D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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正直、この辺りはオリ主が入るところではないと思いながら原作を読み返していました。


第57話 確執の戦い

「や、おひさ~」

 

 ディオドラのいる場所まであと少し、最後の神殿で待ち受けていた男が下品な笑みを浮かべながら挨拶をする。白髪に表情からにじみ出る悪意的な雰囲気、フリード・ゼルセンであった。

 

「まだ生きていたんだなって、思ったっしょ、イッセーくん?イエスイエス。僕ちん、しぶといからキッチリキッカリ生きてござんすよ?ところで、もしかして『騎士』のお二人をお探しで?」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべながら、フリードは一誠の考えていたことを説明する。さらに口をもごもごと動かすと、なにかを見せつけるように吐き出した。とても小さかったが、それは人間の指の肉片であった。

 

「俺様が食ったよ」

 

 にべもなく答えるフリードに対して、大一はすぐに魔力と生命力を探る。魔力は大きかったが、それ以上に奇妙なのは生命力であった。目の前の人間の体にあらゆる生物がぎちぎちに詰め込まれたもので、まったく違った生物の印象を受けた。

 隣にいる小猫も鼻を抑えながらその違和感を口にする。

 

「…その人、人間を辞めています」

 

 小猫の指摘に、フリードは口を大きく曲げて狂気的な笑い声をあげる。彼の笑い声は耳を抑えたくなるような不快さがあった。

 

「ヒャーハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!てめえらに切り刻まれた後、ヴァーリのクソ野郎に回収されてなぁぁぁぁぁあっ!腐れアザゼルにリストラ食らってよぉぉぉおおっ!

 行き場を無くした俺を拾ったのが『禍の団』の連中さ!奴ら!俺に力をくれるっていうから何事かと思えばよぉおおおっ!きゅはははっははは!合成獣(キメラ)だとよっ!ふはははははっはははっはっ!」

 

 言葉を続けるたびに体が変化していく。全身が隆起し、腕と足も膨れ上がる。背中からはコウモリのような片翼に、巨大な腕、顔はドラゴンのように凶暴な牙が突き出していた。そこにかつてのフリードの姿はなく、醜悪な異形の怪物が目をぎらつかせて一誠達を睨みつけていた。

 

「ヒャハハハハハハハッ!ところで知ってたかい?ディオドラ・アスタロトの趣味をさ。これが素敵にイカレてて聞くだけで胸がドキドキだぜ!あのお坊っちゃん、大した好みでさー、教会に通じた女が好みなんだって!そ、シスターとかそういうのさ!」

 

 フリードの話では、なんとこれまで倒してきたディオドラの眷属の女性たちは全員が教会関係者や信仰深い者だった。眷属だけでなく彼を囲う多くの女性がその類であり、そういった女性を堕としてきた。アーシアの件も最初から目をつけており、回復の神器を持つことを知ったディオドラはわざと手負いの状態になって駆け込み治療してもらうことで、彼女を教会から追い出すきっかけを作った。つまりアーシアが教会から追放される原因を作ったのは、彼女の元来の優しさにもつけこんだディオドラの計画であった。

 最高の苦しみを与えたところで、その傷に愛情を流しこみ、相手を堕とす…それがディオドラの常套手段であった。

 その真実を知った一誠の怒りは壮大であった。アーシアがその時のことについて後悔していないことを知っていたため尚更であった。目を見開き、歯を食いしばりながら拳を握る彼を抑えるように、祐斗が言葉をかける。

 

「イッセーくん。気持ちはわかる。だが、キミのその想いをぶつけるのはディオドラまで取っておいた方がいい」

「どっちにしろ、相手のルールに従うならここは俺と祐斗でやるしかないんだ。あのふざけた野郎は俺らで黙らせる」

 

 祐斗と大一が前に出る。2人とも静かながらもその眼には怒りと憎悪で燃えており、フリードの前に立つ。祐斗は聖魔剣を一振り創りだし、大一は全身に魔力を纏わせていた。

 

「やあやあやあ!あのとき俺をぶった斬りやがった腐れナイトさんにじゃあーりませんかぁぁぁっ!てめえのおかげで俺はこんな素敵なモデルチェンジをしちゃいましたよ!それにもうひとりは俺のことを舐めてくれやがった腐れ悪魔さんじゃないですか!聞けば、てめえも俺みたいに化け物じみて合成獣みたいになっているんだってなぁ!」

「ディオーグの件を言っているなら、お前とは違うと思うが…。まあ、そう思うならお前はこの腐れ悪魔と同類ってことだな」

「ああああ!?最後までふざけやがって、このクソ悪魔が!さっき食った『騎士』と同様に俺の糧にしてくれてやるよぉぉぉ!」

「キミはもういないほうがいい」

「調子くれてんじゃねぇぇぇぞぉぉぉっ!」

 

 憤怒の形相でフリードは全身のいたる部分から刃を生やして、2人を狙う。大一はそれをすべて受けきり、祐斗は素早くかわすと目にもとまらぬ神速の速度で接近し、文字通り一瞬のうちにフリードをバラバラに切り刻んだ。

 

「あっ…がっ…ま、まだ…!」

 

 最後のあがきともいうように肉体の一部から刃物を伸ばして祐斗を狙うが、それも間に入った大一に防がれてしまう。間もなく体は崩れ落ちていき、その存在は四散していった。

 

「…お前、最後の攻撃避けられただろ」

「大一さんなら守ってくれるって信じていたので」

 

 フリードの最後を確認した一行は、ディオドラの待つ最後の神殿へと走り出した。

 

────────────────────────────────────────────

 

 最深部にある神殿に入っていくと、その視界に巨大な装置が入る。壁に埋め込まれた巨大な円形をしており、宝玉や紋様、文字が至る所に刻まれていた。そして装置の中央にはアーシアが磔の状態で捕らわれていた。

 

「アーシアァァァアアアッ!」

「やっと来たんだね」

 

 一誠の叫びを聞いて、ディオドラが装置の横から姿を現す。相変わらず穏やかな笑顔は崩していなかったが、真実を知った今その表情は悪意の塊にしか見えなかった。

 

「…イッセーさん?」

 

 アーシアも同時に目を開ける。腫れあがった目元からよほどの涙を流していたことが察せられる。どうもディオドラは教会追放の真実を彼女に語っていたようだ。

 

「でも、まだ足りないと思うんだ。アーシアにはまだ希望がある。そう、キミたちだ。特にその汚れた赤龍帝。キミがアーシアを救ってしまったせいで、僕の計画は台無しになってしまったよ。あの堕天使の女───レイナーレが一度アーシアを殺した後、僕が登場しレイナーレを殺し、その場で駒を与える予定だったんだ。キミが乱入してもレイナーレには勝てないと思っていた。そうしたら、キミは赤龍帝だという。偶然にしてはおそろしい出来事だね。おかげで計画はだいぶ遅れてしまったけど、やっと僕の手元に帰ってきた。これでアーシアを楽しめるよ」

「黙れ」

 

 とてつもなく低い声…大一は一瞬それが誰の声がわからなかった。それほど今の一誠は怒りに燃えていた。握りしめる拳は強く、その眼は感情をむき出しにディオドラを睨んでいる。

 だがディオドラはなおも変わらずに挑発を続けた。

 

「アーシアはまだ処女だよね?僕は処女から調教するのが好きだから、赤龍帝のお古は嫌だな。あ、でも、赤龍帝から寝取るのもまた楽しいかな?キミの名前を呼ぶアーシアを無理矢理抱くのも良いかもしれ───」

「黙れェェェェェェェェェッ!」

 

 とうとう我慢の限界がきた一誠は叫びながら禁手化する。体は堅牢な赤い鎧をまとい、全身を強力な魔力が包んでいた。

 その様子にディオドラは高笑いする。同時に彼も黒いオーラに体が包まれ、魔力が強化されていった。

 

「アハハハハ!すごいね!これが赤龍帝!でも、僕もパワーアップしているんだ!オーフィスからもらった『蛇』でね!キミなんて瞬殺───」

 

 ディオドラご言い終える前に、背中の噴出口を使って一気に接近した一誠の拳が相手の腹に深く入り込む。

 激痛に体をくの字に曲げ、衝撃に顔をゆがめるディオドラは苦しそうに言葉を発した。

 

「キミのような下級で下劣で下品な転生悪魔ごときに気高き血が負けるはずがないんだッッ!」

 

 苦し紛れに手を前に出すと、大量の魔力の弾を雨のように撃ち出していく。数は多く、ひとつひとつの威力が上級悪魔の中でも強力なものは疑いようがない。

 しかしこれほどの攻撃すらも一誠には通用しない。腕で薙ぎ払い、あるいは受けても止まることなく、ただ目先にいる仇に向かっていった。

 再び背中の噴出口を利用して接近してくる一誠に、ディオドラは防御障壁を作り出す。

 

「ヴァ―リの作った障壁よりも薄そうだな」

 

 障壁をものともせずに一誠は打ち砕いていくと、そのまま肉弾戦に持ち込む。顔面、腹部と連続で魔力の拳を叩きこんでいく。ディオドラは一撃喰らうたびに血を出してふらつくも、しぶとく抵抗を諦めなかった。最大の魔力で作りだしたオーラの壁でわずかに体勢を持ち直したように見えたが、間もなく何倍にも力を倍加させた一誠の打撃にそれすらも砕かれる。

 

「俺ん家のアーシアを泣かすんじゃねぇよっ!」

「ウソだ!やられるはずがない!アガレスにも勝った!バアルにも勝つ予定だ!才能のない大王家の跡取りなんかに負けるはずがない!情愛が深いグレモリーなんか僕の相手になるはずがない!僕はアスタロト家のディオドラなんだぞ!」

 

 叫びながらディオドラは魔力の塊を鋭く尖らせて触手のように自在に動かす。鎧の隙間を狙ってきて、ここで初めて一誠に対して手痛いダメージを与えた。

 しかしこれでディオドラが気をよくする隙も無く、一誠は棘を引き抜くと距離を縮めて蹴りをお見舞いする。その鈍い音から彼が蹴られた部分の骨が粉砕したようだった。

 互いに手負いの状態で勝負を決めるかのように魔力を溜め、相手に向かって放出する。魔力は空中でぶつかりあうが、ブーステッド・ギアから倍加の音が鳴り響く。一誠の撃ちだした魔力の大きさと密度が肥大化していき、ディオドラの攻撃を破ると、彼すれすれに床に当たる。巨大なクレーターが作り出され、近くにいたディオドラはガチガチと歯を鳴らしながら怯えていた。

 

「二度と、アーシアに近づくなッ!次に俺達のもとに姿を現したら、そのときこそ、本当に消し飛ばしてやるッ!」

 

 一誠の言葉にディオドラはすっかり戦意喪失していた。ゼノヴィアはすぐにアスカロンの切っ先を彼の首に当てるが、一誠がそれを止めた。相手が魔王の血縁者であり、ここでやることが他勢力への迷惑になると思ったらしい。

 少し腑に落ちない様子でゼノヴィアは剣を地面に突き刺したが、すぐに一誠と共に強く釘をさす。

 

「「もう、アーシアに言い寄るなッ!」」

 

 すっかり意気消沈したディオドラをよそに彼らはアーシアへと近づく。なんとか奇妙な装置から外そうと全員で試すが、どうにも彼女を捕らえる枷を外せそうになかった。聖魔剣やデュランダルでも斬れず、大一の錨や小猫の怪力でも砕けず、一誠の倍加した力でも外れない。この異常な硬さに、ディオドラがポツリとその真実を呟く。

 この装置は「絶霧(ディメンション・ロスト)」の禁手である「霧の中の理想郷(ディメンション・クリエイト)」により生み出されたもので、正式に発動しないと停止しない。そしてこの装置の効果は、このフィールド一帯と観戦室を範囲にアーシアの回復の力を「反転」させるものであった。つまり広範囲にとてつもない破壊力が展開される。

 その真実を聞いたとき、大一は顔から血の気が引いていくような想いであった。本当にそんなことが起こればあらゆる勢力の多くが手痛いダメージを喰らうのは間違いなかった。その現実に冷静さを欠く彼に、呆れたようにあくび混じりでディオーグが話す。

 

(だったら、あの金髪小娘を殺せばいいだろ)

(ふざけるな!アーシアを犠牲に出来るか!)

(はー、くだらない。自分の命と他の命を天秤にかける時点で呆れたものだ。ましてや、今回はお前以外の仲間の命もかかっているんだぞ。どの道、この装置が発動したらそいつも死ぬんだから、さっさと終わらせた方がいいだろうに)

(うるせえぞ、ディオーグ!とにかくアーシアは助ける!なんとかこの装置からあいつを外さないと…!)

 

 ディオーグの提案を当然受け入れるわけがない。家族同然の彼女を犠牲にする選択肢など、大一にはなかった。

 だが彼の言うことが一番手っ取り早いと思われるのも事実であった。全員が攻撃をしても一向にこの装置が破壊される気配が無かったからだ。

 そんな中で、なにかに気づいた一誠は軽く息を吐くとアーシアに向き合う。

 

「アーシア、先に謝っておく」

「え?」

「高まれ、俺の性欲!俺の煩悩!───洋服破壊ッ!禁手ブーストバージョンッ!」

 

 一誠の魔力がアーシアを伝い、彼女のシスター服を一瞬のうちに弾き飛ばす。同時に服に密着していた枷も吹き飛んでいった。枷を洋服に見立てる要領で、彼女をその拘束から解き放った。彼女が脱出したことにより、装置も動きが止まっていった。

 朱乃が魔力で出したシスター服に身を包んだアーシアが一誠に抱きつく。ゼノヴィアも彼女を心配して2人に駆け寄った。

 

「信じてました…。イッセーさんが来てくれるって」

「当然だろう。でも、ゴメンな。辛いこと、聞いてしまったんだろう?」

「平気です。あの時はショックでしたが、私にはイッセーさんがいますから」

「アーシア!良かった!私はおまえがいなくなってしまったら…」

「どこにも行きません。イッセーさんとゼノヴィアさんが私のことを守ってくれますから」

「うん!私はお前を守るぞ!絶対だ!」

 

 アーシアはゼノヴィアと固く抱き合った後に、皆に向かって一礼する。先ほどまでの不安満載の表情と打って変わり、明るく彼女のいつもの穏やかさがあった。

 

「部長さん、皆さん、ありがとうございました。私のために…」

「アーシア。そろそろ私のことを家で部長さんと呼ぶのは止めていいのよ?私を姉と思ってくれていいのだから」

「───っ。はい!リアスお姉さま!」

 

 今度はリアスとアーシアが抱き合い、その姿を見ながらギャスパーがわんわんと泣き、小猫は彼を慰めるように頭を撫でていた。朱乃も静かに涙目を拭っている。大一は安心と同時にスッキリしないようなゆがんだ表情で首をひねる。

 

「うーん…良かったんだけど、一誠のあれで腑に落ちない…!」

「イッセーくんのあの技も使いようがあったってことでよかったじゃないですか。アーシアさんも無事でしたし」

「祐斗…お前は寛容だな。本当に良い奴だよ、うん」

 

 ドタバタながらもアーシアを救出した彼らは安息に包まれた。とはいえ、この空間ではまだ戦いが繰り広げられている。いつまでもここにいるわけにいかないため、一誠はアーシアに声をかけた。

 

「さて、アーシア。帰ろうぜ」

「はい!と、その前にお祈りを」

「何を祈っていたんだ?」

「内緒です」

 

 笑顔で一誠のもとにアーシアは走りよるが、その時に強烈な光の柱が彼らの視界を奪った。その柱はアーシアがいたところを包んでおり、収まると彼女の姿は消えていた。

 




おそらく次回が大きくことが動きそうです。
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