D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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まんまタイトル通りの内容です。


第42話 特訓の開始

 温泉での一幕からの翌早朝、グレモリー家の庭の一角に集まっていた。全員がジャージ姿で、これからの修行への意気込みも充分であった。

 

「先に言っておく。今から俺が言うものは将来的なものを見据えてのトレーニングメニューだ。すぐに効果が出る者もいるが、長期的に見なければならない者もいる。ただ、お前らは成長中の若手だ。方向性を見誤らなければ良い成長をするだろう。まず、リアス」

 

 アザゼルは全体を見回すと、最初にリアスに対して指摘を入れる。

 

「お前は最初から才能、身体能力、魔力全てが高スペックの悪魔だ。このまま普通に暮らしていてもそれらは高まり、大人になる頃には最上級悪魔の候補となっているだろう。

 だが、将来よりも今強くなりたい、それがお前の望みだな?」

「ええ、もう二度と負けたくないもの」

 

 アザゼルの問いに、リアスは力強く反応する。ライザーの敗北が強く影響しているのは疑いようもなかった。

 そんな彼女に課せられたトレーニングメニューは特別なものではなかった。あくまで基本的なものであるのと同時に、彼女に求められたのはレーティングゲームでの知識。機転や頭脳も必要となるのが「王」だ。今後を戦うにあたって、あらゆる戦術や動きを頭に叩き込む必要があった。

 

「次に朱乃」

「…はい」

 

 アザゼルの呼び声に、朱乃は露骨に不機嫌そうな表情をする。堕天使のボスだけあって、彼女の苦手意識は並々ならぬものであった。

 

「お前は自分の中に流れる血を受け入れろ」

「!!」

 

 その直球な指摘に、朱乃はさらに顔をしかめる。アザゼルの見立てでは、あのフェニックス家とのゲームにおいて、彼女は相手の「女王」に苦戦することがありえなかった。本来、彼女の持つスペックをすべて活かすことが出来るのなら。もはや雷だけでは限界がある現状、堕天使の光の力も合わせた「雷光」を使いこなすことを求められた。

 

「…私は、あのような力に頼らなくても」

「否定するな。自分を認めないでどうする?最後に頼れるのは己の体だけだぞ?否定がお前を弱くしている。辛くとも苦しくとも自分を全て受け入れろ。お前の弱さはいまのお前自身だ。決戦日までにそれを乗り越えてみせろ。

 じゃなければ、お前は今後の戦闘で邪魔になる。『雷の巫女』から『雷光の巫女』になってみせろよ」

「…」

 

 アザゼルの言葉に、朱乃は押し黙る。彼女の葛藤は難しいところだろう。強くはなりたいが、忌み嫌う力を認めることには当然抵抗がある。それを堕天使総督から指摘されれば、尚のことだろう。

 一言でも彼女の力になれるような言葉が出ればよかったのだろうが、あいにく大一には思いつかなかった。

 その後もアザゼルのトレーニングメニューの教示は続いていく。祐斗は先日覚醒した禁手の時間を延ばすことと基礎トレーニング、さらに剣術について彼の師匠が駆けつけてくれるとのことだ。ゼノヴィアはデュランダルとなにやら用意されているもう1本の聖剣の扱いの訓練、ギャスパーはアザゼル特性の引きこもり脱出計画だ。

 さらにアーシアのメニューは、神器だけあってかアザゼルも力を入れている印象であった。基礎体力の向上に加え、彼女の神器「聖母の微笑」の回復範囲を広めるために回復のオーラを飛ばすという方法を実践しようとする。

 そしていよいよ残り3人となった時、アザゼルは小猫と大一に交互に視線を向けた。どちらから取り掛かろうか迷っている様子であったが…。

 

「次は小猫」

「…はい」

 

 気合いの入った声で反応する。昨日のうなだれていた様子がウソのようであった。

 

「お前は申し分ない程、オフェンス、ディフェンス、『戦車』としての素養を持っている。身体能力も問題ない。───だが、リアスの眷属には『戦車』のお前よりもオフェンスが上の奴が多い」

「…わかっています」

 

 ハッキリとした言葉に、小猫は悔しそうに答える。現状、グレモリー眷属でトップクラスの攻撃力は光の力を使える祐斗とゼノヴィアが抜きんでている。併せて、一誠のブーステッド・ギアも入れば、彼女よりも強力な攻撃を出来る者はいくらでもいるだろう。

 

「小猫、お前も他の連中同様、基礎の向上をしておけ。その上で、お前が自ら封じているものを晒け出せ。朱乃と同じだ。自分を受け入れなければ大きな成長なんて出来やしねぇのさ」

「…」

 

 朱乃同様に、小猫は黙り込む。アザゼルの言葉に、すっかり意気消沈してしまったのだ。そんな彼女を気遣ったのか、元気づけるように一誠は声をかける。

 

「だいじょうぶ、小猫ちゃんならソッコーで強くなれるさ」

「…そんな、軽く言わないでください…っ」

「一誠、お前はまず自分を気にかけろ」

 

 不穏になる小猫から注意をそらされるように、大一は弟をたしなめる。ほんの少し前から上空から奇妙な魔力を感じていたのだ。どことなく龍のオーラを想起させるような感覚…一誠の練習メニューが予想できてしまった。

 

「さて、来たか。それじゃ、まずはイッセーからだな」

 

 間もなく、上空から巨大な存在が現れる。15メートルはあろうかという巨体、大きくさけた口からはギラリと凶暴そうな歯がむき出しになっており、腕や脚も巨体に強靭な太さであった。横に広がる両翼も合わせて、その姿はまさにドラゴンであった。

 

「ドラゴン!」

「アザゼル、よくもまあ悪魔の領土に堂々と入れたものだな」

「ハッ、ちゃんと魔王さま直々の許可をもらって堂々と入国したぜ?文句でもあるのか、タンニーン」

「ふん、まあいい。サーゼクスの頼みだというから特別に来てやったんだ。その辺を忘れるなよ、堕天使の総督殿」

「ヘイヘイ。───てなわけで、イッセー。こいつがお前の先生だ」

「えええええええええええっ!この巨大なドラゴンが!?」

 

 あまりの衝撃に、一誠は叫び声をあげる。このドラゴン───タンニーンはドライグとも旧知の仲であり、五大龍王に名を連ねていたこともあった。その異名は『魔龍星(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』、得意の炎は隕石を想起させるほどの威力であった。

 タンニーンはリアスから特訓場所として山の使用許可を取ると、一誠をつまんでそのまま空へと飛んでいった。彼の目標はとにかく神器を自力で禁手に至らせること。そのためにわざわざ化け物クラスの龍に声をかけたのだ。

 

「イッセー、気張りなさい!!」

「部長ォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」

 

 リアスの激励に、一誠の叫びがこだまする中、アザゼルは大一に向き合う。一誠の件はもう過ぎたこととして、あっさりとしていた。

 

「それじゃ、ちょっと順番は変わったが最後だ。大一」

「はい」

「お前も小猫同様に筋は悪くない。ゲームの経験はほとんど皆無ながら、炎駒からの叩き上げの特訓と日頃からのトレーニングのおかげか基礎的な体力、戦い方は充分だ。しかし言い方を変えれば、お前にはそれしかない。激的な伸びしろが無いんだ。まあ、こればかりは元々の能力や神器、才能が物をいうが…」

「自覚していますよ」

「今回のトレーニングは木場のように炎駒が見ると申し出があったが、俺の方から断った。というのも、やったところで体力が強化されるくらいだろうからな。そこでこれをお前に渡す」

 

 アザゼルはどこからともなくリュックサックを取り出し、それを大一に押し付けるように渡す。見た目はなんの変哲もないが、思った以上に重かった。

 

「なにが入っているんです?」

「植物図鑑と初心者向けの魔法の使い方の本。あとは生活に使いそうなやつだな」

「…意図がわからないのですが」

「まあ、聞け。これからお前には俺と炎駒で選んだ場所に魔法陣で飛んでもらい、サバイバル生活をしてもらう。強い魔物も多いから、そこで生きること自体が特訓になるぞ。魔法の方はついでだ。お前、魔力を別の物質に変えるどころか、放出して攻撃として撃ち出すことも出来ないらしいじゃねえか。だから座学で少しでも戦闘に仕えそうなものを学んでおけ」

「俺だけ方向性が違いすぎませんか?」

「基礎が出来ているお前には、もっと応用性を重視した動き方や別に出来ることを増やしてもらおうと思ってな。大丈夫だって!本当にヤバイ時はブザー鳴るようになっているから!」

 

 そう言ったアザゼルの手にはたしかに独特な形をしたものが握られていた。しかしどうも誤魔化すための急ごしらえで用意した者にしか見えなかった。しかも先ほどからアザゼルが意図的にリアスや朱乃から目を逸らしているのがわかる。こんな反応を取られては、炎駒はかなり反対したのではなかろうかと思ってしまった。

 

「よし、とりあえずお前も行ってこい!」

「うおっ!ちょ、ちょっと!」

 

 押し付けるように魔法陣が描かれた紙を渡されると、大一の姿はグレモリー邸の庭から消えてしまった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 魔法陣で大一がたどり着いた場所は自然が生い茂っていた。正面は深そうな森、そこから流れている川が彼の右に通っており、奥へと続いていく。草や木は人の手が入ったと思えないが、代わりに大きな動物が踏みつけたように草がつぶれていたり、なぎ倒された跡が見られた。

 冥界にもこんなに野性的な場所があることに驚きつつ、自分がまだまだ悪魔としてひよっこであることを思い知らされた。

 とにかく決まってしまったものは仕方ないと思いつつ、大一は体を伸ばす。

 

「まあ、川近くに飛ばされただけでありがたいか。水は確保できるし、あとは食い物と寝床───」

 

 やるべきことを確認するために独り言をつぶやく中、彼はすぐに言葉を切って体をひるがえす。同時に「生命の錨」を取り出すと、いきなり襲ってきた魔物の一撃を防ぐ。見た目はクマであったが、頭には角、攻撃のために振ってきた手は人間のように長い指と鎌のような爪が印象的であった。

 

「グルルルルッ!」

「パワーあるな、コイツ…!オラぁ!」

 

 魔力で腕力を上げて強引に薙ぎ払うと、クマの魔物は素早く下がりそのまま距離を保っている。どのように攻めればいいかを考えているように見えた。

 こんな時、リアスや朱乃のように魔力を撃ち出せればいいのだが、大一にはそれが出来なかった。しかも今は片翼も無いので、空を飛ぶこともままならない。

 この状況に約10分間、にらみ合いを続けるといよいよ魔物の方が我慢できなくなって、正面からツッコんでくる。バタフライのような態勢で両腕を振りかぶるが、大一は右腕を出来るだけ固くさせ片方の攻撃を防ぎ、もう片方は錨で払った。間髪入れずに、下から魔物のあごを蹴り上げる。そうとうな重さであったが、なんとか魔物の体を起こすように飛ばすと、止めとばかりに喉元を錨で刺突する。魔物は苦しそうに手を振るが、間もなく動きが止まった。

 錨を魔物から引き抜く。勝負自体は単純なものであったが、命のやり取りを終えたことを自覚すると汗が噴き出てくる。

 

「このレベルがいきなり襲ってくる。こりゃ、下手したら夜も寝ていられないな。ここまでしたアザゼルの狙いは…」

 

 頬についた返り血と吹き出た汗を拭いながら大一はつぶやく。なるほど、ただでさえ出来ることが少ない自分に対して、常に油断できないこの状況、とことん追い詰めて必死にさせることによって、大一になにか特別な力が開花することをアザゼルは期待しているのかもしれない。仮にそんなことが無くても、ここに寄こす前に話していた対応、応用力は身につくはずであろうから、無駄にならないというわけだ。

 軽くため息をつくと、大一は少し歩く。幸い、すぐにそれなりに大きな木を発見したため、そこを仮の拠点としてバッグの中身を漁り始めた。ご丁寧にメモが書かれた付箋をつけている。植物図鑑(食える果実とか多分載っているだろ)、魔法の使い方が書かれた入門書(火ぐらいは起こせるようになっておけ)、空の水筒(中身は自分でな)、タオル2枚(こういうの使えそうだろ)、エロ本(とりあえずお前の好みだと思うやつを選んだ)…

 

「いるかぁぁぁぁ!」

 

 キレながら、大一はエロ本を地面に叩きつける。こんなことの連続だから、大一はいつまでたってもあの男を信用できなかった。

 しかしここで大声を出したのが、運の尽きであった。なにやらうめき声が聞こえたかと思うと、さっきと同じ魔物が4匹も現れた。

 

「ぐおがあああ!」

「ああ、くっそ!最悪だ!」

 

 大一はバッグを背負うと全速力で逃げ始める。これがあと20日間続くと思うと、先日の風呂の件も含めてアザゼルに怒りをぶちまけたい感情であった。

 この30分後、木の上に登ってやり過ごした大一であったが、今度は姿を隠れさせるカメレオンのような魔物に襲われる。倒すとその音で、また魔物の集団に襲われて、また木に登ってやり過ごし、疲労で眠りにつくと30分もしないで悪夢の声に起こされる。

 大一にとって、トレーニングの初日はごっそりと気力を奪っていくものであることは疑いようもなかった。

 




さあ、オリ主はなにか変わることはできるのでしょうか。
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