D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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体調崩すと、マジで考えていたことが頭から飛ぶということを実感した最近です。


第52話 歓迎と約束

「紫藤イリナさん、あなたの来校を歓迎するわ」

「はい!皆さん!初めまして───の方もいらっしゃれば、再びお会いした方のほうが多いですね。紫藤イリナと申します!教会───いえ、天使様の使者として駒王学園に馳せ参じました!」

 

 放課後の部室で、イリナの自己紹介に皆が拍手を送る。大一が朝に聞いた転校生とは、イリナのことであった。自己紹介を終えるなり、彼女は主やミカエルへの話始めて見事に部室にいるメンバーを苦笑させた。

 なんでも彼女も神が死んだことについては知っており、今回はミカエルの使いとして来たのだという。さすがに信仰心の強い彼女からすればこの事実を知った時はショックを受けたそうで、以前の件についてアーシアに平謝りしていた。

 そしてミカエルの使いというのは、教会からというわけでなく…

 

「───紫藤イリナといったか。お前、天使化したのか」

「はい。ミカエル様の祝福を受けて、私は転生天使となりました。なんでもセラフの方々が悪魔や堕天使の用いていた技術を転用してそれを可能にしたと聞きました」

 

 イリナが祈る仕草をすると、体が光りだし同時に天使の翼が彼女の背中から現れた。もはや彼女は普通の人間でなく、天使としてこの場に来ていた。上級の天使であるセラフメンバーはそれぞれA~クイーンのトランプに倣った「御使い(ブレイブ・セイント)」という配下を持ち、イリナはミカエルのAに当たるようだ。

 しかも将来的にはレーティングゲームまで視野に入れているのだという。同盟が決まってから2か月も経っていないはずなのに、天使の展開には感心する気持ちであった。

 いずれにせよ、今すぐに影響することがないとのこと。

 

「悪魔の皆さん!私、いままで敵視してきましたし、滅してもきました!けれど、ミカエル様が『これからは仲良くですよ?』とおっしゃられたので、私も皆さんと仲良くしていきたいと思います!というか、本当は個人的にも仲良くしたかったのよ!教会代表として頑張りたいです!宜しくお願い致します!」

 

────────────────────────────────────────────

 

 後日、大一は地下にあるトレーニングルームで体を動かしていた。家を改造されてから使ってみたいと思っており、最近はここに来る回数も増えている。だいたいはひとりで取り組んでいるのだが、今日は珍しく部屋には彼以外にもいた。

 

「しかしイリナまでウチに住むとはなあ…」

「夏休みで魔改造受けたおかげですっかり駐屯地扱いだ。祐斗やギャスパーがいないことが、不自然にすら思うな。まあ、一番驚いたのは父さんも母さんもあんなに受け入れが早かったことだけど」

 

 バタフライマシンを動かしながら大一は、ぼやいている一誠に視線を向けずに答える。住むところが無いイリナもまさかの同居となった。とはいえ、元々ゼノヴィアという知り合いがいて、さらにはアーシアも教会出身者のため、早々に馴染んでいた。一誠の話ではクラスでも持ち前の明るさから、あっという間に打ち解けていた様子であった。

 

「実際、これは夢のような生活だと思うんだよ。母さん以外、ここにいるのみんな美人でさ」

「そういう気持ちはわかる。俺もクラスの連中にそこを指摘されたよ」

「兄貴、そういう自慢するタイプなんだな」

「俺じゃなくて、相手が勝手に言い始めたことだよ!反論できない俺もあれだったが…。というか、お前はなにしにここにいるんだよ。俺と話すためにいるってわけでもないだろうに」

「いや、それが…」

 

 一誠は気まずそうに頬をかきながら、視線を逸らす。ちらりと目を向けた大一はらしくない弟の姿に手を止めて、首にかけていたタオルで汗を拭いながら話を続ける。

 

「おいおい、本当に俺と話しに来ただけかよ」

「うるせー。俺だっていろいろ悩んでいるんだよ。聞いてもらいたいことだってあるんだ」

「…深刻なものだったら聞くけどさ」

「俺にとっては深刻だよ。なんというか…肩身が狭い!」

 

 一誠の悩みはシンプルなものであった。やはり女性が増えたことで、居心地が悪く感じることが増えたのだとか。会話にもなかなか入れず、困ることが増えたのだという。

 

「兄貴いるからまだなんとかなっているけど、今後ハーレムを目指すにはこういうのもなんとかしなければいけないと思うとさ。なんとかならねえかな───」

「はい、お疲れさま」

「いや、話を聞くって言ったじゃねえかよ!どうしてさっさと部屋を出ていこうとしているんだよ!」

「俺からすれば、どうでもいい内容だからだよ。というか、前も思ったけどなんで俺にそんな話できるかなあ…」

「だって事情を知っている上で、わかってくれそうなの兄貴くらいだし」

「1学期の頃の普段の生活に自覚があれば、こんな発言出てこないだろうにな。というか、無理に話す必要も無いだろうに」

「むしろ兄貴は慣れすぎなんだよ。普通に話すしさ」

 

 一誠は口をとがらせて、兄に抗議する。たしかに一誠よりは大一はこの生活に慣れているようであった。女性陣と話す際に躊躇している様子も見受けられない。

 とはいっても、これは1学期の間に一誠、リアス、アーシアの件で肩身が狭い状況に慣れていたこと、一誠と違ってリアスと朱乃以外には先輩として接していること、元々トレーニングや読書をしてひとりで時間を潰すことには抵抗がないことなどの理由があった。

 大一は近くのトレーニングマシンに腰掛けると、顎をかいて考える様子を見せながら答える。

 

「…まあ、お前の言う通りハーレムを築くためには考えることかもしれないけどよ、今はまだ良いんじゃないのか?まだ高校生だし、悪魔の寿命は長いんだ。その辺りはゆっくり考えていけばいいだろうよ」

「でもさ、この気まずさはなんとかしたいというか…」

「考えすぎってやつだよ。別にそれで仲が悪くなったわけじゃないんだから。まあ、相手の話を聞くことを意識すれば、ある程度は会話にも入っていけるかもな」

 

 大一の言葉に、一誠は考え込むように顔に手を当てる。直情的な印象が強い弟が有名な銅像のようなポーズを取っているのに一瞬吹きだしそうになるが、咳ばらいをして誤魔化した。

 

「ああ、そうだ。でもアーシアのことは気にかけてやってもいいかもな。どうも元気が無さそうに見えることは多いしな」

「そうだよな。あのディオドラだっけか…いきなり結婚なんて…ぬあー!思い出したらムカついてきた!絶対にアーシアをやるわけにはいかねェ!でもアーシアは…実際はどうなんだ…」

「感情が忙しい奴だなぁ。とにかくあいつのことは心配してやってほしい。おそらく求婚のことで気持ちが不安定だろうからな」

「だったら、先輩の兄貴の方が───」

「バーカ。こういうのは相応しい奴がやるものなんだよ。あいつが一番安心できるのがお前だろうしな」

「たしかにアーシアとは一番仲良いかもしれないけどさ…」

「仲良いというか…いや、俺が言うことじゃねえな。とにかく兄からの約束事として覚えておいてくれよ」

 

 考え込む一誠を残して、大一はトレーニングルームを去った。

 

────────────────────────────────────────────

 

 駒王学園では球技大会以外にも、運動系のイベントがある。体育祭はその最たるもののひとつと言っていいだろう。その練習も徐々に始まってきた頃のある日の放課後、大一は小猫と一緒に喫茶店に入っていた。以前、祐斗の件で相談した時の店とは違い、いかにも学生向けというような騒がしさが特徴的な店であった。

 

「ここのパフェが美味しいんです」

「お前はこういう店をよく知っているよな」

 

 大きなパフェとショートケーキの注文を済ませた大一は、目の前で嬉しそうにしている小猫に答える。人前であったため猫耳は引っ込めていたが、出していたなら動いてその感情を表していただろう。

 2人で来たのは、先日彼女と約束していたおごりの件であった。球技大会の練習が本格的に始まる前に済ませようと思っていたが、なかなか上手くいかない。それでも時間が取れたため、2人で小猫のリクエストの店に来ていた。

 

「…先輩はパフェを頼まないんですか?疲れた時の甘いものですよ」

「そこまでの量はいいかな。別に体育祭の練習で疲れているわけじゃないし」

 

 首をかしげる小猫に、大一は答える。正直なところ、この店のガヤついた雰囲気が得意でなかった。他の後輩たちを呼ぶことも考えたが、それが出来るほど懐は豊かでなかったからだ。

 さすがにそれを悟られたくない見栄はあったので、大一は話題を体育祭に持っていく。

 

「リアスさんがまた楽しみにしそうだ」

「先輩はあんまりはしゃぎませんよね。学校の行事って」

「嫌いじゃないんだよ。ただリアスさんの方がはしゃぐし、朱乃さんは笑って傍観するしで、こっちが余裕ない」

「先輩らしいです」

 

 小さく笑う小猫に大一は眉を上げるも、同じようにフッと笑う。夏休みに冥界で見たあの打ちひしがれた時の彼女とは違う。いつもの調子で、いやそれ以上に心の靄が晴れたような雰囲気は大一自身も身に覚えのあるものであった。シトリー眷属との試合の録画も見たが、猫又としての力を受け入れて戦いにも取り入れていた。その姿は彼女なりに自分の存在と力に折り合いをつけていたことの証明であり、同時に美しくも思えた。

 

「よく笑うようになったな。安心したよ」

「先輩たちのおかげです」

「そう言ってもらえると、俺もお前の支えになれたのかなって思ってしまうな」

「実際、そうですよ」

「後輩の言葉が胸にしみるなぁ。でも本当に安心したよ。なんかリアスさんも小猫とは思えないほど列車では笑っていたと言っていたし」

 

 その瞬間、小猫はびくりと体を震わせる。急に彼女の表情に緊張と不安が入り込んでいた。

 

「…ぶ、部長は先輩に他に言っていましたか?ど、どんな感じだったかとか…」

「いや、そう言っていたのを聞いただけだが…なんだ?あんまり聞いて欲しくないところだったか?」

「え、えっと…そうであるような、なんというか…あっ!来ましたよ、先輩!」

 

 小猫は店員が運んできたパフェに大きくリアクションする。猫耳を出してこれでもかというほど甘えていたのは冥界に繋がる列車の中での1回のみであり、大一は爆睡していたためこれを知らない。さすがに小猫も後で自分の行いに羞恥心を感じたようで、この事実は胸に秘めておきたかった。もっとも猫耳のことだけなら大一も知っているし、リアスの手元にはその時の写真まで収められているのだが。

 しばらくは2人で味の感想を話していた(中のディオーグの甘いものの追加要求を大一は完全に無視した)が、やがて再び先日の試合の話題へと繋がる。

 

「先輩も凄かったです。『女王』相手に競り勝ちました」

「あれは椿姫さんが俺の動きをよく知っていたことと、錨の方にはあまり注目していなかったのがラッキーだっただけだよ。それなりに眠れるようになって動きも良くなったからな。朱乃さんの方がはるかにすごい。近くで見たが圧倒的だった」

 

 大一の表情を見て、小猫は少しだけ口を曲げる。朱乃の話題を出す大一の表情が自分に向けてこない感情が表出しているのが気になったのだろう。

 そんなことを思われているのも露知らず、大一は小猫に元気づけるように話す。

 

「次の試合も絶対に勝とうな」

「もちろんです」

 

 この2人の会話の数日後、次の若手悪魔の対戦相手がディオドラ・アスタロトに決まった。

 




書いている私でも、いよいよヒロインが誰かわからなくなってきました。好感度次第では変わることもあるだろうと思ってしまいます。
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