったら、朝は学園のアイドルであるリアスが裸で添い寝。一緒に登校までした。そして彼女の使いとして来た木場祐斗に案内されると、学園の人気者や兄がそこに集まり、悪魔だと名乗られる。こんなことをすぐにでも理解しろという方が酷なものだ。

 さらに驚いたのは、彼女たちの口から天野夕麻について語られたことであった。なんでも彼女は堕天使という悪魔の敵対種族であり、彼の体にある特別な力…神器(セイクリッド・ギア)を狙ったというのだ。一誠が考える強い存在(漫画のキャラを言ったら兄に目を細められた)を思い浮かべると、その腕には赤く重そうな籠手が現れた。この籠手の力を狙われたらしい。

 あらかたの説明を受けても、全ての話を理解できた自信はない。同時にどこまで話を信じていいのかもわからなかった。しかし一誠含めた全員の背中から黒い翼が現れるのを見ると、いよいよリアスたちの話も真実味を帯びてきた。自分が死んで悪魔になったということが。

 

「改めて紹介するわね。祐斗」

「僕は木場祐斗。兵藤一誠くんと同じ二年生ってことはわかっているよね。えーと、僕も悪魔です。よろしく」

「…一年生。…搭城小猫です。よろしくお願いします。…悪魔です」

「三年生、姫島朱乃ですわ。いちおう、研究部の副部長も兼任しております。今後もよろしくお願いします。これでも悪魔ですわ。うふふ」

「兵藤大一…今さら自己紹介なんてする間柄じゃねえな。まああれだ、お前と同じく悪魔になってしまったわけだ」

「そして私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくね、イッセー」

 

 彼女らの紹介にただ自分の境遇が現実離れしていくのを実感する一誠であった。

 

────────────────────────――――――――――――――――――

 

 その日、大一と一誠は一緒に帰っていた。兄弟2人で帰るなんて小学生以来だったため、2人の間には奇妙な空気と沈黙があった。

 大一は居心地が悪かった。できることなら朝と同様に逃げてしまいたい気持ちだったが、事実を知った以上は何らかの形で向き合う機会が必要だと思ったのだ。

 だが自分から沈黙を破るつもりはなかった。一誠に対して自分から切り出しても薄っぺらい内容にしか思われないだろう。だから帰路の途中くらいで一誠が話を振ってくれたのはありがたかった。

 

「あのさ、兄貴。もしかして夕麻ちゃんのこと覚えていたのか?」

「ああ、覚えていたよ」

「なんで教えてくれなかったんだよ!」

「リアスさんに言われたから。それ以外にあるか」

 

 一誠が不満そうに眉を曲げる。非難を受けるのは充分承知している。いくらリアスが諭そうが、悪魔になるなど早々受け入れられることじゃないだろう。

 

「俺さ、正直腹が立ったんだ。運が悪いとはいえ、こんな形で人間をやめちゃうなんて」

「…だろうな」

「でもなっちまったものどうしようもないからさ。悪魔として、頑張っていくぜ!」

 

 一誠はやる気を表すように、こぶしを叩く。態度にこそ表せなかったが、大一は驚いた。

同時に情けながら安心した自分がいた。

 

「良くも悪くもその楽観的なところは羨ましいよ」

「いやだって、ハーレムを作れるかもしれないんだぜ!そりゃ、やる気が湧かない方がおかしいだろ!」

「結局、それが本音かい!」

「それ以外あるわけねえだろ!それに兄貴、俺は何も全部納得したわけじゃないんだ」

「…何がだよ」

「なんで、学園の二大お姉さまと知り合いなのに俺に教えてくれなかったんだよォ!こんな酷いこと許せるわけねえだろ!」

「お前、やっぱりバカだよ!」

 




 主人公がどういう人物なのかは考えているけど、それを表せているかが不安になります。
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