D×D 悪魔の兄弟   作:水飴トンボ

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まず謝らせてください。あの歌の歌詞を書く勇気は私にはありませんでした…。


第59話 龍との対話

(特に問題なかったな)

(…終わってみればな。とにかく一誠が無事でよかった。助け方はあれだったが…)

 

 ディオーグの言葉に大一は安心と不全という相反した感情を表情に現わす。彼の視線の先にはアーシアの無事を知り、仲間達からも元に戻って安心されていた一誠の姿があった。この場面だけ見れば無事に助かったということで心から安心できるものであったが、助かった過程を思い出すと素直に喜んでいいものなのかを迷う大一がいた。

 イリナの持ってきた映像機器では一誠が子ども達と一緒に「おっぱいドラゴンの歌」というものを歌っていた映像であった。流れる歌詞がどこまでも女性の胸のことしか言っておらず、大一としては笑いでは流せないレベルの内容となっていた。しかも本当にそれで暴走していた一誠の動きが鈍るのだから反応にも困る。その隙を見計らってヴァ―リが能力で一誠の力を半減させ、止めとばかりに再びリアスの胸をつつくことで元に戻った。この酷い経過があったのだから、流れそうになる涙も正気を取り戻した安心に対してなのか、弟の気質の情けなさに対してなのかわからなくなる。結局、涙を見せずに奇妙な表情をするだけであった。

 ヴァ―リが一誠に近づいて声をかける中、急に空間に巨大な穴が開いていく。そこから現れたのは100メートルは超えるかであろう巨大なドラゴンであった。このドラゴンこそヴァ―リが狙いにしていた存在、「真なる赤龍神帝(アポカリプス・ドラゴン)」のグレートレッドであった。禍の団のトップであるオーフィスも狙っているそのドラゴンを打倒し「真なる白龍神皇」となることが目標なのだという。

 大一としてもたしかに衝撃的な大きさであった。ヴァ―リの言葉からしても、わずかに感じる魔力からしても、その強さが自分の想像を超える範囲にあることは予想できる。同時にこの大きさに匹敵するドラゴンを彼は間違いなく見ていた。

 そしてこのドラゴンを見ていたのは、彼らだけではなかった。

 

「グレートレッド、久しい」

 

 いつの間にかすぐ近くに黒髪の少女が立っていた。

 

「誰だ、あの娘…?さっきまでいなかったぞ」

「───オーフィス。ウロボロスだ。『禍の団』のトップでもある」

 

 苦笑しながら答えるヴァ―リの言葉に、皆が驚く。話に聞いていた存在とはまるでイメージが違っていたのだから当然の反応だろう。

 オーフィスは彼らには見向きもせずに、グレートレッドに向けて指鉄砲の構えをとる。

 

「我は、いつか静寂を」

 

 自由奔放にオーフィスが振舞う中、アザゼルとタンニーンも合流した。

 

「おー、イッセー。元に戻ったようだな。俺もどうなるか怖かったが、お前ならあの歌や女の胸で『覇龍』から戻るかもなんて思っていた。乳をつついて禁手に至った大馬鹿野郎だからな。あの歌を作詞したかいがあったぜ」

 

 ゲラゲラと笑うアザゼルに、タンニーンも豪快に笑う。2人とも一誠が正気を戻したことになんだかんだで安心していたようだ。

 アザゼルの話では、今回の事件の首謀者であるベルゼブブとアスモデウスの2人は打ち倒され、おかげで各地で暴れまわっていた旧魔王派も次々と退却と降伏の連続。禍の団に対して、大きな打撃を与えられた。現状、彼らに残された大きな戦力はヴァ―リの派閥と「英雄派」と呼ばれる英雄や勇者の末裔、神器所有者で集まった派閥の2つであった。

 

「さーて、オーフィス。やるか?」

「我は帰る」

 

 光の槍を生みだすアザゼルには目もくれずに踵をかえす。意欲なく撤退しようとするオーフィスにタンニーンが呼び止めた。

 

「待て!オーフィス!」

「タンニーン。龍王が再び集まりつつある。───楽しくなるぞ」

 

 そう言ったオーフィスはタンニ―ンに目を向け、そこから大一をちらりと視線を向けて少し眉をひそめると消え去った。一瞬だが目の合った大一は心臓をわしづかみにされたような感覚が体を駆け巡った。同時にディオーグのギラギラとした闘争心のような感情も伝わってきた。いや、グレードレッドを見た瞬間から、その感情をディオーグは抱いている。

 一方でヴァ―リたちも去ろうとするが、彼はその前に一誠に話しかけていた。

 

「兵藤一誠。───俺を倒したいか?」

「…倒したいさ。けど、俺が超えたいものはお前だけじゃない。同じ眷属の木場も超えたいし、ダチの匙も超えたい。俺には超えたいものがたくさんあるんだよ」

「俺もだよ。俺もキミ以外に倒したいものがいる。おかしいな。現赤龍帝と現白龍皇は宿命の対決よりも大切な目的と目標が存在している。きっと、今回の俺とキミはおかしな赤白なのだろう。そういうのもたまには良い筈だ。───だが、いずれは」

「ああ、決着つけようぜ。部長や朱乃さんのおっぱいを半分にされたら事だからな」

「やっぱり、キミは面白い。───強くなれよ」

「じゃあな、おっぱいドラゴン!それとスイッチ姫!」

 

 その言葉を最後にヴァ―リと美猴も空間の裂け目へと去っていく。最後に残った背広の男性は後に続く前に、祐斗とゼノヴィアに声をかけていた。

 

「私は聖王剣の所持者であり、アーサー・ペンドラゴンの末裔。アーサーと呼んでください。いつか、聖剣を巡る戦いをしましょう。では」

 

 そう言って、アーサーも彼らに続くと時空の裂け目は閉じていく。

 戦いが終わり、すべてが丸く収まった様子であったが、大一の心はどうにもざわついて仕方が無かった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 駒王学園の体育祭の日、大一は人目のつかない倉庫の裏に座り込んでいた。すでに彼の種目はほとんど終わっており、もう少しで2年生の二人三脚の時間であった。力を使いすぎた一誠は静養のためにグレモリー邸にいるが、来るであろうことは大一も疑っていない。

 今の大一にはそれ以上に差し迫ったことがいくつかあった。そのためにわざわざ誰にも邪魔をされないであろう小さな時間を見つけているのだから。

 

(なあ、ディオーグ。いくつか訊きたいことがあるんだけど)

(予想していたことではあるな。本来なら力づくでも聞き出して見ろ、と言いたいところだが後でなにか美味いものを食うことで許してやる)

(…じゃあ、単刀直入に訊くがお前は何者なんだ?)

 

 いくつかの疑問全てに集約されていることを大一は問う。ディオーグはその意味がよくわかっていなかったのか、少し間をおいてから答える。

 

(俺はディオーグだ。その存在に揺るぎはない)

(そういうことじゃないんだよ。オーフィスは去り際に間違いなく俺と目が合った。だがあいつは俺のことは見ていない。俺の中にいるお前を見ていたんだろう。俺はずっとお前をただの無名のドラゴンだと思っていた。しかしあのオーフィスの反応…あいつはお前のことを知っているんじゃないのか?)

 

 まくしたてるように大一はディオーグに追求する。彼が話していたディオドラの残り香、相手がオーフィスから力を借りていたことを考えれば、ディオーグが話していたドラゴンとは間違いなくオーフィスであると思った。だがディオーグは名前を知らなかったため、まずは本当にそうであることを確かめたかった。

 

(だろうなあ。しかしあいつも決着がつかなかったのに、よく覚えているもんだ。もう一匹の方は覚えていなかったようだが。それとも気づいてないだけだったのか…まあ、今回名前を知ることが出来たのは収穫だったな)

(…グレードレッドのことか)

(俺とオーフィスがやりあっていた時に横槍を入れてきやがったんだ)

 

 言い方とは裏腹にディオーグの声の調子は喜んでいた。彼としてはグレードレッドに邪魔されたことは、強者を求める戦いに同じくらい強者が来てくれたという歓迎的な感情をもたらしていた。

 当然、この事実も大一は無視できなかった。グレードレッドの存在は知らなかったが、ヴァ―リの口ぶりからすれば次元の違う強さを持っていることは疑いようも無い。同時に「禍の団」のトップであり、グレードレッドを狙うオーフィスの実力も計り知れない。

 もしディオーグの言葉を全面的に信じるのならば、彼はその規格外のドラゴンにも匹敵すると思われた。だがその場合、それほどの実力のあるドラゴンが無名というのが納得できなかった。

 

(おかげで勝負はうやむやだ。俺がもっと早くに気づいていれば、同時に相手をすることも出来たかもな)

(つまりお前を封印したのは、あいつらのどちらかが?)

(あんな奴らに封印されるか。勝負がつかない状況にまた横槍を入れてきた奴がいるんだよ。…名前は知らん)

(そいつもドラゴンか?)

(いや、違うな。見た目はお前らと同じような奴だ)

 

 ディオーグの回答に、大一はあごに手を当てる。おそらく彼の言う「同じような奴」というのは、人間や悪魔、天使、堕天使などが考えられるが、さすがに絞り込むことはできなかった。

 気味が悪かった。グレードレッドに匹敵するほどの体格を持つ無名のドラゴンが、自分の身体に入り込んでいる、この事実が大一を動揺させた。

 

(なにをそんなに焦る。なにをそんなに怯える)

(俺の中にいる存在がとんでもない奴かもしれない。それだけで不安になるには十分だろ)

(それだけじゃないな。当ててやろうか?自分も暴走するんじゃないのかってこと、お前の弟が暴走した時にまともに止められなかったこと、金髪娘との約束をろくに守れなかったこと…挙げればキリがないな。共通しているのは「恐れ」ってところか)

 

 うやむやにしていたことをズバリと言葉にされたことで、大一の感情に陰りが落とされる。ディオーグの言葉は全て的を射ていた。ディオーグの存在が不明になるほど、彼は自分の存在にも確証が持てなくなっていた。目の前で赤龍帝の力を暴走させた弟を見たのだから尚更である。それらが仲間の期待に応えられなかったことへの責任感にも繋がり、自分の今後が見据えられない恐ろしさにもなっていた。

 そして何よりも一誠が悪魔になった…死にかけた時のことが再び頭をよぎる。なるべく抑えていた感情がまた噴き出していた。

 そんな大一に、ディオーグは面倒そうに言葉を続ける。

 

(言っておくが、あいつとお前とでは状態が違う。俺の意識はあの神器とかいうやつじゃなくて、お前自身に入っているんだ。あの魔力の流れなら、おそらく暴走しようものならその前にお前の身体にすぐ限界が来て、暴れる間もなく死ぬだろうよ)

 

 ディオーグの言葉はどこまで信用できるかがわからなかった。数少ない繋がりが敵の親玉であることに、手放しで言葉を鵜呑みにするわけにはいかない。元からあってないような信頼関係ではあったが、今回の一件でそれすらも揺らいでしまったのは間違いない。

 

(口だけだな)

(なに?)

(お前と融合してから…ひと月以上は経ったが、お前は口だけだ。自分の無力さを言い訳に力を求めない。お前の弟と同じような龍を感じた小僧が失望していたが、あれでも優しい方だったな)

 

 嘲りを隠さずにディオーグは話す。荒々しい気質で、他人を気にしない性格の彼としては、今の大一の姿はただ不安になるだけの滑稽な姿に見えたのだろうか。それとも強さを重視する彼だからこそ、無力であることに呆れを超えて、純粋に見下しているのだろうか。あるいはその両方か、いずれにしてもディオーグが大一を快く思っていないのは明らかであった。同時に大一も同じようなことを自覚していた。

 

(所詮、お前は自分の存在を認められない臆病者ってところか)

(…強さでしか証明できないお前も同じようなものだろ)

(…フンッ)

 

 そのやり取りを最後にディオーグは黙り込む。大一としてもこれ以上、彼と話しても埒が明かないと思っていたため、ちょうど話に終止符を打てたタイミングであった。

 ちょうど2年生の二人三脚を知らせるアナウンスが鳴り、大一は急いでグラウンドへと戻る。ぎりぎりスタートに間に合うことができ、一誠とアーシアが二人三脚で走っていくのが見えた。2人の表情は今の自分の心境とは真逆にあるほど輝いており、それを守ることに無力であった自分に大一は再び責任を感じるのであった。

 




今回で6巻は終了となります。
次回からいよいよ7巻に突入です。オリ主がこのメンタルで7巻か…。
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