D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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迷って迷って、1話にまとめました。
個人的にはシトリー眷属の方がデザイン好きです、はい。


第49話 シトリーとの試合

 ゲームが始まってすでに数分間が経過していた。大一、祐斗、ゼノヴィアの3人は立体駐車場にいたが、前方にはシトリー眷属が陣取っていた。相手は「女王」真羅椿姫、「戦車」由良翼紗、「騎士」巡巴柄の3人だ。

 

「ごきげんよう。3人がここへ来るとはわかっていました」

 

 椿姫が淡々と答える。今回の試合、リアス達は最初にギャスパーに偵察をさせつつ一誠と小猫、大一と祐斗とゼノヴィアの2ルートに分かれて攻めていた。相手がもっとも警戒してくるであろう相手は禁手にも至った一誠が「女王」に昇格すること。だが攻めにおいては祐斗、ゼノヴィアもかなり強力であったため、一方を囮にしつつどちらからでも強力な攻めを狙えるような配置にしていた。だからこそ、感知に優れる小猫と大一をそれぞれに配置している。

 とはいえ、ここにいきなり3人と手堅く配置していたのを見ると、リアスの狙いはどうも看破されていたようだった。

 

「まさかこんなに早く椿姫さんを相手にするとは思わなかったよ」

「こちらとしては予定通りです」

 

 大一の言葉に、挑むように椿姫は自分の得物である長刀を向ける。にらみ合いが続く中、グレイフィアのアナウンスが響き渡る。

 

『リアス・グレモリー様の「僧侶」1名、リタイヤ』

 

 先手を取られたのはリアス達であった。アナウンスでは「僧侶」だけであったが、アーシアはリアス、朱乃と一緒にいるので、討たれたのがギャスパーであることは疑いようも無かった。

 

「冷静ですね」

「ええ、こういうのに慣れておかないと身がもちませんから」

 

 椿姫の言葉に、祐斗が冷静に返す。彼としては内心穏やかではなく、その仇討に燃えていた。ゼノヴィアの方も目が据わっており、その心情が察せられた。もっとも大一はこうなる可能性は考慮しており、相手の手際の良さに感心していた。

 

「まったく、あいつは体の鍛えが足りないから。だが、かわいい後輩をやられたのでね。仇は討たせてもらうよ」

 

 とてつもない殺気でゼノヴィアは聖剣を構える。そのプレッシャーは肌がひりつくような想いを感じさせた。

 全員が一斉に動き出す。祐斗が椿姫と、ゼノヴィアが巡と、大一は由良とぶつかり合った。他の2人から刀身がぶつかり合う音が聞こえる中、大一が振り下ろした錨を、由良は腕を交差させて手の甲で挟み込むように受けた。防いだ瞬間に、わき腹を狙うように蹴りを入れられるが、大一もそれを見越してすぐに錨を持ち上げながら、魔力を込めて体を硬化させて攻撃を防いだ。それでも「戦車」のパワーで押し込まれそうになったため、大きく横に飛んで距離を取った。

 由良がすぐに距離を詰めて、拳を連続で打ち込むが、大一は錨の柄を使って彼女の手首を狙いつつ払うように、拳の攻撃を防いでいく。

 

「けっこう長身で見下ろすことが多いんですけど、先輩相手だと見下ろされますね。リーチの違いがシビアですよ」

「そう言いながらも、俺に対して的確に格闘をしかけてくるじゃないか。純粋な力だけじゃない。その経験に裏打ちされた体術は間違いないな」

「その言葉、そっくり返しますよ」

 

 由良はとにかく押し込むように猛攻を仕掛けていく。大一の反撃を蹴りに対して、彼女は脚を掴みそのままぐるっと一回転して投げ飛ばした。身体能力は同等だが、攻撃の手を止めない彼女に後退を強いられる。

 大一はちらりと祐斗とゼノヴィアに視線を向ける。元より聖剣を使える彼らは武器の面で大きく有利であった。特にゼノヴィアについては一誠からアスカロンを借りており、見事に扱いこなしていた。

 彼らへの援護が必要ないと感じた大一は、体を硬化させての体当たりを狙う。牽制で魔力を撃ち出しながら、手頃な車の上へと着地しようとした。どうもいくつかの車に魔力を感じたため、罠が張られているのは想像に難くなかった。当然、彼は魔力の感じない車の上へと着地しようとするが…

 

「うおっ!?」

 

 足を踏みしめようとした瞬間に、大きく態勢が崩れる。車の上が異常に滑りやすくなっていたのだ。車から滑り落ちた大一はその原因となったものに触れる。なんてことはない、ただの油であった。おそらく食品売り場辺りから取ってきた食用のものだろう。

 だがこの一瞬が、勝負を動かした。由良は素早くゼノヴィアと巡の戦いに介入する。

 

「反転(リバース)!」

 

 この瞬間、ゼノヴィアの聖剣にまとっていたオーラが魔のオーラへと変化した。聖なる力でなくなった剣を由良は白刃取りすると、そのまま強力な蹴りでゼノヴィアを強襲する。この攻撃をゼノヴィアは避けるが、先ほどの不可思議な現象は彼らに少なからず動揺を与えた。いずれにせよ、ゼノヴィアが苦手なカウンタータイプだとわかると祐斗は彼女に声をかける。

 

「ゼノヴィア!チェンジだ!」

「待て、祐斗!それは───」

「おっと!先輩、それ以上の言葉は無しですよ!」

 

 大一の言葉を遮るように喜々として巡が魔力の斬撃を飛ばす。錨でその攻撃を薙ぎ払うも、すぐに由良が車を思いっきり投げ飛ばして追撃してきた。魔力を込めて錨を振り下ろすと、再び由良が攻めてくる。気がつけば、ゼノヴィアは椿姫と、祐斗は巡と対戦していた。わざわざ隙を作り、この状況を作り上げたのにはどこか作為的なものを感じた大一はなんとか彼女の援護に向かおうとするも、それを相手は許すわけがなかった。

 

「どけ、由良!」

「そうはいきません!今のところは完全にこちらの作戦通りなんですから!」

「───神器『追憶の鏡(ミラー・アリス)』」

 

 椿姫が守るように出した鏡をゼノヴィアが破壊すると、それに対するように強力な波動が彼女を襲う。その威力にゼノヴィアの体からは鮮血が噴き出した。知っていた椿姫の神器とはまるで違う使い方に、シトリー眷属への評価の甘さを大一は呪った。

 祐斗は素早くゼノヴィアを回収し物陰に隠れると、大一も手近な車へ身を隠す。

 

(あの程度でやられるとは情けない女だ)

(お前はちょっと黙ってろ!)

(戦いに口出しはしないが、感想は言うぞ。甘いんだよ、お前らの考え方は)

(説教やアドバイスは終わってから聞く!)

 

 大一は歯を食いしばりながら、頭の中のディオーグに答える。だが彼の言うことはその通りだと思った。カウンター使いをわざわざ2人も用意して、確実に手数を減らしにかかってきている。今思えば、由良の強気な攻め方は、魔力感知でも気づかないような古典的な方法でわざと大一を引き離し、祐斗とゼノヴィアの片方に確実にカウンターを仕掛けるためであろう。ここで数的有利を取るのは大きかった。いかんせん、祐斗にはカウンター使いをぶつければいいし、決定力の無い大一には数で押せるのだから。

 この攻めあぐねる状況の中、耳につけられた通信機に祐斗の声が聞こえる。

 

『大一さん、聞こえますか?一瞬だけでも3人を相手にすることできますか?』

『まあ、出来るにはできるが…ゼノヴィアは?』

『おそらくこのままリタイヤは必至。でも最後のあがきはできそうです』

『…わかった。俺が囮になる』

 

 大一は姿を現すと、魔力を撃ち出す。あっさり巡に斬り伏せられたが、全身に魔力を込めつつ、椿姫へと突進をしていく。彼女は長刀で迎え撃つが、大一はそれを掴んだ。間もなく、巡と由良も横から攻めてくるもそれは防がずにあくまで硬化した体で受けた。

 すっかり攻撃に転じてきた大一に気を取られた彼女たちは、祐斗とゼノヴィアが技を撃ち出す技への反応が遅れてしまった。

 

「───デュランダル・バースッ!」

 

 聖魔剣にデュランダルも合わせた強力なオーラは由良と巡を貫き、見事に彼女らをリタイヤさせた。椿姫の方は逃がしたようだが、この圧倒的に不利な状況で相手を追い込んだのは大きかった。

 

「先輩、すまなかった」

「ここまでやってくれれば充分さ。まず休んでいろ」

「そう言ってもらえると助かる。木場、いい攻撃だったな」

「ああ、僕とキミが組めばまた聖なる剣を咲かせられる」

 

 このやり取りの間もなくゼノヴィアの姿も消えていった。残った大一と祐斗は合流地点を目指して、再び歩を進めていった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 グレモリー眷属の脱落者はギャスパーとゼノヴィアの2人に対して、シトリー眷属の脱落者は4人。一誠と小猫の2人が匙と仁村の兵士コンビを倒し、元より数的有利のあるグレモリー眷属の方が現状は圧倒的に有利であった。

 それなのに大一は奇妙な感覚がぬぐえなかった。先ほどのシトリー眷属との戦いはもちろんのこと、リアス達と合流したショッピングモールの中央広場でソーナが大胆不敵に待ち構えていたことが腑に落ちない。周囲に結界が張られた彼女の近くには、「僧侶」花戒と草下、そしてここまで下がってきた椿姫がいた。奇妙なのは、花戒と一誠の間に奇妙なラインが繋がっていたことであった。

 全員と合流したリアスはソーナと相対する。

 

「…ソーナ、大胆ね。中央に来るなんて」

「そういうあなたも『王』自ら移動しているではありませんか、リアス」

「ええ、どちらにしてももう終盤でしょうから。それにしてもこちらの予想とはずいぶん違う形になったようね…」

 

 自分の作戦が完全に読まれていたことにリアスは苦笑するが、さらに想定外のことが起きた。急に一誠が膝をついたのだ。すぐにアーシアが回復させるも、どうも効果が薄い。いきなりのことにリアス達は訝しむが、その理由がソーナから語られる。

 

「あなたの血です。人間がベースとなっている転生悪魔。人間は体に通う血液の半分を失えば致死量です。知っているでしょう?レーティングゲームのルール。ゲーム中、眷属悪魔が戦闘不能状態になると、強制的に医療ルームへ転送されます」

 

 一誠に繋がっていたラインはリタイヤしたはずの匙の神器によるものであった。そのラインと繋がれた先は血液パック。そこから彼はどんどん血液を抜かれていき、追い込まれていった。

 彼女が一誠を危惧していたのは、その折れない精神であった。フェニックスとのレーティングゲームではそれが顕著に表れており、彼の赤龍帝の力と併せると脅威であるのは明らかだ。だからこそ彼を倒すために、誰よりもその意志が強かった匙を主体にした策を巡らしていた。

 

「リアス、あなたのプライドと評価は崩させてもらいます」

 

 ハッキリと言い切るソーナに、リアスは苦虫を嚙み潰したような表情になる。このゲーム、常にソーナの方が覚悟を決めていたのは疑いようも無かったことを目の当たりにしたのだ。

 そんな中で、一誠はふらつきながらも立ち上がる。鎧に包まれながらも、どこか異様な雰囲気を醸し出していた。

 

「リタイヤ前に…俺は俺の煩悩を果たしてから消えようと思う…」

 

 その瞬間、一誠を中心に奇妙な空間が広がる。この時点で敵味方関係なく女性陣は身を守るような態勢を取っていた。すでに「洋服破壊」などという最低の技を開発しているのだから、当然だろう。だが現状、彼女たちの服がはじけ飛ぶようなとんでもない事態は起こらなかった。だが一誠が次に放った言葉で場の空気が変わった。

 

「部長、いま俺を心配してくれましたね?変なことばかりしていると体に障ると…」

 

 いきなり自分の心中を当てられたリアスは驚愕する。さらに立て続けにソーナの方に目を向けると彼女の考えをも見抜いた。

 

「ソーナ会長、いま俺の必殺技が心の声が聞けるものだと思いましたね?ふふふ、違う。当たっているけど違うんですよ。俺は聞きたかったんです。胸の内を!否!おっぱいの声を!」

 

 一誠の新技「乳語翻訳(パイリンガル)」は、女性の胸に語り掛けることで相手の本心を聞くことが出来た。タンニーンとの修行期間の禁欲生活により、こんな技を開発したらしい。その後も一誠は喜々として相手の「僧侶」から胸の内を聞いたりと、やりたい放題であった。

 当然、この技に感心する者はおらず、ソーナは目元を引くつかせ、リアスは完全に呆れながら嘆息した。

 

「リアス…これはちょっと…」

「ゴメンなさい…」

「怖い技だと思うけれど、プライバシー侵害で、このままでは女性悪魔と戦えませんよ?」

「ええ、厳重注意しておくわ…」

 

 このやり取りに一誠は衝撃的な表情を見せる。間違いなく役に立つ技だと思っっており、これほどの批評を受けるとは思っていなかったようだ。まるで自分の評価が…

 

「…本当のど変態じゃないか!」

『ど変態ですッ!!』

 

 一誠が両陣営の女性陣から総ツッコミを受ける中、大一はソーナ達に対して土下座をしていた。一誠の新技の説明を聞いてからずっとこの体勢であった。さすがに先輩の哀れな姿に小猫が問いかける。

 

「…先輩、なにやっているんですか?」

「弟の愚行に対しての謝罪…。でもさ、もうなにをやったら責任とれるかわからないんだよ…。あれか、いっそ俺が腹を切ればいいのか…?」

「しっかりしてください。どこの武士ですか」

 

 弟とは違う意味で、大一は床に膝をつく。さっきまでの警戒心が瓦解し、代わりに後悔と謝罪が彼の中で急速に積みあがっていくのであった。

 そんな兄の感情はいざ知らず、最後のあがきとして一誠はソーナの胸から作戦を聞き出した。どうやらここにいるソーナは「僧侶」の2人が作り出した立体映像で、本物は屋上にいるとのことだ。

 それだけ伝えると、一誠は倒れ込む。さすがに血液を抜かれすぎたようで、彼の体力は限界に来ていた。ここでアーシアが回復させようとして近づくが、この緩み切った空気の中でもシトリー眷属は油断していなかった。まず椿姫がアーシアを妨害するが、すぐに彼女は修行で習得した回復のオーラを飛ばす方法に移ろうとする。そこを見計らって花戒がアーシアに近づき、由良と同じように「反転」を行ったのだ。回復が逆の効果を発揮するのならば、当然それはダメージとしてアーシアに襲い掛かる。近くにいた花戒も相応のダメージを喰らったが、元より玉砕覚悟の作戦だったのだ。

 間もなく、その場で3人の悪魔が脱落していったことを知らせるアナウンスが鳴った。

 

────────────────────────────────────────────

 

 あっという間に一誠とアーシアの強力な戦力を失った。残ったリアス達の間にどこか重い空気が流れる。ソーナとシトリー眷属の覚悟は彼女らの想像の遥か上を行っていた。己の道の険しさを理解し、それを打ち破るためにぶつかっていく…彼女らの本気には、頭の下がる想いであった。

 大一はこの現状に、頭の中でつぶやく。

 

(侮っていた…だけじゃ済まされないな)

(だからつまらねえのさ。こんなゲームに命がけだ。やるからにはルール無用の死闘だろうに。もっともそれすらできないお前はもっとつまらねえが)

(…俺の甘さは認める。だがな)

 

 息を吐いて気合いを入れ直す。いかに彼らが命がけでも、大一は負けるつもりなどさらさら無かった。彼のリアスへの誇りと忠誠は変わっていない。自分も己の弱さを嘆くこともあったが、神器の事件を通してより前に進む覚悟を身につけた。それらを発揮するのはまさにこの瞬間であった。

 

「さて、どうします?誰が我々と戦いますか?」

 

 長刀を構えながら椿姫はリアス達に問う。隣の草下もすでに魔力を溜めており、戦う準備は万全であった。

 この状況で、リアス達の方も2人受けて立つように前に出てきた。

 

「リアスさん達は先に屋上に行ってください。ここは俺らで」

「ここまで相手の作戦通りでしたもの。これ以上はかき乱されませんわ」

「大一、朱乃…頼んだわよ」

 

 リアスは祐斗と小猫を連れて、ソーナのいる屋上を目指す。小猫の感知能力があるのだから、今さら逃すことなどはしないだろう。

 残った大一と朱乃に、シトリー眷属も警戒を示す。

 

「グレモリー眷属で主の両脇を固める2人が相手とは…警戒してくれたのは光栄だわ」

「しかし私達も強くなっています。姫島先輩や兵藤先輩でも負けませんよ」

「そうですわね。実際、ここまで追い詰められたのですから。それでも私達だって負けませんわ。リアスのためにも」

「あとはまあ…自分の為にもってところだ」

 

 各々が叶えたいもの、乗り越えたいものを秘める中、4人が一斉に動き出す。朱乃の草下は互いに魔力による攻撃を撃ち出してぶつかり合い、大一と椿姫は互いの得物を振るっていく。

 

「すでに作戦負けしている身。ならば、一瞬で勝負をつけて、少しでも評価を取り戻させてもらいますわ」

「姫島先輩相手でも負けません」

 

 朱乃はもっとも得意とする雷の攻撃を、草下に撃ち出す。大量の雷が轟音を慣らしながら彼女を襲っていった。

 

「反転!」

 

 向かってくる強力な攻撃にもひるまずに、草下はカウンターを狙うが、雷は妙な音を上げながらあっという間に彼女を包んでいった。朱乃が撃ち出した攻撃は、これまでの雷とは違い、光も併せた「雷光」となっていた。つまり草下は雷のみ反転しようとしただけで、光までは反転できずにそのまま攻撃を喰らってしまったのだ。宣言通り、彼女は確かに一瞬で決着をつけたのだ。

 そんな朱乃は、椿姫と戦闘中の大一を見るが、すぐに彼の方から制止がかかった。

 

「朱乃さん、手出ししないでくれよ!」

「ここまで来て、私達をまだ侮る気なの!?」

「侮るものか!全力で立ち向かわなくちゃ勝てない!それを分かっているからこそ、格上のあなたに対してひとりでやるんだ!」

 

 これは椿姫の神器がカウンター主体であることをわかっているからこその判断であった。朱乃の援護を利用されて、こちらへの致命傷に繋がることもありえる。接近戦においては武器の扱いは同等だが、身体能力と硬度の引き上げにより長期戦になれば彼に分があった。

 それを理解してか、椿姫も長刀で攻撃しながら打ち崩せない相手に苦心の表情を浮かべる。互いに素早く武器を振るっているため、神器のカウンターも狙いづらかった。

 

「無名とはいえ、ドラゴンと融合したことによるさすがの身体能力…!こっちとしても決定打がない…だったら!」

「なにを…?」

「反転!」

 

 椿姫は取り出した「フェニックスの涙」を大一にかけようとする。先ほどのアーシアの回復を反転させてダメージへと変換していたのを見ていたため、これには彼も警戒して錨で払うように、フェニックスの涙を防ぐ。

 だが反転を受けたことで、錨には当然強烈な力が加わるが…

 

「錨が壊れない…!?神器でもこれほどのダメージを負えば、少しの時間でも機能停止になってもおかしくないのに!」

「割れないよ、こいつは。俺の錨の見た目とか、あんまり気にしていなかっただろうよ」

 

 そのまま大一は錨で椿姫の長刀を打ち砕く。彼の「生命の錨(アンク・アンカー)」はディオーグの力が漏れ出した取っ掛かりであり、神器とはまた異なる存在だ。それでも何にも染まっていない純粋な魔力と生命力の塊だからこそ、彼の意思で他の魔力に合わせることが出来た。そして同時に飲まず食わずでもあの過酷な封印場所でも生きていたディオーグの生命力と堅牢さも受け継いでおり、ディオーグと融合したことを契機にその特性はより強化され、見た目も変化していた。柄は少し長くなり、先端の鋭さが上がり、以前よりも槍に近い見た目となっていた。

 

「『生命の錨』改め『金剛の魔生錨(アダマント・アンク)』…やれることは変わらないが、その名の通り強固さは間違いない。当然、それは俺自身も!」

 

 長刀を砕かれ驚いた隙を、大一は見逃さなかった。椿姫の懐に飛び込むと、全速力で突き進んでいく。折れた長刀で攻撃するも、大一の体に傷はつかず、そのまま一気に彼女のを広場端の壁へと突進して叩きつけた。

 

「グッ…!まさか『兵士』のあなたにここまで…!」

「一誠ばかりに気を取られすぎだよ。俺はあいつよりも前からグレモリー眷属の『兵士』をやっているんだ」

 

 脱落した椿姫を見ながら、大一は疲れたように座り込む。引き上げた魔力を全身にまとっていたが、かなり時間をかけていた上に、常に最大出力で引き上げていたため、かなりの体力を消費した。相性と錨のパワーアップを見破られなかったから勝てたが、さすがにこの勝利は紙一重と言わざるをえなかった。その証拠に魔力を解いた瞬間に、膝をついてしまった。

 そんな彼を支えるように、朱乃が肩を貸す。みっともないとわかっていながらも、彼女に支えられながら2人は屋上を目指した。

 

「お疲れ様。錨のこと、話してくれなかったのは不本意だったけど」

「やれることが変わったわけじゃなかったからな。それに見た目も大きく変化していたわけじゃ無かったし」

「まあ、いいわ。格上の『女王』への勝利、かっこよかったもの」

「朱乃さんの雷光も見事なものだったさ。やっぱり憧れるな、あなたの強さには」

 

 間もなく、ソーナが投了したアナウンスが流れる。波乱のレーティングゲームはリアス達の勝利で納められた。

 




読み直して、そろそろ一誠のセクハラネタがギャグでも厳しい気がしてきた…。
そして5巻もそろそろ終わりそうです。
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